本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『人生と仕事について知っておいてほしいこと』(松下幸之助)

 お薦めの本の紹介です。
 松下幸之助さんの『人生と仕事について知っておいてほしいこと』です。


 松下幸之助(まつした・こうのすけ)さんは、経営者です。
 パナソニック(旧松下電器)グループの生みの親で、戦前、戦後の日本の産業界のリーダーとしてご活躍されました。

「愛される、人間的魅力のある人」になること

 “まず人間が大事である”という哲学を持っていた松下さん。

 自ら大切にし、周りにも求めていたことが「愛される、人間的魅力のある人になる」です。

 ビジネスマンはみんなに愛されないといかんですよ。あの人がやってはるのやったらいいな、モノを買うてあげよう、と、こうならないといかんですよ。そうなるには、奉仕の精神がいちばん大事です。奉仕の精神がなかったら、あそこで買うてあげようという気が起こらない。
 そうですから、ビジネスマンのいちばんの大事な務めは愛されることである。愛されるような仕事をすることである。それができない人は、ビジネスマンに適さないです。必ず失敗する、と、こういうことです。

 『人生と仕事について知っておいてほしいこと』 序にかえて より  松下幸之助:述 PHP総合研究所:編 PHP研究所:刊

 取引先や部下に助けられ、愛されて、一代で世界的な大企業を育て上げた松下さん。
 そんな松下さんにとって「愛される」という条件は、人生観・仕事観の根幹をなすものです。

 本書は、“経営の神様”松下幸之助さんの人生観などについてまとめた一冊です。

「愛される、人間的魅力のある人」になるための指針となる考えが、ぎっしり詰まっています。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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人事を尽くして天命に従う

 松下家と松下電器は、太平洋戦争敗戦直後、GHQから財閥指定を受け、解体の危機に立たされます。
 松下さん自身も、会社から追放されかかる、絶体絶命の大ピンチでした。

 しかし、当時の松下電器1万5千人の従業員が、松下さんの追放解除を嘆願したこともあり、この危機を乗り越えることができました。

 松下さんは、当時の状況を回想して、以下のように述べています。

 だからまあ、日本には「人事を尽くして天命を待つ」という古い言葉がありますが、ぼくはちょうどそれにあてはまっておると思った。人事は尽くしておった、同時に一方では天命を待っておった。その天命があったから助かった。やはり、昔からいうている言葉は、かたちは変わっているけども同じことやなというように考えたわけですね。
 だから、皆さんも人事は尽くさないといかん。是と思うことは、ぜひやらないといかん。しかし、それだけで事がすべて終わるかというと、そうはいかない。一方にまた、それ以上に大きな力が動いている。運命とでもいうか、その人が持って生まれた天命とでもいうか、そういうものがある。これには従うことが大事である。天命に抗することはどうしてもできない。ぼくは天命に従うつもりで覚悟した。ところが、自分の力やなく、他の力によってそれが自然に解けたということは、これはやはり天命に従うという素直な心からひらける一つの運命やな。

 『人生と仕事について知っておいてほしいこと』 Ⅰ部 より  松下幸之助:述 PHP総合研究所:編 PHP研究所:刊

 人間ちょっと不利な立場に立たされると、つい言い訳に逃げてしまいがちです。
 そのピンチを乗り越えようと、最善の努力をする前に諦めてしまうことが多いです。

 人事を尽くして天命に身を委ねること。
 それが自らの道を切り拓くということです。

「運が悪い」という言葉は、最善を尽くした人だけが口にすることができる言葉です。
 まずは、全力で今、自分ができることを精一杯するということですね。

賢さと熱意

 9歳の時に家庭の事情で丁稚奉公に出され、そこから超一流の実業家まで上り詰めた松下さん。
 事業を成功させるために最も必要な才能は、頭の良さではなく、熱意であると力説します。

 結局、一所懸命やって真理をつかまないとあかんな。“やろう”という熱意があれば、ものは生まれてくる。
 才知によって、つまり賢さによってものを生むのと、熱意からものを生むのと、いろいろあるわな。ぼくはやっぱり熱意からものを生むということがほんとうやと思う。賢さで、ものは生まれない。賢さでは、ものを生んでも浅いと思う。“なんとかしたい”という強い熱意から、ものを考え出せるわけや。その人がもともとの鈍物やったら、なんぼ熱心でも、いい知恵が出ないかしらんけど、ある程度の才覚ある人やったら、熱意には勝てんな。
(中略)
 だからお釈迦さんでも熱心でなかったら、家も飛び出さへん。お釈迦さんは皇太子殿下やろ。つまり皇太子殿下でも、熱意がなかったら、そんなことはやれない。賢い人には違いないけど、賢いだけではいかんわけやな。そこに熱意がないといけない。だから賢いだけの人間は困るね。理屈ばかりいうから。

 『人生と仕事について知っておいてほしいこと』 Ⅱ部 より  松下幸之助:述 PHP総合研究所:編 PHP研究所:刊

 何かことを起こそうと思ったら、思い付いたことを実際に実行してみせる。
 そんな信念や情熱が何よりも必要です。

 素晴らしいアイデアを思い付いても、何も行動しなかったら、思い付かなかったのと一緒。
 理屈ばかりの評論家には、ならないようにしたいですね。

些細なことを大切にしているか

 周りから信頼されている人、仕事がよくできる人。
 そういう人ほど、細かいことや小さいことを、きっちりこなしています。

 たとえば、上司から伝言を頼まれたら、相手に言われたことを伝えたあとに、相手に伝えた旨を上司に報告することは基本です。
 しかし、それができていない人が意外と多いです。

 最近、私はそういうことをよく感じるのです。“あの人に頼んだけども、電話かけよったんかいな。“どうやなあ”ということで、こっちは気になる。「きみ、かけておていくれたか」「ええ、かけておきましたで」「そうか」というようなもんですな。だけどそのときに、もうかけたということを、何かの機会にちょっと知らせておいてくれると、こちらも安心する。たいへん忙しい人は、それを確かめることもできないままにうち過ぎることが多い。それを何かの機会に知らせてもらうと非常にいい。なんでもないことやけれども、そういうことが結局、その人が多くの人から信頼されていく、重宝がられる、なくてはならない人になるという第一歩だと私は思うんです。
 だから世の中で偉くなるとか偉くならんとか、相当の仕事をするとかしないとかいうことは、その人が頭がいいとか賢いとかいうことも、それは大いにありましょうけれども、それ以上に大きな力となるものは、そういう些細なことをおろそかにしない心がけである。
 むずかしいことができても平凡なことができないということではいけない。むずかしいことよりも平凡なことのほうが大事である。それを積み重ねていって基礎をつくって、その基礎のうえに立って、さらに長年の経験を、その人の知恵才覚によって生かしていくというようなかたちが、危なげないことやと思います。

 『人生と仕事について知っておいてほしいこと』 Ⅲ部 より  松下幸之助:述 PHP総合研究所:編 PHP研究所:刊

「むずかしいことよりも平凡なことのほうが大事」

 松下さんの口から出た発せられた言葉だからこそ、ズシリとした重みを持ちます。
 肝に銘じたいです。

プロとして一人前の仕事をしているか

 松下さんは、どんな職業に就いていても「プロとしての覚悟」を持ってその仕事に臨むべきだと述べています。

 皆さんが、自分のやっていることを、一人前として、玄人としてやっているかどうか。技術は、ある場合にはまだ錬磨が足りない点もある。けれども精神は、そういうことにはっきり踏み切っているかどうか。“おれはまだ技術は多少足りないけども、しかし、おれの責任というものは、世間から玄人として遇されているんだ。だから、力及ばぬといえども最善の努力をはらわないといかん”と考えているかどうか。
 そのためには、きょうはダメでもあすは一人前にならないといかん、少なくとも三日のうちには一人前にならないといかん、少なくとも三年のうちには一人前にならないといかん、少なくとも三年のうちには一人前にならないといかん。そういう修行を一面に尽くさないといかん。その修行というか、心がまえというものなくして、安閑と玄人の地位を占めるということは、その職責を冒涜している、それは許されないことだと、私はこう思うんです。

 『人生と仕事について知っておいてほしいこと』 Ⅲ部 より  松下幸之助:述 PHP総合研究所:編 PHP研究所:刊

 たとえ、技術的には半人前でプロと呼べる領域に達していなくても、その仕事で給料をもらっているのなら、周りからは一人前のプロとして見られます。

 そうである以上、その道の一流となるべく、常に向上心を持って目の前の仕事に臨む。
 それが「プロとしての覚悟」です。

 今の仕事でそれができないのなら、どんな仕事でもダメだ。
 松下さんは言いたいのでしょう。

 甘えは捨てて、気を引き締めていきたいですね。

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 長引く国内の不況もあり、多くの日本企業が不振にあえいでいます。
 しかし、そんな時だからこそ、先人の優れた知恵がピンチ脱出の突破口となることがあります。

「多種多様な人材が会社を生かす」

 そうおっしゃって、あくまで人の育成にこだわりをみせた松下さんの人生観。
 多くの企業にとっても、また、そこで働く多くの人にとってもためになることは間違いありません。

 マニュアル全盛の今の世の中、同じことを同じようにやるだけでは、味も素っ気もありません。
 代わり映えのしない人ばかりの集団になってしまいます。

「愛される、人間的魅力のある人」になること。
 そういう視点から、自分の仕事観や人生観を見つめ直してみるのもいいかもしれませんね。

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