本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『一生お金に困らない「華僑」の思考法則』(大城太)

 お薦めの本の紹介です。
 大城太さんの『一生お金に困らない「華僑」の思考法則』です。

 大城太(おおしろ・だい)さんは、複数の会社経営やベンチャー企業への投資を行うビジネスオーナーです。
 華僑社会で知らない者はいないと言われる大物に師事された経験をお持ちです。
 過酷な修行を積まれて、日本人で唯一の弟子として「門外不出」の成功術を直伝されています。

お金を生み出し続ける華僑の「教え」とは?

「華僑(かきょう)」とは、『長期にわたり海外に居住する中国人およびその子孫』のことです。

 華僑の人たちの特長といえば、「お金儲けが上手」だということ。
 たとえ未開の地でもビジネスの旨味があれば、ためらうことなく出かけてゆく『世界一の商魂民族』です。

 大城さんは、華僑の大物に弟子入りし、1年間厳しい修行の末、免許皆伝となりました。
 その後、医療機器の販売を設立し、師匠に教わったことを愚直に実践して、初年度で1億円稼ぐことができたそうです。

 華僑の教えは決して難解なものではありません。
 非常に合理的で当たり前のことばかりで、しかも極めてシンプル
 だから私たちにも、実践しやすく応用もしやすいです。

 本書は、大城さんが師匠から直接学んだ、華僑の「思考法」と「行動原則」をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「スピードを上げろ」と「ひとりでやるな」が鉄則

 大城さんは、師匠から「10億円作るのなんて簡単」だと聞かされます。
 鉄則となる教えとして挙げているのが、以下の2つです。

「自分のスピードを上げろ」「ひとりでやるな」

 この話には2つの教えが含まれています。
 ひとつは「自分のスピードを上げろ」。
 自分のスピードを上げるのは簡単です。走ればよい。
 私自身、何ごとにおいても「走る」を心がけていただけで、ある中国工場の董事長(とうじちょう、社長に相当)に認められ、メーカー事業の立ち上げに際して多大な便宜(べんぎ)を図ってもらうことができました。
 董事長いわく、「大城はいつも走っている。それが決め手だ」。
 成功を追いかけるのではなく、日々の仕事で走り続けていたら、成功もお金もあとから追いかけてくるのです。まずはだまされたと思って今日から走ってみてください。
 もうひとつは「ひとりでやるな」。
 ひとりでは10年かかることも、10人でやれば1年でできる。シナジー効果でもっと短縮できる可能性もあります。ここで大切になるのが、メンバーの「役割」です。
(中略)
 華僑は基本的に3つの役割の人々でチームを組織し、プロジェクトを進めます。個人にのみ頼らないビジネスモデルとして売っていくのです。

  1. 考える人・・・・(ビジネスプラン策定)
  2. 実行する人・・・・(業務遂行)
  3. お金を出す人・・・・(出資)

 私もこの3つの役割のチームにより、日本では通常あり得ないスピードで医療機器メーカー事業をスタートさせることができました。
 私の役割は、儲かるビジネスプランを「考える人」です。師匠がそのプランをよしとすれば、次に誰を雇うか「実行する人」を決めます。私のプランでは、精鋭の営業スタッフ数人、それと技術サービススタッフが必要です。
 それらをクリアすれば「お金を出す人」を紹介してもらい、すぐにビジネスを始めることができるのです。
 華僑や中国人の資産家は常に投資先を探しているので、儲かる可能性の高いプランであれば大勢が名乗りを上げ、1時間程度の会議で今回お金を出す人が決まります。

 『一生お金に困らない「華僑」の思考法則』 第1章 より 大城太:著 日本実業出版社:刊

 華僑では、「それぞれが自分の得意な分野で能力を発揮すればいい」という割り切りがあります。
 適材適所、非常に合理的な華僑らしいビジネスモデルです。

 個人がさまざまな役割をこなす「オールラウンダー」を求められる日本とは、大きな違いですね。

心を読むために華僑は「口」を見る

 華僑を含めた中国人は、人の目を見ないで話すのだそうです。
 その理由は、「目は作れるから目でウソをつくこともできる」という考えからあるからです。

 相手の心を読みたい時には、どこを見て判断すれば良いか。
 この疑問に対する大城さんの師匠の答えは、「口を見ろ」でした。

 口は目よりもよく動くぶんコントロールしづらく、その人の感情が無意識に現れてしまうのです。
 たとえば取引先にイヤミを言われた人。表情を崩すまいと目は笑ったまま保っていても口がピクッと動く。
 上司に叱られている人。反省しているフリをしても「この上司はバカだ」との本心が口の端の笑いに現れる。
 考え事をしている人。難しい顔をしていても実は何も考えていなければ口が開いている。
 とくに日本人は目を見て話すことが習慣となっているので、口に関しては無防備です。もちろん口の表情を作るのが上手い人もいます。しかし意識して作る口は意識している間しか保つことができません。口角を上げて笑顔を作ったり、女の子が可愛く見えるようにアヒル口を作ったりしますが、そう長持ちするものではありませんね。長時間一緒にいると、相手の素の表情が必ず現れます。
 子どもの頃から「口を読め」と教わっている華僑や中国人は、口を見るだけで相手の性格を見抜きます。私のパートナーの中国人青年も口を見る目は完璧で、初対面の相手でも「あの人はこういう性格」と100%言い当てるのです。恐ろしいですね。
「目を見ろ」と言われて育った私はまだその域には達しませんが、言葉と本心との矛盾くらいは簡単に見抜けます。
 日本人も意識して訓練すれば、ある程度は口を読む能力を身につけることが可能なのです。ただし、やみくもに多くの人の口を観察すればよいというものではありません。効率が悪いだけです。

 口に現れる感情表現は人それぞれですから、口を読みたい相手にターゲットを絞り、まずはその人の口の癖を知ることが重要です。ムッとした時は口を尖らせる、笑う時は大口を開けるなど、素の状態での表現パターンを知っていれば、相手が何かを意図して口を作った時にすぐに見抜くことができます。

 『一生お金に困らない「華僑」の思考法則』 第2章 より 大城太:著 日本実業出版社:刊

 華僑の相手をする場合、向こうがこちらの目を見ていないから「うわの空なのか」と油断したら痛い目を見ますね。

 自分のスキは絶対に見せず、相手のスキはどんな小さなものでも見逃さない。
 ここにも、華僑のしたたかな強さが垣間(かいま)見られます。

「嫌いな人」は自分の弱点を補ってくれる

 華僑のコミュニケーションに欠かせないものが「食事」です。
 相手が誰であれ、目的が何であれ、とにかく食事を共にします。

 華僑はよく大勢で食事会を催し、そのメンバーに必ず「嫌いな人」を数名含んでいます。
 それも、わざわざ自分から嫌いな人に声をかけます。

 大城さんは、華僑がそこまでして嫌いな人とつき合うことの必然性を以下のように説明しています。

 嫌いだと感じる相手は、たいがい自分と違う価値観を持つ人です。
 ビジネスの話をしていても「そこは違う」「その考えは間違っている」などと反発し合って険悪なムードになりがちです。そんな相手とは普通、お互いに距離を置こうとするものです。

 しかし華僑はこう考えます。
 嫌いな人を遠ざけると、考え方も情報も偏る。偏りは判断ミスになる。だから嫌いな人ほどつき合う価値がある。
 嫌い=価値観が違うということは、自分にない考え方や、自分のもとへは集まってこない情報の宝庫であるとも言えます。
 つまり、嫌いな人から得られるものは自分に欠けているもの。偏りや欠乏と言えば栄養素を思い起こしますが、まさに足りない栄養素を補うために嫌いな人ともつき合おうという発想なのです。
(中略)
 ビジネス仲間と考えが食い違った場合も、初めは「ワタシの考えは違う、ワタシはこれでいく」と自分の流儀を通すのですが、結果的に相手のほうがうまくいけば「アナタが正しかったね」と素直に認め、さらに「真似してもいい?」と屈託なく取り入れます。
 とはいえ、もともと気が合わないのですから「嫌いな人は敵になる」可能性も想定しています。
 嫌いな人の動きを把握しておかなければ、突然攻撃されて致命傷を負う恐れがある。それを回避するためにも、大勢の食事会で間接的に情報を探っているわけです。

 『一生お金に困らない「華僑」の思考法則』 第3章 より 大城太:著 日本実業出版社:刊

 世の中には、いろいろな考えの人間が存在します。
 島国の日本でもそうなのですから、世界を舞台にする場合の多様さは、想像できませんね。

 自分の気に入った人だけでなく、嫌いな人まで受け入れる懐の深さ。
 それが世界中で華僑が活躍できる大きな理由のひとつであることは間違いありません。

メールをあまり使わず、「スピード重視」

 現代社会は、ビジネスにスピードが求められます。
 とりわけ時間の価値を重くみる華僑は、コミュニケーション手段も徹底してスピード優先です。

「いま話して、いま決めたい」というのが、彼らのスタンスです。
 彼らのコミュニケーションは、「相手とつながる確率が高い順」で、以下の順番となります。

「直接会う」→「電話」→「チャット」→「メール」

 インターネットを使う場合は、メッセンジャーやスカイプなどのチャットがメイン。相手がいつ読むかわからないメールは、華僑にとって一方通行のツールです。自分宛に送られたメールもすぐに読みすぐに返信して然るべきとは考えないので、華僑相手に「メールを送ったから大丈夫」などと思わないほうが賢明です。
 日本では「メールは相手の時間を束縛しないから相手のためによい」と考える向きもありますが、それはすなわち相手次第ということですね。相手の都合によっては、たかがアポイント日時の調整に3日かかることだってざらですから、スピード勝負には向かない手段であることは確かです。

 華僑がメールを使わない理由はもうひとつあります。「やりとりの証拠を残さないため」です。日本では証拠を残すことを推奨するのがノーマルですから、証拠を残したくないのは華僑側の事情だろうと勘ぐられそうですね。
 しかし真実は逆で、相手の揚げ足を取らずに許すため。華僑の優しさの現れなのです。
 たとえば師匠と私が、「ダイ君、これできる?」「はい、できます」というやりとりをした場合、メールを使えば「できる」と答えた事実が残ります。それなのにできなかったら私の面子(めんつ)がつぶれ、私は師匠のもとを去るしかありません。相手が約束を果たせなかった時に「いいよ」と済ましてあげるためにもメールを使わないのです。

 このように証拠を残さずお互いの面子を守ろうとする華僑ですが、一方では「言った、言わない」のトラブルが起こりうるというデメリットも想定しています。
 その対策としても、相手と直接会って話し、「いま決める」ことが重要になるのです。後日に持ち越せばお互いに記憶があいまいになり、もめる恐れがありますからね。

 『一生お金に困らない「華僑」の思考法則』 第5章 より 大城太:著 日本実業出版社:刊

 日本人はとかく段取りを重視し、「しっかりと手順を踏んでから」となりがちです。

 華僑にとって大事なのは、できるだけ速やかに商談を成立させること。
 メールよりも直接アクセスという姿勢は、彼らの異常なまでのスピードへのこだわりをよく表しています。

 相手が不利になる証拠を残さないため、あえてメールを使わないというのも、面子を何よりも大切にする華僑らしい考えです。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 中国人の海外移住は、千年以上前の唐の時代から続いているとのこと。
 日本にも数多くの華僑が渡り、各地で独自の文化を築きながら社会に溶け込んでいます。

 どんな土地でも移り住んだ先で馴染み、そこでビジネスに成功して大きな経済力を発揮できる。
 それは、華僑の商売がコミュニケーションの構築に最も力を注いでいるからです。

 自分たちのルールを押し付けず、状況に応じて切り替えられる柔軟さ。
 それをもっていたからこそ、時代の荒波にも負けずに繁栄を築き上げることができたのでしょう。

 清濁(せいだく)併せのむ度量の大きさ。
 状況に応じて素早く対応できる機動力の良さ。

 私たち日本人にとって、商売上手な華僑から学べることは多いです。

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