【書評】『カイジ「命より重い! 」お金の話』(木暮太一)

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 お薦めの本の紹介です。
 木暮太一さんの『カイジ「命より重い!」お金の話』です。

 木暮太一(こぐれ・たいち)さん(@koguretaichi)は、経済ジャーナリストです。
 現在は、多くの講演活動を行なうかたわら、ビジネス書も多数書かれるなど、多方面でご活躍中です。

日本人は「マネー・リテラシー」を学ぶべき


『カイジ』とは、多額の借金を抱えたことをきっかけに、ギャンブルの世界にのめり込んでいく主人公、伊藤開司(いとうかいじ)の活躍を描く大人気漫画です。

 小暮さんは、この『カイジ』をはじめて読んだとき、この作品はお金についてのとても大事なこと、とりわけ、現代を生きる私たちが特に知っておかなければいけない「マネー・リテラシー」について語っていると感じました。

 マネー・リテラシーとは、「お金に対する知識と理解」のことです。

 小暮さんは、この時代に生きる私たちにとって必要なのは「稼ぐ」「貯める」「使う」「守る」というお金に関する四つの知識だと指摘します。

 これまで、多くの日本人は「稼ぐ」と「節約する(貯める)」の二つは学んできました。
 しかし、残りの「使う」「守る」という二つについては、おざなりのままです。

 小暮さんは、これからすべきことは“使う”と“守る”を知ること、つまりお金の“ディフェンス知識”を学ぶことだと述べています。
 
 本書は、この世の中を生き抜くために重要な「お金の知識」を解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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生活費の借金は、「自己責任」である


 人件費を削減するために、非正規雇用を増やす企業が増えています。

 2012年9月現在、非正規雇用で働く労働者の割合は、35%を突破しました。
 正規雇用の人も、労働時間削減による給料カットをする企業が増えています。

 収入は減ることはあっても、増えることはないと考えておいた方がいいでしょう。

 だからといって、

「こんな給料では生活できないから、消費者金融からお金を借りなければならない」

 このような考えは、甘えでしかありません。

「生活費が足りない」というとき、自分の生活を振り返って、こんな思考に陥っていないかチェックしてみてください。
 たとえば、ストレス発散とか、周囲とのかかわりが欲しくてついお金を使いすぎてしまう。様々な事情で給料が減ったにもかかわらず、かつての生活レベルを維持したくてついお金を使いすぎてしまう。
 でも、そのような目的で使うお金はもらっていないのです。そういったことは、あなたがもらっている給料の必要経費には計上されていません。
 そうしているうちにお金がなくなり、明日の食費がないことに気づきます。「どうしよう・・・・」と深く落ち込んだときに、テレビで消費者ローンのCMをみる。
「給料日まであと5日だから、1万円だけ借りて、なんとかしのごう。1万円だったら大丈夫なはず」と考えてドキドキしながらお金を借ります。
 必要な手続きを済ませれば、その日のうちに“キャッシュカード”のようなものをもらえ、それでお金を“引き出す”ことができます。多くの消費者ローン利用者が「お金って、こんなに簡単に借りられるんだ!」と感じるといいます。
 なにしろ、カードを入れて金額を入力すれば、いつでも現金が手に入るわけですから、こんな夢のような話はありません。それでどんどん借金をします。
 厳しい言い方になりますが、こうしてふくらんでいく借金はすべて、自己責任と言わざるを得ません。やむをえない事情があって「あなたのせい」と言い切れないこともあります。でも、それも含めて、私たちには「自分自身を守る責任」があります。
 その借金のツケは誰でもなく、自分で払うことになります。それは想像しているよりずっと重く自分の人生にのしかかる。そして誰も助けてはくれません。借金をするということは、そういうことなのです。

 『カイジ「命より重い!」お金の話』 第1章 より 木暮太一:著 サンマーク出版:刊

 給料が減っているのに、金銭感覚が今までのまま。
 それでは、お金が足りなくなるのは当たり前ですよね。

「ちょっとくらい、大丈夫だろう」

 そういう考えが大怪我のもとです。

「自分の身は自分で自分で守る」という意識を強く持ちたいですね。

「単利」と「複利」の大きな違い


 借金をすれば、金利(利子)をつけて相手に返さなければいけません。
 借金の金利設定方法は、大きく分けて、“単利”と“複利”の二通りあります。

「100万円を5%の金利で、三年間借りる」

 その場合の単利と複利の違いは、以下のようになります。

 “単利”とは、もともとの元金にのみ金利がかかる計算方法です。
 100万円を5%で借りるため、年間の利息は5万円(100万円×0.05)です。この段階で、返済しなければいけないお金の合計は105万円になります。
 二年目も金利が発生します。二年目分の金利は元本100万円×5%=5万円です。返済しなければいけない金額は、一年目の105万円に二年目の金利5万円を足して、110万円になりました。
 三年目も同様に、100万円×5%の利息が発生します。三年目終了時点では、トータルで115万円を支払わなければいけないことになります。
 これが“単利”での計算です。もともと借りた金額(元金)にしか金利がかからないというのがポイントです。
 一方“複利”は、発生した利息にも、金利がかかっていきます。どういうことか、具体的に計算していきます。
 100万円を5%で借りると、年間の利息は5万円(100万円×0.05)です。
 この段階で、返済しなければいけないお金の合計は105万円です。ここまでは“単利”での計算と変わりません。
 ですが、二年目の利息は計算方法が変わります。二年目分の利息は、“元本100万円+一年目に発生した利息5万円”の合計105万円に対してかかります。
 つまり、105万円×5%=5万2500円になります。
 そして三年目は、元本100万円に、一年目の利息5万円、二年目の利息5万2500円を足した110万2500円に対して5%の利息がかかるのです。つまり、三年目の利息は5万5125円になります。そして、三年間借りた後に返済すべき金額は、115万7625円になります。

 『カイジ「命より重い!」お金の話』 第2章 より 木暮太一:著 サンマーク出版:刊

 単利と複利の差は、金額が大きくなるほど、期間が長くなるほど効いてきます。
 複利の場合は、借金が雪だるま式に大きくなるので、注意が必要です。

「どうしてもお金を借りなければならなくなった」

 そんなときには、借りたお金につく金利がどちらなのかを確認すること。
 トータルの返済金額をしっかり把握してから借りるようにしたいですね。

参加費が高いゲームは、勝っても負ける


 ギャンブルには必ず、賭けをコーディネートしている主催者(胴元)がいます。
 胴元は、ギャンブルの“親”となったり、“取りまとめ”をしたりします。

 胴元の稼ぎは、参加者の賭け金から出ています。
 つまり、ギャンブルのルールの中に“胴元の取り分”が組み込まれているということ。

 胴元の取り分が多ければ多いほど、そのギャンブルの参加者は勝ちづらくなります。
 胴元の取り分は、競馬や競艇の場合は約25%、パチンコは3〜8%、宝くじは50〜60%です。

 実は、FXや投資信託などの金融商品も、まったく同じ構造となっています。

 投資もギャンブルと同様に、“胴元”がいます。株式投資や投資信託であれば証券会社、FXはFX業者が“胴元”として、あなたがゲームに参加できるようおぜん立てをしています。そして当然手数料を取りますね。
 ギャンブルで胴元の手数料が高ければ参加者が勝ちづらくなるのとまったく同じように、投資でも胴元の手数料が高ければ、それだけで勝ちづらくなります。
 たとえば、投資信託は、投資した金額の2%程度を“管理手数料”として支払わなければいけません。ということは、投資そのものから2%以上の利益が出ていなければ、あなたは損をすることになるわけです。
 投資用マンションを買おうとしているのなら、実際に買う前に、“胴元”がどれくらいの手数料を取っているか調べてみるべきです。
 考えてみれば当たり前ですが、多くの方が見落としているポイントでもあります。もちろん、“参加費”だけで投資の善し悪しが決まるわけではありません。しかし、高い参加費を払っても、なお勝てるかどうか? のチェックは怠ってはいけません。

 『カイジ「命より重い!」お金の話』 第3章 より 木暮太一:著 サンマーク出版:刊

 胴元は、ギャンブルの主催者であると同時に、「ルールを決めている側」です。
 自分たちが儲からない仕組みを作るはずがありません。
 自分たちの利益を確保した上で、参加者を競わせているということです。

 ギャンブルも投資も、仕組みは一緒。
 その認識を忘れないようにしたいですね。

“働きつづける能力”とは?


 将来の不安を解消するのは、“お金”を貯めることではありません。
「働き続けられる能力」を身につけることです。

 経済的な安心感を得るためには、「将来も働きつづけることができるだろう」と自分で思えることが必要です。

 変化の激しい時代、働き続けられる能力として何よりも必要とされるもの。
 それは、スキルや知識よりも精神的なものです。

 小暮さんは、経済的な不安を解消できる人材とは、“変化を怖がらない人材”だと指摘します。

「慣性の法則」という物理法則がありますが、それは人間の行動や心理にも当てはまります。
 動いている人は動き続けますが、止まっている人は、そのまま止まり続けます。

 常に動いている人は、新しく動くことに対して、特に躊躇(ちゅうちょ)しません。ストレスなく次も動き出せます。しかし止まっている人は、なかなか動き出せなくなります。
 かつてはたやすくできていたことでも、ブランクが空いてしまうと気分的にハードルを感じ、大きなエネルギーが必要になります。一度停車した車が一番重たい“一速”から再スタートしなければいけないのと一緒です。

 逆に、常に変化を経験している人は、環境が変化しても、ストレスを感じにくくなります。「いつものことだ」と感じることができます。
(中略)
 将来も食いつなぐために、ある分野の能力を“専門”といえるくらいにまで高めることは難しいことです。そして、仮にそれができたとしても、十年後にその能力が必要とされているかどうかを見極めるのは、至難の業です。ハズレの可能性もあるわけです。
 しかし、変化に慣れておくことは絶対に無駄になりません。
 常に変化を経験している人は、これからの変化にもストレスなく対応できます。「どんな社会になろうとも、自分は生きていける」と思えるようになるのです。

 『カイジ「命より重い!」お金の話』 終章 より 木暮太一:著 サンマーク出版:刊

 お金は使えばなくなります。
 しかし、経験や身につけた技能は一生、その人の財産として残ります。

 同じところに立ち止まらずに、動き続けること。
 何か新しいことにチャレンジし、違った経験をすること。

 それが重要だということです。
 自分の中に“引き出し”をたくさん持っておきたいですね。

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 気がついたら、知らぬ間に“底なし沼”にハマってしまっていた。
 そんな状況に陥ってしまうのがお金の怖さです。

「お金が命より重い」ということはありえないことです。
 しかし、実際には、そのような状況はいくらでもあります。

 お金のために人生があるのではなく、人生のためにお金はあります。

 お金に人生を乗っ取られる。
 そんな事態が起こらないよう、最低限、必要な知識は押さえておきたいですね。


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