【書評】『まとめる技術』(中竹竜二)

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 お薦めの本の紹介です。
 中竹竜二さんの『まとめる技術』です。


 中竹竜二(なかたけ・りゅうじ)さんは、ラグビーの指導者です。
 2006年4月からは大学ラグビー界の名門、早稲田大学ラグビー蹴球部の監督に就任され、07年度、08年度、大学選手権で優勝し、見事2連覇を達成されました。

「フォロワーシップ」とは?


「日本一オーラのない監督」を自認する中竹さんが掲げたキーワード。
 それは、「フォロワーシップ」です。
 リーダーシップを一言で表すと「組織の引っ張り方」です。
 一方、フォロワーシップは、「組織の支え方」ということになります。

 自らは目立たず、後ろから一人ひとりの背中を押して組織を成長させるやり方。
 中竹さんは、フォロワーシップに徹する自らの哲学を貫き通した早稲田大学監督時代を振り返り、以下のように述べています。

 世間のリーダー待望論への疲労からか、徐々に、一人ひとりの自主性、自律性、主体性が強く求められる時代がやってきた。
 2008年1月12日、私は「フォロワーシップ」という言葉を早稲田大学ラグビー蹴球部に浸透させ、大学選手権で日本一に輝いた。
 監督主導のチームではなく、学生が自ら考え、自分たちの手で課題を解決するチームとなり勝利を収めた。監督やコーチの指示よりも、選手同士が行うチームトークやユニットトークに重点を置き、複数のリーダーで組織をマネジメントしていくマルチリーダー制を敷くなど、学生が自ら考えられる環境を整え、見事、彼らは私を優勝監督にしてくれた。そう、私がチームを勝たせたわけではない。優秀なフォロワーたちのがんばりに乗っかっただけだ。
 リーダーである私は、自分のリーダーシップの発揮は二の次にして、フォロワーである選手たちがいかに強烈なフォロワーシップを発揮するかに全力を注いだ。

 『まとめる技術』 はじめに より  中竹竜二:著  フォレスト出版:刊

 中竹さんは、組織を活性化し成長させるには、フォロワーシップとリーダーシップはどちらも欠かせない要素だと強調します。
 中竹さんは、組織とは「意義を持って集まった二人以上の集団」と定義しています。
 そして組織行動が進むにつれて、通常はリーダーとそれ以外(フォロワー)の二分化構造が生まれるとしています。

 これまでの組織論は「リーダー」に関することに偏っていて、「リーダー以外=フォロワー」のあり方についての考察がおざなりになってきました。

 本書は「フォロワーシップ」を「リーダーシップ」と同レベルで考え、その相乗効果により強力な組織を作る方法についてまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「スキル」と「スタイル」の違い


 リーダーシップについて。
 必要な要素を全て併せ持つようなリーダーがいれば問題ありません。
 しかし、現実には、そのような人材はなかなか見つかりません。

 これからの理想のリーダーの条件は、「ブレない」「言動に一貫性を持っている」ことです。
 いいリーダーの条件は、コミュニケーション能力などの個別の「スキル」を身につけることではなく、身の丈に応じた言動や態度を貫くこと。
 すなわち、どんな時も崩れない独自の「スタイル」を身につけることです。
 では、中竹さんのいう「スタイル」とは、どのようなものでしょうか。

 スキルのように点数での比較は極めて難しい。スタイルが評価される軸は、あるかないか、である。
 スタイルを持っているか、持っていないか。たとえそのスタイルが格好悪かったとしても、それを強烈に持つことが大切だ。強烈なスタイルを持つのではなく、スタイルを強烈に持つ。
 また、一方で、スタイルはナンバーワンは決められない。「~らしさ」や「こだわり」は、その良し悪しを追求するものではなく、あくまでもオンリーワンを追求する世界の話だからだ。もちろん、独りよがりな安易なオンリーワンは論外である。
 更に、スキルというものはドット(点)で示されるが、スタイルというものはライン(線)とイメージしてほしい。スキルはいくら集めてもドットにしかならないが、それを線にするのがスタイルである。
 スタイルとは、一見しただけでは判断できない。だから、初対面でその人のスタイルを見極めるのは困難である。その相手に何度も会い、たくさんの場面におけるその人の言動につなげていくことで、スタイルが見出され、理解することができる。例えば、次の場面での言動をつなげていくとその人のスタイルの有無が見えやすい。

 『まとめる技術』 第3章 より  中竹竜二:著  フォレスト出版:刊

 点も、意図的に連ねていくと線になり、その線は文字にもマークにもなります。

「強烈なスタイルを持つのではなく、スタイルを強烈に持つ」
 それが何よりリーダーに求められます。

「個のスタイル」から「組織のスタイル」へ


 スタイルを持つ利点は、それを精神的な拠り所にできることです。
 スタイルを強く持てば持つほど、それは逆境で大いに力を発揮します。
 リーダーの掲げるスタイルが組織全体に浸透する。
 すると、組織内に「無言のコミュニケーション=暗黙知」が成立し、組織力がアップします。

 チーム内でスタイルを共有することのメリットを述べたが、さらに話を進めると組織においてメンバーの全てがそれぞれのスタイルを共有できると、自ずと組織のスタイルが明確になってくる。それはどんな逆境に立たされても、立ち戻る場所を知っている組織。例えば、原価高騰に伴い大幅な赤字が続き経営難に陥ったとしても、不慮の事故や不祥事が起き組織が混乱しても、組織のスタイルが強くあれば必ず復活することができるだろう。
 世間を見渡しても、安定した企業ほど、スタイルを持っているように思える。自動車という枠を超えて、今や世界のトップ企業となったトヨタ自動車であったり、ソニー、NEC、パナソニックなど国内外で活躍している企業にはそれぞれのスタイルが見える。
 もちろん、現在に至るまでにさまざまな苦境を乗り越えてきたのだろうが、その原動力となっていたのはそれぞれの芯、スタイルだったのではないだろうか。そして、本当の強さの証は、変わらない芯の部分をベースに、時代の変化と共に進化し続けている部分を両方備えていることだと思う。
 スポーツ界では、往々にして、チームのスタイル同士の戦いが人々を魅了する。ラグビー界ではヨコの早稲田とタテの明治、アップアンドアンダーの慶應、自由な発想の同志社などなど。
 リーダーがスタイルを持ち、フォロワー全てがそれぞれのスタイルを持つことで、組織のスタイルが確立されたとき、チーム力が上がると同時に、個のスタイルがより強固になる。

 『まとめる技術』 第3章 より  中竹竜二:著  フォレスト出版:刊

 今、世界的に有名な日本を代表する企業がいくつも、これまでに経験したことのない苦境に立たされています。
 外部環境の変化もありますが、リーダーが自らのスタイルを見失ってしまったことも大きな要因の一つです。

フォロワーの資質と目標に合った環境


「フォロワーシップ」についてです。
 リーダーが考えるフォロワーシップで最も大切なこと。
 それは、フォロワーが自走できる環境をいかに整えてあげるかです。
 フォロワーの目標設定をして自主性を向上させることも大事です。
 しかし、より大事なのは、部下の自主性を重んじるか否かを最初に見極めることです。

「部下の自主性尊重」は、なんとなく聞こえがいいため、盲目的にフォロワーの自主性に任せてしまいがちでだ。しかしそれはとても危険なことである。場合によっては、自主性が全く逆効果になることもある。
(中略)
 肝心なのは、目の前のフォロワーの意識レベルと能力レベルの正確な把握である。どう期待値を込めても、自主性に任せてもうまくいかないと思ったら、徹底的に管理するしかない。
 自主性に任せても目標を達成できないのなら、自主性を排除して目標達成させるべきだ。
 ただし、組織の方針が「とにかく失敗も含めて自主性の発揮」という成長の定義にあてはまるならば、ひたすら管理を排除し、自主自律の空間と時間を提供するべきである。
 要するに、組織の中で、リーダーとフォロワーはお互いに「目標」や「成長」という言葉の定義をすり合わせておかなければならない。その上で、自主性尊重か管理体制かの環境を決めていくべきである。

 『まとめる技術』 第4章 より  中竹竜二:著  フォレスト出版:刊

 中竹さんも、個人面談などを通じて、メンバー個々の個性や組織のスタイルの浸透具合い、フォロワーとしての成長度合いなどを正確に把握することに多くの時間を割いたと述べています。
 ただ自主性に任せて、好きにやらせるのがいい。
 そういう訳ではないということですね。

フォロワーとして力をつけるということは?


 フォロワーであることの利点は、リーダーに比べ、人から要求されていることが少ないため、自分のことに専念できる環境が多く与えられていることです。
 多くの場合、責任はリーダーが肩代わりするため、フォロワーは失敗を恐れる必要がないため、思い切って行動できます。
 フォロワーという立場で成長するためには、多くのチャレンジをすることです。
 チャレンジの結果の失敗を「開かれた失敗」と呼びます。
 ただ、フォロワーは責任がないがゆえに、与えられる仕事は誰でもできることであることが多いです。
 しかし、中竹さんは、その誰でもできることをしっかりできてこそ、組織の中で認められる存在となれると指摘します。

「できる」とは、能力がつくことではなく、日々絶え間なく「きちんと+する」こと。
 要するに、簡単な仕事をなめてはいけないのだ。
 結局、仕事ができる人は、多少の力の配分はするものの、どんな仕事もなめてかからない。
 きちんとやることを大切にしている。
(中略)
 「できる人」は、常に自分のペースを保ち、それが比較的派手ではなく、特別なことをやっているようにも見えないが、きちんと準備して、抜かりなく問題を片付け、確実に成果を上げている人だ。
 実は、会社であれ学校であれどんな組織でも、結局は、その人間の能力を見て評価しているのではなく、その仕事に向かう姿勢や態度を見ていることが多い。特に新人に対しては、物事に向かう態度が評価の基準となり得ることが多い。
 ものごとに向かう態度や姿勢を、アティチュードという。フォロワーであるときは、スキルやノウハウよりも、アティチュードが圧倒的に大切だ。
 なぜなら、リーダーになれば、自分の組織という意識が高くなるため、大半はアティチュードは高いレベルで保たれる。しかし、組織に対してあまり忠誠心や帰属意識が湧かない人間だと、仕事一つひとつに心がこもるはずがない。少なくとも、リーダーよりもその作業に魂は込められない。
 アティチュードで大切なのは、質である。質の高いアティチュードとは責任を持ってやること。責任を持ってやることととはそのものに対して、準備し、実行し、改善するという三つのフェーズが組み込まれていることである。

 『まとめる技術』 第6章 より  中竹竜二:著  フォレスト出版:刊

 優れた組織というのは、優れたフォロワーが集まって構成されています。
 組織全体が高いレベルのアティチュードに保たれていることが前提となります。
 本来、優れたリーダーは、そのような土壌から生みだされるものなのでしょう。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 周りからは、何もせずにただ部下の自主性に任せて、見守っている。
 そのようにも見えなくもない「フォロワーシップ」という組織のあり方。
 しかし、本書を読むと、その裏には、信念を貫く意志の強さと鋭い観察力、それに人並みはずれた忍耐力が必要であることが伝わってきます。
 いわゆるカリスマ監督とはひと味違いますが、名監督と呼ばれるにふさわしい方であることには変わりありません。

「フォロワーシップ」は、チームが一丸となることが何よりも重視されるラグビーというスポーツだからこそ生まれた発想です。
 中竹さんの考えは、日本の組織のあり方にも一石を投じるものです。
 今後のご活躍にも期待したいです。


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