本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『才能を伸ばすシンプルな本』(ダニエル・コイル)

 お薦めの本の紹介です。
 ダニエル・コイルさんの『才能を伸ばすシンプルな本』です。

 ダニエル・コイルさんは、米国のジャーナリストです。
 有名ライフスタイル情報誌「Outside」の上級編集者を経て、現在はフリーでご活躍中です。

才能は「行動」によって決定される!

「才能は生まれつきのものだ」

 人間は、何世紀にもわたり、そのように感覚的に思い込んできました。

 しかし、最近になり、そのような従来の考え方は覆されました。
 才能は「遺伝」よりむしろ「行動」によって決定されるという新しい考え方が確立されています。

 行動とは、「脳の成長をうながす徹底的な練習とモチベーションの組み合わせ」のこと。

 コイルさんは、雑誌の取材で、さまざまな分野の「才能開発所」を訪問する機会に恵まれます。
 そこで一流の指導者と会い、使えそうなやり方の要点をメモ帳に書きとめます。
 
 本書は、スキルアップのための、単純明快で実用的なノウハウをまとめた一冊です。

 取り上げられている方法は、どれも実証ずみで、科学的根拠があるものばかりです。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「一日に15分」で、スキルを脳に刻み込む

 新しいスキルの学習を開始するのに効果的な方法。
 それは、「スキルを脳に刻み込む」というやり方です。

 具体的には、そのスキルが使われている様子を何度もじっくり見て、心の中に高精細の画像をつくることです。

 スキルを脳に刻み込むカギは、じっくり見たり聴いたりすることによってそのスキルを実行しているような気持ちになることだ。
 肉体的なスキルの場合、自分が相手の体の中に入り込んでいる様子をイメージするといい。動きとリズムを意識し、その動きの内側の形を感じとることに努めよう。
 一方、知的にスキルの場合、達人の意思決定パターンを心の中で再現することによって、そのスキルを疑似体験するといい。たとえば、チェス選手は名勝負を一手ごとに心の中で再現して疑似体験する。講演家は名演説をそのままの抑揚で何度も練習して疑似体験をする。歌手は好きな歌を何度も歌う。私が知っている数人の作家は、名作の一部を筆写して疑似体験をしている。
 これらは無意味な作業のようにみえるかもしれないが、実際にやってみるとたいへん効果がある。

 『才能を伸ばすシンプルな本』 第1章 より ダニエル・コイル:著 弓場隆:訳 サンマーク出版:刊

 スキルを身につける最初のステップは「マネること」です。

 お手本となるプレーなり演奏なりを、自分の頭の中で完全にイメージできる。
 そうなるまで、何度も再現し、インプットすることが重要です。

「スイートスポット」を見つける

 

 能力を高めるような「深い練習」のカギは、「背伸びをすること」です。

 現在の能力を超えて、自分の力を伸ばす。
 そのためには、「スイートスポット」を多く体験することが重要です。

 スイートスポットとは、能力の限界の周辺にあり、もっともよく、もっとも素早く学ぶことができるゾーンのこと。
 つまり、成功の確率が50〜80%のギリギリの難易度のレベルが最適となります。

 自分のスイートスポットを見つけるには創意工夫が求められる。たとえば、一部のゴルファーは自分のスイングを水中で練習している。そうすることで動きが遅くなり、ミスを認識して修正できるからだ。一部のミュージシャンは曲を逆から演奏している。そうすることで音符同士の関係をよりよく把握できるからだ。
 これらは個別のやり方だが、根底にあるパターンは同じである。すなわち、能力の限界まで背伸びをする方法を見つけるということだ。アインシュタインが「われわれは最大の努力によってかろうじてなしとげられることをおこなう感覚を養わなければならない」と言っているとおりだ。
 ここで重要なのは、「かろうじて」という表現である。「最大の努力をしたなら、何をかろうじてなしとげられるか?」と自問しよう。現在の能力の限界を記録し、それを少し超えることをめざそう。それがあなたのスイートスポットだ。

 『才能を伸ばすシンプルな本』 第2章 より ダニエル・コイル:著 弓場隆:訳 サンマーク出版:刊

 80%程度の力でできるようなことばかりやっても、上達するはずはありません。

 自分の能力を最大限に発揮しなければならない。
 そんな状況を自分で探し出すことがポイントとなります。

 意識的に100%の力を出し切り、自分の能力の限界を101%に引き上げる。
 そんな練習を繰り返すことが、スキルを短期間で上達させるための秘訣です。

1週間に1時間より、1日に5分を選ぶ

 コイルさんは、「欠かさずに継続すること」ことの重要性を以下のように説明しています。

 短い練習を毎日することは、それが深い練習であるかぎり、長い練習を週に一回するよりも効果的だ。その理由は、脳の成長の仕方と関係がある。脳は私たちが寝ているときも含めて毎日少しずつ段階を追って成長するのだ。
 毎日の練習は、たとえそれが5分間の短い練習でも、脳の成長を促進する。しかし、ときたま練習する程度だと脳は遅れを取り戻すことに終始する。だから、毎日少しずつでもいいから練習することに意義がある。それについて、スズキ・メソードの創始者で音楽教育のパイオニアとして知られる故・鈴木鎮一氏は、「ごはんを毎日食べるようにおけいこも毎日しなさい」ということを言っている。
(中略)
 毎日練習することのもうひとつの利点は、それが習慣になることである。練習するという行為は、そのための時間をつくり、何かを上達させることだから、それ自体がスキルである。もっとも重要なスキルといってもいいだろう。複数の調査で、新しい習慣を確立するには約3週間かかることが判明している。

 『才能を伸ばすシンプルな本』 第2章 より ダニエル・コイル:著 弓場隆:訳 サンマーク出版:刊

 時間があるとき、思い出したときに気まぐれでやる。
 それでは、練習で進んだ脳の成長がその度に元に戻ってしまいます。

 スキルの習慣化に必要な期間は約3週間。

 それくらいの期間は、毎日のように継続する必要があります。
 また、継続できるような練習方法を考える必要があるということですね。

行き詰まったら、やり方を変える

 新しいスキルを身につけようとしたとき。
 しばらく順調に上達したけれど、突然上達が止まり、行き詰まってしまう。
 そのようなことがよくあります。

 この現象は、「プラトー(高原現象)」と呼ばれます。

 プラトーは、脳が何かを自動的にできるようになったときに起こる現象である。つまり、意識して考えなくてもスキルを実行できるようになると、伸び悩んで練習曲線が高原のように水平の状態になるのだ。
 脳は型どおりの行動が大好きである。なぜなら、それはほとんどの状況で好都合だからだ。何も考えずに歩いたり自転車に乗ったりすることができるので、脳を解放してより重要な課題に取り組む余裕ができるのだ。
 しかし、才能の開発に関するかぎり、型どおりの行動は大敵である。なぜなら、それはプラトーの原因になるからだ。
 フロリダ州立大学で心理学の教授を務めるアンダース・エリクソン博士によると、プラトーを克服する最善の方法は、脳に刺激を与えることだという。つまり、練習方法を変えて型どおりの行動をかき乱し、より速くてよりよい神経回路を再構築するのだ。ペースを落として、それまで気づかなかったミスに注目するというのでもいい。あるいは、課題を後ろからやるとか、上下逆さまにするというのも効果的だ。とにかく型どおりの行動を打ち破ってスイートを見つける方法が見つかりさえすれば、どんなテクニックを使ってもいい。

 『才能を伸ばすシンプルな本』 第3章 より ダニエル・コイル:著 弓場隆:訳 サンマーク出版:刊

 上達が止まったということは、今までの練習では物足りなくなったということ。
「与える刺激が弱すぎる」という脳からのサインです。

 マンネリ化せす、脳を飽きさせず、いろいろ工夫を凝らす。
 楽しみながら行うことが、スキルアップのポイントですね。

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「一流」と呼ばれる人たちは、普段のトレーニングでも、複雑で難しいことばかりをやる。
 そんなイメージがありますが、必ずしもそうではありません。

 基本的でシンプルなスキルをひたすら繰り返し、精度を高めて脳に刻み込む。
 彼ら、彼女らも、そんな地道な作業に多くの時間を費やしています。

 意識しなくても状況に合わせて体が動いてくれる。
 それ位まで脳の神経回路を成長させることができれば、理想的です。

 いくつになってもスキルは伸ばすことができる。
 自分のやりたいことを、楽しみながら、シンプルに継続したいですね。

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