【書評】『これから、どう生きるのか』(本田健)
お薦めの本の紹介です。
本田健さんの『これから、どう生きるのか 〜人生に大切な9つのこと〜』です。
本田健(ほんだ・けん)さんは、経営コンサルタント会社など、複数の会社を経営する「お金の専門家」です。
今まで多くのベンチャービジネスの成功者を育ててきたことでも知られています。
人生には、「正解」はない!
顔かたちが、一人ひとり違うように、それぞれの歩む人生もまったく違います。
人生には、「こうすれば、幸せになれる」という正解はありません。
一人ひとりが、自分自身の幸せを目指すしかありませんね。
使い切れないほどのお金を持っていも、そのお金のために不幸になる人もいます。
逆に、経済的には貧しくても、幸せに暮らしている人もたくさんいます。
変化がはげしく、確実なものがなくなった現代社会では、幸せに対する価値観も多様化しています。
人生での悩みや不安は、年代によってさまざまですが、テーマは不変です。
本田さんは、それらを以下の九つに分けています。
「人間関係」「お金」「家族」「パートナーシップ」「時間」「健康」「運と運命」「生きる目的」
ほとんどの人は、生きている限り、悩みや不安は、完全に消えることはないでしょう。
それでも不安や悩みを抱えながら、幸せに生きることは十分可能
です。
すべては自分次第だということですね。
本書は、上の九つのテーマについて、「自分にとって何が大切なのか?」を考えるヒントを与える一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「ふだんつき合う三十人」があなたの未来をつくる
本田さんは、「いまの人間関係は、ダイレクトにあなたの幸せ度を決める」と述べています。
幸せな人は、自分がえらんだ大好きな人とつき合っています。自分と好みが合う人、話題が合う人、何も言わなくてもわかってくれる人―――そういう人と、ふだんから仕事をしたり、一緒に時間を過ごしたりしているので、ストレスがないのです。
ところで、あなたか日常的につき合っている人は、だいたい30人くらいしかいません。
頻繁に電話をかけたり、一緒にごはんを食べたり、仕事をする人たちの顔を思い浮かべてみてください。彼らの名前を紙に書き出してみるのもいいでしょう。
その30人が、「いい人かどうか」「幸せな人かどうか」「意地悪か意地悪ではないか」「愛でいっぱいかどうか」「豊かかそうでないか」「将来性があるか」ということを考えてみてください。
その人たちが魅力的で素晴らしい人物であるほど、あなたのいまの人生も素晴らしいはずです。あなたのまわりの人と、あなたは、同じような人物のはずです。
楽しく実りの多い人生を生きたいなら、素敵な人と一緒にいることです。
つき合う人をいっぺんに変えるのは難しいでしょうが、「素敵な人たな」と思う友人を、1人ずつ増やしていくことはできます。
家族や仕事仲間は自分でえらべないかもしれませんが、プライベートで一緒に遊んだりする人たちは、100パーセント、あなたが決められます。自分が素敵だなと思う人と過ごす時間を増やしていってください。
やや例えが悪いですが、泥水が入ったコップはきれいな水を入れていくうちに、少しずつきれいになっていきます。
しばらくすると、人間関係が楽しくなってきたことに気づくでしょう。『これから、どう生きるのか』 1 人間関係 より 本田健:著 大和書房:刊
社会生活をしている限り、人間関係のしがらみからは逃れることはできません。
職場の人間関係など、自分の力ではどうにもならないようにみえる関係もあります。
それでも、少しずつつき合う人を変えていく努力は必要です。
「類は友を呼ぶ」ともいいます。
つき合う人を変えることによって、自分自身も少しずつ変わる。
そうすることによって、新しい素敵な出会いを呼び寄せることができます。
どんな人にも、才能は眠っている
本田さんは、どんな人にも才能は与えられている
と考えています。
ただ才能は、大部分が心の地層の奥に隠されたまま
で、ある程度掘り進めないと出てきません。
数十センチ掘っただけで出てくる早熟タイプもいれば、数十メートル掘らないと出てこないために、ある程度掘り進めないと、才能が出てこない大器晩成タイプもいます。それは、その人の個性だといえます。早く掘ればいいかというと、必ずしもそういうわけではありません。早く掘り尽くして、資源が枯渇(こかつ)するタイプの人を、あなたも、ごく身近に知っているのではないでしょうか。
もし、あなたが同じ仕事を長くしていて、しかもそれが本当にやりたいことでなければ、そこから動くことです。自分の毎日に動きをつくることで、才能は見つかります。他の部署に行けるように人事とかけ合うことや転職を考えましょう。
たとえば、経理や事務で才能がくすぶっている人も、営業に行くとパーンと花開くことがあります。もちろん、その逆もあります。
才能が使えるようになると、それだけで、すごくワクワクします。自分の才能を見つけた人が、「退屈な毎日に色がついた」と表現していましたが、素敵な比喩(ひゆ)だと思います。
あなたには、人前で話したり、ものをつくったり、新しいアイデアを思いついたり、人と人をつないだりする才能がきっとあります。演技の才能やアートの才能があるかもしれません。あなたが何歳だとしても、未開発の才能が眠っています。二十代でそれが出てくる人もいるし、六十代になって初めて、それがかたちになる人もいます。
あなたの才能は、ベストなタイミングを待って出てきます。私の場合は34歳で文章を書く才能があることを見つけたわけですが、それまで、本を書くなんて考えたこともありませんでした。私だけでなく、家族、友人、親戚の誰もが予想しなかったことから、それまでの私には、文章を書く才能の片鱗(へんりん)もなかったことがわかります。
自分の才能を見つけること、そして、それを生かすことを人生の最重要課題として考えてみてください。きっとそこから、信じられないような面白い人生が始まります。『これから、どう生きるのか』 3 仕事 より 本田健:著 大和書房:刊
誰にでも、自分でも気づかない才能が心の奥深くに眠っています。
今、「自分には何の才能もない」と考えている人でも、あきらめてはいけません。
大切なのは、自分自身の可能性を信じ続けること。
心の地層を掘り進める作業を止めてはいけないということです。
自分の中に、思いもかけない“宝物”が眠っている。
そう想像すると、ワクワクして楽しみながら続けられますね。
感じ方で時間の速さは変わる
時間は、毎日すべての人に与えられ、使い方は個々人の自由裁量に任されています。
前の日にどんな時間の過ごそうとも、次の日、平等にきっかり24時間が与えられます。
そのため、多くの人は時間という資産を慎重には扱わず、使い方がルーズになりがちです。
本田さんは、時間は、効率よく使うのではなく、あなたが心から楽しいこと、ワクワクすることに使ってください
と述べています。
時間の感じ方は、主観的なもので、過ごし方によって、長さの感覚が全然違います。
嫌な仕事をやっていたら、1分が1時間のように感じられるでしょう。けれども、大好きな人とデートに行くなら、1日が1分のように過ぎるかもしれません。
私は、二十代の頃、いろんな分野で活躍している人たちに会ってお話を聞いてきました。そのときに、「1日が一瞬で過ぎるような仕事をしなさい」と言ってくれた人がいました。それを聞いたとき、「損しているようでイヤだな」と正直思ったものでした。
現在、私は、作家として本を書いたり、何千人もの前で講演をやったりしていますが、そういうときに、まさしく時間が一瞬で過ぎてしまうように感じることがあります。あなたも、ギターを弾いたり、お花を生けたり、アロマオイルを調合したり、料理をしたりするとき、時間が止まったような気分になったことがありませんか?
このクリエイティブなゾーンに入ると、まるでワープしたかのような感覚になります。自分のゾーンに入ったとき、人は至福の体験をします。アーティストやスポーツ選手は、なんとかこのゾーンに入るために、自分なりの儀式をつくって頑張るわけです。
幸せに成功している人を観察してわかったのは、彼らがゾーンを出たり入ったりしていないことです。彼らは、ゾーンのなかで生活しているのです。『これから、どう生きるのか』 6 時間 より 本田健:著 大和書房:刊
「夢中になって作業していたら、あっという間に時間が過ぎていた」
そんな経験は誰にでもあるでしょう。
そのとき一緒にいる人や、やっていることが好きか。
それが時間の感じ方の目安になります。
時間を忘れるくらい夢中で取り組めること。
時間を忘れるくらい楽しい時間を過ごせる友人・仲間をたくさんつくること。
幸せになりたいのなら、そういった努力する必要があるということですね。
思い通りにいかないのが人生
本田さんは、幸せに生きたいなら、「何でも思い通りにいくはずがない」と健康的にあきらめるのも、一つの選択
だと述べています。
思い通りの人生を歩める人は、この世界にはそうそういるものではありませんね。
成功している人の中にも、彼らが自分の望んでいない方向に流された結果、そこでうまくいったケースも多いです。
夢を生きることは大切です。挑戦もせずあきらめるのはもったいないと思います。実際に、あきらめないで、夢を実現してしまう人は、たくさんいます。
でも、現実を冷静に見て別の道を探すことも大事です。そうでなければ、ただの夢追い人になって、満たされることのない人生を生きることになるかもしれません。
弁護士になる、作家になる、料理人になる、歌手になる、独立するといった夢に振りまわされて、何年も人生をストップさせたままの人がいます。そういう人は、自分でも、「ちょっと違うかなぁ」とうすうす感じていたりします。ですが、いったん言い出したことをひっこめられなくなって、ずるずる夢に引っ張られてしまっているのです。
そういう場合は、いったんこれまでの夢に死亡宣告を下して、そこからまったく違う人生をスタートするのも、賢い生き方かもしれません。
実際に、俳優の道をあきらめて実業家になる人、大学の研究者をやめてセールスの世界で成功する人、ビジネスの世界から教育界に転身して多くの人にインパクトを与える人がいます。彼らは、結果的に本来自分がいるべき分野に行ったともいえます。
自分が輝ける分野は、当初思ったのとは全然違う場所にあったりするのです。若い頃には想像もしなかったところで、花が開くことがよくあります。
あなたが幸せに輝くためには、自分の居場所を間違えないことです。いまはあきらめずにがんばるときか、思い切ってあきらめて次に行くのか、悩むところだと思います。
このあたりの見極めが、幸せに生きられるかどうかを左右するでしょう。こればかりは、あなたの直感を信じて、進む道を判断してください。
宿命を運命に変える力は、あなたのなかにあります。『これから、どう生きるのか』 9 生きる目的 より 本田健:著 大和書房:刊
最初から「自分にはこれしかない」と決めつけて、一直線に突き進んでしまう。
そうすると、どこかで立ち往生してしまうリスクも大きくなります。
最初の夢をあきらめたからといって、それまでの努力が無駄になるわけではありません。
どこかで必ず役に立つときがきます。
「もうこれ以上進めない」
そう感じているのなら、それは「新しい道を進みなさい」というメッセージかもしれません。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
「幸せ」とは、具体的な行動や、出来事ではなく、心で感じるものです。
本田さんも、幸せというのは、目標を立てて達成するものではありません。毎日の生活を送っているうちに、「ああ、幸せだなぁ」とふと気づくもの
だとおっしゃっています。
幸せに気づくためには、今の生活のなかでイヤなものを一つ手放し、そのかわりに好きなものを一つ増やすという単純な作業を繰り返していくと、幸せの種が見えて
きます。
日常の中の、ちょっとした喜びや、ワクワクすることを増やしていくこと。
それが、「幸せの種」に水をやる作業になります。
今までの人生の棚卸しをし、仕切り直して、幸せへの第一歩を踏み出したい。
本書は、そのきっかけとするには最適な一冊です。
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