【書評】『リーダーを目指す人の心得』(コリン・パウエル)

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 お薦めの本の紹介です。
 コリン・パウエルさんの『リーダを目指す人の心得』です。

 コリン・パウエルさんは、米国の軍人であり、著名な政治家です。
 2001年から2005年まで国務長官を務めるなど、4つの政権で政府の要職を歴任されています。

黒人初の米軍トップのリーダーシップの秘訣


 大統領候補に名前が挙がるほど、米国でも有数のリーダーとして、尊敬を集めるパウエルさん。
 貧しい移民の子として生まれ、コーラ工場の清掃係から、米軍のトップまで上り詰めました。

 その成功の秘訣は、どこにあるのでしょうか。

 本書は、パウエルさんの人生で集めた逸話や体験のうち、記憶に残った大切なことをまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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功績は分け合う


 パウエルさんには、自らが座右の銘(めい)にしている、有名な「コリン・パウエルのルール」と呼ばれる13ヶ条があります。

 その中のひとつが、「功績は分け合う」です。

 パウエルさんは、なにかがうまくいったとき、その功績は、組織の底辺にいたるまで全体のものとしなければならないと述べています。

 大切なのは気持ちを表す行動だ。勲章やストックオプション、昇進、ボーナス、昇給なども悪くない。だが、直接触れなければ部下の心を動かすことはできない。電子メールをばらまくようなやり方ではなく、優しいひと言をかける、背中をぽんとたたく、「よくやった」とほめるといったことを一対一でしなければいけない。部下の夢や願望、不安、恐怖に訴えるものなのだから、部下は皆、ベストを尽くしたいと考えている。部下がベストを尽くせたとき、リーダーはその旨、部下に教えてやらなければならないのだ。
 物事がうまくいかなかったとき、それはリーダーの責任であって部下の責任ではない。リーダーは、なぜそうなってしまったのかを分析し、必要な対策をとって前に進まなければならない。部下を一斉に罰するようなことをしてはならない。場合によっては首切りもしなければならないし、厳しい訓練を課したり高い成果を求めたりすることも必要かもしれない。激励になるのであれば休憩時間にどなりつけるのもいいだろう。いずれにしよ、失敗の責任が自分にあることを忘れてはならない。
 功績は皆で分けあい、非難はひとりで背負う。そして、おかしくなった理由を探し、そっと直す。「自分の行為の原因を自分以外に求めたとき、それは理由ではなく言い訳になる」――深刻な問題だと思うが、特にリーダーにとって大事な言葉だろう。

  『リーダーを目指す人の心得』 第1章 より  コリン・パウエル:著 井口耕二:訳  飛鳥新社:刊

 部下の功績を、自分だけで独り占めにしようとする。
 そんな上司も多い中、このような姿勢は、組織の士気を大いに高めます。

 パウエルさんが、巨大な組織である、米軍の中で異例の出世を遂げた秘訣が垣間見られます。 

「理想のリーダー像」とは?


 パウエルさんは、自らが好む人材、理想のリーダー像に触れています。

偉大なリーダーには、管理者にはないなにかがある。優れた管理者は、チームの設計能力を100%引きだす。偉大なリーダーは誰もが不可能だと思った110%、120%、150%を引きだすと述べています。

 一言にまとめると、私は、目的を持って懸命に仕事をし、仲間を奮い立たせる、また、家族との時間を大切にし、楽しむ、仕事バカではない人物が好きだ。充実したチームにしたいとも思う。だから、部下が懸命に仕事をするようにと私は懸命に仕事をする。部下がすることを信じていなければ、あるいは、仕事に必要な準備や装備が部下に与えられていると感じられなければ、このようなことは不可能である。
 仕事の基準は高めに、ただし不可能ではないレベルに設定する。できるかぎりの努力をすれば達成できるものにするのだ。
 恐れに支配される組織にはしたくないと思う。部下にどなりちらしたり、部下を虐待したりする組織だ。「そうしたいと思う人などいないよ」と思われるかもしれない。だが、残念ながらそういうリーダーもいる。私が働いた職場でも、職権の乱用と恐れに満ちたところがいくつもあったし、見聞きした範囲ではもっとたくさんの職場がそうだった。そういう職場のリーダーは弱いものいじめで自信のなさをごまかしているだけで、叱りつけることがリーダーシップだと思い違いをしているのだろう。そのようなやり方で部下の力を引き出させたリーダーなど、私が知る範囲にはいない。

  『リーダーを目指す人の心得』 第3章 より  コリン・パウエル:著 井口耕二:訳  飛鳥新社:刊

 リーダーとは、責任を持って受け持つ勇気のある人物。人々が反応し、この人にならばついていこうと思える人物です。

 日本にも、権力を武器に、威張り散らしているリーダーは多いですね。
 反面教師にしたいところです。

「必要欠くべからざる人物」とは?


 パウエルさんは、長い軍隊生活の中で、「必要欠くべからざる人物」はいないし、また、作ってはならないことを学びます。

 誰かが欠けたら、組織の機能がストップしてしまう。
 そのような事態になってはいけないからです。

 また、「必要欠くべからざる人物」は、往々にして、組織に悪影響を与えることがあります。

 政府関係者のなかには、毎朝、自分が太陽を灯していると思っている人がとてもたくさんいる。自分がいなければ、明るくもならなければ、暖かくもならないというわけだ。賞味期限をとうに過ぎているのに、退(しりぞ)くべき時が来たことを認めない人もたくさん見てきた。継承の問題を考えたことがないリーダーや、しっかりしたリーダーシップチームを作ろうと考えたことがないリーダーにもたくさん出会った。自信がなくて、このような現実に直面できないリーダーが多いのだ。
 必要欠くべからざるとされる人物が組織の足を引っぱっているのに、その現実を直視できないリーダーというのもたくさん見てきた。リーダーたるもの、組織を定期的にチェックし、十分な成果を挙げられていない人は間引くことも責務である。優れた部下は誰が成果を挙げていないのかわかっているし、そういう人をどうにかして欲しいとリーダーに期待もしている。
 必要な間引きをおこなわないと、優れた部下もたるんでゆくのが普通だ。逆に、間引きをきちんとおこなうと、チームを覆っていた闇雲が晴れる。
 どれほど優れたチームメンバーも、強みを失い、十分な生産性を上げられなくなることがある。リーダーは、職務にみあう能力がなくなった者を交代させられるよう、常に用意を整えておかなければならない。能力の低い部下に合わせて組織を再編するなどあってはならない。再訓練するか、異動させるか、あるいは、首にするか、だ。そのほうが、結局は本人のためでもある。もちろん、チームにとっては、短期的にもそのほうがいい。

  『リーダーを目指す人の心得』 第5章 より  コリン・パウエル:著 井口耕二:訳  飛鳥新社:刊

 企業でいうところの「老害」も、それに当たるのかもしれません。

 社長をリタイアした後も、“相談役”としてその会社に居座り続け、影響力を与え続ける。
 そのようなことは、多くの会社で日常茶飯事です。

 肩書きや過去の実績ではなく、現状の能力と生産性を考える。
 そして、必要な人材とそうでない人材を仕分ける。

 リーダーたるもの、それができることが大事ですね。

「イラク大量破壊兵器」についての誤解


 パウエルさんは、イラク戦争が近づいていた2003年2月に、国連においてイラクの大量破壊兵器の保有を非難する演説を行います。

 6週間後、米国はそれを理由に戦争が始めます。
 そして、4月9日にはイラクの首都バグダッドが陥落します。

 しかし、証拠となる大量破壊兵器は存在せず、パウエルさんは批判の声にさらされます。

 この件について、パウエルさんは、「汚点は汚点として認めるしかない」と自らの責任を認めます。

 2003年の国連演説について、今回以外、その経緯を書いたことはない。今後、また書くつもりもない。
 もちろんこれが最初の失敗ということなどありえないわけだが、最悪ともいうべき失敗であり、影響が一番大きかったことはまちがいがない。だが、少なくともひとつ、ほかの失敗と変わらない点がある。次のような指針に従い、いつもと同じように対処したという点だ。
 失敗はなるべく早く克服すること。また、そこから学ぶこと。転んでもただでは起きないのだ。自分がどうかかわったのかを検討する。自分に責任があるなら、潔く認める。自分よりも責任の重い人がいるかもしれないが、避難口がわりにそういう人を探さないこと。なにがまずかったのか、自分はどういうミスをしたのかがわかったら、それを教訓として前に進む。人生はフロントガラスの向こうを見ながら進むべきで、バックミラーを見ていてはいけない。昔に受けた侮辱や裏切り、攻撃、不幸などをぐちぐち言いつづける厄介者にはならないこと。友だちの慰めにおぼれないこと。学んで進むのだ。

  『リーダーを目指す人の心得』 第6章 より  コリン・パウエル:著 井口耕二:訳  飛鳥新社:刊

 何かトラブルや失敗が起きたとき、自分に責任があるなら、いさぎよく認めること。
 なかなかできることではありません。

 とくに、地位が上がるほど、自分の名声に傷が付くことを恐れがちです。

 責任を誰かに転嫁せず、受け入れる。
 そのうえで、ミスを教訓にし、失敗から学んで、前に進む。

 そんな謙虚な姿勢は、見習いたいものです。

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 この本の原題は、『it worked for Me(私はこれでうまくいった)』です。

「リーダーたるものかくあるべき」

 そのようなガチガチのリーダー論ではなく、あくまでも「自分の成功例を参考にして、その人なりに活用してほしい」というスタンスで書かれたものです。

 自分の成功を鼻にかけたような部分もなく、素直に共感できる部分も多く、すんなりと頭に入ってくる内容。
 多くの面で日本人向きのリーダー論です。

 誠実さや謙虚さなど人間性を磨き、組織の中で活躍するリーダーを目指す。
 本書は、そんな人にとって、格好の手引書といえます。


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