本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

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【書評】『僕は君たちに武器を配りたい』(瀧本哲史)

 お薦めの本の紹介です。
 瀧本哲史先生の『僕は君たちに武器を配りたい』という本です。

 瀧本哲史(たきもと・てつふみ)さんは、経営コンサルタント、投資家です。
 海外で多くの企業の新規事業立ち上げに関わられ、現在は、京大で産官学連携活動などをされています。

格差社会を独力で切り開くための“武器“とは?

 若者にとって、非情で冷酷な、今の日本の格差社会。
 瀧本さんは、その状況を独力で切り開き、“ゲリラ戦”で乗り切るための“武器”を持つべきだと述べています。

 瀧本さんのいう、“武器”とは、何でしょうか。

 世の中は目まぐるしく変化、どころか激変を続けている。かつてもてはやされたビジネスモデルも知識もすぐに陳腐化し、個々人が努力すべき方向も不明瞭な時代となっている。しかし少なくともほぼ確実に言えるのは、我々が生きる21世紀の日本は、ますますグローバル化する資本主義の潮流に呑み込まれていくだろうということだ。その波に呑まれず、生き延びるためには、この「資本主義2・0」ともいうべき世の中の「ルール」を熟知しなければならない。本書で私が述べることの中心は、この十数年で日本に本格的に到来した資本主義の新しい流れと、その世界をサバイバルするために絶対に必要な「投資家的に生きる知恵」だ。

  「僕は君たちに武器を配りたい」  はじめに より  瀧本哲史:著  講談社:刊

 瀧本さんは、「投資家的に生きる知恵」を得るために必要なのは新しい資本主義のルールを熟知することが必要だと述べています。

「良い大学に入り、良い会社に入れば、人生は安泰」

 そんな戦後から今日まで続いた、学歴信仰。
 バブル崩壊後の「失われた20年」により、崩れ去りつつあります。

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すべての産業で進む「コモディティ化」

 弁護士や公認会計士など、高度なスキルを持つ職業。
 瀧本さんは、それだけでは収入の増加には結びつかないと指摘します。

 その理由は、すべての産業で“コモディティ化”が進んでいるからです。

 コモディティ(commodity)とは英語で石鹸や歯ブラシなどの「日用品」を指すときによく使われる言葉だが、経済学や投資の世界ではちょっと違う意味で使われる。
(中略)
 経済学の定義によれば、コモディティとは「スペックが明確に定義できるもの」のことを指す。材質、重さ、大きさ、数量など、数値や言葉ではっきりと定義できるものは、すべてコモディティだ。
 つまり「個性のないものはすべてコモディティ」なのである。どんなに優れた商品でも、スペックが明確に定義できて、同じ商品を売る複数の供給者がいれば、それはコモディティになる。

  「僕は君たちに武器を配りたい」  第1章 より  瀧本哲史:著  講談社:刊

 今、日本で売られている商品やサービス。
 そのほとんどは、「コモディティ」に相当します。

 需要家からみると、コモディティ化した製品は、すべて「同じ」と判断されます。
 スペックを満足しているのなら、少しでも安いほうから買いたいですよね。

 コモディティには、どれだけ高品質か、優秀かという要素は、ほとんど入ってきません。

「コモディティ化」しないためには、どうすればいいか?

 では、私たちが「コモディティ化」しないためには、どうしたらいいでしょうか。

 それでは、どうすればそのようなコモディティ化の潮流から、逃れることができるのだろうか。それには縷々と述べてきたように、人より勉強するとか、スキルや資格を身につけるといった努力は意味をなさない。
 答えは、「スペシャリティ(speciality)」になることだ。
 スペシャリティとは、専門性、特殊性、特色などを意味する英単語だが、要するに「ほかの人には支えられない、唯一の人物(とその仕事)」「ほかの物では代替することができない、唯一の物」のことである。概念としてコモディティの正反対といえる。

  「僕は君たちに武器を配りたい」  第3章 より  瀧本哲史:著  講談社:刊

「他の人で代替できない人間になりなさい」ということです。
 
「投資家的に生きる知恵」の要点の一つ。
 それは、自分自身を“魅力のある他にない個性をもった商品”に磨きあげることです。
 つまり、自分自身に投資をし、商品価値を上げること。

 瀧本さんは、そのためには、まず、色々な経験を積むことが重要だと述べています。

 社会に出てから本当に意味を持つのは、インターネットにも紙の本にも書いていない、自らが動いて夢中になりながら手に入れた知識だけだ。自分でやったことだけが、本物の自分の武器になるのである。資本主義社会を生きていくための武器とは、勉強して手に入れられるものではなく、現実の世界での難しい課題を解決したり、ライバルといった「敵」を倒していくことで、初めて手に入るものなのだ。

  「僕は君たちに武器を配りたい」  第9章 より  瀧本哲史:著  講談社:刊

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 最後に、瀧本さんは、日本の若者へ、以下のようなエールが送られています。

 人生は短い。愚痴をこぼして社長や上司の悪口を言うヒマがあるのなら、ほかにもっと生産性の高いことがあるはずだ。もし、それがないのであれば、そういう自分の人生を見直すために自分の時間を使いべきだ。
 若い人が何か新しいことにチャレンジしようとするときに、「それは社会では通用しないよ」としたり顔で説教する「大人」は少なくない。
 しかし、その言葉は、既得権益を壊されたくない「大人」が自分の立場を守るために発しているかもしれないのだ。自分の信じる道が「正しい」と確信できるのであれば、「出る杭」になることを厭うべきではない。本書で述べてきたように、人生ではリスクをとらないことこそが、大きなリスクとなるのである。

  「僕は君たちに武器を配りたい」  第9章 より  瀧本哲史:著  講談社:刊

 リスクをしっかり取れる人が、今の世の中、一番強いのです。
 小さな失敗を繰り返し経験しなければ、大きな成功は得られません。

 大胆にリスクを取る、勇気。
 ダメージを最小限に抑える、用意周到さ。

 その両方の資質を兼ね備えることこそ、今の時代に求められる能力です。
 
 これからは“他と違う”ことが強みになる時代です。
 年も、性別も、関係ありません。

 私たちも、もう一度、自分の個性や本当にしたいことを、考え直してみるべきでしょう。

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