【書評】『名医が教える「便秘」を治す15の法則』(松生恒夫)

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 お薦めの本の紹介です。
 松生恒夫先生の『名医が教える「便秘」を治す15の法則』です。

 松生恒夫(まついけ・つねお)先生は、大腸の内視鏡検査などがご専門の内科医です。

便秘の種類と分類法について


 便秘は、「急性便秘」「慢性便秘」に分けられます。

 健康上、問題なのは、「慢性便秘」の方です。
 慢性便秘は、一般的に以下のような分類をされます。

 慢性便秘には、症候性便秘と常習性便秘があります。症候性便秘とは、腸管や腸管の外にできた腫瘍(がんも含まれる)、腸管の癒着などによる便秘です。常習性便秘とは、症候性便秘でない場合に診断され、「便秘の状態が習慣的になったもの」と定義されています。
 さらに便秘は次の三つに分類されています。

 ①弛緩(しかん)性便秘:腸の筋力が衰えて動きが鈍くなるために、便を押し出すことが困難になって起こる。
 ②直腸性便秘:直腸に便が送られるとそれが刺激となって便意が起こるが、便意を我慢し続けることで次第に便意が感じられなくなり、起こる。
 ③痙攣(けいれん)性便秘:ストレスから自律神経のバランスが崩れ、大腸に痙攣が生じて、便の送り出しがうまくいかなくなることから起こる。

 『名医が教える「便秘」を治す15の法則』 第Ⅰ章 より 松生恒夫:著 平凡社:刊

 松生先生は、日常の診断でよくみかけるのは、①もしくは②、または①と②が合併した病態と指摘し、便秘の原因となる障害を、

「小腸、結腸・直腸、肛門、消化管内容物、ストレス」

の五つの要素に分類し、特定する独自の方法を考えました。

 本書は、松生先生が考案した新しい便秘の分類法を用いて腸機能を回復し、便秘を解消するための方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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明治以降の「食の三大革命」


 日本人の腸の不調や病気が増加した大きな原因のひとつ。
 それは、「腸に悪い食事」です。

 日本人の食は、ここ150年に大きな変革を三回経験しました。まず一番目は、幕末・明治維新によって西洋に触発された「肉食の解禁」です。それでも1950年前後までは、肉食・乳製品とも摂取量がそれほど多くなかったのです。しかし、1960年以降から現在まで、これらの摂取量は増加の一途をたどっています。そして肉食が急速に広がり、ヨーグルトが普及しはじめた1965〜1970年代辺りが大きな変化です。三番目の大きな変化は、ファストフード・コンビニ食・中食(なかしょく・できあいの惣菜を買ってくる)などがごく一般的になってきた2000年以降ということがいえそうです。
 これを私は、明治以降の「食の三大革命」と考えたのです。

 『名医が教える「便秘」を治す15の法則』 第Ⅰ章 より 松生恒夫:著 平凡社:刊

 動物性タンパク質の摂取量が増加して起こるのは、便秘だけではありません。
 結腸・直腸がん、胃がんなどの発生率が高まるという報告もあります。

 体質改善は、まず日々の食卓から改善していきましょう。

「内臓感覚」の低下と便秘の関係


 胃や小腸や大腸を代表とする、消化管などの内臓。
 それらには、皮膚などと異なった種類の感覚があります。

 これを「内臓感覚」といいます。

 内臓感覚には、臓器感覚と内臓痛覚があります。
 臓器感覚には、空腹感、膨満感、口渇(こうかつ)、悪心(おしん)、便意、性感覚が含まれます。例えば、便がS状結腸から直腸に移行すると便意が生じ、さらには同時に直腸反射が起こり、内外肛門括約(かつやく)筋が弛緩して排便につながっていくわけです。つまりは、特定の臓器の存在、状態を意識して欲求を生じ、それを満たす行動を起こすこととなるのです。この欲求や行動との関係が臓器感覚のポイントなのです。
 ところで、臓器感覚は普段は感じない存在を意識するものなのですが、その感覚の種類は皮膚感覚や視聴覚などとはまったく異質で、感覚を感じた具体的な場所をうまく提示できない漠然とした感覚なのです。
 内臓痛覚とは、臓器感覚と異なり、皮膚痛覚や関節の痛みである深部痛覚と共通範囲内と考えられています。しかし、内臓痛覚は皮膚感覚とは異なり、痛む場所が比較的明確ではないのです。内臓痛覚の痛覚受容器は、自由神経終末で、腸のように内腔をもつ臓器では急激な腸の進展や強く激しい収縮により痛みを引き起こすといわれています。
 これは、強い機械的刺激による局所の虚血、刺激による発痛物質の放出によって自由神経終末が刺激され痛覚となると考えられています。

 『名医が教える「便秘」を治す15の法則』 第Ⅲ章 より 松生恒夫:著 平凡社:刊

 内臓感覚が低下すると便意が減少または消失し、便秘になりやすいです。

 下剤の服用量が多い、または、服用期間が長い。
 そんな人は、内臓感覚が低下しやすい傾向があります。

 一度低下した内臓感覚は、なかなか回復しません。
 下剤の服用でその場しのぎをしている人は、根本的な治療を始めたほうがいいです。

オリーブオイルが便秘に有効な理由


 昔から便秘には、「オリーブオイル」が有効だといわれています。
 その理由は、オリーブオイルの主成分であるオレイン酸が腸管内に多量に残り、腸管内の内容物と混在し便が柔らかくなり、排便の促進につながると考えられているためです。

 私は患者さんに、オリーブオイルを摂取する時には便のもとになる繊維を多く含んだ食物を一緒に食べるように指導しています。このことも排便の改善につながるのはないかと考えられます。ですので、このオリーブオイルの性質を利用して、朝食時にフランスパンやライ麦パンなど、またトマトサラダにオリーブオイルをかけて食べたりすることが、腸神経をより活発に、元気にさせると勧めているのです。
 また、下剤を常用していなくても、時々便秘を認めるような人は朝食時にオリーブオイルを5〜10ml程度、便秘の程度に応じて摂取すれば良いと思われます。下剤を常用している便秘症の患者さんには、一定期間、同一の下剤を服用していただき、その後オリーブオイルを1日1回朝食時に30ml摂取していただいています。そして、その結果について検討したところ、大腸メラノーシスを伴う比較的強い便秘症の患者さんでも、90パーセント以上の人で下剤の減量が可能となり、硬便の性状が普通便にまで改善することが認められました。
 また、大腸メラノーシスのない患者さんも同様で、なかにはオリーブオイル単独で良好な結果が得られた方も認められました。このように全体で良好な結果がえられましたが、長期的な経過観察が必要と考えています。

 『名医が教える「便秘」を治す15の法則』 第Ⅴ章 より 松生恒夫:著 平凡社:刊

 野菜などの食物繊維とオリーブオイルの組み合わせ。
 ぜひ日々の習慣にしたいですね。

ストレスとリラックス効果


 腸を良好に保つためには、食生活の改善と同様に心身のリラックスを保つことも重要です。

 ストレス状態では、心身が緊張モードとなり交感神経が優位な状態となります。
 すると、胃腸の運動が低下し、食欲の低下や便秘などの症状が起こりやすいです。

 一方、緊張が緩むと、心身ともにゆったりとした状態になります。
 副交感神経の働きが活発になり、食欲が増進し、排便もスムーズになります。

 S状結腸から、直腸、肛門までは、自律神経系である交感神経系と副交感神経系が複雑に関与しています。つまり、この部位の交感神経が緊張していると、排便が上手くいかなくなるのです。
 便が直腸を通過して肛門から排出されるには、トイレに行って、しゃがんで腹圧をかけて排便するという四つの段階が必要です。ここで重要なのは、直腸自体の動きがスムーズなことです。というのは、便が直腸内を下りると、この刺激が神経を伝わる信号となって直腸壁から骨盤内臓神経を経て脊髄にいくからです。その後、脊髄から信号が発生して、これが骨盤内臓神経を逆に流れて直腸に届き、この信号で直腸壁が収縮し、排便に至るのです。
 ところが、過大なストレス、情動的不安、恐怖などで、交感神経緊張によって骨盤内臓神経が障害を受けることがあり、そのために排便障害を招くことも多いのです。その意味からも、排便にはストレスを低下させるリラクゼーションが必要になってくるのです。

 『名医が教える「便秘」を治す15の法則』 第Ⅴ章 より 松生恒夫:著 平凡社:刊

 ストレスが、いかに体に対して悪影響を及ぼしているか、ということです。
 副交感神経を活発化するリラクゼーション法には、呼吸法、瞑想法、自律訓練法、ヨーガ、禅などがあります。

 自分に合ったリラックス方法を、いくつかマスターしておくこと。
 それが、便秘を防ぐカギになりますね。

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 ひと口に「便秘」といっても、その原因はさまざまです。
 まずは原因となっている障害を探し出すことが大事です。

 便秘は、悪い生活習慣が積み重なって、長い期間をかけて悪化する病気です。

 体質改善や食習慣や運動習慣の改善など。
 本気で治そうとしたら、それらを通して地道に取り組むしかありません。

 放っておくと不快感が続くだけでなく、もっと重大な病気の引き金にもなります。
 早め早めの対処が肝心ですね。


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