【書評】『夢をかなえるゾウ』(水野敬也)
お薦めの本の紹介です。
水野敬也さんの『夢をかなえるゾウ』です。
水野敬也(みずの・けいや)さんは、小説家、作家です。
「自分を変えたい」と願う主人公のもとに来たのは?
主人公は、「自分を変えたい・・・」と強く願いつつも変えられずにいる、普通の会社員です。
彼の元に、自らを「神様」と称する、象の化け物が現れるところから、物語は始まります。
この自称「神様」、なぜか関西弁。
しかも、タバコをスパスパ、加えて「あんみつ」が大好物です。
その神様の名前は、ガネーシャ。
インドの神様です。
ガネーシャは、「過去に地球上に現れた偉人たちの成功のお手伝いをしてきた」とのこと。
主人公に、「人生を変えたかったら、この契約書にサインしろ」と迫ります。
その契約内容は、あなたの夢を叶えさせてあげる。その代わり、今からワシの言うことをたった一度でも聞かんかったら、もう一生、何かを夢見ることなく、今までどおりのしょうもない人生をだらだら過ごして、後悔したまま死んでいく
というものです。
主人公は、突然の出来事に、戸惑います。
しかし、自分の今の状況を何とかしたいという強い気持ちに突き動かされて、この契約書にサインをします。
ここから、ガネーシャと主人公の、奇妙な共同生活が始まりました。
ガネーシャは、一日一題、主人公に「課題」を出していきます。
その「課題」を確実にクリアしていくことが、主人公の命題です。
[ad#kiji-naka-1]
ガネーシャが出した“課題”とは?
ガネーシャの出した「課題」。
例えば、以下のようなものです。
「ええか?人の欲を満たすにはな、人に『何が欲しいんですか?』って聞いて回ればええってことやないんやで。もしかしたら人はこういうかもしれへんやろ。『何が欲しいかわからない』。でもな、それでも人には何かしらの欲があるんや」
(中略)
「よし、次の課題はこれや。『人が欲しがっているものを先取りする』ええか? とにかく誰かに会ったら『この人が欲しがっているものは何か?』ちゅうことを考えながら接してみい。そして欲しがっていること、求めていることをできるだけ与えるようにこころがけるんや。分かったか?」「夢をかなえるゾウ 文庫版」 P65~66より 水野敬也:著 飛鳥新社:刊
「よし、今日の課題はこれや。『自分が一番得意なことを人に聞く』」
「それは、自分の得意分野を知るためですね」
「そうや。ポイントは『人に聞く』っちゅうことやで。自分ではこれが得意分野や思てても、人から言わしたら全然違てることてあるからな」
「確かに、他人のことはよく分かっても、自分のことになった途端、分からなくなる人は多いような気がします。」
「そやろ。でも、さっきの話でもそうやけど、自分の仕事が価値を生んでるかを決めるのはお客さん。つまり自分以外の誰かなんやで」「夢をかなえるゾウ 文庫版」 P142より 水野敬也:著 飛鳥新社:刊
過去の偉人たちを例に挙げながら、ストーリーは、面白おかしく進んでいきます。
そして、日々課題をこなしていくうちに、主人公の中の意識が着実に変わっていきます。
主人公の心の中に「自分は本当に変われるのでは・・・」という期待が膨らんできます。
しかし、それを覚ったガネーシャは迷いつつも「期待しているかぎり、現実を変える力はもてない」と“最後の課題”を出します。
そして、主人公が、自分に依存せずに夢を叶えられるように、主人公の元を去る決心をします。
“最後の課題”とは何でしょう。
それは、読んだときのお楽しみです。
[ad#kiji-shita-1]
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
“最後の課題”に入る前に、ガネーシャから読者へのメッセージが入ります。
このメッセージには、著者がこの本を通じて一番込めたかった願いが書かれています。
一部抜粋します。
ガネーシャは、こう言いました。
「自分の教えなど過去の成功書に書いてある」
人間の長い歴史において、どうすれば人が成功するか、そのことはもう解明されているのです。
それでも世の中にはいまだ成功法則書が溢れ、それを読んだ人に「成功するのではないか」という期待を与え続けています。
しかし、そうした人たちのほとんどが成功していくことはありません。
なぜでしょう。
それは、
何もしないからです。
実行に移さないからです。
経験に向かわないからです。
もし、あなたが何かを実行に移すのなら、昨日までとは違う何かを今日行うのなら、仮にその方法が間違っていたとしても、それは偉大な一歩です。
「人生を変える」
「夢を持って情熱的に生きる」
そんな生き方に対して冷ややかな視線を送る人が多い時代だとガネーシャは考えています。
でも、みんなと一緒にいる時は冷めているように装っていても、一人になった時は、夢を持って生きたい、夢を 現実にしたい、輝いて生きたい、そう考えている人が多いこともガネーシャは知っています。
だからガネーシャは悩んでいるのです。
ガネーシャの教えにはあなたを変えるだけの力がない。
なぜならあなたが変わるにはあなたの決断とあなたの行動力が必要だからです。
本当に必要なのはガネーシャの教えではなく、あなた自身の行動力であることをガネーシャは知っています。だからガネーシャはこう考えます。
今から出す課題を必ず実行して欲しい。
あなたの人生を本当に充実したものにするために、ガネーシャは願っています。「夢をかなえるゾウ 文庫版」 P288~290より 水野敬也:著 飛鳥新社:刊
ガネーシャから出された“最後の課題”は、全部で5つです。
どれも、成功するため、幸せになるために、クリアすべき課題ばかりです。
さて、この本を読んだ200万人近い読者。
その中のどれだけの人が、今もこの課題に取り組んでいるでしょうか。
恐らく、1%にも満たないでしょう。
それだけ、一時の情熱や希望というものは、冷めやすいということです。
「こうすれば成功できる、幸せになれる」という本は、世の中にあふれています。
そして、それらの本も同じことを言葉や方法を変えて、書き直しているに過ぎません。
頭で理解しただけでは、ダメです。
「実行しなければ何にもならない」
まさに、その通りです。
この本を読んで、「今日からこそは頑張ろう」と思うだけでは不十分です。
「課題」を勇気を持って確実に実行する。
それ以外に、自分を変えることはできません。
まして、世の中で成功するなど、夢物語です。
本書を通じて、ガネーシャの願いが多くの日本人に届くことを願います。
【書評】『坂の上の坂』(藤原和博) 【書評】『30代で出会わなければならない50人』(中谷彰宏)