【書評】『心と体の不調を解消するアレクサンダー・テクニーク入門』(青木紀和)

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 お薦めの本の紹介です。
 青木紀和先生の『心と体の不調を解消するアレクサンダー・テクニーク入門』です。

 青木紀和(あおき・のりかず)先生(@aokinz)は、アレクサンダー・テクニーク教師です。
 2010年に独立し、現在は個人レッスンを中心に年間300人以上の姿勢や動作を直接指導するなど、この分野の第一人者としてご活躍中です。

すべての不調は、「体の支え過ぎ」が原因だった!


 私たちは、寝ているとき以外、立っているか座っているかのどちらかで過ごしていますが、この間、ずっと「体を支える活動」を行なっています。

 青木先生は、多くの人は、この活動を過剰なもの、つまり「体の支え過ぎ」の状態にしていると指摘しています。
「体の支え過ぎ」の状態が続くと、首や肩のこり、腰痛などの慢性疾患や、見た目の悪化、睡眠の質の低下を引き起こします。

「体の支え過ぎパターン」に陥る理由は、『私たちの不利な姿勢と動作の習慣』です。
 不利な姿勢とは、上半身もしくは体全体を後ろに傾けてしまうこと

「余計な力を抜くための技術」として開発されたのが、『アレクサンダー・テクニーク』です。

 アレクサンダー・テクニークは、オーストラリア人俳優・フレデリック・マサイアス・アレクサンダー(F.M.Alexander/1869〜1955)が考えた「体の使い方の技術」です。

 この技術が開発されてから100年以上経つ今も、多くの音楽家、俳優が学んでいるだけでなく、一般の人のこりや痛みの症状の緩和や、ビジネスや日常生活の様々な活動のパフォーマンス向上にも役立っています。

 本書は、アレクサンダー・テクニークを自分だけで学べるよう、わかりやすく解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「突っ張り棒」のような体軸を目指す


 青木先生は、「無駄な力の入っていない自然体の姿勢」を以下のように説明しています。

 私たちは無意識に「不利な体の支え方」に陥り、体に負担のかかる姿勢を維持してしまうことがあります。
 有利(負担がかからない)なのか不利(負担がかかる)なのかは、①重心の位置と、②体軸を構成する骨(背骨や骨盤、脚)の状態が適切かどうかで判断します。

 次ページ図(下図1の左を参照)に示したように、不利な姿勢では、体の重心が適切な位置より後方になっています。後ろによりかかるような状態です。
 この場合、体軸を構成する骨では、次の3つが起こりやすくなります。
(1)骨盤が前にスライドして後傾する。
(2)背骨が曲がる
(3)頭が前方に突出して首を反らす
 このような状態は、体に負担を与えるだけでなく、みすぼらしく見える原因にもなり、印象も悪くなります。
 有利な姿勢は、体の重心を適切に位置づけて、体軸の骨を立てた状態の体の支え方になっています。前ページ図のA(下図1の左を参照)のように、骨と骨がしっかりと接触し、体の重みが、上にある骨から下の骨に十分伝わっている状態です。姿勢もまっすぐで、美しく見えます。
 物でたとえれば、「体軸の骨が突っ張り棒のようになっている」のが有利な姿勢です。
「体軸の骨を突っ張り棒のようにする」とは、上側からかかる「体重による荷重の力」と、下側からかかる「床からの反力」を「両端からの内向きの力」として体軸の骨を安定させる、ということです(下図1の右を参照)。

 骨が本来あるべき姿になり、それぞれの骨が体重による重みを適切に受け取るようになると、筋の役割が減るため、筋緊張(きんきんちょう)は最小限で済むことになります。
 これにより、背骨や椎間板(ついかんばん)を変形させるような状態も避けることができますし、内臓への圧迫も少なくなります。肋骨の動きや声帯機能の制約もなくなるので、呼吸や発声がしやすくなります。

 『心と体の不調を解消するアレクサンダー・テクニーク入門』 第2章 より  青木紀和:著  日本実業出版社:刊

有利な支え方 と 不利な支え方 の違い 第2章P43 突っ張り棒のような体軸 第2章P45
 図1.「有利な支え方」と「不利な支え方」の違い(左) 突っ張り棒のような体軸(右)
 (『心と体の不安を解消するアレクサンダー・テクニーク入門』 第2章 より抜粋)

 体軸を構成する骨が、「突っ張り棒」のようになることで、筋肉の負担を減らすことができます。
 普段から「有利な支え方」を意識したいですね。

「秘密のつえ」に体重を乗せる


 有利な姿勢をつくる方法のひとつが、『体の前側に「秘密のつえ」があると意識する』ことです。

 私たちの体を支えるためには、骨だけではなく、筋、特に「抗重力筋(こうじゅうりょくきん)」と呼ばれる筋の働きが求められ、それらが働いている状態が理想的な体の支え方になります。
 抗重力筋は、言葉のとおり「重力に拮抗するための筋」で、体を起こしている間はずっと働き続けられるものです。具体的には、背筋(はいきん)やお尻の筋がこれに相当します。
 抗重力筋は背中側に多くあるので、体を「少しだけ前に倒す」ようにすると、抗重力筋が適度に働いてくれる「理想的な状態」になります。「少しだけ」というのがポイントです。そうでないと、本当に前に倒れかねません。
 そこでお勧めしたいのが、体の前側に架空の「つえ」があるとイメージし、そこに体の重さを乗せるようにすることです。(下図2を参照)
 つまり、「体の前側の『秘密のつえ』に体重を乗せる」ようにするのです。
 こうすることで、本来働くべき背筋やお尻の筋、脚の筋の適度な働きを促すことができ、突っ張り棒にした骨(上図1の右を参照)の支えを受け続けることができます。

 注意したいのは、背中側にたくさんある抗重力筋を働かせたいからといって、「背筋を使おう」とは思わないでください。そう思ってしまうと、「筋や関節を使う感覚」となって、背筋を余計に緊張させやすくなります。
 また、いままでが体を後ろに少し倒し気味に立っていた人は、その感覚に慣れているので、是正したはじめのうちは「前に倒れているのでは?」という違和感があるかもしれません。実際には前傾していないので、この違和感を受け入れていきましょう。

 『心と体の不調を解消するアレクサンダー・テクニーク入門』 第2章 より  青木紀和:著  日本実業出版社:刊

体の前側の 秘密のつえ 第2章P55
図2.体の前側に「秘密のつえ」があると意識する
(『心と体の不安を解消するアレクサンダー・テクニーク入門』 第2章 より抜粋)

声は「腹」ではなく「足の裏」から出す


 体を有利な状態で動かすためには、「リーディングエッジ」を意識する必要があります。

 リーディングエッジは「導く先端」という意味です。
 つまり、自分がこれからやろうとしている動きを導く先端を決め、その先端を動かすことを意識して動作をする」こと。

 リーディングエッジは、体の部位でなくても構いません。
 例えば、呼吸におけるリーディングエッジエッジは「息」になります。
 つまり、「空気」を「動かすもの」考えるということです。

 さらに青木先生は、声を出すときには、『「腹」ではなく「足の裏」から声を出そうと意識すること』を勧めています。

 私たちには、シンプルに声を出そうと思えば、腹筋をはじめとした筋や肋骨が勝手に動いて、声を出すことができます。「腹筋に力を入れよう」などと、いちいち考えなくてもいいものではなく、「考えないと状態が狂うもの」を意識してください。
 状態が狂いやすいのは、体の支え方です。そこで、私がお勧めしたいのは、「腹」ではなく、「足の裏」から声を出そう、と意識することです。体を支持する部位から声を出そうと意識することで、体を効果的に支えられます。

 まず、人と話すときをはじめ、人前でプレゼンテーションやスピーチ、歌唱をするときは、体の前側に架空の「秘密のつえ」があると意識して、そこに体重を乗せる姿勢をつくり(上図2を参照)、そのうえで足の裏から声を出すことを意識します。

 発声するときは腹筋の収縮(引っ張る力)によって肋骨や骨盤は動いてしまいやすいので、声を出す人が体軸の骨を立てた状態の体の支え方になっていない場合、頭が前に突出する形で下に動いたり、下腹部を前に出してしまう形で骨盤が前にスライドします。
 すると、体軸の骨の支えが弱くなり、その分、筋緊張が強くなって、発声の機能が制限されてしまうのです。

 ですから、頭を高い位置に置いて、骨盤を立たせ、「秘密のつえ」に乗りながら、足の裏から声を出すようにしてください。自分でも驚く声の響きが生まれるでしょう。
 さらに心理面では、「出したい声を出す」あるいは「これを人に伝えたいという想いを持ってください。
 これは、46ページで紹介したリーディングエッジをさらに応用した考えになります。
 リーディングエッジは目的行為を導く先端を動かす意識であり、発声する目的(動作の根元)を捉え、それを実現しようとすることです。
 発声の目的は「空気を響かせる」ことであり、もっと言えば、「相手に何かを伝える」こと。その目的を先端ととらえ、導くようにするのです。
 すると、声帯をはじめ体の諸機能は、それを具体化するために勝手に働いてくれます。

 『心と体の不調を解消するアレクサンダー・テクニーク入門』 第3章 より  青木紀和:著  日本実業出版社:刊

「リーディングエッジ」を意識することで、効率的で無駄のない動作をすることができます。
 声を出すことに限らず、すべての動作には「有利な姿勢」「有利な状態」があります。
 それをキープすることが重要だということですね。

背もたれなしで椅子に座るときの基本姿勢


 椅子に座る姿勢で大切なのは、「骨盤を立たせること」です。

 骨盤を立たせることができれば、背骨も適切な状態にしやすいです。
「秘密のつえ」(上図2を参照)を使えるようになり、体の負担が軽減できます。

 まず、お腹の前面を前に導くようにします。これで骨盤を立たせやすくなります。そして、上半身の体重による圧力がかかる中心部分が、お尻の骨と座面の接面部(坐骨接面部)よりも少し前になるようにしましょう。
 そして、頭を高く位置づけます。あごは過度に上がってしまわないように、額(ひたい)を適度に前方に向けます。そのうえで体の前面の「秘密のつえ」に体を乗せ、お腹や首の前側に体重がかかる感覚を促します。
 立つときの支持部位は足のみでしたが、背もたれなしで座るときの支持部位は、「お尻」と「足裏」です。一般的に、足裏を支持部位として意識していない人が多いために脚をうまく使えずに、上半身だけで支えようとして、腹筋や首の筋の緊張が増します。
 お尻と足裏に体重をしっかり預けるようにしましょう。
 ここまでできたら、十分に息を吐いてください。呼吸のとき、お腹の前面が膨らんだり、へこんだりすれば、腹筋の緊張が緩和されている証拠です。
 さらに、頭が動くかどうかを確認してください。これで首の筋緊張を抜きます。

 『心と体の不調を解消するアレクサンダー・テクニーク入門』 第4章 より  青木紀和:著  日本実業出版社:刊

背もたれを使わない座り方 第4章P111
図3.背もたれを使わない座り方
 (『心と体の不安を解消するアレクサンダー・テクニーク入門』 第4章 より抜粋)

 仕事中座りっぱなしのデスクワーカーは、腰痛や肩こり防止のためにも、ぜひ意識したいですね。

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 青木先生は、『人が「健康でいる」ために意識するべき大切な要素が3つある』とおっしゃっています。
 その3つとは、「食・考え・体の使い方」です。

 身体面と精神面の健康の基本となるのは「食」と「考え」。
 しかしそれらを改善しても解決できない問題を補ってくれるのが「体の使い方」ということ。
 無駄な力のない姿勢や無理のない動作は、体への負担を軽減し、身も心も軽くしてくれます。

 一度身につければ、一生ものの“宝物”になる、有利な「体の使い方」。
 ぜひ、皆さんもお試しください。

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