【書評】『それでも東北は負けない』(村井嘉浩)

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 お薦めの本の紹介です。
 村井嘉浩さんの『それでも東北は負けない ~宮城県知事が綴る3・11の真実と未来への希望~』です。

 村井嘉浩(むらい・よしひろ)さんは、現職の宮城県知事です。
 防衛大を卒業後、東北方面航空隊に配属、陸上自衛官を務められています。
 陸上自衛隊を退官後、松下政経塾に入塾、1995年に宮城県議員選に立候補して初当選。
 宮城県議員を3期務められた後、2005年10月に宮城県知事に出馬して当選し、現在2期目を迎えています。

そのとき、宮城県知事は、どう動いたか?


 東北地方を震源とする未曾有の大地震、東日本大震災。
 発生から1年余が経過しました。

 福島第一原子力発電所の事故は、冷温停止状態を達成。
 道路やライフラインの復旧も、ほぼ完了しました。

 外から見ると、事故による混乱は、収束しつつあります。

 今まで体験したことのない異常事態に、日本の危機管理体制の甘さが露呈した、今回の震災。

 村井さんは、その中でも強力なリーダーシップを発揮し、刻一刻と変わる状況に冷静に対応した、数少ない自治体トップの一人です。

 本書は、県知事という立場から「東北の今」を伝える貴重なドキュメンタリーです。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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震災」はまだ終わっていない。


 村井さんは、最初に、以下のように述べています。

 今こそ、宮城県そして東北で何が起こったのかを振り返りつつ、そこからの1年間の歩みを通して、被災地で何が変わったのか、そして何が求められているのか・・・・・私が宮城県知事として実際に体感してきたことを、ありのままに伝えたいと思います。
 さらに今、復興への前途はどうなっているのか?
 これから宮城県と東北地方はどう生まれ変わるのか?
(中略)
 頑張っている宮城県、東北地方の現実を知ってください。
 そして、もう一度、被災地に思いを馳せてください。
 まだ東日本大震災は終わっていない、ということを忘れないでください。

 「それでも東北は負けない」 はじめにより  村井嘉浩:著  ワニブックス:刊 

震災直後の状況について


 震災が発生した、3月11日の午後2時46分。
 村井知事は公用車に乗り、宮城県庁の知事室に向かっている途中でした。
 あまりの被害甚大さにショックを覚えつつも、急いで知事室へ急行して対応します。

 午後3時2分。
 地震発生からわずか16分後、私は自衛隊に出動要請を出しました。
 被害状況がつかめていない状況下ではまだ早い、という意見もありましたが、1秒でも早く自衛隊が出動することでひとりでも多くの方が救われるのであるならば、私は宮城県の危機管理を司る者として、自衛隊に出動要請しなくてはなりません。
 もし大きな被害がなかった場合、「県知事のあの判断は間違っていた」と、各方面から非難されることになるのでしょうが、それで構わないという揺るぎない意志がありました。
 逆に悠長に構えていたがゆえに、本来ならば救えたはずの県民の命を失うようなことになったら「どうしてあの時、もっと早く出動要請しなかったのか?」と私は一生悔やむはず・・・・・とにかく緊急時には悠長に悩んだり、結論を先送りにしてはいけません。

 「それでも東北は負けない」 第一章より  村井嘉浩:著  ワニブックス:刊 

 この決断が、震災の被害を、最小限に食い止めることとなります。
 宮城県では、震度6以上の地震が発生した場合、直ちに災害対策本部が立ち上がります。

 地震発生から、ほぼ1時間後の、午後3時30分。
 1回目の災害対策本部会議が開かれます。

 1回目の会議では、まず、これからの基本姿勢をすべての職員に徹底させ、同じ方向を向いてもらうことに重きを置きました。

「とにかく情報収集をしっかりとやる」
「人命救助を最優先とする」

 簡単に聞こえますが、地震直後の局面ではこれが非常に難しい問題でした。

 「それでも東北は負けない」 第一章より  村井嘉浩:著  ワニブックス:刊 

 この迅速で、的確な対応は、素晴らしいです。
 なかなか出来ることではありません。

 自衛官時代に、有事への対応力が磨かれたことも大きいのでしょう。

 その後、村井さんは、知事室の中で、津波が住民の命や財産を飲み込んでいく映像を見せつけられ、苦悩します。
すぐにでも県庁を飛び出して、被災地の最前線に駆けつけたかった。ひとりでも多くの方を助けたかったと苦しい胸の内を明らかにしています。

 ただそこで、自問自答をくりかえしました。
 本当に私が現場に飛び出していいのだろうか、と。
(中略)
 しかし、私は災害対策に関しては「指揮官」です。
 各方面からたくさんの情報が集まり、それを受けて何をすべきかを決めなくてはならなくなった場合、それは私の責任になります。その指揮官が一時の衝動に駆られて、職員を残して現場に出ていってしまったら、どうなるでしょうか?
(中略)
 だから私は、今すぐにでも現場に飛び出していきたい衝動をグッと抑えて、「ここから一歩も動かない」という苦渋の決断をしました。

 「それでも東北は負けない」 第一章より  村井嘉浩:著  ワニブックス:刊 

 村井知事は、意を決して、地震発生から10日間、知事室から指揮を執り続けました。
 ほとんど寝る間もありませんでした。

 しかし、ここでも自衛官としての経験が生きます。

 テントも張れないような豪雨が叩きつける状況の中、野外で寝た。
 そんな過酷な経験により、どんな状況でも寝ることができる、タフな精神と肉体を身につけていました。

福島第一原発の放射能漏れについて


 村井知事は、原発事故による放射能漏れ問題の国の対応について、厳しく指摘します。

 放射能問題では、福島県と宮城県に対する国の対応にあまりにも大きな開きがあるとのこと。

 なぜ対応を「県境」で区切ってしまうのでしょうか。
 宮城県は広いのです。
 放射線量も県の北部と南部とでは、当然、変わってきます。
 一番困惑しているのは、福島県との県境近辺に住んでいる方々です。
 健康には問題がない程度の放射線量だとはわかっていても、道を挟んで向こう側の福島県の方々は全員、手厚い支援をされている。
 わずかな距離しか離れていないのに、この差は明らかに不可解です。単純に県境という単位で区切るのではなく、放射線量を基準値として、いろいろなことをきちんと定めていかないと、いつまで経っても被災者の不信感は解消されません。

 「それでも東北は負けない」 第三章より  村井嘉浩:著  ワニブックス:刊 

 国の対応は、あまりにもずさん過ぎると言わざるを得ません。

 付近住民の不安を鎮め、国に対する不信感を解消しないと、この問題は解決しません。
 誠意ある対応を望みます。

被災地以外の方々に望むこと


 村井知事は、復興というのは、私たちの力だけでは進めることができません。全国の皆さまからのご支援があってこそ、私たちは前に進めるのですと、まだまだ外部からの支援が必要であることを強調します。

 もう少しのあいだ、東北を温かく見守っていただき、継続的なご支援をいただければ本当に助かります。
 支援といっても、義援金や寄付金、支援物資を送ってください、とお願いしているわけではありません。
 お金や物をお送りいただくことだけが支援ではありません。
 皆さまにお願いしたいのは、とにかく宮城県産、東北産の商品を買い求めていただきたい、ということです。
 普段のお買い物の中で、たとえば、その日の夕食を選ぶ時、野菜などを手に取る際に産地を気にしていただき、「今日は宮城県産の野菜を買おうかな」と買い物カゴに入れていただくことが最高の支援となります。
 先ほども触れましたが、宮城県では、安全なものしか出荷していません。どうぞ安心して召し上がってください。
(中略)
 別に東北を支援することを強く意識する必要はありません。
 心から観光を楽しみ、グルメを満喫し、大切な人にお土産を買って帰る。
 そういった行動が、私たちにとっては大きな力になるのです。

 「それでも東北は負けない」 第四章より  村井嘉浩:著  ワニブックス:刊 

 風評被害を食い止めることは、私たち被災地以外の人間の義務ですね。

 一人一人が、出来ることを出来るだけする。
 それが被災地の方の支援になります。

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 村井さんは、最後に、以下のようにおっしゃり、宮城県、そして東北地方の復興に懸ける気持ちを伝えます。

 震災時には、まもなく津波が襲ってくることを皆に知らせようと、危険を顧みずに住民たちの元に駆け寄り、そのまま還らぬ人となってしまった警察官や消防官もいました。
 また、防災無線で、最期まで住民の皆様に避難するように呼びかけ、自らが犠牲となってしまった自治体の職員もいました。
 そんな方たちの勇気を無駄にしないためにも、こうやって生き残った私たちは、命を賭して、宮城県の復興に打ち込まなければならないのです。
 失われた命を思い、支援への感謝を忘れず、被災された方々の目線に立った復興を心がけながら、あの震災以前よりも、豊かで、安全で、住みやすい宮城県を築いていく・・・・・これは私に与えられた天命だと思っています。

 「それでも東北は負けない」 おわりに より  村井嘉浩:著  ワニブックス:刊 

 この言葉は、日本に住む、すべての人が共有すべき想いです。

 改めて、東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。
 また、一日も早く被害に遭われたすべての方々が、安心して暮らせるようになることを願います。

 村井さんの、これからのご奮闘にも期待しています。

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