【書評】『良い習慣、悪い習慣』(ジェレミー・ディーン)

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 お薦めの本の紹介です。
 ジェレミー・ディーン先生の『良い習慣、悪い習慣: 世界No.1の心理学ブロガーが明かすあなたの行動を変えるための方法』です。

 ジェレミー・ディーン(Jeremy Dean)先生は、英国の心理学者です。
 毎月100万PVのアクセスを誇る、大人気の心理学ブログ「PsyBlog」を執筆されています。

習慣は、「21日」あれば身につけられる?


 物事を継続するためには、「習慣化」することが重要です。
 では、新しい習慣をつくるには、どれくらいの時間がかかるのでしょうか。

 多くの専門家の意見では、21日、つまり3週間程度かかるといわれています。
 ただ、ディーン先生はこの「21日」という数字には科学的根拠が欠けていると指摘しています。

 では、ここで大きな疑問。習慣をつくるのにどれくらい時間がかかったのか? 単純な答えを言えば、十分なデータがとれた被験者の平均で、習慣ができるまでに66日かかっている。また、意外かもしれないが、1日や2日サボっても習慣形成にあまり影響はなかった。
 しかし、複雑な答えはもっと興味深い(さもないと、この本はすぐに終わってしまう)。ご想像どおり、どんな習慣をめざすかによって所要時間には大きな差があった。朝食後に水を一杯飲むと決めた人たちは、20日程度で最大限の自動性を獲得することができたが、昼食時に果物を一つ摂ろうとした人たちは、それを習慣化するのに少なくとも倍の時間がかかった。運動の習慣が一番難しく、ある参加者は「朝のコーヒーを飲んだあとに腹筋50回」を84日経っても習慣化できなかった。ところが、「朝食後に10分歩く」を50日で習慣化した人もいる。
 グラフ(下図参照)に示すように、習慣の繰り返しと自動性の間には曲線関係があることがこの調査でわかった。つまり、最初のうちは習慣化へ向けての進歩も大きいが、時間とともに進歩の度合いが小さくなる。最初は険しいけれどもだんだん平らになる山を登るようなものだ。スタート当初はどんどん高度が上がるのに、頂上に近づくにつれてなかなか高度が稼げない。
 ただし、ごく一部の参加者は新しい習慣を自然にものにすることができなかった。実際、全体としては習慣を築くのにずいぶん時間がかかる印象があり、調査にかかわった研究者たちを驚かせた。調査期間は84日間だけだったが、グラフの曲線のその後の動きを推測すると、なかには習慣化するのに254日かかりかねないものもあったという。1年の半分以上かかる計算である!
 この調査からわかるように、習慣を築くのに21日要するというのは、ある意味で正しい。朝食後に水を一杯飲むことだけが目的なら――。もっと難しい習慣になると、しっかり身につけるにはさらに時間がかかる。ちょっとやそっとでは身につかない習慣もある。マルツ博士および彼の応援団たちの説は、この事実には程遠い。たった3週間で習慣が築けるとうたう本の数々は、はなはだ楽観的である。

 『良い習慣、悪い習慣』 PartⅠ Chapter1 より  ジェレミー・ディーン:著 三木俊哉:訳 東洋経済新報社:刊

習慣化までの日数と自動性の関係2
図.習慣化までの日数と自動性の関係 (『良い習慣、悪い習慣』 Chapter1 より抜粋)

 当然ながら、習慣化の難易度によって、所要時間が大きく変わります。
 その習慣が定着していく過程も、右上がりに一直線ではなく曲線を描きます。
 1日や2日サボっても習慣形成にあまり影響ないのも、意外ですね。

 ディーン先生が、習慣について調査や研究を行った結果、以下の3つの特徴が明らかになりました。
  1. 習慣的な行動は意識しないで自然にできる。
  2. 習慣的行動そのものは感情反応をほとんど引き起こさない。
  3. 習慣はその周囲の状況に深く根ざしている。
 本書は、習慣がつくられるメカニズムを知り、習慣とうまく付き合うための方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「部分強化消去効果」がネット依存を生む


 インターネットが発達し便利になった反面、さまざまな弊害(へいがい)も生まれました。
 そのひとつが「ネット依存」です。
 スマホを手放せず、四六時中、メールやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)をチェックしていないと気がすまない人たちが増えています。

 私たちはなぜ、執拗にメールチェックをするのでしょうか。
 メールの特性である、「ほとんどは無価値であるけれど、ときどき不定期に重要なものが送られてくる」ことが、メール依存を強化する大きな理由のひとつです。

 ディーン先生はこれを、「部分強化消去効果」と呼んでいます。

(前略)メールになぜこれほど潜行性があるのかを確認するため、次はネズミの目で見てみよう。目の前にはレバーがあり、それを押すとエサのペレットが出てくる。大成功! そこでちょっと強く押してみるが、しばらくは何も起こらない。すると突然、ペレットが順番に二つ出てきた。それからしばらく、どこにもペレットは見当たらない。
 われらが実験台のネズミは少しいらいらし始めるが、予測などできないことをもうわかっている。ペレットが出てくるかもしれないし、長らく何も出てこないかもしれない。で、どうするかというと、ネズミはフラストレーションに耐えることを覚え、比較的ゆったりとしたペースでレバーを押すという習慣に落ち着くのである。
 われらがネズミは、行動心理学の専門用語でいう「部分強化消去効果」を経験している。言い換えれば、レバーを押してペレットが出てこなくても、もう慣れっこだから、それほど気にしていない。Eメールを見る人間も同じことだ。メールをチェックしても成果が得られないことに私たちは慣れている。それでもチェックし続けるのは、五十回に一回、じつに楽しいメールが舞い込むからである。
 このように無報酬を受け入れることを学びながらも、時に予期せぬ報酬を受けとることができる――これがメールのチェックがクセになる一因である。スロットマシンでサクランボの絵が三つ並ぶのを待つのと似ている。ただし、Eメールの場合は報酬どうしの間隔がどちらかといえばランダムだが、スロットマシンは変動間隔で報酬を出す。つまり、次の報酬までの標準的な時間が決まっており、それが少し変化するのである。
 するとギャンブラーは、それなりに等間隔でコインが吐き出されることを知るのだが、それがいつかははっきりわからない。もっとも、当然ながら、還元される金額よりも奪い取られる金額のほうが平均すれば必ず多い。この手の変動間隔がきわめて協力で、ギャンブラーに次々とコインを注入させることを、カジノは経験から知っている。すでにEメール中毒のあなたは、それがギャンブルでなかったことに感謝したほうがいい。でなければスクリーンからいっときたりとも目を離せないだろうから。

 『良い習慣、悪い習慣』 PartⅡ Chapter8 より  ジェレミー・ディーン:著 三木俊哉:訳 東洋経済新報社:刊

 メール依存やSNS依存も、ギャンブル依存と習慣形成の原理に変わりがありません。
 一回一回はたいした時間ではなくても、積み重なると、膨大なロスにつながります。
 その度に、集中力が途切れてしまうというデメリットもありますね。

 これらの依存の習慣から抜け出すための方法は、「時間間隔を決めてチェックすること」です。
 新着メールのアラート機能を切ることも有効ですね。

「マインドフルネス」で悪い習慣をやめる!


 喫煙、ギャンブルなどの悪い習慣をなくすのは、良い習慣を身につける以上に難しいです。
 ディーン先生は、習慣をなくすための第一歩は、いつ、どこで、どのようにそれを行っているかを把握することだと述べています。

 そのための一つの方法は、「マインドフルネス」を使うこと。
 マインドフルネスとは、「いまを生きる」、つまり、自分がいま何をしているかという認識・意識を高める方法です。

 一瞬一瞬を生きる練習をしている人は、新しい人生を経験できると言う。それを「再認知」と呼ぶ心理学者もいる。再認知によって私たちは、さまざまな出来事に対する自身の反応を観察し、状況の中でそれをはっきり見てとることができる。世界に対する己の解釈にとらわれるのではなく、ただそれに気づくことで、自分自身ともっと親密になるのである。
 マインドフルネスの習慣の発見にとても役立つ精神状態である。ここでマインドフルネス瞑想についてざっと解説しておこう。習慣を見つけるためにさっそく瞑想する必要はない。まずは正しい心理状態にいたる練習からだ。

  1. 体と心をリラックスさせる・・・・・時間を確保し、ゆったりと座り、できれば心地良い音楽をかけ、(薬物以外の方法で)心を落ち着かせる。たいていの人はリラックスした経験があるので(たくさんはないにしても)、この段階は比較的やさしい。
  2. 気持ちを何かに集中させる・・・・・瞑想家は自分の呼吸に集中することが多いが、この場合はなんでもかまわない。足でもジャガイモでも石ころでもいい。呼吸は必ず身近にあるから便利ではあるが、いずれにせよ何かに気持ちを集中させる。集中しづらくなったら(すぐにそうなりやすい)、再度静かに集中を試みる。自分を責めるのではなく、いたわるつもりで。何かに集中するという行為は驚くほど難しい。精神的にすぐ疲れてしまう。慣れた人に言わせると、練習すればこれもましになる。
  3. マインドフルな状態になる・・・・・ちょっと謎めくけれども、だいたい次のような感じである。自分の思考を批評せず、それが浮かんでは消えるままに任せる(実際、浮かんでは消えるのだ!)大きな目的を思い出して、そこへ気持ちを向ける。やってみるとことがなかなか難しい。どうしても自分を批評してしまうからだ。たとえば、先週の恥ずかしい経験が心に浮かんできて、自分をしかってしまう。大事なのは、何が起きているかを客観的に知り、しかしそれに巻き込まれないこと。誰でもこのような考え方が自然とできるようになるわけではない。だが、そのメリットは計り知れない。

 『良い習慣、悪い習慣』 PartⅢ Chapter10 より  ジェレミー・ディーン:著 三木俊哉:訳 東洋経済新報社:刊

 ディーン先生は、マインドフルネスは、多くの点で、習慣を実行しているときの経験とは正反対だと指摘しています。
 身についた習慣は、自分でも気が付かないうちに行動してしまうもの。
 それを防ぐための手段として、マインドフルネスはうってつけですね。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 私たちの日々の行動の大半は、「習慣」で成り立っています。
 習慣を変えることで、それまでと違う人生を生きることがいっても過言ではありません。
 しかしながら、「習慣がいかにつくられるのか」「どうすれば変えることができるのか」など、習慣についての基本的な知識さえ知らずに生活している人がほとんどなのが実情です。
 本書は、とらえどころのない習慣をさまざまな切り口から科学的に分析し、その本質を余すことなく伝えてくれます。

 習慣に流される人生から、習慣を利用する人生へ。
 習慣の力を上手に活用して、人生をスムーズに進める原動力にしたいですね。

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