【書評】『寿命は30年延びる』(白澤卓二)
お薦めの本の紹介です。
白澤卓二先生の『寿命は30年延びる』です。
白澤卓二(しらさわ・たくじ)先生は、寿命制御遺伝子の分子遺伝学やアルツハイマー病の分子生物などがご専門の医学博士です。
アンチエイジング研究の第一人者としても知られている方です。
「長寿遺伝子」を起動させるということ
若々しく年を重ねるための、二つのキーワード。
それは、「長寿遺伝子」と「生活習慣」です。
すべての生き物には、「長寿遺伝子」と呼ばれる、肉体の老化に影響する遺伝子の存在が確認されています。
遺伝子は、つねに同じ働きをするとは限りません。
遺伝子が機能することを「発現」と呼びます。
発現には、“スイッチ”があり、環境や状態により、オンになったり、オフになったりします。
このスイッチに深く関わっているのが、「生活習慣」です。
人間のDNAにある約2万6000の遺伝子は、そのすべてが常に働いているわけではありません。環境や状況に応じて、スイッチのオンとオフが切り替わる遺伝子があるのです。
本書で説明する長寿遺伝子は、まさにそのような遺伝子です。老化を遅らせる遺伝子は、誰でもDNAに持っていますが、常に活動しているわけではありません。また、長寿遺伝子がよく働いている人もいれば、せっかく長寿遺伝子を持っていながらも全く働いていない人もいます。
長寿遺伝子を眠らせておくのは、パソコンに便利で優れたアプリケーションがインストールされているのに、一度も起動したことがないのと同じです。「老化を遅らせるという素晴らしい機能を発揮するにはスイッチをオンにし、長寿遺伝子を起動しなくてはいけません。その重要なスイッチが、実は私たちの生活習慣に隠されているのです。
50代、60代になっていても若々しく、エネルギッシュに活動できる人は、長寿遺伝子をオンにする生活習慣を身につけているはずです。おそらくそれは、100歳を超えて元気に暮らしている健康長寿の人たちと共通の生活習慣です。『寿命は30年延びる』 まえがき より 白澤卓二:著 幻冬舎新書:刊
誰でも皆、そのような素晴らしい「長寿遺伝子」を持っています。
その働きを利用しない手は、ありませんね。
本書は、「長寿遺伝子」のスイッチが入るメカニズムを解説し、老化を遅らせる具体的な方法をまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「細胞の死」を抑制できれば病気を予防できる
白澤先生は、酵母菌の研究から発見された長寿遺伝子、「サーツー遺伝子」を紹介します。
サーツー遺伝子の働きは、以下のとおりです。
母細胞は、寿命を迎えるまでに娘細胞を約20回出芽しますが、1回出芽するごとに、母細胞の核には「リボソームDNA」という環状DNAが1個できます。輪っかのかたちをしたDNAです。
1回の出芽で環状DNAは1個できますから、出芽20回に達すると、母細胞の核には20個の環状DNAが溜まります。通常は、ここで寿命を迎えたことになり、もうそれ以上は出芽することがありません。
母細胞にとって、核に溜まる環状DNAの数は、寿命カウンターの役割を果たしています。「環状DNAが溜まること=老化」と考えることができるのです。
(中略)
サーツー遺伝子のスイッチがオンになった母細胞は、出芽しても、核内に環状DNAができにくくなります。これはサーツーの遺伝子情報からつくられた酵素(タンパク質)の働きによって、母細胞のゲノムDNAが非常にコンパクトになったからです。『寿命は30年延びる』 第二章 より 白澤卓二:著 幻冬舎新書:刊
「ゲノムDNAがコンパクトになる」
このフレーズは、とても重要です。
細胞核内にゲノムDNAがコンパクトに収まると、安定した状態になります。
すると、紫外線や活性酸素、放射能などによる傷を受けにくくなるとともに、出芽を繰り返しても環状DNAが溜まらなくなり、母細胞の寿命は延びる
とのこと。
「食べる順序」で血糖値をコントロールする
サーツー遺伝子を活性化させる。
そのために、気をつけるべきは、「食事の取り方」です。
食事を取る際に意識するのは、「血糖値」と「インスリン」の関係です。
血糖値が急上昇すると、インスリンが多く分泌されます。
白澤先生は、血糖値を抑えるためには糖を作る元となる炭水化物の摂取を少なめにすることが大事
だと述べています。
インスリンは炭水化物の代謝を調整し、脂肪細胞へ糖を取り込みやすくします。インスリンが多量に分泌されると、肥満や糖尿病の原因にもなります。30代以上の方は、血糖値の急上昇は体にダメージを与えることだと意識して食事をとるといいでしょう。それだけでなく、メタボ対策のうえでも血糖値は重要です。血糖値をできるだけ一定に保つだけで、脂肪のつき方は違ってくるからです。
(中略)
例えば、主食の炭水化物から先に食べることだけは控えると意識するだけでもいいでしょう。ご飯やパンをできるだけ遅いタイミングで食べはじめ、空腹が満たされたと感じたら、そこで食事を終えるようにします。目安は「腹七分ですから、残すのは持ったいないからと食べ続けるのは禁物です。そのひと口を残すことで、カロリー制限になり、長寿遺伝子のスイッチオンになるのだと考えてください。ご飯の大盛りやおかわりをやめて、注文するときに「ご飯は少なめに」と言う習慣をつけたいものです。『寿命は30年延びる』 第五章 より 白澤卓二:著 幻冬舎新書:刊
食べる量を少なくするのはもちろんですが、食べる順番を意識して変えるだけでも、効果はあります。
つねに意識しておきたいですね。
笑うことで脳内に分泌されるホルモン
よく笑う人はストレスが少なく、ストレスを溜め込まない。
それは、医学的に証明されています。
私たちが大笑いしているときには、βエンドルフィンというホルモンが分泌されています。ランニングの最中に脳内に快感物質が出る「ランナーズハイ」についてはよく聞かれますが、この「脳内麻薬」と呼ばれるものがβエンドルフィンです。このホルモンが分泌されるとリラックス状態となるので、長時間走り続けるという過酷な状況でも精神的には苦痛ではないのです。同じ効果が笑うことでも得られるということです。
βエンドルフィンは「つくり笑い」でも分泌されます。本当に楽しんでいるのではなくても、楽しもうとするだけでも体にいい影響が出るということです。『寿命は30年延びる』 第五章 より 白澤卓二:著 幻冬舎新書:刊
「つくり笑い」でも、アンチエイジング効果はある。
形から入るということも、大事ですね。
面白くなくても、笑顔を作っているうちに、本当に笑えるようになるということです。
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ここで挙げた以外の方法も、軽い運動を欠かさないとか、ゆっくり噛んで食べるとか、日々のちょっとした心掛けでできるようなことばかりです。
逆にいうと、そんなちょっとした心掛けをおろそかにしていると、長寿遺伝子のスイッチが入らずに、老化を道をまっしぐらに進むことになるということです。
私たちも生活習慣を少し見直し、「スーパー百寿者」の皆さんにあやかりたいですね。
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