【書評】『「やめる」習慣』(古川武士)

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 お薦めの本の紹介です。
 古川武士さんの『新しい自分に生まれ変わる 「やめる」習慣』です。

 古川武士(ふるかわ・たけし)さんは、コーチング、NLP(神経言語プログラミング)を専門分野として、多くのビジネスマンやベンチャー経営者へのコーチング実績を持つコンサルタントです。
 オリジナルの習慣化理論とメソッドを開発され、習慣化をテーマに個人向けセミナーやコンサルティング、企業研修を行なうなど、「習慣化コンサルタント」として幅広くご活躍中です。

「悪い習慣」を手放したら、自分が変わる!


 嫌なことを先延ばしにする。
 ダラダラと休日を過ごしてしまう。
 ついムダ遣いをしてしまう。

 誰にでも、そんなやめたい「悪い習慣」の一つや二つはあるのではないでしょうか。
 悪い習慣とは、目先の欲望や誘惑に負けてしまい、長期的に見るとデメリットをもたらす習慣のことです。

「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉があります。

 悪い貨幣(偽造貨幣)の流通を放置すると、よい貨幣(本物の貨幣)を人々が手元に置いてしまい、市場から消えてなくなるといういう意味です。

 古川さんは、「習慣にもまったく同じことが言える」と指摘しています。
 よい習慣を身につけたとしても、夜更かしや食べ過ぎなど悪い習慣が一つでも生活に入り込むと、よい習慣は悪い習慣に駆逐されます。

 悪い習慣は、よい習慣と異なり、ほとんど無意識的に作り上げられています。
 また、悪い習慣の原動力が快感であるため、目先の誘惑に負けて、断ち切るのが難しいものです。

 本書は、コーチングとNLPをベースに、心理的なアプローチと行動的なアプローチの二本立てで、悪い習慣を「やめる」メソッドを体系化した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「悪い習慣」をやめられない理由とは?


 人間の脳はその生存本能から、変化に抵抗し、現状を維持しようとします。

 脳は、よい習慣、悪い習慣の区別なく、変化である限り、それをやめさせようとします。
 同様に、脳は一度習慣になったものを必死に維持しようとします。
 古川さんは、この現象を「習慣引力の法則」と呼んでいます。

 習慣の法則が存在する理由を知るには、脳の「二つの領域」を理解する必要です。
 二つの領域とは、「意識できる部分」「意識できない部分」、つまり「意識」「無意識」です。

 無意識の世界は、自分ではその存在を知覚できないものです。
 しかし、人間が生きる上で自動的に生命を維持する重要なプログラムがたくさん入っています。

 無意識のミッションは、現状を維持することで、安全・安心を守ることです。簡単に言うと、無意識は「事なかれ主義」だということです。
 無意識は変化を拒否してあなたを必死に守ろうとします。一方、意識は成長のために変わりたいと思うわけです。このせめぎ合いから、続けたいけど、続かない、やめたいけど、やめられないというジレンマが生まれます。
 心理学の世界では、しばしば、意識は5%、無意識は95%のバランスだと表現されます。この数字をもとに、次のようなたとえで、わかりやすく説明していきましょう。
 
 あなたの中に、100人の従業員がいる会社があると想像してください。
 あなたが変わることを決意した段階は、いわば100人の社員の中で5人だけが賛成、95人が反対している状態と同じことなのです。
 しかし、無意識は見えない部分ですので、誰もまさか自分の中に95人も反対派がいるとは考えられないのです。
 だから挫折したときに自分は意志が弱いこと自己嫌悪に陥るのです。しかし、無意識のミッションを知れば、三日坊主はむしろ自然な現象だと言えます。ちゃんとあなたを、変化から守ってくれているからです。

 ここから、悪い習慣をやめる方向性が見えてきます。結論から言えば、無意識がいつもどおりと認識するまでやめ続ければいいのです。悪い習慣をオフにした状態がいつもどおりと無意識が認定すれば、それを保とうとします。これこそが「やめる習慣」のメカニズムです。

 『「やめる」習慣』 第1部 より 古川武士:著 日本実業出版社:刊

 意識の部分だけで「やめられた」と思っていても、まだ不十分なのですね。
 心の奥底の無意識の部分まで変化させないと、本当にやめたことにはなりません。

 習慣を無意識レベルで断ち切る。
 そのためには、ネットサーフィンやムダ遣いなどの「行動習慣」では一ヶ月程度の期間が、タバコや食べ過ぎなどの「身体習慣」では三ヶ月程度の期間が必要です。

 あきらめず、油断せす、無意識レベルまで完全に変化するまで、徹底して実行しましょう。

「骨太の理由」からやめるモチベーションは生まれる


「何のために」という理由が強力であれば、目先の誘惑を乗り切りやすくなります。
 やめる習慣を作るうえで、意志の強さ弱さではなく、「骨太の理由」をどう作るかが重要です。

 古川さんは、骨太の理由を作る際は、「危機感、快感、期待感」というキーワードを切り口にして考えることを勧めています。

 一つめの「危機感」は、この習慣をやめなければ「こんなに悪いことがある」というものです。たとえば、タバコを吸い続けると肺ガンになる可能性がある。そうなれば、家族を路頭に迷わせることになる。このような危機感を抱くことです。
 コツは、自分の健康やそれによって悲しむ人を考えるといいでしょう。危機感はやめるための強力な理由の一つになります。

 二つめの「快感」とは、この習慣をやめれば「こんなよいことがある」という目先のメリットです。たとえば、夜更かしをやめると、睡眠時間が七時間確保できて、昼は眠くならないし、朝起きるときにつらくなくなる。快適な一日を送れるというようなものです。
 やめることですぐに手に入るメリット、短期的に得られる快感です。

 三つめの「期待感」は、快感が目先のメリットであるのに対して長期的なメリットです。やめ続けることでどんな効果があるか、仕事、人間関係、健康、家族への影響などに広げて考えていくといいでしょう。
 また、時間軸を伸ばして、やめ続けることで、半年後、一年後、三年後どんなことが起きるのか想像をふくらませていくことも有効です。
 たとえば食べ過ぎをやめると、二十代のころの体型に戻る。自分に自信がつくし、さらに運動をして身体を鍛え若々しい肉体が戻ってくる。会社でもオジサン扱いされなくなり、若い部下からも憧れられる、といった具合です。

 このように危機感、快感、期待感の三つの源泉から、やめるための「骨太の理由」を考えてみてください。
 そして「骨太の理由」は、紙に書いて、いつでも見られるようにしておくと、モチベーションを高め維持することができます。

 『「やめる」習慣』 第2部 より 古川武士:著 日本実業出版社:刊

 モチベーションが高いほど、行動を起こしやすくなるのは、悪い習慣をやめるときも同様です。

「危機感」「快感」「期待感」

 この三つの切り口から、自分のやる気を最大限に引き出す「骨太の理由」を考え出しましょう。

仕事を「チャンクダウン」する


 悪い行動習慣の代表的なひとつに「先延ばし」があります。

 先延ばしをする理由は、目の前の仕事が苦痛だからです。
 そして、その苦痛は、複雑さ、不得手、面倒、不安からくるものです。

 古川さんは、それらを解消するための対策として「チャンクダウン」という方法を挙げています。

 チャンクダウンとは、やるべきことを小さく分解し、はっきり具体化することです。
 たとえば、あなたがお肉を食べたいとしましょう。
 そのときに、牛一頭を目の前に連れて来られたところで、当然食べることはできません。食べやすい大きさにカットされているからこそ、口に入れることができます。
 牛一頭レベルの「チャンク(塊)」のままの仕事は、手をつけることができません。先延ばししてしまうときは、TODOリストに牛一頭レベルの項目が並んでいるものです。
 このような大きなチャンクは、やることを小さく分解し明確にすることで、苦痛度が減り、取りかかりやすくなります。具体例を紹介しましょう。

①複雑な仕事
 複雑な仕事は細分化すると手をつけやすくなります。

(例)提案書を作成する

  1. お客様のニーズを紙に書く(10分)
  2. 提案内容を3つ考える(15分)
  3. 上司に相談する(15分)
  4. 資料の構成を作る(20分)
  5. 第1部を作る(40分)
  6. 第2部を作る(60分)
  7. 第3部を作る(40分)
  8. 誤字脱字をチェックする(15分)
  9. 上司のチェックを受ける(20分)
  10. 印刷する
 このように提案書など、いつも繰り返す複雑な仕事は一度チャンクダウンしておくと、毎回その紙を見れば機械的に処理することができます。
 毎回ゼロから考えるのではなく、必要な作業を見える化することで考えるエネルギーが不要になるため、心理的負荷が減ります。

 『「やめる」習慣』 第3部 より 古川武士:著 日本実業出版社:刊

 手間のかかる作業、複雑な作業ほど、手をつけるがおっくうになりますよね。
 そのようなときほど、チャンクダウンして作業を細分化すると、とっかかりやすくなります。
 
 どんなに複雑な作業も、細かく分けると、単純作業の積み重ねであることがほとんどです。
 作業の効率化という観点からも、試してみたい方法ですね。

「センターピン」と「ボトルネック」をつかむ


 悪い身体習慣の代表的なもののひとつに「夜更かし」があります。

 例えば、会社勤めをしているE子さんの場合。
 E子さんは、朝、7時半に起きると40分で家を出ないと会社に間に合いません。
 そのため、出勤前はいつもバタバタして、朝食をとる時間もありません。

 その原因は、毎晩午前2時まで起きていることにあります。
 23時に寝て、6時に起きることができれば、ゆっくり食事もメイクもでき、健康的な生活を送れると分かってはいますが、一度作られた生活パターンを変えることができないとのこと。

 古川さんは、そんなE子さんに、「起きる時間ではなく、寝る時間にフォーカスする」ことをアドバイスします。

 会社勤めをしているE子さんは、起きる時間が決まっています。
 起きる時間を6時にしたいと目標を立ててがんばっても、寝る時間(午前2時)が変わっていない限り、睡眠不足になり挫折してしまいます。
 そのため睡眠時間は削らず、そこから逆算して、「何時に寝る必要があるか」を考えて、理想の一日のスケジュールを作ります。

 その際に重要なのが、「センターピン」「ボトルネック」を決めることです。

 次に考えるべきは、寝る時間を決めたらそれを実現するために守るべき焦点となる予定を決めます。これを「センターピン」と呼んでいます。
 ボーリングをイメージしてください。ストライクを取るためには、10本のピンをすべて狙うのではなく、センターピンだけに焦点を絞ってボールを投げると思います。
 早起き、夜更かし対策も同じです。生活習慣が崩れてきたときに狙うべきはセンターピンとなる予定です。E子さんの場合は、仕事の帰り時間が遅くなっているため、18時退社がセンターピンであり、それをどう守るか必死に考えることが大切なのです。
 センターピンは人それぞれです。中には、ネットサーフィンを切り上げる時間をセンターピンに設定する必要がある人もいるでしょう。すべてを予定どおりに過ごせなくてもいいので、センターピンを守ることにフォーカスしてください。
 次に、センターピンを守る上で障害となるハードルを明確にすることです。これを「ボトルネック」と呼んでいます。今回のボトルネックは、仕事の残業、友人との飲み会、土日の夜遊び、ネットやテレビを見てしまうなどの行為です。
 これらをどのように調整するかを考えてください。

 『「やめる」習慣』 第3部 より 古川武士:著 日本実業出版社:刊

 ある習慣をやめようとしたとき、変えなければならないことがいくつも出てきます。
 その中でも「これを守らないと、目標を達成できない」という、肝(きも)になる行動が必ずあるはずです。

「センターピン」と「ボトルネック」を探し出し、徹底できるか。
 それが、習慣を改善するための分かれ目になります。

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 古川さんは、人生は習慣によって作られますと悪い習慣を断ち切り、よい習慣を身につける重要性を強調されています。

 よい習慣は、一度身につければ、その後は特に意識しなくても、一生続けることができるものです。
 悪い習慣も同様に、一度完全に断ち切ってしまえば、その後は悩まされることはなくなりますね。

 今まで続けてきた習慣をやめるのは、思っている以上に大変なものです。
 その苦労も「習慣引力の法則」が働いている、最初の数十日を乗り越えるまでの辛抱です。

 本書にある、さまざまなテクニックを用いて、少しずつでも悪い習慣を手放して、ストレスの少ない快適な人生を送りたいものですね。

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