本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『やってはいけないストレッチ』(坂詰真二)

 お薦めの本の紹介です。
 坂詰真二先生の『やってはいけないストレッチ』です。

 坂詰真二(さかづめ・しんじ)先生は、NACA公認ストレングス&コンディショニング・スペシャリストです。

「ストレッチ」は誰にでもできるトレーニング

 ストレッチは、手軽にそして気楽に始められる健康法です。
 ストレッチの最大の効果は柔軟性を高めること。
 しかし、間違ったやり方では、いくらやっても体は柔らかくなりません。
 それどころか、やり方によっては筋肉や関節を痛めて、かえって柔軟性を低下させます。
 本来ストレッチは、筋トレや有酸素運動と比較して、最も早く効果が表れる、即効性のあるトレーニングです。

 本書は、筋肉の構造や性質、ストレッチの理論を解説し、最小努力で最大効果を得られるストレッチの実践方法を具体的にまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「いつやるか?」のベストタイムは「体温」で決まる

 ストレッチには、「向いている時間帯」と「向いていない時間帯」があります。
 例えば、寝起きは最も体温が低いため、最もストレッチに不向きな時間です。

 筋肉は筋繊維という細長い細胞の束でできていますが、この繊維の間にはコラーゲンが混ざっています。筋肉を包む膜(筋膜)もコラーゲンでできています。柔軟性の良し悪しは、筋繊維そのものの変化よりもこのコラーゲンの状態が大きく影響します。
 金属に熱を加えると伸びやすくなるように、筋肉の温度が高くなるとこのコラーゲンもその熱を受けて温まり、ゲル化といって柔らかい状態に変化します。すると弱い力でもスッと伸びやすくなるのです。

 そしてもう一つ。筋肉は体を動かす動力ですが、それ以上に熱発生装置としての大きな役割があります。私たちは恒温動物で、36.5度前後の体温を維持していないと体の機能がうまく働かず、上がり過ぎても下がり過ぎても生命は維持できません。
 この体温の源である熱をつくっているのは、おもに肝臓、脳、心臓、そして筋肉です。特に筋肉は外気温の変化に敏感に反応して、発生する熱量を調整します。

 外気温が高い時には筋肉は脱力して熱の発生量を抑え、逆に外気温が低く、体温が下がりそうになると筋肉が緊張をはじめ、熱の発生量を増やします。
 その極端なものが、筋肉が強く収縮することで体がガタガタ震える「シバリング」(寒冷震え)です。シバリングまでいかなくてお、体温が下がっている時には筋肉は緊張してしまうために伸びにくいのです。

 朝はそもそも代謝が低下している最も体温が低い時間帯。
 さらに体温と同じ温度の空気に包まれた布団から出ると、体は寒さを感じて体温を上げようと筋肉を緊張させます。やはり、筋肉は伸びにくい時間帯なのです。

 『やってはいけないストレッチ』 第1章 より 坂詰真二:著 青春出版社:刊

 坂詰先生は、ストレッチを効率よくやり、筋肉を傷めるリスクを回避するなら、ストレッチは朝イチではなく、体温の高い日中に行なうべきだと強調します。
 筋肉が緊張してしまっているときに、無理をして伸ばそうとすると、逆に筋肉を痛めてしまうことにもなりかねません。
 体にいいとはいえ、やり過ぎと時間帯には十分注意したいですね。

「体が硬いけど、まあいいか」がいちばん危険!

 柔軟性がないことに危機感を覚える人は少ないです。
 しかし、坂詰先生は、体が硬いことで生じる不都合がじつはたくさんあると指摘しています。
 疲れやすい、腰痛や肩こりがつらい、姿勢が悪い、つまずきやすい、などはすべて柔軟性の不足からくる影響です。

 そもそも「体が硬い」とはどういう状態なのでしょうか。
 体が硬いとは、すなわち腕や脚の関節を大きく動かせないということ。柔軟性とは、関節というジョイントを軸にして、骨がどこまで動くか、を意味します。
 骨を大きく動かすためには、筋肉の柔らかさが最も深く関係します。
 サーカスの曲芸の達人でも、普通の人でも、骨や関節構造自体は変わりません。何が違うのかといえば、筋肉自体の伸び具合です。
 筋肉が柔らかければ、骨を大きく動かすことができます。

 ただし、筋肉を形成する筋繊維自体は、運動不足や加齢によってそれほど硬くなるものではありません。
 筋肉の間にはコラーゲンがあり、和牛のサシのような状態で筋繊維の間に入っています。筋肉を覆っている筋膜もコラーゲンでできています。
 筋肉の柔らかさが失われるとは、それらのコラーゲンが硬くなることを意味します。コラーゲンは、動かさなければ徐々に硬くなってしまうのです。
 体が硬くなる原因には五十肩や椎間板ヘルニアなどの疾患や、生まれもった関節の構造自体なども関係はしますが、筋肉のコラーゲンが硬くなることがいちばん大きい要因なのです。

 仕事、家事、余暇などで活発な生活を送っていれば、あるいは週に1〜2回でもスポーツをしたりフィットネスクラブに通ったりして体を動かしていれば、筋肉は柔らかいままキープできますが、体を動かさない生活が続くとだんだん硬くなっていきます。

 『やってはいけないストレッチ』 第2章 より 坂詰真二:著 青春出版社:刊

 生まれたときから体の硬い人はいませんね。
 体の柔軟性の低下は、日々の生活習慣による部分が大きいです。
「体が硬いけど、ままいいや」
 とそのまま放っておくと、あとあと体の不具合として影響が出てきます。
 そうならないためにも、ストレッチを日々の習慣にしてしまいたいですね。

確実に効果が出る「ストレッチの7大原則」

 坂詰先生は、ストレッチで最小努力で最大効果を出すために、以下の「7つの原則」を覚えておくことを勧めています。
 
  原則1【回数とタイミング】体が冷えている時以外は、いつでも、何度でも
  原則2【フォーム】関節に負担をかけない範囲で筋肉を最大限に伸ばす
  原則3【脱力】できるだけ重力を利用する
  原則4【リラックス】リラックスできる環境で行う
  原則5【呼吸】「吐きながらポーズをつくったらゆっくり一呼吸」を繰り返す
  原則6【動的ストレッチ】静的ストレッチと動的ストレッチを組み合わせる

 原則5の【呼吸】について。
 呼吸をゆったり行なうと体を支配する自律神経のうち、副交感神経が働きます。
 より心身をリラックスさせた状態で行いたいストレッチでは、ゆったりと呼吸をしながら行なうことが肝心です。

 ただし、息を吐くといっても一気に力を込めて吐くと交感神経が興奮してしまいます。細く長い息を吐いてあげましょう。

 そして、筋肉を伸ばした最終的なポーズをつくったら、ゆっくりと吸って、ゆっくりと吐きます。持久力や肺活量によって若干の差がありますが、一呼吸をゆっくり行なうと8秒〜10秒程度。このため、本書ではストレッチを8〜10秒程度キープして、これを繰り返します。
 この時の目安としては3〜4秒で吸って、5〜6秒で吐きます。
 もちろん個人差があるので、それより短くても長くても構いません。慣れてくると少しずつ一呼吸は長くなっていきます。呼吸は鼻でも、口でもやりやすいほうで行いましょう。

 ポーズをキープするためには、伸ばしている筋肉以外の部分が力を出していますから、それを休ませるために一呼吸おきます。そして、これを2〜5セット繰り返します。

 ただし、あまり呼吸にこだわり過ぎても逆効果。考えすぎると緊張してしまいますし、その間に息が止まりやすいからです。息が止まると体はリラックスできませんし、血圧が上がってしまい、体にとってマイナスです。
 最も大事なことは、ストレッチをやっている間に決して息を止めないことです。

 『やってはいけないストレッチ』 第3章 より 坂詰真二:著 青春出版社:刊

 ストレッチの効果を最大限に発揮するには、心も体もリラックスした状態にすることです。
 そのためには、【呼吸】の仕方も大事なポイントとなります。
 ストレッチをする際には、つねに意識したいですね。

最も効率的な「柔軟性向上ストレッチ」

 坂詰先生は、全身の筋肉をまんべんなくほぐし、柔軟性をバランスよく高める静的ストレッチ「ルーティーン・ストレッチ12種目」を紹介しています。
 各ストレッチは「2セット=2段階」に分かれています。
 2セット目でより付着部を遠ざけてターゲットとなる筋肉を伸ばすように構成しています。

 その中から「股関節のストレッチ①」を取り上げます。

股関節のストレッチ 準備姿勢 P180  股関節のストレッチ 1セット目 P181
股関節のストレッチ 2セット目 P181
図.ストレッチ5 股関節のストレッチ①
(『やってはいけないストレッチ』 P180〜P181 より抜粋)

 毎日行えばより効果的ですが、週一回でも効果があります。
 ちょっとした時間を見つけて、試してみたいですね。

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 誰でも簡単にできたり、日頃何気なくやっていること。
 そのようなものほど、意外と正しい方法で行われていないものです。
 ストレッチは、その最たる例ではないでしょうか。
 筋肉の構造や性質をしっかり理解したうえで、正しいフォームでやれば、これほど手軽で簡単で健康的なトレーニングはありません。

 ストレッチを長くやっていて効果が感じられない。
 その理由は、「生まれつき体が硬いから」でも「体質だから」でもありません。
 ただ、やり方が間違っていたからです。
 正しいフォームのストレッチ方法を身につけ、柔軟で若々しい体を目指したいですね。

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