【書評】『人生に革命が起きる100の言葉』(小倉広)

LINEで送る
Pocket

 お薦めの本の紹介です。
 小倉広さんの『アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉』です。

 小倉広(おぐら・ひろし)さんは、経営コンサルタント、ビジネス書作家です。
 大学卒業後、大手出版社に入社、編集部や組織人事室の課長などを経て独立されています。

無名の巨人・アドラーの哲学とは?


 アルフレッド・アドラー(1870〜1937)は、オーストリアの心理学者、哲学者です。

 同時代を生きた偉大な心理学者、フロイト、ユングと並び称されるほど、現代心理学に多大な影響を与えたアドラー。
 しかし、残した実績ほどの知名度はありません。

 アドラーは、「自己啓発の父」とも呼ばれています。
 スティーブン・コヴィーの『7つの習慣』など、現在出版されているビジネス書の源流ともいうべき古典も、アドラー心理学に影響を受けた部分が大きいです。
 コミュニケーションの技術として知られるコーチングやNLP(神経言語プログラミング)の多くにも、アドラー心理学の影響が見られるとのこと。

 後世に多大な影響を残したにもかかわらず、その存在が消されたかのようなアドラーの哲学。
 本書は、アドラー心理学の核心部分を、平易な言葉遣いや意味解釈によって解説した一冊です。

 アドラーの哲学同様どれもシンプルで明快、「あたりまえ」に聞こえるものばかりです。
 小倉さんは、その「あたりまえ」こそが真実であり、答えなのだと述べています。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

スポンサーリンク           

人間は自分の人生を描く「画家」


 アドラー哲学の基本は、「人生は、きわめてシンプルである」ということです。

 人生が複雑で困難なものにしているのは、他ならぬ自分自身です。
現在の人生を決めているのは「運命」や「過去」のトラウマではなく、自分自身の考え方

 人間は自分の人生を描く画家である。
 あなたを作ったのはあなた。
 これからの人生を決めるのもあなた。


「運命」というと、あたかも自分には、いかんともしがたいもののように思われます。しかし、変えられないものは「宿命」であり、「運命」の「運」という字は「運ぶ」「動かす」という意味です。つまり「運命」は自分で「動かす」ことができるもの。これまで自分で「動かしてきた結果」なのです。
 私たちのこれまでの人生は、遺伝や生育環境、生まれ育った地域や入社した会社など、多くの事柄に影響されてきたことでしょう。しかし、それを大きく上回る決定要因は私たち自身が下してきた数百万、数千万回の様々な決断です。その決断は誰かに強制されたものではなく、自分が、自分の意思で、下してきたものです。
 今の会社を選んだのも自分。今の会社を辞めずに働き続けると決めたのも自分。今の配偶者を選んだのも自分。親の価値観を受け継いだとしているとしたら、受け継ぐと決めたのは自分。嫌ならばいつでも拒否する力と権利を私たちは持っています。嫌ならば会社を辞める権利。親の価値観にノーという権利。それを私たちは持っているのです。
 これまでの人生を作ったのは自分。これからの人生を作るのも自分。そう考えると、人生はなんと素晴らしいものか、と思えてきます。「できないことはない。人はどんなことでもできる」。アドラーの力強い言葉です。

 『人生に革命が起きる100の言葉』 すべてはあなたが決めたこと より 小倉広:著 ダイヤモンド社:刊

 自分が過去に経験したことは、自分自身の決断の積み重ねによって成り立っています。
 決断しなかったことも、自分の意志で「決断しない」ことを選択したということです。

 周囲の環境などの外的要因は、自分の選択を補強する材料。
 つまり、言い訳に過ぎません。

「できないことはない。人はどんなことでもできる」

 人間の可能性を100%信じた、スーパー・ポジティブな考え方。
 それが「アドラー心理学」です。

「劣等感」と「劣等コンプレックス」の違い


 アドラー心理学では、劣等感を周囲からは完璧に見える人、優れて見える人も、皆等しく持っている「主観的」なものと捉えます。

 劣等感を抱くこと自体は不健全ではない。
 劣等感をどう扱うかが問われているのだ。


 アドラーは「劣等性」と「劣等感」と「劣等コンプレックス」の3つを明確に区別して使いました。「劣等性」とは、目がよく見えない、背が低い、胃腸が弱いなどの具体的事実として劣った性質をいいます。「劣等感」とは、自分が劣っていると「主観的に思う」ことです。つまり具体的に「劣等性」があったとしても、それを劣っていると思えば「劣等感」になるし、思わなければ「劣等感」にならない、ということです。あくまでも「劣等感」は主観的なものです。ですから、誰が見ても痩(や)せているのに、本人が「自分は太っている」と思えば、それは十分に「劣等感」になるのです。
「劣等コンプレックス」は一般的に先の「劣等感」と混同されて使われていますが、アドラーは明確に区分しています。「劣等コンプレックス」とは「劣等感」を言い訳にして、人生の課題から逃げ出すことを指します。つまり、劣等感をバネにして「なにくそ」と頑張る人は、「劣等感」は持っているものの「劣等コンプレックス」を持っていないのです。
「親の遺伝のせいで勉強ができない」「家が裕福でなかったから暗い性格になった」などと、現在の問題を人のせいにして、努力を放棄し、課題から逃げること。それが「劣等コンプレックス」です。不健全なのは「劣等感」ではありません。「劣等コンプレックス」なのです。さて、あなたが持っているのはどちらでしょうか?

 『人生に革命が起きる100の言葉』 そのままの自分を認めよ より 小倉広:著 ダイヤモンド社:刊

 自分に「劣っているところがある」と思うこと自体は、自然なことです。
 その劣等感をバネにして、他の部分を伸ばせばいいだけです。

 問題なのは、「劣っているところがあるからダメな人間」だと考えて、努力を放棄すること。

「劣等感」「劣等コンプレックス」
 自分が感じているのはどちらなのか、しっかり把握することが重要です。

幸福になる唯一の道は「与えること」


 アドラーの残した有名な言葉に、以下のようなものがあります。

『あらゆる悩みは対人関係に行き着く』

 他者との関わりの重要性を説くアドラー哲学の根本に、「共同体感覚」という考え方があります。

 自分だけでなく、仲間の利益を大切にすること。
 受け取るよりも多く、相手に与えること。
 幸福になる唯一の道である。


 アドラーおよび彼の高弟ルドルフ・ドライカースらは「共同体感覚」を持つことの大切さを繰り返し述べました。なぜならば、それこそが悩みから解放され、幸せになる唯一の道だからです。そして、共同体感覚とは「他者に対する貢献」により形成されると言いました。社会の中で居場所がないことは大変悲しいことです。しかし、泣き言を言っても誰も助けてはくれません。そうではなく、自ら居場所をつくるのです。そのためには「他者へ貢献する」ことから始めなくてはなりません。そのことにより、他者から感謝され、そして他者からもお返しとして支援され、社会の中に居場所をつくっていくのです。
 このように、アドラーの提唱した共同体感覚には、キリスト教などの宗教、および現代の自己啓発理論と極めて近い概念が含まれています。そのため、アドラー心理学は、それまでの心理学者から「科学的ではない」と批判を受けました。しかし、健全な対人関係すなわち健全な人生を送るためには共同体感覚が不可欠です。そして、現代の心理学では、アドラーの概念はすでに「常識」となっています。「アドラーの理論は世の中よりも1世紀早すぎた」と言われる所以(ゆえん)がここにあります。
「自分の居場所がない」と感じるのなら、「周りの人が自分をわかってくれない」と愚痴るのではなく、自分から周囲に貢献するのです。そうすれば必ず居場所ができるはずです。

 『人生に革命が起きる100の言葉』 幸せになる唯一の方法は他者への貢献 より 小倉広:著 ダイヤモンド社:刊

 人間は、他者との関わりによって、自分自身の存在価値を見出します。

 個人としての「自分」という狭い枠を離れる。
 そして、共同体の一部としての「自分」という、より高い視点を持つことが大切です。

「全体としてひとつ」

 まさに、これからの時代にふさわしい考え方であるといえます。

「勇気」とは困難を克服する活力


「人生は自分自身の考え方次第で、いくらでも変えることができる」

 そんなアドラーの教えは、「言うは易く行うは難し」ですね。

 アドラー哲学を実践するうえで、『最も必要とされる資質が「勇気」』です。

「勇気」とは困難を克服する活力のことだ。
 勇気のない人が困難に出合うと、
 人生のダークサイドへと落ちていってしまうだろう。


 人生に困難はつきものです。仕事の課題、交友の課題、愛の課題。それぞれにおいて、次々と困難は押し寄せてきます。そして、困難により私たちの共同体感覚は試されます。余裕のない時にでも「相手を思い、相手を優先する」共同体感覚を持てるかどうか。
 私たちは日々試されているのです。
 そのような困難を克服する活力を、アドラーは「勇気」と呼びました。勇気があれば、共同体感覚を放り投げずに持ち続けたまま困難を解決していくことができる。しかし、勇気が足りなければ、困難を乗り越える活力を持てず逃げ出してしまう。共同体感覚を投げ出して、ラクな道、人生のダークサイドへ逃げてしまうのです。それは、犯罪者になることであり、アルコール中毒や薬物中毒者になることであり、神経症や精神病になることです。
 誰にでも訪れる困難に出合った時、人は大きな分岐点に立つことになります。その困難に立ち向かい、共同体感覚を持ったまま問題を乗り越えるのか。それとも、共同体感覚を放り投げて逃げだし、ダークサイドに落ちていくのか。それを分けるのが「勇気」の有無。「勇気」の有無こそが人生を決めるのです。
 さて、私たちはどれほどの「勇気」を持っているでしょうか? そして周囲の人に「勇気づけ」をできているでしょうか?

 『人生に革命が起きる100の言葉』 困難を克服する勇気を持て より 小倉広:著 ダイヤモンド社:刊

 人生は、小さな決断の積み重ねから成り立っています。
「こうしたい」という自分の意志通りに生きようとすると、必ず、壁に突き当たります。

 壁を目の前にしたとき、向かっていくか、背を向けてしまうか。
 その選択が、以降の人生を決定づけるといっても過言ではありません。

 失敗を恐れずに、困難に立ち向かう勇気を持ち続けたいですね。

スポンサーリンク           

☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 アドラー哲学は、徹底した「自力本願」の考え方の上に成り立っています。
 現在の性格や人格(アドラーは「ライフスタイル」という言葉を使っています)は、過去の経験の積み重ねで作られたもの。
 自分の心の中に根づいてしまっている思い込みや信念を変えることで、いくらでも自分自身を生まれ変わらせることができます。
 生まれつき怒りっぽい人もいないし、生まれつきネガティブな考えの人もいませんね。

「変わりたいのに変われない」
「今までの生き方をリセットしたい」

 そんなすべての人に、アドラーの珠玉の言葉の数々が大きな力になることは間違いありません。


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 15

フォローする

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA