【書評】『炭水化物の食べすぎで早死にしてはいけません』(江部康二)

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 お薦めの本の紹介です。
 江部康二先生の『炭水化物の食べすぎで早死にしてはいけません: 生活習慣病を予防&改善する糖質制限食31のポイント』です。

 江部康二(えべ・こうじ)先生は、糖尿病治療が専門の医師です。
 肥満・メタボリック症候群・糖尿病克服などに画期的な効果がある「糖質制限食」の体系を確立されたことで有名です。

「五大疾病」は糖質制限で予防できる!


 がん・脳卒中・心臓病・糖尿病・精神疾患
 2011年に厚生労働省が、「日本人に多い病気」として発表した、いわゆる「五大疾病」の増加は重大な社会問題となっています。

 これらすべての病気に対して有効といわれている療法が、「糖質制限食」です。

 江部先生は、十年を超える年月において糖質制限食を指導してきた経験から、多くの現代病の背景には糖質過剰な食習慣があると確信しています。

 糖質とは、ほぼ「炭水化物」のことで、砂糖などの糖類だけでなく、白いご飯やパンなどの穀物類、うどんや蕎麦(そば)などの麺類なども含みます。

 本書は、糖質過剰が生活習慣病を引き起こす理由、糖質制限食がそれらを予防・改善するメカニズムを解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「糖質過剰元凶説」を裏付ける研究


 近年、先進国では、「肥満」が関わる生活習慣型のがんが急増しています。

 生活習慣型のがんの元凶と疑われているのが、「高血糖」「高インスリン」です。

 高インスリン血症も高血糖も、肥満すると起こりやすくなりますが、この二つに発がんリスクがあることが研究によって明らかになっています。

 肥満、高インスリン血症、高血糖が生活習慣病型がんと関連しているという研究は、多数あります。
 高インスリン血症については、カナダのサマンサ博士が2005年の米国糖尿病学会で、体内のインスリン濃度が高くなるとがんの進行や死亡率が高まると示唆していますし、2007年に日本の厚生労働省研究班もインスリンの値の高い男性は最大で三倍程度大腸がんになりやすいとする研究を発表しています。
 また、高血糖については、2007年と2011年に国際糖尿病連合が「食後高血糖は発がんに関与している」と結論しており、権威ある専門誌に発表された信頼性の高い疫学調査が複数あって、その根拠となっています。
 さらに、肥満に関しては、既にお話した2007年の世界がん研究基金の報告に、次のような結論があります。
肥満が食道、膵(すい)臓、大腸、乳房、子宮体部、腎臓のがんでリスクを確実に上げる。おそらく胆のうがんのリスクも上げる」
 このように、高インスリン血症、高血糖、肥満はいずれも生活習慣型のがんの要因であると考えられているのですが、糖質制限食ならばこの三つがいずれも解消されますから、理論的には予防できる可能性が高いわけです。
 一方現時点では、糖質制限食によって生活習慣病のがんが予防されたとする確実な論文は出ておらず、研究が進められているところです。
 ただ、動物実験ではすでに、糖質制限食(ケトン食)ががんを予防したとする研究結果が発表されていますし、人についても2010年にアメリカのタフツ大学分子心臓病学研究所のカラス理事らが、「HDLコレステロールの高い人は発がんのリスクが大幅に下がる」とする研究結果を『米国心臓学会誌』に発表しています。
 ちなみに、HDLコレステロールとはいわゆる「善玉コレステロール」のことで、糖質制限食ではHDLコレステロールは高まりますから、間接的にではありますが、この食事療法によりがんのリスクを下げる可能性があると示されているわけです。

 このように、肥満、高インスリン血症、高血糖により発がんの危険が高まることについては科学的な証拠があります。
 そして、この三つを解消する糖質制限食に発がん予防の可能性があることは、科学的な研究によって証明されつつあるのです。

 『炭水化物の食べすぎで早死してはいけません』 第1章 より 江部康二:著 東洋経済新報社:刊

 炭水化物の摂取を減らすことで、発がんの大きなリスクとなる、高インスリン血症、高血糖、肥満の三つを同時に防いでくれます。

「備えあれば憂いなし」
 普段の食事から意識したいですね。

「動脈硬化」は糖質過剰で悪化する


 糖質の取り過ぎは、動脈硬化の危険性も高めます。
 その理由は、「インスリン」にあります。

 食事で糖質を摂るとインスリンをその分だけ多く必要とします。インスリンは血糖値を下げる作用を持つ唯一のホルモンですが、ほかにも様々な作用を持っていて、インスリンが出れば出るほど、体内の代謝が不安定になりやすくなります
 特に、インスリンは血糖を体脂肪に変える、中性脂肪の分解を妨げるという働きもします。そして血圧や動脈硬化の悪化にもインスリンが関与しています。
 つまり、肥満や動脈硬化を起こしやすくするホルモンでもあるわけで、糖質を多く摂り過ぎると身体の資質・血管状況が悪くなってしまいます
 インスリンは血糖値が上がるとそれだけ多く必要になります。そして、食事によって血糖値を上げるのは糖質のみです。脂質やたんぱく質を摂っても血糖値が上がることはありません
 長年、たんぱく質や脂質を摂っても血糖値が幾分か上がると誤解されてきたのですが、最近の研究で間違いだったことがはっきりと確かめられていて、現在の欧米では食事の栄養素で血糖値を上げるのは糖質だけだと公式に認められています。
 糖質を摂っただけ必ず血糖値が上がり、それだけ多くのインスリンが必要となり代謝を乱れさせて、脂質状況を悪化させることになるのてす。
 逆にいえば、食事の糖質が少なければ少ないだけインスリンも少しで足りるので、代謝の乱れも起こらず、動脈硬化につながる脂質状況の悪化を招かずに済むわけです。
 動脈硬化は食事のあぶらではなく糖質の過剰で悪化します。最新の医学研究で証明されているのですから、これまで間違った思い込みは捨てるべきです。

 『炭水化物の食べすぎで早死してはいけません』 第2章 より 江部康二:著 東洋経済新報社:刊

 動脈硬化は、高血圧や心筋梗塞、脳梗塞などの主要な原因です。

 これまで動脈硬化の元凶とされていたのは、肉などに含まれる脂肪(動物性脂質)でした。
 しかし、最近の研究によると、動物性の脂質が動脈硬化の発生率に影響を与えないとのこと。

 血管を若々しく保つためにも、糖質は少なめにした方がよいということですね。

炭水化物を食べなければ「食後の眠気」はなくなる


 日本で急速に増えて社会問題となっているうつ病や統合失調症。
 これらの精神疾患にも、糖質の取り過ぎが悪影響を及ぼしています。

 糖質制限食によって、うつ病などの精神疾患が改善した例は珍しくありません。

 臨床の現場で私が経験してきた事実からいうと、最近増えているこうしたレベルのうつ状態やうつ病ならば、糖質制限食でかなり改善が期待できます
 それというのも、糖質過剰な食生活を続けていると、精神状態を不安定にするという事実があるからです。
 糖質を摂ると血糖値が大きく変動しますが、実は、血糖値の急激な上下動は、意外なほど、大きく心理を不安定にしているのです。
 例えば、食後に眠くなる経験を、皆さんがなさっているでしょう。あまりに日常的な出来事なので、食事を摂ると眠くなるのを当たり前だと思っている人も多いかもしれません。
 しかし、これは当たり前ではなかったのです。
 実際、糖質制限食を実践すると、食後の眠気が無くなります。北九州市で学習塾を経営している三島学さんという方が糖尿病の治療として糖質制限食を始めたところ、血糖値が正常になったのはもちろん、食後の眠気が無くなったそうです。
 そこで、ご自身の指導している子供たちにも勧めたところ、やはり食後の眠気が無くなり、勉強がはかどるようになって、偏差値が平均で9も上昇したと教えてくれました。
(中略)
 考えてみれば、単に食事をしたからといって必ず眠くなるというのは、おかしな話です。
 人類がまだ狩猟採集生活をしていた頃、食事をするたびに眠気に襲われていたのでは大型の肉食獣の餌食になりかねません。そんな危険な特徴をもし持っていたのなら、人類は今日まで生き残れなかったはずです。
 大量の糖質を口にすることのなかった大昔の人々には、食後の昼寝など必要がなかったと考えるのが自然でしょう。
 つまり、食事そのものが原因なのではなく、現代の糖質を大量に摂る生活が眠気を起こさせ、頭をぼうっとさせていると、考えられるわけです。
 眠気や頭をぼうっとさせるという事実を見てもわかるように、糖質過剰による血糖値の大きな変動は、精神に好ましくない影響を与えているのです。

 『炭水化物の食べすぎで早死してはいけません』 第3章 より  江部康二:著  東洋経済新報社:刊

 糖質の過剰摂取による血糖値の大きな変動が、そのまま精神の不安定につながります。
 とはいえ、糖質制限が精神疾患の予防や改善につながるというのは驚きです。

 仕事中、午後頭がボーッとして集中できない方や昼食後の眠気に悩んでいる人は、試しに昼食のご飯の量を減らしてみるのもいいですね。

多すぎる血糖が血流を悪くするメカニズム


 糖質を摂り過ぎると病気になる主な理由は、以下の二点です。

  • 糖質を取りすぎると血流を悪くする。
  • 糖質過剰はインスリンの大量分泌を招き、代謝を大きく乱す。
 江部先生は、糖質の取りすぎが血流を悪くする理由を以下のように説明しています。

 糖質を摂り過ぎると血流を悪くするのは、まず、高血糖そのものが血液をネバネバさせてしまうからです。
 血糖とは血液中のブドウ糖のことですが、ブドウ糖には砂糖と同じような性質があります。
 血液中には、赤血球やブドウ糖やたんぱく質が流れていて、お互いに結合する傾向があります。
 例えば、血液の赤い色の元である赤血球の中に含まれているヘモグロビンに血糖がくっつくとグリコヘモグロビンが生じます。
 過剰な血糖は、糖化反応により血管壁のコラーゲンなど様々なたんぱく質に付着し、血管の内側の皮にへばりついて、血液の流れを邪魔するのです。
 ちょうど、濃度の高い砂糖水がネバネバするように、血液のブドウ糖の濃度が高くなるとネバネバと血管の内皮にくっつくわけです
 多すぎる血糖は身体の中で様々なたんぱく質などにへばりついて、残りカスのようなものを作ってしまいます。
 グリコヘモグロビンもその中間産物なのですが、このカスは終末糖化産物と呼ばれ、AGEという略称を一般に使います。
 血糖値が高くなりすぎて180mg/dlを超えると、体内にAGEが作られ、このAGEEが血管の内側の皮にへばりつくと、動脈硬化の元になります
 しかも、厄介なことには、AGEはいったんできてしまうとなかなか消えず、動脈硬化の元としてずっと残り続けるのです。

 さらに、高血糖にはもう一つ、血管狭窄(きょうさく)を起こさせてしまう動脈硬化のリスクがあります。それは酸化ストレスです。
 血糖値が180mg/dlを超えると活性酸素が発生します。活性酸素は人体に様々な悪さをするもので、酸化ストレスの増加はその一つです。
 酸化ストレスが増すと血管が傷つきやすくなり、傷ついた部分が以前より狭く塞(ふさ)がりやすくなるのです。

  • 血糖が高いとネバネバとして、血液が流れにくい。
  • AGEができて、動脈硬化の元になる。
  • 活性酸素の発生で酸化ストレスが増し、血管が傷ついて狭窄になりやすくなる。
 高血糖になると、これらの理由で血流が悪くなるのです。

 『炭水化物の食べすぎで早死してはいけません』 第5章 より 江部康二:著 東洋経済新報社:刊

 高血糖は、自覚症状がほとんどないまま進行する症状です。
 放っておくと糖尿病に罹(かか)るリスクが高まるだけでなく、様々な生活習慣病の元になります。

 間食や甘い物を極力控えるなど、日頃から糖質過剰を防ぐよう心がけること。
 また、定期的に血液検査を受けて自分の血糖値の状態を把握しておきたいですね。

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 三大栄養素のひとつの「炭水化物」が、実は生活習慣病の根源だった。
 なかなか衝撃的な事実です。

 人類が誕生してから約七百万年といわれています。
 しかし、人間がたくさんの糖質を摂るようになったのは、一万年ほど前。
 小麦や米の栽培が始まった時代からです。
 それまでは動物や魚の狩猟、貝や木の実の採取による、肉や魚を中心の食生活でした。

 人間はもともと糖質過剰に適応した体ではありません。
 糖質の過剰摂取に加えて、交通手段の発達による運動不足が重なり、さまざまな生活習慣病が急激に増え始めたというわけです。

 ご飯の量を減らす。飲むビールの量を減らす。お菓子は食べない。
 炭水化物の摂取を減らす方法はいくらでもあります。
 できることから少しずつ習慣にしたいですね。


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