【書評】『運動前のストレッチはやめなさい』(中野ジェームズ修一)

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 お薦めの本の紹介です。
 中野ジェームズ修一先生の『運動前のストレッチはやめなさい』です。

 中野ジェームズ修一(なかの・じぇーむず・しゅういち)先生は、フィジカルトレーナー・フィットネスモチベーターです。
 米国スポーツ医学会認定ヘルスフィットネススペシャリストとして、メンタルとフィジカルの両面の指導ができる、日本では数少ないスポーツトレーナーとしてご活躍されています。

「ストレッチの常識」は間違いだらけ!


 私たちはよく、ランニング前に「アキレス腱伸ばし」をします。
 運動前のウォーミングアップのためにケガを予防しようとする意図からですね。
 しかし、中野先生によると、これは基本的に「間違い」で、筋肉を傷つけてしまうなど逆効果になりかねない危険な行為とのこと。

 ストレッチは道具が不要で、いつでもどこでもすることができます。
 体だけでなく心のストレスも解消でき、血行を促進することで肩こりや腰痛の解消にも効果的です。
 手軽にできるからこそ、誤った方法でやり続ける人が多いという負の一面があります。

 中野先生は、ストレッチに関する正しい基礎知識と方法をベースにして、自分のカラダと対話しながら実践すれば、誰でも効果的なストレッチができると述べています。

 本書は、正しいストレッチの知識を解説し、誰にでもできるストレッチ方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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ストレッチは苦行ではなく楽しむもの


 ストレッチは、「痛みや辛さを感じるまで頑張ってやったほうが効く」と考えている人が多いです。
 しかし、これは明らかな誤解です。

 年を取るとともに筋肉が硬くなり、柔軟性は低下する傾向があります。
 だからといって、「痛い」「辛い」「拷問みたい」などと感じるまでストレッチをするのは明らかにやりすぎです。
 適度な緊張感を感じつつも、あくまで「気持ちいい」と自分なりに感じるポイントまで伸ばすのが正解です
 痛みや辛さを感じるまで頑張ってストレッチをした方がいいと誤解して、必死に耐えようとするが正解だと思い込んでいる人がじつに多いのです。
 繰り返します。痛みや辛さを感じるまで筋肉を伸ばすのは逆効果です
 筋肉が緊張して硬くなりますから、むしろ柔軟性が下がり、筋肉を傷つけてしまう恐れさえあります。
 くれぐれも「気持ちいい」と自分なりに感じる範囲内でストレッチをするようにしましょう。
 しかし、適当に軽く伸ばすだけでは、効果を得られません。「強い痛みはないけれど、適度な緊張を感じる」という“痛(いた)気持ちいい”ところまで伸ばすことがもう一つのポイントになります。
 このようにストレッチを継続しているとカラダが少しずつ柔らかくなり、伸ばせる範囲(可動域)が広がっていきます。
 一気に柔軟性を高めようとはしないで、まずは「痛気持ちいい」と感じる範囲でストレッチを楽しむようにしましょう。
 ストレッチは苦行ではありません。あくまで「楽しむ」ものです

 『運動前のストレッチはやめなさい』 第1章 より 中野ジェームズ修一:著 SBクリエイティブ:刊

 筋肉を強く伸ばすことで、関節の可動域を広くなり、体が柔らかくなると考えられがちです。
 しかし、そうではないということですね。

「痛気持ちいい」と感じる範囲で、ストレッチを楽しむこと。
 日々の習慣にしたいですね。

同じポーズを20〜30秒かけてゆっくりと!


 ストレッチは、どの程度の時間をかけて伸ばすのが最も効果的なのでしょうか。
 中野先生は、以下のように解説しています。

 どのような方向にどう伸ばすかというポーズも大切ですが、「痛気持ちいい」と思えるポイントでどのくらいの秒数キープするかということも、ストレッチ効果を高める重要なポイントです。
「痛気持ちいい」と感じるポイントまでストレッチしたら、呼吸を止めずに自然に続けながら20〜30秒間キープします。後ほど詳しく説明しますが、これ以上でも以下でもストレッチの効果は高まりません。
「そんなに長い間伸ばしていられない」という人は、無意識のうちに呼吸を止めているか、必要以上に伸ばしすぎているのではないでしょうか。
 呼吸を止めてはいけないとわかっていたとしても、頑張って伸ばそうとすると、無意識のうちについつい息が止まってしまうものなのです。それでは同じポーズを20〜30秒も続けられません。
 また、痛みや辛さを感じるところまで伸ばそうとしてしまうと、そのポーズを長い間続けるのが困難になります。
 20〜30秒ほど伸ばしていると、まるで自動車のサイドブレーキが外れたように筋肉がゆるんで、一時的ですが可動域が広がる感覚を得られます
 それまで筋肉が伸びるのを邪魔していた仕組みが、時間をかけてストレッチすることでオフになるのです。
 そんな感覚を得られるまで伸ばし続けるのがベストですが、毎回まったく同じタイミングで可動域が広がるわけではありません。その日その時のカラダのコンディションによってストレッチの時間に余裕と幅を持たせて、20〜30秒を目安として伸ばし続けるのが正解なのです。

 『運動前のストレッチはやめなさい』 第1章 より 中野ジェームズ修一:著 SBクリエイティブ:刊

 同じポーズを20〜30秒かけて伸ばすのが最も効果的とのこと。
 一般的なストレッチではせいぜい5〜10秒程度ですから、かなり長く感じます。

「サイドブレーキが外れたように筋肉がゆるむ」感覚。
 それを味わいながら、ゆったりとストレッチを楽しみたいですね。

なぜ、反動を使ってストレッチしてはいけないのか?


 普段私たちが行っている、筋肉や関節の向上を狙うストレッチ(静的ストレッチ)では、反動を使わないでゆっくりと筋肉を伸ばします。
 中野先生は、反動を使ってストレッチをしてはいけない理由を以下のように説明しています。

 では、なぜ反動を使ってはいけないのでしょうか?
 それは、反動を使うと筋肉が伸びにくくなる場合があるからです
 反動を使うと筋肉が瞬間的にグンと伸ばされますが、筋肉は瞬間的に伸ばされると反射的に縮もうとする性質があるのです。これを「伸張反射(しんちょうはんしゃ)」といいます。伸張とは、「伸ばす」「伸びる」という意味ですね。
 椅子に座って床から足を浮かせた状態で、ヒザのお皿(膝蓋骨(しつがいこつ))の下を木槌などで軽く叩くと、反射的にヒザ下が跳ね上がります。これを「膝蓋腱反射(しつがいけんはんしゃ)」といいます。病院などでは、病気やケガで反射の機能が損なわれていないかをチェックするために行われていますが、これも伸張反射の一種なのです。
 ヒザのお皿の下には、太もも前側の筋肉(大腿直筋(だいたいちょくきん)の末端が伸びています。ここを木槌などで軽く叩いてやると、太もも前側の筋肉が一瞬伸ばされ、それにともなう伸張反射で瞬時に縮みます。その結果、勝手にヒザ下が跳ね上がるというわけです。
 あまり意識する機会はないかもしれませんが、私たちは運動するときに伸張反射をうまく使っています。
 例えば、高くジャンプをしようとするとき、私たちは準備運動としてヒザを深く曲げます。ヒザの屈伸を使って高く跳ぼうとするのですが、このときゆっくりしゃがむよりも素早くしゃがんだほうが高く跳べますね。
 素早くしゃがむと太もも前側の筋肉が急に伸ばされるため、伸張反射の作用で瞬時に縮みます。そのタイミングでジャンプすると、高く跳べるというわけです。
 このように筋肉は縮んで短くなるときに力を発揮します。輪ゴムをいったん引き伸ばしてからパッと手を離すと、瞬時に輪ゴムが縮んで勢いよく飛んでいくのと同じ原理です。
 相手のサーブを待つテニスプレーヤーが、ヒザを曲げて小刻みにジャンプをしているのは、伸張反射を活用して猛スピードで打ち込まれるボールの軌道に素早く対応して打ち返すためなのです。

 『運動前のストレッチはやめなさい』 第2章 より 中野ジェームズ修一:著 SBクリエイティブ:刊

 反動をつけてストレッチをすると、伸ばそうとした筋肉に瞬間的に大きな負荷がかかります。
 すると、筋肉は伸張反射によって反射的に縮もうとしてしまい、逆効果です。
 筋肉の性質をよく理解して、効果的なストレッチをするよう心掛けたいですね。

腕の動きは「肩関節」と「肩甲骨」の連動がカギ


 ストレッチは筋肉を伸ばすことですが、そのポイントとなるのは「関節」です。
 中野先生は、筋肉は関節をまたいでついているので、「関節のつくり」と「関節の動き」がわかっていないと、狙った筋肉を効果的に伸ばすことができないと指摘しています。

 ここでは関節の構造の一例として、「肩関節」を取り上げます。
 肩関節の構造はどのようになっているのでしょうか。

 肩関節とは、上腕の骨(上腕骨)と肩甲骨(けんこうこつ)が作る関節のこと。専門的には、「肩甲上腕関節」といいます。この肩関節は野球ボールがミットに入るように、肩甲骨の横にある凹みに上腕骨の丸みを帯びた先端が入り込んでいます。
 野球の場合、ミットに比べるとボールはずいぶん小さいものですが、肩関節の場合、ミットに比べてボールは約3倍もの大きさがあります。肩関節は人体に300もある関節のなかでもっとも自由に動かせますが、この構造によるものです。
 この肩関節でより重要なのは、肩甲骨のほうです。
 肩甲骨は逆三角形をした平らな骨で、背骨の両側に左右一対あり、両腕を立体的に動かしています。肩関節もそうですが、肩甲骨も自由に動かせます。
(中略)
 肩甲骨は鎖骨以外に周辺の骨とつながっておらず、筋肉により安定しているので自由に動かせるのです。
 肩甲骨と上腕の動きは連動しています。肩関節と肩甲骨は2対1の割合で動くのですが、専門的にはこれを「肩甲上腕リズム」といいます
 例えば、体側にぶらんと垂れ下げた腕を水平まで90度挙げるときは、60度までは肩関節、残りの30度は肩甲骨の動きによります。続いて頭上まで180度まっすぐ腕を上げるときは、130度が肩関節の動き、残りの50度が肩甲骨によるものです。
 何らかの原因で肩甲骨の動きが制限されると、肩関節が固定されて腕だけが働くようになります。これが野球、ゴルフ、テニスなどでご法度とされる非効率な「手投げ」や「手打ち」です。
 肩甲上腕リズムでは、体幹で作った運動エネルギーが効率的に末端へ伝えられますが、肩甲骨の動きが制限されると腕の動きが小さくなるので、体幹で作った運動エネルギーが効率的に伝えられなくなるのです。

 『運動前のストレッチはやめなさい』 第4章 より 中野ジェームズ修一:著 SBクリエイティブ:刊

肩関節の仕組み 第4章 P111
 図1.肩関節の仕組み(『運動前のストレッチはやめなさい』 P111 から抜粋)

 腕を上げる、物を投げるといった単純な動きでも、多くの関節や骨が動く必要があるのですね。
 もちろん、それらを動かしているのは周りについている筋肉です。
 可動域を広げて動作をスムーズにするためにもストレッチの重要性はいうまでもありませんね。

 本書では、肩こりを解消するための僧帽筋のストレッチとして、以下の方法を紹介しています。

肩こり解消のストレッチ① 第5章P148 肩こり解消のストレッチ② 第5章P149
図2.肩こり解消のストレッチ方法(『運動前のストレッチはやめなさい』 P148〜149 から抜粋)

 ぜひ、参考にしてみてください。

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 運動前のウォーミングアップとして何気なくやっているストレッチ。
 その常識の多くが専門家からみて間違いであり、体を傷つける恐れがあることには驚かされます。
 まさに、「目からうろこ」の内容ですね。

 ストレッチは、すればするほど筋肉がほぐれて体が柔らかくなるわけではありません。
 大事なのは、「理屈」であり「やり方」です。
 体の構造や筋肉の性質を理解したうえで、楽しみながらストレッチを続けていきたいですね。


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