本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『「やりたいこと」の見つけ方 』(西剛志)

お薦めの本の紹介です。
西剛志さんの『「やりたいこと」の見つけ方 1万人の才能を引き出してきた脳科学者が教える』です。

西剛志(にし・たけゆき)さんは、脳科学者です。

「自分らしさ」に苦しまないために

自分が何がしたいかわからない。
自分がやっていることに「やりがい」を感じない。

そんな「自分探しの袋小路」に迷い込んでしまっている人は多いのではないでしょうか。

西さんが、そんな悩める人たちに伝えたいこと。
それは、「やりたいことが見つからない」のは、あなたのせいではないということです。
その理由は、職業選択が自由になり、生き方が多様な時代に、迷わないほうがおかしいからです。

 住むところも、職業も、結婚すらも、すべて生まれた場所で定められていた時代がありました。
そこに、選択の自由はありませんでした。
そうした時代に比べると、現代ははるかにいい時代になったといえます。
では、昔に比べて現代人は幸せになれたのでしょうか?

私には、わかりません。
ある意味では自由に、そして、ある意味では不自由になったといえます。
「何でもできる」は、裏を返せば「何もできなくなる」ということ。
選択肢が無限にあると、人の脳はフリーズして決断できなくなるからです。

しかし、世間は「自分らしくあれ」といいます。
これが無言のプレッシャーになり、ジレンマを抱えて苦しむことになるのではないでしょうか?
そして、自分らしく生きられない自分に、自信が持てなくなる・・・・・・。
多くの現代人は、こうした悩みを抱えているように感じます。
しかし、それではあまりにも、もったいないでしょう。
人はみな特有の才能があるにもかかわらず、やりたいことがわからないがために、つぼみのまま人知れず枯れていくことが多すぎるのです。

こうした人たちの背中を押してあげたい。
自分らしく生きるために、多くの方にもっと能力を生かしてほしい。
これが、私が本書を執筆したきっかけです。

実は私自身、かつて「やりたいこと」が見つからなかった1人です。
恥ずかしながら、物心つく幼少時代から約30年間、興味があることは多かったものの、本当にやりたいことかわからずにいました。

今でこそ天職である「うまくいく人とそうでない人の脳の違い」を調べる仕事を通して、やりたいことに邁進(まいしん)していますが、それまでに幾つの仕事を経験したことか・・・・・・。

学生時代は、自分がやりたいことを見つけようと思い、ホテルのウェイターなどの接客業から、塾の講師に家庭教師、プログラミングからイベントの手伝い、交通量をカウントする仕事に、夏のプールで賑(にぎ)わう遊園地の駐車場での壁の塗装(とそう)をはがす仕事まで・・・・・・、手あたり次第、目についた職業を体験してみたのです。

そして、大学での研究職を経て、一度は特許庁に落ち着きました。
とはいえ、特許庁の仕事はそれなりに面白いと思いつつも、「何かが足りない」と感じていた日々でした。

そんな折に、30代前半で難病を宣言されました。
自身の治療のためにさまざまな文献を読み漁(あさ)り、そのなかで脳と病気の関係に関する論文に辿(たど)り着きました。
それが、私が脳の研究に興味を持ち始めたきっかけです。
この経験か、私の後の人生の方向性を決定づけたと思います。
3年半の闘病生活を経て、奇跡的に病気は完治し、私は残りの人生を「脳の研究を通じて、人を助ける仕事をしよう」と決めました。

この闘病生活を通じて感じたことは、「人生は長くない」ということです。
限りある人生を、どう過ごすのか?
無為(むい)に過ごすのではなく、意味のある人生にしたい。
多くの人は、そう思うはずです。

私は、3年半の闘病生活の間、徹底的に自己理解を深めました。
これから、何がしたいのか?
何を叶(かな)えていきたいのか?
どうすれば、社会や人の役に立てるのか?

こうした自問自答を経て、2008年に会社を設立しました。
現在、「脳の素晴らしい可能性を通して、多くの人の幸せに貢献する」を理念に、子育てからビジネス、スポーツまで、成功している人たちの脳科学的なノウハウを提供する仕事などをしています。

なかでも、「才能診断」と「ライフディスカバリー®️プログラム」という、子どもから大人まで才能を引き出す方法を提供するサービスは、多くの方から支持していただき、人気を博(はく)しています。
企業から教育者、高齢者、主婦などを含め、これまでに1万5000人以上の人に講演会を提供し、約5000人以上の人を直接サポートいたしました。

『「やりたいこと」の見つけ方』 はじめに より 西剛志:著 PHP研究所:刊

本書は、欧米を中心に研究が進んでいる天職に関する200以上の論文をベースに、西さん独自の研究成果を踏まえ、「やりたいこと」を見つけるための「考え方」について解説した一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「本年にやりたいこと」の正体とは?

あなたの「やりたいこと」は何か。
そう聞かれて、多くの人は具体的な「職業」を答えるでしょう。

しかし、西さんは、それはやりたいことが見つかりにくい人たちのパターンの1つであり、いくら仕事やチャンスに出合っても、その瞬間はこれがいいと思えたとしても、最終的に「やりたいこと」に辿り着けない可能性があると指摘します。

 なぜ、そうなってしまうのでしょうか?
それは、やりたいことを通じて得られる「感情」を無視しているからです。
たとえば「有名人になりたい」と夢を語る子どもにこう聞いてみます。
「なんで、有名人になりたいの?」
すると、こんな回答が返ってきます。

■大きな収入を得て、自由に暮らしたい(解放感を味わいたい)から
■毎日刺激があって、ワクワクできそうだから
■多くの人に影響を与えて、貢献できる喜びを感じたいから・・・・・・

これらの回答には、「ある共通したもの」が含まれています。
それは、有名になることで手に入れられる「自由」「ワクワク」「貢献の喜び」、つまり、やりたいことを通じて得られる「感情」です。

もし、有名人になれたとしても、「自由」「ワクワク」「貢献」をまったく感じられなかったら、その仕事を「やりたい」と思えるでしょうか?
たとえば、プロ野球選手になっても、お金がなくて自由がない、毎日同じ練習ばかりでスリルがない、子どもたちに夢も希望も与えられなかったら、その仕事をやる意味すら感じないでしょう。

このやりとりから、1つ大切なことがわかります。
それは、「〇〇になりたい」「〇〇をやりたい」と願っている人が本当に手に入れたいのは、具体的な「職業」ではないということ。
実は、「やりたいこと」を通して得られる「感情」のほうなのです。

人はみんな、「何か」を通じて得たい感情があります。
これは本書における最大のポイントです。

たとえば、計画通りに物事が進んでいるときに得られる「安心感」
新しいことを体感したときに感じる「ワクワク」
推理して謎が解けたときの「高揚感」
かわいい動物や子どもと触れ合っているときの「癒し」
あるいは、誰かの役に立っているときに得られる「貢献感」

このように、「特定の行動を通じて得られるポジティブな感情」を「本当に得たい感情」、私は「PERC(パーク)=Positive Emotion Reconstructing Calling」と呼んでいます。
こうした感情を満たすものが、あなたが「本当にやりたいこと」の正体です。

先ほどの子どもの例でいえば、「有名になりたい」の本当の願いは、経済的な自由を手に入れて「大きな自由」を手に入れることかもしれません。
あるいは、予測できない展開にスリルやワクワクを感じたり、多くの人に夢を与えることで、社会に「貢献」することかもしれません。
そうした感情を手に入れるための手段の1つが、たまたま有名人(野球選手やアイドル)。になることだっただけかもしれないのです。

もし、そうした感情が得られないとしたら、どうでしょうか?
憧れのプロ野球選手という職業に就(つ)けても、「・・・・・・これは自分のやりたいことなのかな?」と、モヤモヤしてしまうかもしれません。

でも、問題ありません。
なぜなら、自分の感情を満たすことが大切だと理解すれば、どんなものでも、自分の「やりたいこと」に変わる可能性があるからです。
プロ野球選手などの有名人にならなくても、「自由」「ワクワク」「貢献」が手に入る克人をはいくらでもある、ということです。

したがって、「やりたいこと」を見つけるには、具体的な職業ではなく、自分の「感情」にフォーカスすることが先です。
ところが、多くの人は、悲しいことに「やりたいこと」を「職業」から探そうとします。
そのため、実際に仕事をやってみると、「何かが違う・・・・・、でもその理由がわからない」と感じてしっくりこないことがあるのです。

これは、手段と目的が逆になっていることが原因です。
うまくいく人は、仕事を探すのではなく、自分が満たしたい「感情」とは何かを先に理解しています。
そのため、自然と「やりたいこと」と出合い安くなるのです。

多くの人は理性的に仕事を選ぼうとする傾向があります。
「収入が高いから」
「会社が業界で有名だから」
「待遇がよくて、休暇も取りやすいから」
「業績がよく、キャリアを積むには最適な環境だから」

でも、理性で選択しても、働いてみたら、「思ったのと違った」「こんなはずじゃなかったのに・・・・・・」と感じたことはなかったでしょうか?
これは興味深い現象です。ビジネスやスポーツや芸術の世界でも、私が出合った「やりたいこと」を見つけている人は、そのほとんどが理性よりも感覚でやりたいことを選んでいました。

世界の一流科学誌『サイエンス』に掲載されたこんな面白い実験があります。4台の車の中から最も理想的な1台を選んでもらう実験です。
このとき、被験者を2つのグループに分けました。

(1)よく考えて選んでもらうグループ
(2)すぐに決断しなければいけないグループ(直感的に選ぶグループ)」

それぞれのグループには、燃費やタイヤの特性といった「単純な条件」の4つのポジティブとネガティブな情報を説明し、車を選んでもらいました。
その結果、(1)のグループのうち約60%が、もっともよい車を選びました。それに対して、(2)のグループは、約40%しかよい車を選べず、「じっくり考えてもらったほうがよい結果が得られる」ことがわかりました。
「理性が正しかった」という、ある意味、納得の結果かもしれません。
しかし、今度は(1)と(2)それぞれのグループに、より複雑な12の情報を提示して、もっともよいと思う車を選んでもらいました。
その結果、正しく選んだ割合は次のようになったのです。

(1)よく考えて選んだグループ→正答率:約25%
(2)すぐに決断したグループ →正答率:約60%

私たちは条件が少ないときは、よく考えたほうが正しく選択できますが、条件が多く複雑になると、考えるほど誤ってしまうのです。
むしろ、直感のほうが理性よりも2.4倍も正確に判断できたことを意味しています。

同じような現象は、コロンビア大学の研究でも示されています。
アイドルコンテストの優勝者を当てるのに、直感のほうが優れていたことが報告されています(理性的な人の的中率は21%、感覚を信じる人の的中率は41%でした)。
誰が優勝するか判断するには、容姿だけでなく、「人柄」や「審査員の好み」「立ち居振る舞い」「言動」などの膨大な情報が必要になります。
ここでも、複雑な情報から正しく選択するためには、理性よりも直感のほうが優れていることが証明されているのです。

「やりたいこと探し」も同じかもしれません。決して単純な選択ではなく、世の中の数多くの情報のなかから判断しなければならないからです。
皮肉なことですが、たくさんの情報があればあるほど、理性で考えすぎて誤った判断をする可能性があるのです。

では、直感力を磨くためにはどうすればよいのでしょうか?
ヒントは、私のたちの脳の奥深く「大脳基底核(だいのうきていかく)」という場所に隠れています。

将棋名人の脳を研究した事例を紹介しましょう。
将棋の名人は、約2〜6億の候補から最適な一手を選んでいます。
通常、アマチュア棋士は一手を打つためにロジカルに考えて答えを出しますが、名人は最初に直感で最適な一手を閃(ひらめ)き、その一手を脳内で検証する、という手順を踏むことがあるそうです。
そんな名人たちの脳は、共通して大脳基底核が活性化していました。
大脳基底核は、これまでの情報を記憶する場所で、経験を積むほど活性化する傾向があります。
身近な人以外と接しない子どもは、直感でいい人と悪い人を区別できませんが、人を見る目が養われた大人は、「何か怪しい」と思ったら、その勘が割と当たっていたということが多いでしょう。

裏を返すと、経験や行動の数が少ない(データが足りない)人は直感が働きにくい、ともいえます。
実際に、2011年の研究でも、直感でどの数字が多いかを当てるゲームをしてもらったところ、6回ゲームを経験すると的中率は65%となり、24回経験すると、その的中率は90%にまで高まりました。
私たちは経験値が少ないうちは論理的に考えますが、経験を通して勘が鋭くなることを意味しています。

多くの人は「根拠のない自信」に「気のせいかも・・・・・」「前からなんとなく興味はあるんだけど、『なんとなく』じゃ、説得力がないよなぁ・・・・・」などと気持ちに蓋(ふた)をしてしまいます。
しかし、脳科学的に正しい選択をするためには、とにかくたくさんの経験を積んで直感で選ぶべき、といってよいでしょう。
「なんとなく」の判断を怖がり行動をためらうより、まずはどんどん動いて経験を蓄積するのが、「やりたいこと探し」の近道です。
「やる前は心配だったけど、案外うまくできたし、気に入った」
こんなケースが珍しくないのです。
多くの人が考えている以上に、「やりたいこと」との出合いは直感的な形で訪れることがあります。

『「やりたいこと」の見つけ方』 第1章 より 西剛志:著 PHP研究所:刊

思考よりも直感、理性より感情。

「やりたいこと探し」という、本質的で重要なテーマについては、意外と有効だということです。

頭で考えれば考えるほど、損得や世の中的な人気など余計な情報が入ってきて複雑になってしまいます。
これまでの経験で培われた直感を信じる勇気が大事になりますね。

「ライフワーク」で働くメリットとは?

人材コンサルティングを手がける米国のギャラップ社が、世界各国の企業を対象に従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)を調べました。
その結果、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%しかないことかわかりました(下の図2-1を参照)。

図2−1 働く目的は何か やりたいこと の見つけ方 第2章
図2−1.働く目的は何か
(『「やりたいこと」の見つけ方』 第1章 より抜粋)
 また、内閣府が日本人の「働く目的」を調査した結果、「お金を得るために働く」と回答した人は51.0%にもなりました(下の図2−2を参照)。
つまり、半分以上の日本人が「お金のために働いている」という事実が明らかになりました。

図2−2 生きがいを感じるとき やりたいこと の見つけ方 第2章
図2−2.生きがいを感じるとき
(『「やりたいこと」の見つけ方』 第1章 より抜粋)
 なぜ、これほどまでに日本人は働くことへの意欲が低いのでしょうか。

「3人の石工(いしく)」という話をご存じでしょうか。
ある人が、作業中の石工に「あなたは何をしているんですか?」と尋ねました。すると、3人の石工は次のように答えたそうです。

1人目の石工は、「親方の命令でレンガを積んでいるんだ」。
2人目の石工は、「レンガを積んで塀を造っているんだ」。
3人目の石工は、「人々がお祈りをするための大聖堂をつくっているんだ」。

この話は、一口に「仕事」といっても、いくつかの意味合いがある、ということを示唆しています。
実際、イェール大学の研究でも仕事に3つのカテゴリーがあると提唱されています。
図2−3(下図を参照)にあるように、ジョブ、キャリア、コーリングです。
いずれでもないものを、ここでは「趣味」としました。

「ジョブ」は、物質的な利益を得る手段としての仕事です。
仕事の目的を達成するという意識は薄く、「お金のために働く」がこれにあたります。
日本人の仕事は大半がジョブだといえるでしょう。

「キャリア」は、目的を達成したり、職業人として成長したり、名声を得たりと、「自分の成長や業績のために」行なっている仕事になります。
やっていることそのものが大好きであれば「コーリング」になりますが、業績を上げることだけが目的になっている場合は、好きなレベルは相対的に低いため「キャリア」に分類されます。
つまり、キャリアに「好き」が加わると、「コーリング」になります。
「コーリング」は天から呼ばれる仕事(役割)という意味で、日本では「ライフワーク」「本当にやりたいこと」「天職」とも呼ばれています。
目的とやりがいがあって、かつ、気持ちが満たされる仕事。
生涯を通して「生きる原動力」になり、働いていて、「感謝」「喜び」「ワクワク」「幸せ」を感じられる活動です。
また、コーリングには大きな感覚から小さな感覚を含むものまで、さまざまな定義があります。
たとえば、コロラド州立大学のBryan J.Dik教授はコーリングについて、「自分を超えた感覚に導かれていて、その仕事に対し、目的や意味を感じられるもの」という壮大な表現をしています。
また、現代的なコーリング感を研究するボストン大学では、「目的を感じて、それをやっていて意味があると思えるもの。それはどんな些細(ささい)な仕事でもコーリングになり得る」
と定義しています。

「3人の石工」のエピソードに戻るなら、1人目の石工はジョブ型、2人目はキャリア型、3人目はコーリング形の仕事をしている、といえそうです。
本書の「やりたいこと」とは、コーリングやライフワークを意味します。
日本では、コーリングという呼び方は馴染(なじ)みがないため、ここからは「やりたいこと」「ライフワーク」と呼びたいと思います。

単にお金を稼ぐための手段でもなく、まして苦痛でもなく、それどころか幸せになるためには欠かせない活動。
それがやりたいこと、ライフワークです。
当然のことながら、多くの人はライフワークになるような仕事に出合いたいと願うことでしょう。
「はじめに」でもお話ししたように、コーリング(ライフワーク)に関する研究が進んでおり、この10年間で200以上の研究論文が発表されています。
そのなかには、そのメリットを報告するものも多数あります。代表的なものを紹介しましょう。

①幸福度が高まり、自分を好きになれる

ライフワークを実現している人は幸福度が高く、仕事にも熱心だということがわかっています。
また、自己肯定感が高く、よく働き、他者や集団を自主的に助けようとする。情動プラス傾向で仕事を楽しむ、などの傾向もあります。
もし、「やりたいこと」が明確にわかっていて、目標に向かってどんどん進んでいる自分を想像できたら、どんな気持ちでしょうか。
自然と、気持ちが高まっていることに気づくかもしれません。
私たちは、小さくてもやりたいことがあると、前頭前野が活性化します。

もしかしたら、読者のなかには、自己肯定感が低い人もいるかもしれませんが、案外、自分を好きになるためには、「自分が何をやりたいのか」を理解することに糸口があるのではないかと思います。
私自身、クライアントがやりたいことを見つけ、雰囲気が変わって「まるで別人!」と驚くことがよくあります。

②収入が上がる

幸福度が高まると、脳のパフォーマンスが上がります。
ウォーリック大学の研究によると、幸福度が仕事の生産性に10〜12%向上させるという研究があります。
また、別の研究では、幸福度が仕事の生産性を31%、創造性を300%向上させると報告しています。

人は幸福を感じると、脳内ホルモンである「セロトニン」が分泌されます。
すると不安を感じにくくなり、集中力が高まるなど、安定的に能力を発揮しやすくなる効果が期待できるのです。
そのため、やりたいことをしている人は、そうでない人に比べて収入が高く、より高い地位や名誉を得ることや、欠勤日数が少ないことが研究からわかっています。

③困難を乗り越える力が高まる

ライフワークは、新しいことにチャレンジする能力と相関しています。
言い換えると、困難を乗り越える能力まで高まるのです。

ライフワークとは、人生を貫く「軸」のようなものです。
こうすれば自分は幸せでいられる、自分はこれが好きだ(嫌いだ)など、何かを意思決定する際の基準となるため、ブレない自分を手に入れることができます。

また、たとえ困難に見舞われたとしても、それがライフワークであるならば簡単には諦めないでしょう。
必要ならば、困難も喜んで受け入れるようになります。

④脳と体の老化を遠ざける

脳の老化は、ストレスに強く影響します。
ずばり、ストレスまみれの暮らしをしている人は早く老(ふ)けるのです。
その点、ライフワークが充実している人には「若々しい」という共通点があります。
脳がいい状態だと代謝も上がり、肌ツヤもよいのです。
楽しそうに仕事をしている人が、若々しいのはそのためです。
「好きなことなら、いくらやっても疲れない」のも、多くの人が体験しているのではないでしょうか。
それが仕事であれ趣味であれ、ライフワークが充実していると、肉体的な疲れや痛みさえ感じにくくなるというリサーチもあります。
ただし、やりすぎは禁物ですので、どんなに好きなことをしていても、十分な休息をとることは大切です。

⑤人間的魅力が高まり、成功しやすくなる

やりたいことに向かって精力的にチャレンジする姿は、人間的な魅力の1つです。そのため、ライフワークが充実している人は、多くの人に慕われ、理想のパートナーも見つかりやすくなります。
端的にいって、モテるのです。私生活だけではありません。
仕事上でも、ビジョンを持って努力している人の周囲には、それを応援する人たちが集まってきます。
実際にハーバード大学の研究でも、幸せな人の周りには幸せな人が集まり、不幸な人の周りには不幸な人の割合が多くなることがわかっています。

仕事において自分の力だけで大きなことを成し遂げる人はまずいません。
成功するのは、多くの人に支えてもらえる人。
そして、人を惹きつけるビジョンを持っている人です。
私は、成功する人たちが経験しているという「フロー状態」(目の前の物事に没頭し、流れるようにうまくいく状態)」について研究しています。
ライフワークが充実した人は、フロー状態に入る条件を満たしています。

『「やりたいこと」の見つけ方』 第2章 より 西剛志:著 PHP研究所:刊

図2−3 私たちの活動のカテゴリー やりたいこと の見つけ方 第2章
図2−3.私たちの活動のカテゴリー
(『「やりたいこと」の見つけ方』 第1章 より抜粋)
 私たちは、給料や求人の多さなどの外部の条件で仕事を選ぶことが多いです。
反面、「好き」や「やりたい」などの自分の気持ちの部分は、軽視されてしまいがちです。

しかし、仕事に対する最終的な満足度は、「やりたいこと」つまりライフワークを選んだ方が高いということ。
最初から諦めず、自分の可能性を信じて、仕事選びを考えたいですね。

「ライフワークの原石」を見つけよう!

西さんが、ライフワークにつながる感覚(自分が満たしたい感情)として7つに分類したものが、下の図3−3です。

図3−3 ライフワークにつながる7つの感覚 やりたいこと の見つけ方 第3章
図3−3.ライフワークにつながる7つの感覚

図3−4 ライフワークにつながる77 の動詞 やりたいこと の見つけ方 第3章
図3−4.ライフワークにつながる77 の動詞
(『「やりたいこと」の見つけ方』 第3章 より抜粋)
 西さんは、「やりたいこと」を見つけるためには、この7つの感情につながる「特定の行動(動詞)」を見つけることが大切だと指摘します。

なぜなら、「やりたいこと」は、自分の感情を満たす特定の行動がいくつも重なってできているからです。

 ここからは、自分が満たしたい感情につながる「特定の行動」を、「ライフワークの原石」と呼ぶことにします。
本来ならば、私がヒアリングしたうえで客観的に分析していきますが、今回は書籍用のワークをオリジナルで用意してみました。
少しドキドキするかもしれませんが、準備ができたら、138ページの言葉のリスト(上の図3−4を参照)を見ながら、一緒にステップを進めていければと思います。
ペンかスマホのメモ機能を用意して読み進めてください。

ここで注目するのは、「動詞」です。
私がこれまで5000名を超える数多くの人たちを分析してきた結果、ライフワークの原石は77の動詞で構成されていることを突き止めました。
以下、主に常用漢字として使用されている動詞から多くの人の脳と心が喜びやすい言葉を抜粋しています。
次のページを見てみてください(下の図3−4を参照)。
77個の動詞をざっと確認できたでしょうか?
では、この動詞のリストを参考に、ステップ1から3まで進んでください。

ステップ❶
77個の動詞から「(なんとなく)いいな」と思えるもの、「気になるもの」「心が動くもの」を5分以内に7〜10個ほど選んでみてください(厳密に7〜10個でなくてもいいですが、少なすぎても、多すぎてもわかりづらくなりすので注意してください)。
頭で考えすぎず、なんとなくという感じで大丈夫です。

例 つくる、組み合わせる、感じる、キレイにする、つながる、癒す、育てる

ステップ❷
選んだ7〜10の動詞それぞれに「目的語」を追加してみます。
たとえば、こんな感じです。

「つくる」という言葉を選んだら、空欄に何が入ると心が動くか考えてみてください。
たとえば、「シンプルなものをつくる」、「世の中になかったものをつくる」「子どもが喜ぶものをつくる」など、自分の気持ちが少しでも高まる言葉であれば、何でもOKです。
感覚的に自分の心が「フフッ」と喜ぶ言葉が大切です。

ステップ❸
次に、選んだ7〜10の動詞を好きな順に並び替えて、最後に「〜な仕事」で終わるように文章をつくってみてください。
こういう並びだったら、楽しい、ワクワクする、安心できる、面白い、しっくりくるなど、いずれにしても、自分に合った文章が大切です。

シンプルなものをつくって、周りも自分もキレイになり、複数のものを組み合わせて、新しいものを感じて、たくさんの人とつながって、自然に癒され、心を育てる仕事

どうでしょうか?
この言葉を見ると、ボンヤリとでもこの人のライフワークの全体像が見えてきませんか?
最終的にこの人の「やりたいこと」は、薬膳(やくぜん)に関する仕事(アドバイザー、お店の経営、イベント)、女性を中心に漢方と美容をメインにした仕事、オーガニックの自然派の化粧品に関わる仕事などが候補に挙がりました。
これは実際に私が担当した事例ですが、このワークだけでその人のライフワークの方向性を明確にすることができたのです。

これが、77の動詞の素晴らしい効果です。
本書は書き出せば書き出すほど、変化が起きるように構成していますので、読むだけではほとんど成果は得られません。
あなたもまずは、書き出してみてください。

【その他の動詞の例】
情熱を燃やして、体験したことのない世界の人になりきって、人の悲しみや喜びを表現し、これまでのスキルを高めて、信頼を増やして、人生経験を重ねて、人の心を温める仕事

【実際のライフワークの候補】演劇、俳優、脚本作家、監督、舞台演出など(その他にも、芸術家、音楽アーティスト、カメラマン、小説家、カウンセラー、トップ保険営業マン、ブロガーなど・・・・・・多数)

時流を読み、物事同士の関係を分析して、将来のビジョンを描き、苦難を乗り越えたときの達成感を味わい、全国のいろいろな場所を巡って、ベストな選択肢を選び、クライアントの成功を祝う仕事

【実際のライフワークの候補】コンサルタント(ビジネス、教育、営業、接客、人材開発など)、分析が好きなスポーツコーチ、音楽のアドバイザーなど

いかがでしたか?
実際に書き出してみると、ライフワークの方向性が何となく見えてきたのではないでしょうか?
ご注意いただきたいのは、真剣にやりすぎると、理性で考えている状態になりますので、書き出してもしっくりこないことがあることです。
そんなときは、時間を置いたり、場所を変えたり、日を改めて、リラックスできる状態でやってみてください。
部屋でアロマを焚(た)いたり、好きな音楽をかけてやっても大丈夫です。
いずれにしても、リラックスして感覚的になっているとき、最適な言葉を選ぶ傾向があります。

そして、もう1つ大事なことがあります。
それはライフワークのヒントは、すでにあなたが行なっている仕事や趣味、子育てなどの活動に隠れていることがあるというのです。
先ほどの文章を書いたら、今度はここまでに挙げた7〜10のそれぞれの動詞について、現在の仕事や趣味などの活動で、どのくらい満たしているかを採点してみてください。
「大いに満たしている」は◎(3点)、「満たしている」は◯(2点)、「一部満たしている」は△(1点)、「満たしていない」は×(0点)とします(下の図3−5を参照)。

結果の判定は書き出した原石(動詞)の数によって変わります。
全体の7割以上を満たせていたら(7つの場合は14点以上、8つの場合は17点以上、9つの場合は19点以上、10個の場合は21点以上)、「すでにライフワークを生きている」と評価してもよいでしょう。
しかし、点数が低かったとしても諦める必要はありません。
△や×の原石を、◯と◎に引き上げることができれば、ライフワークに近づけることができるからです。

次の図3−5で示した7つの原石(140ページでも紹介、下図を参照)の採点リストは、以前に私がサポートしたある外資系の製薬会社で働く女性管理職の方の一例です。
7つの原石だけを見ると、人の健康にかかわるように見えるため、製薬会社の仕事は、ライフワークを満たすように思えるかもしれません。
しかし、実際に彼女にどのくらい満たしているかチェックしてもらったところ、◎はゼロ、◯よりも×や△のほうが多いという結果になりました。

今回の彼女のポイントは「管理職になってから、仕事が楽しくなくなってしまった」ということです。
これまで研究職として、人の健康にかかわる仕事をしていたときは、「複数のものを組み合わせる(新しい物質をつくる)」「新しいものを感じる(日々、小さな発見をする)」などの原石が満たされている毎日を過ごしていました。
幸福感もそれなりにあったようです。
ところが、管理職になってからは、研究から遠のき、業務管理がほとんど。そのため、2つの原石(感情を満たす行動)を満たしていないことに気づいたのです。

そこで私は、彼女に次のように聞きました。
「もしすべての原石を満たせるなら、どんな仕事をしたいですか?」
すると、彼女は少し考えてこう答えたのです。
「私、もともと西洋医学よりも、シンプルな素材を扱う漢方のほうが好きだったんです」
実は彼女は昔から自然由来の成分で体を癒すことに関心があり、高校時代は美容やキレイになれる漢方を扱う業界に進みたいと思っていました。
しかし、進学した国立大学には漢方を扱う学科がなかったとのこと。
それで仕方なく、薬学部に進みましたが、薬学部は化学物質を扱う西洋医学が中心で、自然のものに触れることができませんでした。
それでも彼女は優秀だったため、その後は外資系企業に就職。その結果、これまで7つの原石をあまり満たせないまま、ここまできてしまったのです。

そこで彼女がまず行なったのは、管理職をやめて研究職を希望する要望書を出すことでした。タイミング良く、自然由来の成分を扱える部署が新設され、そこに異動できないかと考えたのです。
そして、しばらく研修を受けて、新しい部署に異動できました。
数年後には他の企業で美容にかかわれるような仕事に出合い、毎日が充実するようになったそうです。
さらに、彼女が気づいたもう1つのことが、もっと漢方やハーブの世界を体験したい、知りたいと思ったことです。
彼女はそのまま数多くの自然医学の分野を独学で勉強し、趣味としてハーブで人の心を癒すティーセラピーを始めました。
その後、結婚して退職し、趣味が高じて、今ではたくさんのお客様がそのサロンにいらしているようです。
製薬会社で働いていた人生が、一変するようなことが起きたのです。

『「やりたいこと」の見つけ方』 第3章 より 西剛志:著 PHP研究所:刊

図3−5 ライフワークの原石の採点リスト やりたいこと の見つけ方 第3章
図3−5.ライフワークの原石の採点リスト
(『「やりたいこと」の見つけ方』 第3章 より抜粋)
 私たちの感情は、行動と強く結びついています。
そして、行動を定義するのが「動詞」です。

気になる動詞、好きな動詞を選ぶことで、本当に「やりたいこと」が見えてきます。
あとは、それらをつなぎ合わせることで、自分にぴったりの、しかも自分にしかできない「世界に一つだけのライフワーク」が見つかるのですね。

私たちの中に眠る「10の才能」とは?

「やりたいこと」がわかったら、次は自分の「才能」を知ることが必要です。

西さんは、「8つの知能」理論をベースに、独自の分析を加え、これまでビジネスからスポーツ、幼児教育にいたるまで数多くの人たちの才能を分析してきました。

 人の才能は大きく10種類あります。順を追って紹介しましょう。

A 言語的知能

私たちが、自分や相手の考えを言語化したり、言葉をアレンジするといった、言葉に関する才能です。
有名な例としては、演説家や小説家。世界的に有名なキング牧師やケネディ大統領、文章力を武器とする小説家や編集者なども含まれます。
言葉の才能は仕事以外にも見られます。
SNSやブログの文章でバズったり、話の面白さで人を魅了できるといった方は、高い言語的知能の持ち主です。

B 数学的知能

数学的知能は、文字通り、数字を扱う才能です。
ピタゴラス、アイザック・ニュートン、カール・フリードリヒ・ガウス・・・・・、私が説明するまでもなく、数学的知識に長(た)けた偉人たちです。
数学者、物理学者といわずとも、データアナリストや会計士、税理士といった仕事も、日頃からから数字を扱います。

「8つの知能」理論では、「論理・数学的知能」として、論理と数学の才能は一緒に扱われています。
しかし私自身、数多くの人を見てきて、2つの才能は別物として分けられることに気づきました。
「数学ができないと、論理的思考も苦手」と多くの人が思っていますか、実際には、計算は苦手でも、物事の仕組みを考えたりすることが大好きな人がいます。
あなたの周りに、計算や数学は得意ではないのに、生き物や宇宙、量子物理学などに興味があったり、電化製品の仕組みをやたら、わかりやすく説明できる人はいませんでしたか?
そうした人は数学的才能ではなく、論理的な才能がある可能性が高いのです。

C 論理的知能

論理的知能は、物事を一つひとつ積み上げて構成していく能力や、人の話などを整理して、そこから因果関係を見出す能力です。
旅行の計画が得意なのも、論理的知能の高い人に見られる傾向です。
コンサルタントや経営者などは、論理的知能が高い傾向にあります。文系出身で経営コンサルタントになる人がいるのも納得かと思います。
マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ、メタ創業者のマーク・ザッカーバーグなど、世界的に優れた経営者は論理的な思考が強い人が多い傾向があります。
表面的な内容よりも、その背後にある仕組みを知りたいからです。

D 視覚空間的知能

モノの形や配置を脳内で再現する能力です。イメージを3Dで再現する能力ともいえます。近年見つかった物体認識の才能「O」にも重なる能力です。
この知能が長けているのは、たとえば建築家や車の運転が得意な人です。
頭のなかで立体を回転させたり拡大したり、想像上の建物のなかを歩いたりと、自由自在です。
また、地図を読むのが上手な人、一度歩いた道を忘れない人、インテリアや家具の配置を一発で決められる人なども、視覚空間的知能が高いでしょう。
歴史上の偉人でいうと、相対性理論を確立したアインシュタインは視覚空間的知能があったといわれています。
彼は、惑星の軌道を脳内で忠実に再現できる特殊な能力があったそうです。
なお、ここまでに挙げたA〜Dをすべて統合した力が、かの有名な「IQ」という知能指数を構成する基本的な力となります。

E 音楽的知能

リズムやメロディー、音の高さや音質などを認識する能力です。
私が説明するまでもなく、モーツァルト、ポール・マッカートニー、マイケル・ジャクソン・・・・・、音楽の巨匠たちはこの能力が突出しています。
音楽家は当然音楽的知能が高いのですが、作曲や楽器の演奏以外のところにこの才能を生かしている人もいます。
たとえば、舞台の演出家、イベントの演出家、動画クリエイターなどです。
彼らは「この音楽をこの場面で、このタイミングで流すと場が盛り上がる」など感覚的に鋭く、瞬時にわかります。
このように、音楽をつくる仕事のみならず、音楽を「アレンジする仕事」にも生きる能力です。

F 身体的知能

MI理論では体全体を動かす「身体的知能」と後に述べる「手先の知能」は、身体的知能という表現で1つになっています。
しかし、私はこれまでの15年の知見では、2つに分けたほうが、自己理解を深めることができるため、「身体的知能」と「手先の知能」に分類しています。
身体的知能は、体全体を使うことに喜びを感じたり、頭でイメージしたことを体で再現するのが得意な力です。
また1つの場所にずっといることができない人が多いことも特徴です。デスクワークが好きでない人は、身体的知能が高いことが多かったりします。

身体的知能に優れた人は、野球やサッカー、陸上、水泳、スキーなどスポーツ選手、力士、フィギュアスケーター、プロダンサーやバレー女優、ミュージカル俳優、配達員から体操の先生まで、とにかく体を動かすことが大好きです。
得意でなくても、体を動かすのが好きであれば、大丈夫です。

G 手先の知能

料理人や彫刻家、手芸が得意な人など、職人系の仕事をする人たちに顕著な、手先を器用さを表す才能です。
医療の世界で「神の手を持つ外科医」と称賛されるスーパードクターも、この才能の持ち主といえるでしょう。

余談ですが、私の同級生で医者になった人も多かったのですが、外科医になったものの、手先の器用さで苦労している人が少なからずいます。外科医の世界では、頭のよさだけでなく「手先」と「視覚空間」の能力が必須です。
もしかすると、手術がいらない内科医や精神科医になったほうが、医者としては成功しやすく幸せを感じやすかったかもしれません。
そういった意味で、学習成績(IQ)だけで進路を決める今の教育システムには、まだまだ課題がたくさんあるともいえるでしょう。

H 対人的知能

対人的知能とは、相手の立場で考える能力で、コミュニケーションのうまい人が持ち合わせている才能です。
他人の意図や要求、感情を理解する能力、人に共感することが得意です。
この知能が優れた偉人は、貧しい人々に生涯を捧げ、ノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサが有名です。

対人的知能は、営業職やレストランやホテルの接客、各種のサービス業など、純粋に人と接することが好きな人は持っていることが多い傾向があります。
子どもが好きな人、休日は人と会う予定を入れる人も、この能力が高い可能性があります。
会話中や電車に乗っているときに、第三者を見て「この人は何を考えているのか?」とつい考えてしまう人も、対人的知能が高いといえるでしょう。

I 内面的知能

聞き慣れない言葉かと思いますが、内面的知能とは、自分を深く理解する能力のことです。
私もこの仕事をするまでは、まったく知らない才能でした。
自分の感情や長所短所、将来何になりたいのか、そのために取るべき行動などを把握する能力をいいます。
子どもの頃から妄想好きな人や、マイペースで周りが見えない人は、内面的知能が高い可能性があります。
内面的知能が高い人は、自分の理解を深めていくのが大好きです。
研究者気質で、一人で黙々と活動するのもOK。部屋にこもりきりの仕事も、苦になりません。
世界的に有名なラルフ・ワルド・エマーソンなどの哲学者、思想家、人生の意味を伝える牧師やお寺の住職、心理学や自己成長に興味がある人も、この能力の持ち主だと考えられます。
私自身もこの能力が高いことに、30歳を過ぎて気づきました。

J 博物学的知能

博物学的知能とは、簡単にいうと「分類の才能」です。同じ種類をまとめる、あるいは違う種類を見分ける能力です。
たとえば、わかりやすいのはブランド品や骨董品の鑑定士でしょう。見た瞬間に本物と偽物の区別ができてしまいます。
身近な例では、植物の名前に詳しい人も同じです。
道端に生えている雑草をパッと見て、普通の人には「どれも同じ」に見えてしまうかもしれません。
しかし、博物学的知能が高い人は、植物同士の共通点と違いがすべてわかるため、まったく違う植物として見分けられます。

それ以外に、動物や世界遺産に詳しい人や、ワインや切手、フィギュアやコスメのコレクター、鉄道マニアなども、博物学的知能が高い人が多くなります。
意外なところでは、自然保護活動に熱心な人も、博物学的知識の持ち主である可能性が高いことです。自然の素晴らしさとは、多様性の素晴らしさ。樹々の色合いや花の香りから、季節の移ろいを感じるーー博物学的知能が高い人には、そういった感受性の強さがあります。
進化の系統を分類し、『種の起源』を発表したチャールズ・ダーウィンはその典型です。米国のアル・ゴア元副大統領のように、自然好きが高じて環境保護活動に熱心な人もいます。

さて、10の才能の中身を理解したところで、あなたが10の才能をどんなバランスで持っているか、診断してみましょう(下の図5−1を参照)。
今回は自分の診断ができるように、シンプルな内容にしてあります。大まかに、10の才能のうち、自分の好きなこと、得意なことがわかる設計です。
(中略)
この診断では、A〜Jのなかで、チェックした数が多かったものから順番に並べてみます。
1個や2個でも、チェックが多かった順番に並べてください。
チェックした数が多かった人も、少なかった人もいるでしょうが、そこは問題ではありません。この才能診断で面白いのは、チェックした「才能の組み合わせ」でライフワークの方向性が確認できることです。

診断の事例を紹介しましょう。
これは実際にAさんが診断した結果です。

(診断例)Aさんの場合
博物学 →4つ
論理  →4つ
視覚空間→3つ
(手先2、内面2、数学2、言語2、身体1、対人1、音楽0)

Aさんは、博物学的知能と論理的知能がもっとも高く、その次に視覚空間的知能が高い傾向があります。
博物学と論理の組み合わせは、「多くの選択肢から最適なものを提案する仕事」や「物事を体系化する仕事」が向いています。
知識を整理して、わかりやすく並べ替えたり、既存の要素を組み合わせて新しいものを生み出したりする仕事です。
たとえば、コンサルタントや新しいコンテンツや仕組みを生み出す仕事です。
また、視覚空間的な知能が高いため、ファッションやインテリア、旅行や宿泊先、結婚式場などその人に最適なプランを提案する仕事や、イベントプロデュースや、動画編集などを駆使して映像をつくり出す動画クリエーターなども、向いている職業の候補に入る可能性があります。
もし、ここに手先の才能を加えると、新しい編み方や手術の方法を開発する仕事から、マッサージ手法を開発する仕事、立体的な造形物の創作の仕事など芸術の世界まで視野に入ってくるかもしれません。
ただし、Aさんは対人的知能が低いため、人と接する仕事よりも、一人で行なう職人気質の仕事のほうが楽しいと感じるでしょう。

後述しますが、チェックをつけた才能が複数ある場合は、P201〜205の表で、すべての才能の組み合わせをそれぞれ見ていくと、自分に向いている仕事の方向性がわかりやすくなります(下の図5−2を参照)。

(診断例)Bさんの場合
対人 →3つ
内面 →3つ
言語 →2つ
身体 →2つ
(音楽1、数学0、論理0、視覚空間0、手先0、博物学0)

Bさんの特徴は、対人的知能と内面的知能が同時に高いことです。
内面的知能だけが高いと、心のなかで深いことを考えているばかりで、人に伝えることができません。少しオタク的といえるでしょう。
一方、対人的知能だけだと、人と一緒にいるのは大好きですが、人の心に届く深い話をすることができません。人なつっこくても天気や最近の話題のニュースなどの表向きの話ばかりするような人は、このタイプです。

どちらか一方しかない人もいるのですが、2つ揃うと、思慮深く、相手の琴線(きんせん)に触れる話ができるため、「人をよい方向に導く仕事」ができます。
そういった意味で、人の心を動かすセールスマンや経営者、マネジャーなどが向いています。この2つの才能を同時に満たすからです。
Bさんは、言語的知能もあることから、言葉を通して人を導いてあげるような仕事、たとえば、コンサルタントやカウンセラー、学校の先生や教育者なども、ライフワークとして向いているかもしれません。
身体的な知能も他の才能と比べてあるので、スポーツコーチや、健康系インストラクター、スポーツ選手などチームワークの指導者の立場してもうまくいく可能性があります。
つまり、才能の組み合わせによって、その人のライフワークの方向性が自然と見えてくるのです。

才能の組み合わせは膨大なため、通常は私が1つずつ分析して伝えていますが、ここではわかりやすく2つの才能の組み合わせで、その人のライフワークのおおまかな方向性を見つけていきたいと思います。
チェックをつけたそれぞれの才能を組み合わせて、どんな仕事のタイプがあるのか、該当する項目を見てください。
「言語」+「視覚空間」の2つの組み合わせの場合は、「言語との組み合わせ」と、「視覚空間の組み合わせ」の項目内をそれぞれ見てみます。

「言語との組み合わせ」は、言語をメインとした仕事、「視覚空間との組み合わせ」は視覚空間をメインとした仕事のタイプを示しています。
たとえば、「言語との組み合わせ」の仕事だと「言葉を使う割合が高く、視覚や空間にかかわる仕事(ファッション誌編集、旅行やホテル評論家・コピーライター、司会・アナウンサーなど)」となります。
一方で、「視覚空間との組み合わせ」だと「視覚空間がメインで、かつ言葉をサブで使う仕事(イベントプロモーター、ファッション・インテエリアコーディネーターなど)」となります。

どちらの才能をメインとするかによっても、方向性が変わりますので、コインの表と裏を見ることで、自分の方向性により立体的に気づきやすくなります。
どちらかがしっくりくる、両方合わせると、さらによくなることもあるでしょう。今回の例は代表的なものですので、2つを見ているうちに、文章にはない言葉やイメージが浮かんでくる人もいるかもしれません。
いずれにしても、チェックしたすべての才能の組み合わせを見ているうちに、自分の方向性が自然と理解しやすくなっていきます。

『「やりたいこと」の見つけ方』 第5章 より 西剛志:著 PHP研究所:刊

図5−1 10の才能 質問リスト① やりたいこと の見つけ方 第5章

図5−1 10の才能 質問リスト② やりたいこと の見つけ方 第5章

図5−1 10の才能 質問リスト③ やりたいこと の見つけ方 第5章>

図5−1 10の才能 質問リスト4④ やりたいこと の見つけ方 第5章

図5−1.「10の才能」質問リスト
(『「やりたいこと」の見つけ方』 第5章 より抜粋)

図5−2 才能の組み合わせでわかる適職リスト① やりたいこと の見つけ方 第5章

図5−2 才能の組み合わせでわかる適職リスト② やりたいこと の見つけ方 第5章

図5−2 才能の組み合わせでわかる適職リスト③ やりたいこと の見つけ方 第5章>

図5−2 才能の組み合わせでわかる適職リスト④ やりたいこと の見つけ方 第5章

図5−2 才能の組み合わせでわかる適職リスト⑤ やりたいこと の見つけ方 第5章

図5−2.才能の組み合わせでわかる適職リスト
(『「やりたいこと」の見つけ方』 第5章 より抜粋)
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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

私たちの人生を大きく変える魔法の力を持つもの。
それは、誰の心の中にもある「感情」です。

西さんは、美しいものにワクワクする心、人と話すときに感じる喜び、子どもの笑い声に感じる幸せ、好奇心を感じ、誰かのためにと思える瞬間・・・・・・こうした1つひとつの感情にしたがって小さな扉を開いていくと、まるで何かに導かれるように人生の大きな扉が開いていくことがあるとおっしゃっています。

好きで好きでたまらないことをやるときと、嫌で嫌でたまらないことをやるとき。
気分だけでなく、出来栄えや上達具合、時間の流れる速さ、何から何まで、天と地の差がありますね。

自分は何が好きで、何に関心を持ち、何に惹かれるか。
なかなか気づかないものです。

「やりたいこと」という、心の奥底に眠る宝物。
本書は、それらを探し出す“ツルハシ”のような存在です。

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