【書評】『図解「やっかいな相手」がいなくなる上手なモノの言い方 』(谷原誠 )
お薦めの本の紹介です。
谷原誠さんの『図解「やっかいな相手」がいなくなる上手なモノの言い方』です。
谷原誠(たにはら・まこと)さん(@mtanihara)は、弁護士です。
交通事故、企業法務・事業再生、不動産問題など様々な案件・事件を解決に導かれています。
まわりから「やっかいな相手」が消えていなくなる!
誰の周りにも「やっかいだなぁ」と感じる人は少なからずいるものです。
「あなたの隣に座っている、話がくどい上司」
「取引先にいる、自分勝手な担当者」
「学校にいる、自慢ばかりしてくる友人」
などなど、例を挙げればキリがありません。
もし、そのような「やっかいな相手」を「やっかいではない相手」に変えてしまえるのならば、それに越したことはありませんね。
そのためにまず「やっかいな相手」だと思っている人は、本当に「やっかいな人」なのかどうかということを立ち止まって考えることが必要です。
自分が、やっかいだと「感じてしまう」原因が、相手側だけでなく、自分側にもあるのではないかということです。
しかし、谷原さんによると、「100%相手に非がある」というケースはまれ
とのこと。
依頼人はたいてい、「100%【自分】が正しい」と思い込んで事案を持ち込みます。
しかし、突き詰めると「自分(依頼者)側にも、問題をこじらせた原因がある」ことがほとんどです。
対人関係の摩擦に対処するには、依頼者側と相手側、両方の事情に目を向ける必要が
あります。
谷原さんは、自分と相手、両方の原因を探ってみて、原因ごとに「モノの言い方」を少し変えるだけでいい
と述べています。
本書は、やっかいな相手をタイプ分けし、それぞれ「自分に原因があったときの対処法」と「相手に原因があった場合の対処法」を体系化・図解化してまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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訴訟が「こじれる場合」「収束する場合」
「やっかいな相手」をつくり出している要素は、以下の5つです。
【「やっかいな相手」をつくる5つの要素】
要素① 自分の「感情」や「言動」に問題がある
要素② 相手の「自己評価」が低い
要素③ 相手の「自己中心性」が強い
要素④ 相手が「勝ち負け」で考えている
要素⑤ 相手の「感情」が暴走しやすい「強引に主張する人」をやっかいだと感じたのは、自分の心が弱かったからかもしれません(要素①)。あるいは、相手のタイプ(要素②~要素⑤)がわからずに、対応の仕方を間違えたのかもしれません。いずれにせよ、①から⑤までの要素が重なって、「やっかいな相手」をつくり出しているのです。
このとき、対処する順番は、①が最初です。「自分」と「相手」のどちらのほうが容易に、確実に、変えることができるか、といえば、間違いなく「自分」のほうです。自分の中に原因を探し、原因が見つかれば、それをまず直す。そうすることで、自分も成長します。やっかいな相手との関係も改善し、自分も成長できる。一石二鳥ですね。『図解「やっかいな相手」がいなくなる上手なモノの言い方』 第1章 より 谷原誠:著 角川書店:刊
「やっかいな相手」をつくってしまう原因はそれぞれです。
しかし、突き詰めて考えると、上の5つのパターンに集約されます。
トラブルの根本的な要因として、どれが当てはまるのか。
まず、それをを考えることが問題解決の第一歩になりますね。
変えられるのは「あなたの行動」だけ
「やっかいな相手」への対処法は、次の2つの手順で考えます。
手順① 自分の原因を取り除く・・・・自分の感情、心持ち、考え方を変える
手順② 相手の原因を取り除く・・・・相手に影響を与え、その場の対応を変化させる
自分と相手、どちらに原因があっても、「自分でコントロールできること」に集中すること。
具体的な対処の方法は、相手のタイプによってやり方を変えることが求められます。
例えば「悪口を言う人」への対処方法について。
批判・皮肉・陰口を口にするのは「自己評価」が低いことが原因です。
つまり、批判・陰口を言うのが好きな人は、
- 相手を認める=自分の価値が下がる
- 相手を見下す=自分の価値が上がる
と考えています。
谷原さんは、そのような人への対応について、以下のように説明しています。
①自分の原因を取り除く
まずは、「自分の心」を振り返ってみましょう。
あなたがその人を大切に扱っていなかったから、相手が反撃に転じてきたのかもしれません。自分のほうが無意識のうちに「相手を傷つける発言」をしている可能性は、ありませんか?
自分が悪口を言えば、その報復措置として、「自分も悪口を言われる」ことがあります。
心当たりがある人は、
- 「自分は絶対に陰口は言わない」
- 「批判も皮肉も言わない」
という「自分のルール」を決めておくとよいでしょう。
②相手の原因を取り除く
「自分に自信がない人」(自己評価が低い人)は、
「他人の悪口を言うことで、相対的に、自分の評価を上げようとする」
傾向があります。
「あの会社のAさんはダメだ」と言っておけば、間接的に「自分はダメではない」「自分は間違っていない」ことになるからです。
もし、相手があなたの悪口を言ってきたら、
- 「たしかに、その通りだと思います」
- 「おっしゃるように、自分にもそういうところがあるかもしれません」
と認めてしまえば、相手はそれ以上、辛辣(しんらつ)に振る舞うことはないと思います。
相手に嫌われてもいいから「とにかく黙らせたい」「いなしたい」のなら、
- 「なるほど、それで?」
- 「で、あなたの意見は?」
と質問をして、結論を促します。「批判はするくせに、自分の意見を持っていない人」を相手にする場合、この質問は有効です。
- 「で?」
- 「それで?」
- 「それがどうしたのですか?」
と問いつめていけば、やがて相手は、答えに窮するでしょう。皮肉や陰口に、論理的な理由などないからです。
『図解「やっかいな相手」がいなくなる上手なモノの言い方』 第3章 より 谷原誠:著 角川書店:刊
理由が分からないから相手の言動に対してイライラしたり、怒ったりしてしまうのです。
「やっかいな相手」がどんなタイプなのか。
それを把握して、彼らがどうして「やっかい」なのかを理解して行動する。
そうすれば、相手の感情を逆なでるような対応もせずに済みます。
また、自分も落ち着いた気持ちのままいることができますね。
相手を無理に変えようと思わない。
自分の対応を変えて、相手との関係を変える。
これが人間関係を潤滑にする秘訣ですね。
しつこく勧誘してくる相手の対処法
「やっかいな相手」のひとつに、キャッチセールスや家や職場への勧誘の電話があります。
相手は、その道のプロ。
しつこく勧誘されると、なかなか断りきれないという人も多いでしょう。
谷原さんは、相手が粘り強く交渉・勧誘を仕掛けてくるのは、その人に「隙」があるから
だと述べています。
谷原さんが勧める「しつこく勧誘してくる相手の対処法」は、以下の通りです。
①自分の原因を取り除く
あなたは「断っている」つもりでも相手には「隙」が見えていて、「もう一押しすれば落とせる」と思われているのかもしれません。しっかりと自分の意見を伝えましょう。人の期待に沿うことは「良いこと」です。でも、断ることが「悪いこと」とは限りません。断ることが「自分のためにも、相手のためにもなる」ときだってあります。
断りきれず、同僚の仕事を手伝うことにした。けれど自分の仕事が手一杯で、頼まれ事を終わらせることができなかった・・・・。
これでは、相手にも迷惑をかけてしまいます。「手一杯だからできない」と早めに断っておけば、「手があいている別の人」を探すこともできたはずです。
「断ることにもメリットがある」。断ったとしても罪悪感に苛まれることはありません。②相手の原因を取り除く
訪問勧誘や電話勧誘を断るとき、私はおもに、次の「2つ」の方法を用いています。・「断る理由」は言わない
セールスのプロは「切り返しトーク」に長けています。こちらの「断る理由」を逆手に取って、切り崩してきます。あなた 「生命保険は、もう加入しているので、間に合っています」
営業員 「ということは生命保険が必要だとお考えになっていますね。実は、生命保険は、複数入るのが一般的です。今からその理由をご説明いたします」
あなた 「でも、この商品は、値段が高くて、手が届かない」
営業員 「商品に興味をお持ちいただき、ありがとうございます。高いのは、それだけいい商品だからです! この商品が値段に見合ったものだと納得いただければ、ご購入いただけますね」「断る理由」を相手に伝えると、意に反して、そこ(理由)を突かれてしまいます。ですので私の場合は、理由を聞かれても、よほどのことがないかぎり次のように答えます。
「理由を言う必要はありません。とにかく、契約をするつもりはありません」・「相手のため」に断る
引き受けることが、「自分のためにも、相手のためにもならない」のなら、その場で断ります。そのほうが結果的には、「相手のため」にもなるからです。「買う気はありません。そんな私のために時間をいただくのは申し訳ない。ほかの人に当たっていただいたほうが、私の時間も、あなたの時間も、ムダにならないと思います」
「私のために時間を使うのは、ムダである」「可能性のある人に時間を使ったほうが、あなたのためである」と伝えれば、「しつこい勧誘」を減らすことができるでしょう。『図解「やっかいな相手」がいなくなる上手なモノの言い方』 第5章 より 谷原誠:著 角川書店:刊
相手に付け入る隙を与えないためには、
「優柔不断な態度を見せない」
「はっきりした態度をとり続ける」
ということが一番大切です。
買う気もないのに、ダラダラと引き延ばすのは、相手のためにもなりません。
頭の片隅に入れておきたい対処法ですね。
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人間関係がうまくいかなくなると、人はどうしても自分は「正しい」、相手は「間違っている」と思い込んでしまい、ますます深みにはまっていってしまいます。
人間には感情がありますから、嫌いな人、苦手な人は誰にでもいます。
社会で生活していくうえで、そのような人たちとも付き合っていかなければなりません。
嫌いな人、苦手な人を「やっかいな相手」にしないスキルは、普段の生活をスムーズに過ごすために欠かせない知恵です。
ぜひ身につけて、無用なトラブルを未然に防げるようにしたいものですね。
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