【書評】『まじめの罠』(勝間和代)
お薦めの本の紹介です。
勝間和代さんの『まじめの罠』です。
勝間和代(かつま・かずよ)さんは、経済コンサルタントです。
海外の大手金融会社で働かれた後、日本でITを武器に多方面で活躍されています。
ほとんどの日本人がかかっている「まじめの罠」とは?
本書は、勝間さんがマッキンゼーで働いていた当時の「まじめな自分」との戦いという苦い経験から生まれました。
上司やクライアントに言われたことは素直に受け取り、やれと言われた以上のことをやって評価された勝間さん。
しかし、中間管理職昇進を機に、壁にぶち当たります。
中間管理職になった私は、クライアントや上司の言うことをそれまで以上に真に受け、結果を残すために自分にも部下にも長時間労働を強いるようになりました。ところが、以前にも増して仕事にまじめに取り組むようになったにもかかわらず、ちっとも成果がでないのです。
(中略)
そのとき、「仕事も家庭も120%のまじめさで取り組むと、必ず破綻する」ということがようやく実感としてわかってきたのです。
私はこの現象を「まじめの罠」と心の中で名づけました。
「まじめの罠」 はじめに より 勝間和代:著 光文社:刊
勝間さんは、「まじめの罠」とはどのようなものか、以下のように説明しています。
まず初めに「まじめの罠」とは何かを定義します。「まじめの罠」というのは私の造語ですが、これは、何かに対して、まじめに、まじめに努力した結果、自分を、あるいは社会を悪い方向に導いてしまうリスクのことを指します。
「まじめの罠」 第1章 より 勝間和代:著 光文社:刊
ほとんどの日本人がこの「まじめの罠」に掛かっているといってもいいです。
まじめなこと自体、悪いことではありません。
自分でも気がつかないうちにハマっているのが、この“罠”の怖いところです。
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「まじめの罠」にハマりやすい人
「まじめの罠」にハマりやすい人とは、どんな人でしょうか。
そのためには、「まじめの罠」にハマりやすい「まじめな人」とはどういう人なのかを考える必要があります。答えは簡単です。それは、「与えられた課題設定に疑いを持たない人」です。別の言い方をすれば、「与えられたものに対して逆らわない人」です。
「まじめの罠」 第1章 より 勝間和代:著 光文社:刊
まさに日本人の典型的な優等生と言えます。
私たちの周りにも、このような人は多いですね。
日本人が「まじめの罠」にハマるわけ
まじめに、こり固まった人だらけの日本。
現状に対する、勝間さんの厳しい追及は続きます。
まじめの罠にハマっている人たちは、本当は意味がないかもしれないルーティンワークをつまらないとも思わず、コツコツと長時間それに耐えることが美徳であると考えています。こういう人たちは、小さい頃から何に対しても我慢し続けてきて、小・中学校などでもいい成績を取り、いい学校にも入れて、名のある企業に就職することができて、結婚して、子供がいて、郊外に一軒家を30年ローンで買って、1時間、あるいは2時間かけてせっせと会社に通勤して・・・・・といったような人生を歩んでいます。
さて、こういった人生は、本当に幸せなのでしょうか?
「まじめの罠」 第1章 より 勝間和代:著 光文社:刊
日本人は、上からの意見(親や先生、上司など)の意見には、逆らってはいけないという教育を受けています。
そのため、彼らの意見を、そのまま受け入れる人がほとんどです。
違和感を自分の中に感じても、それを押し殺す。
「周りもそうだから・・・」
と、無理矢理、自分を納得させる。
そんなケースが多く、ストレスを溜め込んでいます。
まじめな人は、異質な人を排除する
まじめな人は、自分たちと異質な人を、排除しようとします。
繰り返しますが、まじめな人は異質なものを排除します。多様性があること自体が許せないのです。自分の行なってきたものとは違う手法で物事に取り組む人を見たりすると、何を信じたらいいのかわからなくなって自分のまじめさを維持できないのです。これは、許せないというよりも、防衛本能、闘争本能に近いと思います。
だから、まじめな人たちにとっては堀江貴文さんのような人は「悪い人」でないと自分たちの神話が成立しないわけです。「まじめの罠」 第2章 より 勝間和代:著 光文社:刊
堀江貴文さんのような人が叩かれる理由が、ようやく分かりました。
「まじめの罠」から抜け出すメリット
勝間さんは、「まじめの罠」から抜け出すメリットについて、以下のように述べています。
「まじめ教」から抜け出したときに得られるご利益は、
①労働時間が短くなる
②お金が儲かるようになる
③人を非難しなくなる
④人生に満足できるようになる
などをはじめ、たくさんあります。
まじめな人というのは、常に何かに追い立てられ、いつも他人の評判や顔色ばかりを気にして生きています。しかし、「まじめの罠」から抜け出すことができれば、たとえ人にどんな顔をされても、何とも思わなくなるでしょう。人の評判を気にしたり、人と比べてしまったりすること自体が不幸の源泉だと気づくのですから。「まじめの罠」 第4章 より 勝間和代:著 光文社:刊
人の評判を気にしたりしているうちは、幸せなど感じることは、できませんね。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
勝間さんは、最後に、以下のようにおっしゃっています。
自己責任や物事の判断から逃れようとしていないかどうか、まずは自分の行動を見直してみましょう。自分に少しでもそうした性質があると気づいている人は、「まじめの罠」から逃れられています。それを自覚しているからセーフなのです。
一方、「自分は違う」と思った人は、おそらく「まじめの罠」にハマっている人です。でも、もし自分が「まじめ教」に囚われていることに気づいたら、少しずつでいいので、その罠から逃れるように動いていけばいいのです。
(中略)
まじめの罠から上手に抜け出し、ぜひ、効率が良くて競争力も高い「ふまじめ」を目指してください。まじめの罠から抜け出すことこそが、現在の日本社会の閉塞感を払拭する処方箋になると私は考えています。「まじめの罠」 おわりに より 勝間和代:著 光文社:刊
いい意味での、「ふまじめさ」。
まさに、今の日本人に、最も必要なスキルかもしれません。
この書評を読んで、ちょっと不機嫌になった、そこのあなた。
たぶん、「まじめの罠」に掛かってしまっていますよ。
なかなか自分では気がつかないものです。
本書を読んで、自分を見つめなおしてはいかがでしょうか。
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