【書評】『原因と結果 36の法則』(ジェームス・アレン)
お薦めの本の紹介です。
ジェームス・アレンさんの『原因と結果 36の法則』です。
ジェームス・アレンさん(James Allen、1864年 – 1912年)は、英国生まれの哲学者です。
父親の死によって、15歳で学校を退学して以降、さまざまな職につきながら独学で学び、38歳の時に執筆活動に専念し、数々の名著を遺しています。
菅靖彦さんは、翻訳家、セラピストです。
癒やし、自己成長、人間の可能性の探求をテーマに多数の著作、翻訳、講座を手がけられています。
自分の人生を作っているのは「自分自身」である
ジェームス・アレンさんが亡くなったのは1912年。
死後100年以上経った今でも、アレンさんの著作は人気を失わず、世界中で読み継がれています。
とくにアレンさんの思想のエッセンスがコンパクトに凝縮された著書、『As A Man Thinketh (原因と結果 36の法則 心のおもむくままに)』は、自己啓発の古典として永遠のベストセラーとなっています。
アレンさんの考え方の基本は、「自分の人生に責任を持つ」ことです。
自分の人生を作っているのは、外でもない「自分自身」です。
菅さんは、わたしたちが心の中に抱く思いや考えがわたしたちの人生を作っているのだということを、アレンはシンプルな言葉で、さまざまな角度から語りかけて
くると述べています。
本書は、「原因と結果の法則」を36の法則に分け、菅さんが一つ一つに短いエッセーを添えて一冊にまとめたものです。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「思考」が人間を創る
第1の法則
人は心の中で考えている通りの人間である。
この言葉は旧約聖書の箴(しん)言第23章7節から取ったものです。新約聖書のヨハネの福音書第1章の冒頭にも「はじめに言葉ありき」という文章があります。西洋には古来からロゴス(理性、論理、言葉)を重視する根強い伝統があり、ジェームス・アレンもそうした伝統の影響下にあることは間違いありません。
「思い」や「思考」を重視する姿勢は、現在、ブームになっている自己啓発の作家たちに共通して見られる特徴だと言っていいでしょう。「引き寄せの法則」の原点にあるのも「思考」です。
アレンが傾倒したラルフ・ウォルド・エマソンも「人は四六時中考えている通りの人間になる」と述べていますし、自己啓発の巨人と言われるナポレオン・ヒルも「思考は現実化する」と述べています。私が訳した『ザ・マスター・キー』(チャールズ・ハアネル著、河出文庫)という自己啓発の古典書の中にも、「あらゆる思考は原因であり、あらゆる状態は結果なのです」という言葉がでてきます。『原因と結果 36の法則』 第1の法則 より ジェームス・アレン:著 菅靖彦:訳 河出書房新社:刊
人の行動や話す言葉は、すべて「思考」から始まっています。
前向きな思考からは、前向きな言葉と行動が、後ろ向きな思考からは、後ろ向きな言葉と行動が生まれます。
「思考」が「現実」を引き寄せると言えます。
自分自身の思考を見張って、ネガティブな考えを一つずつ潰していくことが必要です。
人生で起こる出来事に偶然はない
第6の法則
すべての人間は
存在の法則によって
今いるところにいる。
人生で起こる出来事に偶然の要素は一切ない、とジェームス・アレンは断言しています。自分を今いるところに連れてきたのは、ほかでもない自分自身の思考だというのです。
これはあたりまえのことのようにも思えますが、自覚しているのといないのとでは、人生に大きな差が出てきます。
還暦を迎えた年、わたしははじめて中学校の同窓会というものに出かけました。40人ほど集まったでしょうか、みんな同じ年齢なのに、老け方がまったく違うのにびっくりさせられました。
(中略)
溌剌(はつらつ)とした若々しさを保っていたのは、簡単な言い方をするなら、声が大きくて、明るい性格の人です。負けず嫌いの人もそうです。そういう人たちに共通しているのは、普段からエネルギーを一杯使っているということです。つまりエネルギーの巡りがいいのです。
一日に換算すれば、ほんのちょっとした違いかもしれません。でも、それが5年、10年、20年となると、莫大な違いになってくるのです。
このことは日々の努力にもあてはまります。人よりも毎日、一歩先に進む人は、10年で3650歩、20年で7300歩先に進むことになるのです。『原因と結果 36の法則』 第6の法則 より ジェームス・アレン:著 菅靖彦:訳 河出書房新社:刊
人生は、「今」この瞬間が積み重なって形づくられています。
人生の節目、節目で決断をして(あるいは決断せずに)進んできた。
だから、自分が今この場所にいるということ。
お昼に何を食べるか、休みに誰と会うか、余暇に何をするか。
そんな小さな選択の積み重ねが「行き先」を決めるといっても過言ではありません。
どんなときもにも意識的に決断することを習慣にしたいですね。
目標に照準を合わせて邁進せよ
第20の法則
目標に思考の照準を合わせて
邁進(まいしん)することこそ、
セルフコントロールの王道であり、
真の意味での思考の集中である。
ジェームス・アレンが正しい思考の正しい操縦法を身につけることの大切さを力説したのは、「ほとんどの人の思考の船が、人生の大海を『漂流する』にまかせられる」からです。行きあたりばったりの考えで行動している人が多いということです。何事か成し遂げるためには、「目標に思考の照準を合わせて邁進する」必要があります。
「そんなことはわかっているさ。でも、いろいろと誘惑が多くて、思い通りにならないんだ」と思う人もいるかもしれません。誘惑についてアレンは面白いことを言っています。
「誘惑されるということは、もはや動物的次元で生きていないことを意味します。なぜなら、誘惑が存在すること自体、より純粋な状態を求める葛藤があることを意味するからです。野獣のレベルで生きている人間は、感覚的な快楽しか追い求めません。動物的な状態が心地よく思えなくなったとき、人間は悲しみの中でより高尚なことを考えるようになりました。地上的な喜びを奪われてはじめて人間は天上的な喜びに憧れるようになったのです」
アレンは誘惑を自分の弱さがどこにあるかを気づかせてくれる警告のようなものとしてとらえているのです。『原因と結果 36の法則』 第20の法則 より ジェームス・アレン:著 菅靖彦:訳 河出書房新社:刊
「目標に照準を合わせて邁進する」
その意味は、目標を妨げるものを意識的に遠ざけるということです。
邪魔な考えや思考が入ってくる「隙間」をなくす。
そのためには、目標達成のためにすべきことに集中する必要があります。
「目標」がなければ、それを妨げるもの、つまり「誘惑」も存在しない。
「誘惑」は、自分自身が乗り越えるべき壁の存在を教えてくれています。
「自分の弱さがどこにあるかを気づかせてくれる警告」
誘惑をそのようにとらえて、自分自身を知る手がかりにしたいですね。
「心の静けさ」を追い求めよ
第36の法則
わたしたちが心の静けさと呼ぶ、
最高の落ち着きを 身につけることが、
わたしたちの行き着く
最後の到達点である。
晩年近くに書かれた『Above Life’s Turmoil(人生の静寂と秩序)』(ジェームス・アレン全集第5巻『揺るぎないしあわせの道』所収、ソフトバンク・クリエイティブ)の中にでは、自我を克服した人間を「不死なる人間」と呼び、次のように語っています。
「不死の存在になることは、今、この世で起こりうるもので、死後に起こる観念的なできごとではありません。それははっきりした意識のある状態です。不死の人の目には肉体の感覚、常に揺れ動き休まることのない心、人生を取り巻く環境やそこで起こるできごとなどが、はかなく、またそれゆえに実体のないものに映ります。
不死の存在になれば時間に支配されることはなく、時間という概念の中でその姿を見られることもなくなります。つまり永遠なる存在となるのです。時間が常に今ここにあるように、永遠も今ここにあります。時間にとらわれた、不満ばかりのはかない人生を作り出すのは自我です。ですから、自我を克服することで、人は自ら永遠であることを知り、その中で生きていくことができるのです」『原因と結果 36の法則』 第36の法則 より ジェームス・アレン:著 菅靖彦:訳 河出書房新社:刊
「自我を克服することで、死を乗り越えた状態」は、仏教でいう悟りの境地と同じです。
西洋の思想だけでなく、世界中のあらゆる宗教、思想を研究したアレンさんらしい発想ですね。
幸せは、「心の状態」であり、心の幸福は人間の心の中にしか存在しない。
何ごとにも支配されず、何ごとにも動じることのない「心の静けさ」を手に入れること。
それが「不死の存在」になることであり、何にも縛られない自由な存在となるという意味です。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
この宇宙には、万物に例外なく働いている法則があります。
最も分かりやすい例が、「万有引力の法則」などの物理的な法則ですね。
その他にも、世間一般にはまだ浸透していない、多くの普遍的な法則が存在します。
本書で取り上げられている「原因と結果の法則」も、その中のひとつです。
アレンさんがおっしゃっていることは、100年以上経った今でも、多くの人が形を変えつつも、繰り返して強調していることです。
「原因と結果の法則」が成立するということは、自分自身に起こるできごとはすべて自分自身が作り出していることを認めることになります。
自分の人生の責任は、すべて自分自身にある、と覚悟を決めること。
それが、本当の意味で、自分の人生を生きる第一歩となるということです。
結果を変えるために、原因を変える努力を少しずつでも続けていきたいですね。
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