【書評】『あなたの人生を変える睡眠の法則』(菅原洋平)

LINEで送る
Pocket

 お薦めの本の紹介です。
 菅原洋平先生の『朝昼夕3つのことを心がければOK! あなたの人生を変える睡眠の法則』です。


 菅原洋平先生(@ActiveSleep)は、作業療法士です。
 脳のリハビリテーションに従事され、脳の回復には睡眠が重要であることに着目して臨床実戦を重ねてこられました。
 現在は、自ら会社を起こし、企業を対象に、生体リズムや脳の仕組みを使った人材開発を力を入れておられます。

「質のよい睡眠」がやる気を引き出す


 作業療法士の仕事は、リハビリテーションの専門職の一つです。
 病気や事故で、一旦今までの生活から退いた人たちが、再び自分らしく生活していく手助けをする職業です。

 作業療法士の仕事の8割は、患者さんのやる気を引き出すことです。
 菅原先生は、毎日必ず行う身近な作業である「睡眠」という生理現象を最大限に活かすことが、一番手軽で、しかも効果的にやる気を引き出す法則なのだと述べています。

 やる気が湧き上がるには、必要な条件があります。
 それは、「脳がしっかり目覚めていること」と、「脳の中の記憶が整理されていること」です。

 この2つの条件を可能にするのが、「睡眠」です。
 質のよい睡眠をとるためには、昼間の過ごし方がカギとなります。
 人間のからだが刻んでいるリズムを知り、うまく活用することが重要です。

 本書は、科学的に解明された人間のからだの仕組みや生まれ持っている生体リズムから、質のよい睡眠をとる方法を具体的にまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

スポンサーリンク

睡眠を司る3つのリズム


 菅原先生は、睡眠の度合いは、生体リズムの波のタイミングで決まると述べています。
 そして、生体リズムは、いわば未来を予測できるツールだとその重要性を指摘します。

 本書では、日常生活で自覚しやすい、以下の3つの生体リズムを取り扱っています。

  • メラトニンリズム
  • 睡眠覚醒リズム
  • 深部体温リズム

 メラトニンとは、日の光や証明と強く関係する物質です。皮膚に作用すると、色素細胞内のメラニン顆粒が細胞核の周囲に凝縮して、皮膚を退色させることからメラトニンと名付けられたとされています。
(中略)
 メラトニンは、光を感知すると減少し、夜間に暗くなると、急速に増加するという特徴を持っています。睡眠を誘発する作用のほか、エネルギーを使った後に発生する活性酸素を除去したり、抗がん作用や性腺機能を抑制するなど様々な働きがあり、いまだ不明な点も多い物質です。

 睡眠ー覚醒リズムとは、眠る脳(大脳)と眠らせる脳(脳幹)が持つ、脳の働きを維持するシステムです。
 脳には、睡眠を誘発させる神経がネットワークをつくる「脳幹」という場所があります。この場所の、眠らせる神経が働くと、判断や優先順位を決めるなど高いレベルの働きをしている大脳が眠ります。
 1日のうちで、この大脳を眠らせるシステムが強く働く時間帯は、起床から8時間後と22時間後の2回あります。

 深部体温リズムとは、からだの内部の温度が変化するリズムです。
(中略)
 食事や運動によって体温は高まりますが、1日2食や絶食にしたり、絶対安静にしても体温のリズムはなくならないことから、行動の要因だけでなく、独自のリズムを刻んでいることが分かっています。深部体温は、起床から11時間後に最も高くなり、22時間後に最も低くなります。

 『あなたの人生を変える睡眠の法則』 第1章 より  菅原洋平:著  自由国民社:刊

 メラトニンリズムは、外界(光に当たる時間)に直接影響を受けるので、「外的リズム」と呼ばれます。
 それに対して、外界の影響を直接受けない、睡眠ー覚醒リズムと深部体温リズムは、「内的リズム」と呼ばれます。

 この3つのリズムを、実際の生活行動に置き換えると、以下のような大原則が出来上がります。

「起床から4時間以内に光を見て、6時間後に目を閉じ、11時間後に姿勢を良くする」

「落ち着きなさ」は、睡眠不足の証拠


 脳が目覚めている度合いを、覚醒レベルと表現します。
 睡眠が不足すると、目覚めていても、覚醒レベルは低下して、からだの動きを脳が把握できなくなります。

 脳は、からだの動きを把握するために、2つの感覚を使っています。
 からだの傾きを感知する「前庭感覚(平衡感覚)」と、筋肉の感覚である「固有感覚」です。

 この2つの感覚は脳の覚醒を保ち、脳が安定して働くための大切な役割を持っています。

 慢性的な睡眠不足の場合、脳はこれらの感覚器官に様々な警告サインを出します。
 たとえば、「アメ玉を口に入れたらすぐに噛みたくなってしまう」ということもその一つです。

 噛むという行為は、1秒間に2~3回程度のスピードで行われるリズム運動です。からだがリズムのある運動をすると、脳にはセロトニンという物質が分泌されます。
(中略)
 リズムのある運動は、噛むことのほかにも、呼吸をすること、歩くことなど、無意識に行うことから、自転車に乗ること、音楽にのってダンスをすることなど、様々な場面で行われています。これらの行為を大切にし、丁寧に行うことで、セロトニンが分泌され、スッキリした気分になります。
 反対に考えると、気分が不安定になっていると、脳はからだに向けてリズムのある運動を命令し、セロトニンを増やそうとします。アメや氷など、硬くて噛んだ感触が強く伝わるものが口に入った途端にガリガリと噛んでいるときは、脳が気分を安定させようとしているサインです。

 うろうろ歩き回ったり、ペンや指で机をコツコツ叩いたりすることも同じです。

 『あなたの人生を変える睡眠の法則』 第2章 より  菅原洋平:著  自由国民社:刊

 菅原先生は、気づかないうちに噛んだり歩き回ったりしているときは、生活全体を通して、リズムのある運動がないがしろになっているということだと述べています。

 普段から、ウォーキングなどセロトニンを出すようなリズム運動を習慣にしておきたいですね。

眠くなる前、お昼10~15分ほどの仮眠を!


 睡眠ー覚醒リズムでは、起床から8時間後に1回目の眠気が起こります。
 眠くなったということは、睡眠負債が溜まり、脳の活動は最も低下した状態です。

 一方で、眠くなる前にあらかじめ目を閉じれば、目を開けたときから、睡眠ー覚醒リズムに沿って、脳の活動をより高めることできます。

 それでは、何分間、目を閉じれば良いのでしょうか? 目を閉じた効果は、時間の長さによって、次のように異なります。

 ・5分位内:主観的にスッキリした感じはありますが、睡眠負債は減らず、課題の成績が向上するには至りません。
 ・10~15分:睡眠負債を減らすことができ、課題の成績も向上する最も有効な長さです。
 ・15~30分:若年者では目覚めた後にボーっとしてしまうことがあります。50歳以降では、入眠に時間がかかるので適切な長さです。
 ・30分以上:夜間睡眠と同じ脳波が出現してしまうので、夜の睡眠を食いつぶしてしまい、夜寝つきが悪くなってしまうことがあります。

 このように、理想は10~15分程度です。しかし、10分より短い時間だからといって、ちょっとした休憩のときもネットや携帯などを閲覧し視覚を使っていると、脳は休まりません。

 『あなたの人生を変える睡眠の法則』 第4章 より  菅原洋平:著  自由国民社:刊

 仮眠を終えて目を開けると、しばらく頭がボーっとします。
 これは、「睡眠惰性(sleep inertia)」と呼ばれます。

 睡眠惰性は、睡眠負債がどのくらい溜まっていたのかを知るための指標となります。
 睡眠惰性の時間が短くなれば、睡眠不足は解消できています。

 5分間、目を閉じて、その後スッキリするまでにどのくらいの時間がかかっているのかを意識する。
 そうしておくと、自分の睡眠不足状態を把握することができます。

 菅原先生は、これを「昼5分ー負債の法則」と名付けています。
 お昼の間は、パソコンから目を離し、目と頭を休ませる意味でも、仮眠をとる習慣を心掛けたいですね。

夕方5分間、姿勢を良くして背筋を伸ばす


 体温には、大きく分けて2種類あります。
「表面体温」「深部の体温」です。

 深部体温は、直腸で計ることから、「直腸体温」とも呼ばれています。

 人間は、深部体温が高くなるほど体がよく動くようになり、逆に深部体温が下がるほど、眠くなります。
 なので、体温が高まるピークにあたる夕方(起床から11時間前後)に、体温を上げる行動をすることが有効となります。

 体の熱のほとんどは、筋肉によってつくられています。
 体温上昇のためのエネルギー消費のもととなる有酸素運動では、遅筋(赤筋)が主に使われます。

 遅筋は、特に背中の筋肉に多く含まれるので、背中の筋肉を使えば、最も効果的に体温を上げられます。

 菅原先生は、朝6時起床の生活ならば、17時ごろから5分ほど、以下のような椅子に座ったままビシっと背筋を伸ばす運動をすることを勧めています。

 背筋を伸ばすときには、意識していただきたいことが2つあります。肩甲骨を下に下げることと、肛門をしっかり締めることです。

 まずは、肩甲骨の位置を直します。座った状態で、両肩を耳につけるようにできるだけ高く挙げます。そのまま、肩をできるだけ後ろ(背中側)に引きます。目一杯後ろに引いたところで、ストンっと力を抜いて肩を下ろします。ここが肩甲骨の正しい位置です。
(中略)
 肩甲骨が正しい位置になったら、今度は、肛門をしっかり閉めます。肛門が閉まると下腹部に自然に力が入り、座る姿勢が安定します。

 力を入れると、肛門の位置が頭で理解しやすくなります。そうしたら、肩甲骨を肛門に向かってグーッと引き下げます。実際に下がっていなくても、下げている感じがあれば大丈夫です。

 『あなたの人生を変える睡眠の法則』 第5章 より  菅原洋平:著  自由国民社:刊

 呼吸を止めないように気をつけながら、5秒ほど数え、すっと力を抜く。これを、姿勢良くしている5分間に、何度か繰り返すのがいいとのこと(下図参照)。

背筋伸ばし運動
図:背筋を伸ばす運動のポイント  (『あなたの人生を変える睡眠の法則』 P143 より抜粋)


 座ったまま、誰にでもできる運動です。
 しかも、たった5分でも効果があるとのことです。

 一日中、椅子に座ってパソコンとにらめっこしているデスクワーカーは、是非とも試したいですね。

スポンサーリンク

☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 人間には、自覚することはなかなかできませんが、生まれつき備わったいくつもの生体リズムがあります。

 お昼時になるとお腹が空くのも、夜になると眠くなるのも、朝になると目が覚めるのも、すべて生体リズムが作り出す体内時計によるものです。

 本書を読むと、生体リズムに逆らわない生活習慣を持つことが人間にとって最も健康的であることを実感します。
 生体リズムを上手に利用することで質のよい睡眠をとって、やる気があふれる充実した毎日を過ごしたいですね。




 (↓気に入ってもらえたら、下のボタンを押して頂けると嬉しいです)

  にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 15

フォローする

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA