【書評】『前に進むチカラ』(北島康介)
お薦めの本の紹介です。
北島康介さんの「前に進むチカラ」です。
北島康介(きたじま・こうすけ)さんは、平泳ぎがご専門のスイマーです。
アテネ・北京の両オリンピックで競泳の平泳ぎ100m&200mの2冠を達成しました。
ロンドンオリンピックで、再び金メダルを獲得するべく、厳しいトレーニングを積まれています。
頂点を目指すチャレンジをやめない理由
すでに十分な名誉も、結果も残している北島さんが、なぜ、再び頂点を目指すチャレンジをするのでしょうか。
水泳は、水の中で前に真っすぐ進む競技だ。後ろに進むことも曲がることもなく、ただひたすら前へと進む。
水泳を始めた幼稚園の頃から、どうすれば速く泳げるのか、どんなふうに身体を使えば効率よく前に進めるのか、そのことばかり考えてきた。
両親ともスポーツは苦手だ。子供の頃、特別な選手ではなかった。体が大きいわけではないし、ずば抜けた運動神経があったわけでもない。けがもあったしスランプもあった。勝つこともあったし、負けることもあった。
水泳を続けるかどうか、悩んだことも一度や二度ではない。特に北京オリンピック以降の一年間は、悩み、苦しみ、自分を取り巻く環境から逃げ出したくなるようなこともあった。水泳選手としての年齢的なピークはとっくに過ぎている。長いブランクもあった。それでも僕は、泳ぎ続けることを選択した。もう一度、高みを目指して、試行錯誤しながら前に進んできた。
(中略)
自分の力を信じて、もがき、あがいてきたからこそ、今の僕がある。
この本を書くことを決意したのは、そんな僕の姿勢を伝えることで、現実を前に立ち止まってしまっている人たちに、「前に進む力」を与えることができればいいと思ったからだ。「前に進むチカラ」 はじめに より 北島康介:著 文藝春秋社:刊
北島さんが、再び泳ぐことを決心した理由。
それは、金メダルという結果ではありません。
未知のこと、他の人が成し遂げたことがないことにチャレンジしたい。
自分自身を成長させたい。
そんな「飽くなき向上心」です。
「まだまだ、自分は伸びるし、やれる!」
つねに前を向いて進もうとするスピリット。
それを小さい頃から持ち続けたからこそ、今の北島さんがあります。
失敗することを恐れず、常に全力で前へ。
それが北島さんの生き方です。
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プールに戻ってきた理由
北島さんは、北京オリンピックが終わった後、自分の進路を迷っていました。
引退すべきか。
競技を続けるべきか。
長い期間、泳がない時期もありました。
しかし、北島さんは、プールに戻ってきました。
決断の決め手は、「自分は泳ぐことが好き」という気持ちに改めて気付いたことです。
お金が欲しいか? 今のまま暮せていければ十分。
じゃあ、何が欲しいのか?
僕は泳ぎたい。楽しく泳ぎ続けたい。僕は泳ぐことが好きなのだ。
それは、復帰を決意した瞬間だった。まるで「青い鳥」の話のようだが、答えは自分の一番近くにあったのだ。「前に進むチカラ」 1章 より 北島康介:著 文藝春秋社:刊
好きなことか、そうではないか。
何をやるにも、それを一番に考えるべきです。
北島選手といえども、例外ではないということです。
ハートの強さは、どこから生まれる?
北島選手は、大舞台になればなるほど、力を発揮する強心臓の持ち主です。
北島さんのハートの強さは、どんな心構えによって、支えられているのでしょうか。
「心技体」の中で、僕が最も重視しているのは「心」だ。自分がいい泳ぎをできるかどうか、その5割以上をメンタルの部分が占めているといっても過言ではないだろう。僕が「本番に強い」と言われるのは、重要な大会であればあるほど、気持ちが充実して強い泳ぎができるからだ。
自分でも不思議なのだが、僕は試合が近づき、徐々に“本気モード”になっていくと、目に見えて体つきが変わってくる。同じような練習をしているのに、気持ちが入っただけで筋肉にも緊張感が生まれ、引き締まった状態になっていくのだ。「前に進むチカラ」 3章 より 北島康介:著 文藝春秋社:刊
もちろんオリンピックでなくとも、勝負をしなければならない時、そこにプレッシャーは付き物だ、それに打ち勝つには、自分の思いをより強くしていくしかない。
ネガティブな思考に陥りそうになったら、自分の出発点に帰り、「絶対に勝つ」、「勝ちたい」という気持ちを確認すればいい。そしてその思いで頭を一杯にして、不安が入り込めないようにする。
時には、それを言葉にするのもいい。生意気だとか、ビッグマウスだとか言われながらも、僕は「勝つ」と言い続けた。言葉は生き物で、自分の状態に影響を与える。「自分は勝つ」と言い続ければ思考も勝つ方向に進んでいく。
人間は気持ちに制御されている部分が大きい。気持ちが萎縮すれば、体も委縮するし、逆に気持ちがのびのびとしていれば、体ものびのびと動くようになるのだ。「前に進むチカラ」 5章 より 北島康介:著 文藝春秋社:刊
一流のアスリートには、通じる部分が多いです。
まずは、「自分は絶対に勝つ!」という信念を、どれだけ強く持てるかです。
自分の発する言葉の大切さ。
気を付けたいですね。
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最後に、北島さんは、被災地・気仙沼へ訪問した時の感想をお書きになっています。
実際に訪れたスイミングアカデミー気仙沼は、僕の想像を超える状態だった。建物は、窓も壁も壊され、天井が落ち、プールには様々な瓦礫(がれき)が溜まっていた。僕は、案内してくれたスクール生たちにかける言葉が見つからなかった。気持ちが落ち込みそうになる僕に彼らの方が明るく言ってくれた。
「プールに水を張れるのはまだまだ先かもしれないけど、もう一度泳げるようになるまで頑張ります」こんな状況でも前に向かって進んでいる彼らを見て、「オレもやるしかないじゃん、頑張るしかないじゃん」と思った。ロンドンオリンピックが終わったら、もう一度気仙沼を訪ねよう。できれば光り輝くメダルを持って、松岩小学校やスイミングアカデミー気仙沼のみんなにそれを見せたい。
「前に進むチカラ」 あとがき より 北島康介:著 文藝春秋社:刊
いいことも悪いことも、自分の身に起こるすべて。
それらを「前に進むチカラ」に変えて泳ぎ続ける北島さん。
北島さんの挑戦する姿を見て、多くの人々が再び歩き出す勇気を持てたら。
北島さんの、これからのご活躍を願っています。
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