【書評】『瞬間モチベーション』(シャンタル・バーンズ)

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 お薦めの本の紹介です。
 シャンタル・バーンズさんの『瞬間モチベーション――結果を出す人の驚くべき思考法』です。

 シャンタル・バーンズ(Chantal Burns)さんは、リーダーシップ・コーチ、メンターです。
 世界中の有名企業を指導されており、個人や組織のパフォーマンスを向上させるプログラムには定評があります。

やる気が自然と湧いてくる!


「こうなりたい」と思ったら簡単に変われる人がいます。
 その一方で、いつまでも古い考えや行動にとらわれている人がいます。
 その差は、どこから生まれるのでしょうか。

 その謎を解き明かすカギは、「心理状態」にありました。
 ここでいう「心理状態」とは、そのときの考え方や感じ方によってもたらされる、一時的な心の状態のことです。

 バーンズさんは、心理状態を理解することは、どんな状況で、どんなチャレンジに遭っても、成功する究極の武器になると述べています。

 本書は、あれをやれ、これをやれと指図するのではなく、皆さんの目が、モチベーションと高い成果の源に自然と向かうようにします。人間はある論理を理解すると、自然にそれまでとは違う目で人生を見るようになり、自然に行動も変わるものです。
 こうした「気づき型」の学習に、分析や暗記や応用の必要はありません。なぜならそれは、既存の「データベース」に情報を追加するのではなく、すでにあなたが持っているものを活用するからです。
 自転車に乗れるようになると、バランスは頭で考えて取るものではないと気づきますよね。こうしたことは、知識や応用や分析とは違うのです。
 むしろバランスを取ろうとするのをやめると、自然にバランスがとれるようになります。考えすぎると自転車がグラグラして、転んでしまうことになりかねません。スポーツや音楽や、さまざまな問題の解決も同じです。
 ひょっとすると、仕事のモチベーションを高めたり、優れた成果をあげるのも、考える必要がないのではないでしょうか。考えることが、かえって私たちの邪魔になっているのかもしれません。
 私は長年、ビジネス戦略やテクニックを教えてきました。それは特定のスキルや能力を高める役に立つかもしれませんが、コンスタントに優れた成果をあげることには必ずしもつながりません。
 人間の知識には、誰もが生まれながらに持ち合わせているディープな次元の知識があります。あなたの活躍を可能にしてくれるのは、この、人間の中核をなす部分なのです。
 本書で得られる、その「気づき」は、あなたの心の健康、明晰な頭脳、自信、創造性、インスピレーション、そして挫折しても立ち直る力を高めてくれるでしょう。

『瞬間モチベーション』 はじめに より シャンタル・バーンズ:著 藤原朝子:訳 ダイヤモンド社:刊

 本書は、人間の心の仕組みを理解し、成功するための心理状態を瞬時につくるためのノウハウをまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「モチベーション」は内側から生まれるもの


 多くの人が陥っている共通の勘違い。
 それは、「モチベーションは外からもたらされる」ということです。

 ボーナスや高い報酬などを与えたからといって、やる気が出るとは限りません。
 それらのインセンティブ(外発的モチベーション)に対する反応は、人それぞれです。

 バーンズさんは、それはモチベーションが本来、内発的なものだからだと指摘します。

 赤ちゃんや子供を見れば、内発的モチベーションがよくわかります。人間は生まれながらにして好奇心があり、遊びが好きで、新しい物を探り、学び、発見するモチベーションを持っています。インセンティブなど与える必要はありません。インセンティブは、成長するにしたがって知るもので、やがて条件づけになっていきます。
(中略)
 心理状態とモチベーションは異なるものとして扱われがちですが、本来この二つは結びついています。
 モチベーションとは、実のところ、ひらめきや幸福感、怒り、いらだち、好奇心といった感情として表れる心理状態です。私たちの行動を方向づけるのは、こうした感情なのです。
 たとえば、もし怒りを感じたら、あなたは叫んだり、部屋を飛び出したり、誰かをぶん殴りたいと思うでしょう。その場を離れて、誰にも会いたくないと思うかもしれません。そのような心理状態でそうした行動を取るのは、まったく合理的だと思うかもしれません。でも、心がクリアーになって、もっと明晰な頭脳で物事の全体を見られるようになると、そうした行動は合理的でなかったと思うかもしれません。自分の取った行動の埋め合わせをし、話し合い、もっと違った行動を取りたいと思うかもしれません。
 ある意味で、私たちは常に動機づけされています。意識があって、考える人間は常に、何らかの方向に考え、感じ、反応するよう促されているのです。
 モチベーションとは、特定の生き方をしたいという欲求や意思やエネルギーであり、外的な物事に一切左右されません。モチベーションは瞬時的で自発的なものであり、あなたの考え方から生まれるものなのです。
 もっとやる気を出したい、もっとうまくチームを管理したい、もっと影響力を持ちたい、もっとゴルフがうまくなりたい、もっと自信を持ちたい――。あなたがどんな変化を求めているのであれ、いちばん重要なのは、自分の心理状態を理解することです。それなのに私たちは、その探求をいちばん後回しにしがちです。

『瞬間モチベーション』 1章 より シャンタル・バーンズ:著 藤原朝子:訳 ダイヤモンド社:刊

 馬を水飲み場まで連れて行って、水を飲ませようとしたとします。
 しかし、馬に水を飲みたいという意思がなければ、それ以上、どうすることもできません。

 したくないことをいくら頑張っても、やる気は出ません。
 逆に、したいことは、「やるな」と言われてもやってしまいます。

 モチベーションは本来、内発的なもの。
 頭の片隅に残しておきたい言葉です。

「意識」によって思考は現実化する!


 私たちの思考は、「意識」によって命を吹き込まれ、私たちの行ないや態度となって表れます。
 意識とは、純粋な自覚と理解のことです。

 バーンズさんは、人は意識によって、そのとき考えていることを経験し、物事を考えている自分を客観的に観察すると述べています。

 意識のない思考は、光源のない映写機のようなもの。どんなに映写機を回しても、映像は見えないし、映画を経験することもできません。ですから意識は、人間の基本システムにおける「特殊効果部門」と言えるでしょう。意識によって思考は現実化され、音を与えられ、現実に感じられるようになるのです。
 思考と意識の関係は、火事現場に取り残された人を救出に行った人の話を聞くとわかりやすいでしょう。彼らはよく、取り残された人を救出することで頭がいっぱいで、自分がやけどを負っていることに気がつかなかったといいます。火を噴く建物から出て来て、医療チームに囲まれたとき初めて、肌の感覚が戻って激しい痛みに気がついたというのです。
 このように、何を認識するかは、そのとき何に意識を集中しているかによって決まります。これが意識の働きです。
 あなたの心の目は、思考と意識によって情景を思い浮かべるようになっています。大切な人を思い出せば、その人の声が聞こえます。未来の特別な出来事を思い浮かべれば、ワクワクしたり不安になったりします。
 ここまで来て、読者の皆さんはこう思っているかもしれません。うん、これはすごくおもしろい話だな。でも、モチベーションや仕事の成果とどう関係があるんだろう、と。
 答えは、すべてです。
 あなたの仕事の成果は、あなたの内面が生み出します。なぜなら、あなたのすべての行動は思考が源になっているからです。したがって仕事で高い成果をあげたいなら、その原点すなわち思考に注目する必要があります。
 ジョージ・プランスキー博士は著書『人間関係の手引書(The Relationship Handbook)』で、次のように述べています。

 変化はドミノのように起きる。思考が感情を生み、感情が行動を動機づける。

 私たちはみな、心、思考、意識のパワーを使っていますが、使い方は人によって違います。誰にでも思考の癖がありますし、人によって持っている知識も違うからです。これを条件づけと呼ぶ人もいます。私たちは個人の思考は常に流動的ですが、すべての心理的な経験を生む究極的な源である思考は、一定で変わりません。
 これは、1人1人の人間としての相違は極めて表面的で、本質的なところではみな同じということです。誰もが一生考え続けていて、思考者としての自分を自覚することができる。そして誰もが、心の中にある無限の知恵を活用することができる。私たちはみな同じものからできているのです。個々人の間になんらかの違いがあるとすれば、それは知性の使い方の違いを反映しているにすぎません。

『瞬間モチベーション』 2章 より シャンタル・バーンズ:著 藤原朝子:訳 ダイヤモンド社:刊

 私たちは、現実をありのままにとらえているわけではありません。
 思考によって頭の中に思い浮かべたことを、意識によって選び取っています。

 私たちの心の外に、それ自体として意味を持つものをないということ。
 バーンズさんは、私たちが見ているのは、私たちが心、すなわち思考を使って、意味を与えた感覚データだと述べています。

 何を認識するかは、そのとき何に意識を集中しているかによって決まる。
 同じような経験をしても、人によって感じ方はそれぞれなのは、意識の働きによります。

「思考」と「感情」の関係を知る


 バーンズさんは、私たちの心理的な経験は、心、意識、思考によって生み出されていると述べています。
 この原理は、悲しみやいらだち、幸福感、興奮などすべての感情に共通します。

 すべての感情は、思考によってつくられます。
 あなたの感情は、そのときの思考の原理が形を取ったものを感じているのです。
 思考と感情は切っても切れない関係にあります。

 やってみよう。
「悲しい」ことを思い浮かべながら、幸せな気持ちになってみよう。楽しいことを思い浮かべながら、悲しい気持ちを抱いてみよう。

 あなたは、自分が思っていることを感じるのです。どんな感情も、原因はそのときの思考しかありません。人間の基本システムはそのようになっているのです。
 自分が強い感情を抱いていることは認識できるけれど、その原因となる思考の存在には気がつかないという場合があります。これはもっともなことです。多くの思考は、私たちが意識的に自覚する範囲の外、いわば背景に存在するからです。
 もう一つ重要なのは、思考の内容は重要ではないことです。むしろ思考の内容に気をとられるから、思考が感情を生み出すという、「内から外へ」の仕組みを見失ってしまうのです。
 自分の感情が、思考以外のどこかに由来すると考えるのは、車が止まってしまったのガス欠のせいなのに、前を走っている車のせいだと言うようなものです。
 私たち人間は、思考と感情のシステムによって機能しています。つまり成果をあげるためのメカニズムも、思考・感情・行動のサイクルからなるのです。(下図を参照)

『瞬間モチベーション』 3章 より シャンタル・バーンズ:著 藤原朝子:訳 ダイヤモンド社:刊

図 成果のサイクル 3章 P68
図.成果のサイクル(『瞬間モチベーション』 3章 より抜粋)


 出来事が直接、私たちの感情を創り出しているのではないということ。
 出来事に対する私たちの反応、つまり「思考」がすべての感情の源となります。

 すべての感情、心理的経験は、自分の思考の結果だ。

 それを理解すると、今まで以上に自分の思考・感情に注意を払うようになります。
 すると、今まで「外から内」だった意識が「内から外」へ劇的な変化が起こります。

何かを達成しなくても満足感は得られる


 人生を内から外へ見るようになると、それまでコントロールしてなければならないと思っていたすべてのことが、自動的に無意味になります。
 すると、頭の中で考え込む時間が減り、今という瞬間にもっと集中できるようになり、人生の展開をもっと楽しめるようになります。

 バーンズさんは、私たちが持って生まれた心の明晰性や健康が存在するのは、今という瞬間だと指摘します。

 世の中には決して満足しない人がいますよね。何かを達成すると、すぐに次のことに取り掛かる。成果をあげれば、いい気分になり、幸せを感じ、自分の存在意義が証明されると考えている人たちです。
 人生に満足できないのは、何かが足りないからのように見えますが、実際はその反対です。満たされない心が、何かが足りないという錯覚を生み出しているのです。これも外から内への錯覚の罠です。
 私たちは自ら欲求や好みをつくりだし、それが偽りの欠乏感を生み出します。何かを必要だと思えば思うほど、その「ギャップ」は大きくなり、満たされない感覚が大きくなるのです。
 私たちは何のために、日々頑張っているのでしょう。私たちの努力が達成しようとしている、より深遠な目的とは何なのでしょうか。私たちの多くは、充足感や意味を求めて生きています。まるでそれが、自分の外のどこかにあるかのように。でも、そうしたものは、私たちの内側からしか得られません。
「舞台裏」を覗いて、思考の働きを理解すれば、そのカラクリがわかります。それでも、私たちが人生の浮き沈みから解放されるわけではありません。でも、なぜ解放されなくてはいけないのでしょう。いいことも、悪いこともあるから、人生は美しく、豊かで、面白いものになるのではないでしょうか。
 幸せ、満足感、充足感、心の平穏は、目標や結果の達成によってつくりだされるものではありません。今よりも充足感や満足感を得るために、もっとすごい人間になったり、もっと多くのモノを手に入れる必要はないのです。
 満足や幸せは、思考がつくりだす感情です。ということは、それを邪魔しているものに気がつけば、瞬時に手に入れることができます。幸せと悲しみ、充足感と欲求不満、明晰と混乱の間には、たった一つの思考しかないのです。

 成功を目指してはいけない。成功は目標にするほど逃げていく。なぜなら幸せと同じで、成功は追い求められるものではないからだ。それは結果としてついてくるものであり、自分よりも大きな大義に身を捧げたことで意図せず得られた副作用、あるいは、他人に身を捧げた結果の副産物としてしか得られない。幸せは(たまたま)起こるものだ。成功も同じで、気にかけないことによって、得られる。だから自分の良心が命じることに耳を傾け、全力で生きて欲しい。そうすればいつかきっとわかるだろう。成功とは、成功について考えるのを忘れたからこそ、ついてくるものなのだと。
ビクトル・フランクル『夜と霧』


『瞬間モチベーション』 7章 より シャンタル・バーンズ:著 藤原朝子:訳 ダイヤモンド社:刊

 私たちが望む、幸せ、満足感、充足感、心の平穏。
 それらは目標や結果の達成などの外的要因によってつくられるものではありません。
「思考がつくりだす感情」つまり、自分の内側でつくられるものです。

 自分は幸せではない。
 そう感じている人は、どこかに「幸せだ」と感じることを邪魔している思考があります。
 それを取り除いてあげる必要があるということですね。

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 人間は、「考える」生き物です。
 起きている間、つねに何らかの思考にとらわれているといってもいいでしょう。
 情報過多で、周囲に刺激があふれている現代は、とくに注意力が散漫になりやすい環境です。
 自分が思考していると認識ができないほど、思考の海にどっぷりとつかってしまっている人も多いのではないでしょうか。

 考えることは必要ですし、有益なことです。
 しかし、考えすぎることは、逆に、思考の質を低下させます。
「過ぎたるは及ばざるがごとし」ですね。

 バーンズさんは、集中は、基本的に、今の瞬間への関与の深さであるとおっしゃっています。

 集中するということは、目の前のことだけを考えること。
 それは、目の前のこと以外のことを考えないことを意味します。

 私たちが思考の海から抜け出すためのカギ。
 それは「外から内へ」から「内から外へ」の思考のパラダイムシフトです。

 本書は、「思考」「意識」「感情」の3つの関係をわかりやすく解説し、「心理状態」の仕組みを明快に解きほぐしてくれています。
 忙しさに追いかけられている、すべての人に読んで頂きたい一冊です。


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