【書評】『怒らない技術』(島津良智)
お薦めの本の紹介です。
嶋津良智さんの『怒らない技術』です。
嶋津良智(しまづ・よしのり)さんは、著述家、評論家です。
大学卒業後、ITベンチャー企業に入社され、その後独立、設立した会社をわずか3年で株式上場を果たすまでに育て上げました。
後進の起業家育成にも熱心で、自らの体験を活かしたリーダー論の著書も多数お書きになっています。
「心」を変えれば、人生は変わる!
嶋津さんは、これまで多くの起業家志望のビジネスパーソンと接してきました。
そのなかで、「素晴らしいものを持っているのに、いかしきれていないない」と感じることが多々あったそうです。
足りないのは、多くの場合、メンタルの部分です。
島津さんは、「出来事や物事の受け取り方を変える」ことで人生は変わる!
と断言します。
そう、「心」や「感情」をコントロールできれば、人生はコントロールできるのです。「心」を変えれば、過去も変わる!
さらに、重要なのが、「受け取り方」「考え方」を変えれば、過去だって変えられるということです。
「過去なんて変えられるわけないじゃないか」
と多くの人が思うはずです。
でも、少し考えてください。
もしも、あなたが失恋したとしても、
「あの人と別れなければ、人生が変わっていたのに」と思うか、
「分かれて良かった。もっと良い人に出会って、良い人生になりそう」と思えるかで、人生は全然違ったものになるはずです。正確に言えば、「受け取り方」「考え方」を変えれば、「悪い出来事」も「良い出来事」に変わるということです。「怒らない技術」 プロローグ より 嶋津良智:著 フォレスト出版:刊
事実は、事実。
何事も、受け取り方次第、ということです。
分かっていても、なかなか思うようには、いかないものですね。
つい、カーッとなって、頭に血が上ってしまうことが多々あります。
嶋津さんは、感情のコントロールは「技術」なので、習得すれば誰でも克服可能
だと述べています。
そのためには、「怒らないこと」から始めることを勧めています。
本書は、自らの体験を活かした嶋津流「怒らない技術」をまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
[ad#kiji-naka-1]
すぐ怒る人は早死にする
嶋津さんは、「怒り」は時間と労力の無駄である
と、きっぱりと言い切ります。
また、「怒り」は命を縮める
として、以下のように理由を述べています。
免疫学の権威、新潟大学院医学部教授であり、『免疫革命』(講談社インターナショナル)などの著書のある安保徹先生は、「すぐに怒る人には早死にが多い」と断言しています。
心と体は自律神経系でつながっています。自律神経は交感神経と副交感神経に分かれています。交感神経は「活動する神経」とも言われ、仕事やスポーツをするときに、心臓の拍動や血圧を高める働きをして、緊張状態をつくり、精神活動を活発にします。これに対し副交感神経は「休む神経」と言われ、内臓や器官の働きをリラックスさせ、休息や睡眠をとるときに優位に働きます。
(中略)
安保先生は、自律神経と連動して働く免疫システムの仕組みを医学的に明らかにし、免疫力をアップするには、副交感神経が優位に働くリラックスした状態をつくり出すことが大切と言います。
ところが「怒る」などして、強いストレスを受け続けると、胃潰瘍や高血圧、糖尿病、不眠、膠原病、ガンなどにつながります。「怒らない技術」 第1章 より 嶋津良智:著 フォレスト出版:刊
寿命を縮めたり、健康を損なったりする。
それこそ、人生最大のムダです。
「短気は損気」
この言葉を肝に銘じたいですね。
他人は変えられない
嶋津さんは、独立して会社を設立した頃、思うように業績を上げられずに、「部下を動かすには何が必要か?」ばかりを考えていました。
しかし、あるセミナーの講師に「人を動かそうと考えること自体チャンチャラおかしい」と言われて、金属バットで頭を「ガツン」と殴られたような衝撃を受けました。
それまでの私は、「どうやったら部下を意のままに動かせるだろうか?」ということばかり考えていたのですが、その考え方自体が間違っていたのです。
上司のやり方や考え方がどんなに正しくても、部下が納得して、自ら動こうとしなければ、意味がありません。
そんな状態で、部下を無理やり動かそうとしても、短期的にはうまくいくことがあっても、長続きはせず、望む結果は得られません。
「人を動かそうとすること自体チャンチャラおかしい」という言葉に金属バットで殴られたような衝撃を受けてから、マネジメントスタイルをガラリと変えました。自分が黒子になって、部下をバックアップしていくというスタイルへとシフトチェンジしたのです。
すると部下はイキイキと仕事をはじめ、業績も上がりました。「怒らない技術」 第3章 より 嶋津良智:著 フォレスト出版:刊
人は、上から強制されると、やる気が出ないものです。
上司は部下を上から押さえつけるのではなく、下から支えてあげるのが一番です。
人が思い通りに動かないことは、とても大きなストレスになります。
しかし、そもそも人は思い通りに動かないものだと思うことで、ストレスも大きく軽減されます。
自信があることにはわがままに生きる
「こうしたい」「こうやりたい」という思い。
「こうあるべきだ」「こうでなければいけない」という思い。
両者のギャップが大きくてイライラしていた、という嶋津さん。
しかし、ある時、ふとしたきっかけで気付きます。
「自分がこうしたい」「ああしたい」と思うのは、決して間違っていることではありません。そしてもちろん、社長としてこうあるべき、上司としてこうあるべきということも、間違っていません。
Aという出来事に対してどう対処するかは、考え方の違いです。そして両方とも間違いありません。もし自分の生き方や思いに自信があるなら、人間、もっとわがままに生きていい。そう思ったことがあります。
これはいい意味でのわがままです。正しい考えの上に立った思い込みは信念につながります。間違った生き方をしていないという自信があるなら、信念を貫く生き方ができます。
私の座右の銘は「人生一回」です。
人は生きているとたくさんの岐路に立ち、そこで意思決定をしなければなりません。
「たった一度しかない人生で、本当はどうしたいのだろうか?」
「何の障害もなかったら、自分はここでどのような意思決定をするだろうか?」
とその出来事に問いかけるようにしています。「怒らない技術」 第4章 より 嶋津良智:著 フォレスト出版:刊
何が本当に正しいかなんて、誰も知らないし、やってみないとわからないものです。
どちらも間違っていないなら、やりたいことを優先すべきです。
言いたいことを言わない、やりたいことをやらない。
それは、一番のストレスのもとになりますから、溜めこまないことです。
嶋津さんは、自分の思いを素直に表現し、自分の思いを大切にして生きるようになってから、すごく楽になったし、まわりの賛同が得られるようになり、人生が好転していった
と述べています。
むかつく相手との出会いに感謝!
社会で生活していくと、どうしてもイヤな人、嫌いな人に出会います。
島津さんは、そのような時でも、「怒り」の感情を表に出さず出会えたことに感謝すべき
だと述べています。
出会いとは奇跡です。みなさんは約63億人いると言われる全世界の人と1人1秒ずつ会ったとして、全員と会うまでに何年かかるか知っていますか?じつは約200年もかかります。日本人だけに限っても約4年かかります。1人1秒のコミュニケーションなどはありえないわけですから、毎日いろいろな人との何気ない出会いすべてが、じつは奇跡に近いものなのです。
だから、どんなにひどい人でも、その人と出会えたこと自体が奇跡だと思って、出会いに感謝します。
どんなにイヤな人でも同じです。出会いに感謝し、「自分はこんなイヤな人にならないようにしよう」と反面教師にします。
人と話をしていて怒りを覚えたとき、その怒りをそのまま表現したり、ぶつけたり、増幅させたりしないで、その人と出会えたことに感謝して、「反面教師になってくれありがとう」と思っています。「怒らない技術」 第6章 より 嶋津良智:著 フォレスト出版:刊
どんな小さな出会いでも、地球の歴史の長さや地理的な広さを考えると、奇跡といえます。
どんなにイヤな人でも、「反面教師」として丁重に接するように、心がけたいですね。
[ad#kiji-shita-1]
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
無用な「怒り」を抑える。
それは、相手のためよりも、まず、自分自身のためです。
自分を守るためのスキルとして、本書の内容はとても役に立ちます。
精神面でも人生の無駄をなくして、心穏やかな日々を過ごしていきたいですね。
(↓気に入ってもらえたら、下のボタンを押して頂けると嬉しいです)
【書評】「超える力」(室伏広治) 【書評】『たった2分で凹みから立ち直る本』(千田琢哉)