【書評】『執事だけが知っている世界の大富豪58の習慣』(新井直之)
お薦めの本の紹介です。
新井直之さんの『執事だけが知っている世界の大富豪58の習慣』です。
新井直之(あらい・なおゆき)さんは、執事・ビジネスコンサルタントです。
現在は、自ら立ち上げた会社の社長を務められ、自ら執事として大富豪のお客様を担当するかたわら、企業向けに富裕層ビジネス、アドバイザリー業務、講演、研修などを行われるなど活躍の場を広げられています。
大富豪には「共通する習慣」がある
執事の役目は、メイドや運転手、シェフの統括、スケジュール管理、出張や旅行の手配、来客対応、資産管理、子供たちの教育など広範囲に及びます。
私たちが見ることができない大富豪の日常に深く関わり、誰よりも詳しいのが執事です。
雇い主である大富豪たちと日々接している新井さんは、大富豪になる方、大富豪であり続ける方には、ある共通の習慣がある
と感じているとのこと。
表面的に見れば、大富豪の資産形成の仕方や生き方は千差万別ですが、「人生を楽しむ」という共通する明確な目標があると指摘しています。
本書は、私たちの知らない「大富豪に共通する習慣」を、具体例を交えてまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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大富豪は「継続」を重んじる
新井さんが仕えていた大富豪は、一代で事業を興して、財を成した人がほとんどです。
特殊な才能の持ち主が華々しく出世したと思われそうですが、実際は意外なほど地味な毎日送っていたのだそうです。
新井さんは、彼らは、地道な努力を何年も続けた結果、数十億円から数兆円もの資産を築いたと説明するほうが正しい
と述べています。
私が知る大富豪たちは、皆さん努力家です。特に、一代で数千億円から数兆円の財を成した方は顕著です。ただし、ご本人にその自覚はありません。
執事ビジネスをはじめるまで、大富豪となる人たちは特殊な才能があり、いくつかの幸運が重なって成功を収めたのだろう、と勝手に想像していました。しかし十人、二十人と大富豪にお会いするうち、そのイメージは完全に覆されました。
たしかに私が想像していた才能や幸運も無関係ではありませんが、ほとんどの大富豪はその才能に相当な努力を積み上げているのです。ただ商才があって目端が利く程度では、小金持ちにはなれても大富豪にはなれないのです。
彼らは、人並みの仕事はたいてい苦もなくこなせます。現場社員が担当するような細々とした仕事も、いざとなれば自分で手早く片づけられます。人並みの経験と苦労を経たうえで、プラスαの努力を続けたからこそ大富豪になれたのです。
(中略)
大富豪たちは、基本的に仕事が大好きです。どう見ても、もう働かなくていい身分なのに、なにかあたらしい仕事を見つけては熱中します。
仕事に追われるのではなく、いつも仕事を追いかけている印象です。精神的な余裕があるせいか、普通なら敬遠しがちなことでも平然と引き受けます。カンカンに怒っている客先へ、部下と一緒に謝りに行くのはその典型です。
ある大富豪の方は私にこう話されました。
「とにかくバッターボックスに立たないとね。うまくいくチャンスを捉(とら)えるかどうかはその次の問題。どんなに才能がない選手でも、バッターボックスに立つ回数が何倍も増えれば、ホームランを打つ可能性も高まる。ベンチに座っていたら、絶対にホームランは打てないから」
大富豪の方々は、コツコツと努力することが苦ではないのです。「この努力の方向性は間違ってないか?」と疑うより先に、バッターボックスに立ってしまうタイプです。成功に程遠い人は、「この努力は無駄だ」とすぐに見切りをつけてしまい、バッターボックスに立たないまま挫折するのです。
自然体で努力できる大富豪の姿を見ると、それこそが多くのチャンスを引き寄せる秘訣なのだとわかります。『執事だけが知っている世界の大富豪58の習慣』 第一章 より 新井直之:著 幻冬舎:刊
努力を努力と思わない。
大富豪たちは、それくらい自分の好きな仕事に熱中し続けて現在の地位を築いています。
何ごとも経験。思い立ったら即行動。
私たちもつねに意識したいですね。
大富豪の会議の時間はたったの「10分」
仕事の予定を入れたがらない大富豪でも、ビジネス・オーナーともなれば、嫌でも出席しなければならない会議や打ち合わせがあります。
とはいっても、大富豪が実際に会議の席に座っている時間は長くはありません。
新井さんは、大富豪が一つの会議にかける時間はたったの10分
だと述べています。
彼らの会議に出席してみるとわかりますが、気持ちがいいくらいの短さです。そのスピード感を表現するたら、定刻には会議室に役員がパッと集まり、10分後にはすべての議題に結論を出してサッと解散するといった具合です。しかも、参加人数が多くても少なくても、会議時間の長さにはほとんど影響しません。
大富豪は、忙しいから時間を惜しんで10分間で切り上げているというわけではありません。ふだんオフィスをうろうろし、見るからに時間を持てあましている方でも、こと会議になると決まって10分間で終了させます。
まるで申し合わせたように皆さんそうされるのが不思議で、大富豪の方の一人に「なぜ10分で終わるのですか」と尋ねてみたことがあります。「会議というのは、2時間かけて討議しても、10分で終わらせても、結論は同じものになるんだよ」
この答えには正直驚きました。20年30年といくつもの会社を経営してくると、会議の中身と所要時間は関係がないと悟ってしまうようです。
もちろん、会議を短時間で終わらせるには、それなりのノウハウがあります。彼らは常に「会議には10分しかかけない」と宣言しています。そうすると、出席者もスタッフも、会議前にできることはすべて準備しておこうと動き出します。
出席者はあらかじめ資料を読み込み、必要であれば役員同士で事前の打ち合わせをして、本番の会議に備えようとします。オーナーにも事前に資料に目を通してほしいときは、大切なポイントを要約した資料を用意します。この10分間宣言によって、ダラダラした要領を得ない会議もなくなるというわけです。『執事だけが知っている世界の大富豪58の習慣』 第二章 より 新井直之:著 幻冬舎:刊
たった10分の間に経営上の重要案件の結論を決めてしまう。
経営者としての長年の経験が成せる業ですね。
直感の鋭さも、大富豪になるために必要な要素です。
大富豪は「頑張る」という概念がない
大富豪は非常にエネルギッシュで、何ごとにも情熱を傾けます。
それこそ寝る間も惜しんで、仕事にプライベートに世界中を飛び回っています。
端から見ると大変そうですが、本人はストレスを溜めるでもなく、全力疾走を続けています。
それが可能なのは、大富豪は頑張らない
から。
正確にいうと、自分の信じること、やりたいことを楽しんでいるだけで、頑張っているという意識がまったくないのです。「頑張る」という概念そのものをもっていないのかもしれません。いわば、趣味に没頭しているのと同じです。
釣りが好きな人は、頑張って釣りをしているわけではありません。釣りに出かける日は、どれだけ朝早くてもすっきり目覚めるでしょうし、何時間も船に揺られたり、一日川岸で過ごすこともまったく苦になりません。
もっと良い用具がないか、わざわざ専門店に出向いたり、次はどの釣りスポットに挑戦しようかと、こまめに情報を集めたりします。
趣味のない人が見れば、「面倒そうだな」「よく疲れないな」と思うかもしれませんが、本人はただ楽しいからやっている。無理して頑張っているわけではないので、少しでも負担にならないし、やめようとも思いません。いきいきと喜んで出かけていくでしょう。
大富豪は、仕事上でも、多くの選択肢と決定権をもっています。誰にも強制されるわけでもなく、責任も自分がとるので、自分の信じること、好きなことを楽しむのと同じように、仕事も楽しんでいます。
それほど利益は出なくても、世のため人のために特定の事業をあえて続けている方や、熱心に社会貢献活動に取り組んでいる方も多くいます。
(中略)
大富豪は、仕事に“やらされ感”を覚えません。根底にあるのは「やりたい」という気持ちです。
人はやりたいことをやっているとき、失敗しても「また次に挑戦しよう」と思います。困難にぶつかっても「どうすればうまくいくか」と考えます。逆に、うまくいったときはより大きな喜びを感じ、「もっと成長したい」と願うでしょう。
“やらされ感”で頑張るのではなく、「やりたい」と思って楽しむことは、成功への好循環を生み出していくのです。『執事だけが知っている世界の大富豪58の習慣』 第四章 より 新井直之:著 幻冬舎:刊
大富豪にまでなる人は、趣味を仕事に、好きなことをビジネスにしてしまった人です。
好きなことだけをやっている人は疲れを知りません。向上心も人一倍です。
好きなことを究めて、周りが太刀打ちできないほど突き抜けた存在。
その圧倒的な存在感でお金を磁石のように引き寄せるのが大富豪といえます。
大富豪は「超・規則正しい生活」をする
新井さんは、いつも規則正しい生活を送っていることも、大富豪たちにストレスが少ない理由の一つ
だと述べています。
私たちは規定外の出来事に直面するとストレスを感じます。できるだけイレギュラーな事態を避け、規則正しい生活を心がけることがストレスを避けるうえで重要です。
大富豪にもさまざまなタイプの方がいて、なかには頭に「超」がつくほど規則正しい生活を送る人たちがいます。
毎朝七時に仕事をスタートする方がいるように、大富豪の多くは朝型で、“大富豪の朝は早い”といえます。当然、夜ふかしはしません。夜は九時ぐらいに寝て、朝は四時ぐらいに起きるという方も珍しくありません。
お酒が好きな方も、夜遅くまで飲み歩くことはなく、家の外で外食がある場合も一次会でさっと切り上げて帰ります。
「お金の心配がないから、毎晩のように銀座の高級クラブで豪遊しているんだろう」と思われる方もいるでしょうが、朝型の大富豪にはまったく当てはまりません。
たしかに大富豪のなかには、夜遅くまで飲む方もいます。彼らはいわば朝昼晩の区別がない“二十四時間型”です。働く時間も遊ぶ時間も思いのままです。しかし、規則正しくない自堕落な生活を送っているわけではありません。彼らなりに時計の動きとは無関係なマイ・ルールで行動しているのです。お酒好き、遊び好きの大富豪でも、浴びるほど飲むとか、深酒して二日酔いになるとか、身体にダメージを与えるように飲む方はほとんど見かけません。
大富豪にとって、人生で最も大切なのは時間と健康です。不規則な生活はこの両方を同時に損ないますから、彼らは注意を怠りません。
マイ・ルールに忠実ということは、他人に振りまわされたり、状況に流されたりしないということです。これもストレスを減らすうえで重要です。一般とは違うけれども、実は規則正しいといえるでしょう。
大富豪は判で押したように超・規則正しい。彼らが大切にする健康でストレスフリーな生活は、それによって支えられています。『執事だけが知っている世界の大富豪58の習慣』 第五章 より 新井直之:著 幻冬舎:刊
時間やお金の制約がない大富豪が規則正しい生活を守っていることは、少し意外な感じもします。
彼らが最も大切にしている「健康」と「時間」を損なわないためには、当たり前なのですね。
私たちにとっても、「健康」と「時間」が最も大切な資産であることには変わりありません。
ぜひ、参考にしたいですね。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
本書は大富豪の習慣についてまとめたものです。
しかし、直接お金を増やすためのノウハウはほとんど出てこないのも意外でした。
大富豪の興味は、「人生をいかに楽しむか」の一点に絞られるといっても過言ではありません。
大富豪は、「お金は楽しみを得るための手段であり目的ではないこと」「本当の人生の楽しみはお金では買えないこと」を理解している人たちです。
自分の人生の目的を見失わず、やりたいことをとことん突き詰め、今の大富豪としての地位がある。
それが身に沁(し)みているからこそ、生きている間に使いきれないほどの資産を得てからも、おごらず騒がず、それまでの生活習慣を崩すことがないのでしょう。
充実した人生を楽みながら、マイペースに生きること。
そうすればお金は後からついてくる。
本書で取り上げられている大富豪の日々の習慣は、それを雄弁に物語ってくれています。
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