【書評】『人生の勝算』(前田裕二)

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 お薦めの本の紹介です。
 前田裕二さんの『人生の勝算』です。

 前田裕二(まえだ・ゆうじ)さんは、起業家です。
 仮想ライブ空間「SHOWROOM」を立ち上げられ、現在、同社の代表取締役社長を務められています。

「勝算がある」生き方をするために


 前田さんが、本書を書こうと思ったきっかけ。
 それは、今、不幸や苦境に直面していたり、自分から見える景色が真っ暗だ、という人に、ほんの少しでも頑張る勇気を持ってもらいたかったことです。

 人生というドラマの中でしばしば、自らではコントロール不能な何らかの外部要因が、一見打ち手のなさそうな試練を与えてきます。そこで、決して、運命に屈してほしくない。突如立ちはだかる壁やハンディキャップは、後天的な努力によって必ず乗り越えられる。世間との競争にとらわれずに、他でもない、自分の運命と真剣勝負で向き合ってほしい。人ではなく、運命に負けないでほしい。
 そんな思いで、この本を書くことを決めました。僕自身がSHOWROOMという事業を立ち上げるまでの、すったもんだの奮闘ストーリーを具体的にお伝えすることで、逆境の乗り越え方を少しでもイメージしてもらえたらと思っています。
(中略)
 SHOWROOMとは、「仮想ライブ空間」というキャッチコピーで知られる、2013年11月にスタートしたライブ配信サービスです。素人からプロまで、あらゆるジャンルにまたがる「配信者、演者」と呼ばれる放送主の方々が、まるで駅前の路上パフォーマンスをするかのように、インターネット上の無限に広がるライブ空間でパフォーマンスをしています。

 インターネット上にある、生配信限定のゆるいテレビ番組を集めたようなもの、と思っていただければ良いでしょうか。
(中略)
「秋元さん。僕は、ビジネスにも人生にも、勝算があります」

 秋元康さんと出会った頃に、伝えた言葉です。僕の勝算は、ビジネスにとどまらない。僕は、自分の人生に勝つ自信がある。そんな、僕のような若造の言葉を受けて、秋元さんは、「君の、根拠のない自信が好きだ」と言いました。以来、「人生の勝算」という言葉は、僕が迷ったときに立ち返る大事な考え方になっています。

『人生の勝算』 プロローグ より 前田裕二:著 幻冬舎:刊

 前田さんが、伝えたいことは、大きく3つあります。

  • 絆の大切さ
  • 努力の大切さ
  • 人生という壮大な航海において「コンパス」を持つことの大切さ
 本書は、私たちが、ビジネスのみならず、人生そのものにおいて「勝算を持つ」ためのノウハウをまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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スナックが潰れない理由


 廃れゆく商店街の中でも、スナックが最後まで潰れない理由。
 そこには、大きく2つの理由があります。

 1つ目は、人がスナックにお金を払う背景には「ヒト」が深く関わっているから。
 2つ目は、「絆」という対価が生じているので、ちょっとやそっとではその価値が消滅しにくいから。

 スナックの売り物は、ママの人柄、および、ママや常連客との温かいコミュニケーションです。

 コミュニケーションが形成される上で、5つのエッセンスがあります。
 前田さんは、これらはすべて、スナックコミュニティという現象から抽出化できると述べています。

 最初の二つは①余白の存在、②常連客の存在です。コミュニティを作る上では「余白」が重要になります。そして、スナックにおいては、ママ自体が、確かな余白として設計されています。
 ママは若くてきれいな女性である必要はなく、例えば一緒に酒を飲んだお客より先に潰れても良いし、どこか頼りなくても良い。プロフェッショナルとしては、粗だらけです。でも、その未完成な感じが、逆に共感を誘い、仲間を作ります。みんなでこのママを支えようという結束力が生まれ、コミュニティが強くなります。

 僕がよく行くスナックでは、ママが本当にずぼらで、すぐに酔いつぶれてしまうので、お客さんがグラスを洗ったり、お酒を作ったりしています。これは、普通のレストランでは考えられないことです。もはやお客さんと店員の境目がなくなっているのです。一度、店員というゾーンにまで行ってしまったお客さんは、お店が自分の居場所であり、守るべき城だと思うようになります。高いロイヤリティを感じるようになるので、お客としても、当然通い続けることになります。「今月はお店が苦しそうだから、ボトルを1本多く入れよう」とか「飲み放題だけど、高いお酒を頼みすぎないようにしよう」など、お客さんながら、完全にお店側の目線で行動を起こすようになります。

 強いコミュニティにおける二つ目のポイントは、「常連客の存在」です。スナックは、一見さんが入りにくい雰囲気になっていることが多いです。これは、スナックというビジネスモデルが、長年通っている「常連客」によって成立しているからです。「常連客」も「余白」と並ぶコミュニティの大切な要素です。空間をなるべく閉じられたものにすることによって、「俺たちだけの場所」といった具合に、常連さんの所属欲求をより掻き立てているのです。東京・四谷のある有名なスナックは、電話しても直接行っても決してお店に入ることは許されず、常連の紹介がなければ入れません。「信頼している人からのクレジットこそが新しい信頼を生む」という、これもコミュニティにおける鉄則です。
(中略)
 コミュニティが深まる要素として、前述の①余白があること、②クローズドの空間で常連客ができること、以外に、③仮想敵を作ること、④秘密やコンテクスト、共通言語を共有すること、⑤共通目的やベクトルを持つこと、の三つがあります。③「仮想敵」の観点では、ママを責める常連客は、まず皆の敵になり、ママを皆で守ることで結束が強まります。④「秘密共有」の観点では、このトラブルのことは、他のお客には言わないで、我々だけの胸にしまっておこう、という共通認識やコンテクストが出来上がります。⑤は、これは③と似ていますが、このお店のトラブルを解決する、という一つの目的にそれぞれが向かっていくことで、絆が生まれます。

 ここまでくると、お客さんは本当に離れられなくなり、コミュニティはより強くなっていきます。

『人生の勝算』 第1章 より 前田裕二:著 幻冬舎:刊

 熱狂的なファンや、コアな常連客が多い。
 そんなサービスは、人であっても、店であっても、商品であっても、強いです。

 いかに血が通う「絆」をつくりあげるか。
 それが、これからのビジネスを成功させる、最大のポイントです。。

ファンビジネスの4象限


 エンターテイメント業界における課題と、あるべきファンビジネスのかたち。

 前田さんは、それらを整理するために、独自に、今の芸能界を4象限に分類しました(下図を参照)。

図 ファンビジネスの4象限 人生の勝算 第2章
図.ファンビジネスの4象限
(『人生の勝算』 第2章 より抜粋)

 第一象限(右上)、第二象限(左上)、第三象限(左下)、第四象限(右下)の4つに分けて考えます。SHOWROOMとしては、芸能人の卵が、第三象限から始まって、第一象限を目指していく、という意味で、便宜上、左下から反時計回りで、A、B、C、Dと呼ぶことにしています。
 縦軸は「偶像↔身近」で、横軸は「右・ファンの数が多い↔左・ファンの数が少ない」という図式です。特に縦軸が重要で、ファンとの交流の「密度」とも言い換えられます。高い更新頻度で、密度濃くコミュニケーションを重ねると下へ。偶像として一定の距離感を保ってミステリアスな自分を演出すれば、上へ。そういったイメージです。
 インターネット登場するまでは、芸能界には上半分の、偶像モデルしか存在しませんでした。
 特別なルックスや才能を持った人だけが芸能事務所に所属する。一般人と芸能人の間には、明確に大きな壁がありました。
 そして、芸能事務所に所属していても売れない子が、Dにいました。その中から、よりルックスをはじめ何らかの芸の才能に秀でていたり、プロデューサーに気に入られるなどのきっかけによって、CMやドラマに引き上げられ、Cのスターへと上っていったのです。
 Aの右上の最上位Cにいるのが、わかりやすく言えば上戸彩、石原さとみ、綾瀬はるか、桐谷美玲(きりたにみれい)などといったトップ女優。アイドルでは嵐、AKB48、EXILE TRIBE、サザンオールスターズなどもこの象限でしょう。
 芸能界を俯瞰すると、Cにいられる人たちは限られています。Cにいて一定の認知があっても、それだけで食べていくのが難しい人たちもいます。そして、7〜8割のタレントやアーティストが、Dから抜け出せない、いうのが現状でしょう。芸能事務所には所属しているけれど、それほどテレビには出られず、仕事が少なくて収入もない・・・・・芸能活動だけで生活できていない人が、圧倒的に多い状況です。
 しかし、インターネットやソーシャルメディアの出現によって、タレントがもはや偶像ではなく、身近な存在に。ファンは芸能人と気軽に交流ができるようになりました。
 この図で言うと、上から下に降りていくイメージです。その結果、ファンビジネスの4象限の下の部分、AとBというエリアが生み出されました。

 特別なルックスやコネがなくても大丈夫。かつて路上で弾き語りをしていた僕のような少年や、スナックのママであっても、正しい努力をすれば、「食べていける」ところまでは到達できるモデルです。
 A、Bという下の象限では、配信頻度を増やしたり、ファンとのコミュニケーションの工夫次第で、努力量に応じてファン数やギフティング数が増えるという現象が起きます。
 これはSHOWROOMのデータから明らかになっています。頑張った人にはファンがつく。見た目の可愛さや若さ、先天性を乗り越えて、頑張れば報われる世界がここに確かに存在しています。

『人生の勝算』 第2章 より 前田裕二:著 幻冬舎:刊

 インターネットの普及は、多くの分野において、新規参入の垣根を引き下げました。
 特別な世界だと思われていた芸能界も、例外ではないということですね。

 前田さんは、消費スタイルが、単なるモノ消費・コンテンツ消費から、ヒト消費・ストーリー消費に映ってきていると述べています。

 SHOWROOMは、これからの時代のプラットフォームを代表する存在といえますね。

思いやりとは、「他者」の目を持つこと


 前田さんは、現状をより良い方向にすすめたり、問題を解決していくのに最も必要なのは、「他者の目」だと指摘します。

 僕は、会社を経営したり、プロダクトを作ったり、部下を育てるときにも、「他者の目」と同じ景色をどれだけ想像できるかが、最も大切だと思っています。
 学生の頃のエピソードです。塾講師のアルバイトをしていました。教えるのは中学生・高校生です。
 生徒たちにはテキストの何ページから何ページまでを予習してきなさいなど、課題を出します。でも課題は特に面白くはないし、学校の部活も宿題も忙しいので、いかんせん、なかなかやってこない。
 僕は、何かと彼らの英語の力を伸ばしたいし、彼ら自身もそれを望んでいます。
 主観カメラ、つまり、自分の目では、テキストの予習をしてこなかったら罰を与えるとかが対処策になります。
 だけどここでも、客観カメラ、他者の目です。彼らは、何を求めているんだろうかと、必死に観察して、考える。
 そこで、ある男子生徒が休み時間にいつも女の子の話をしているのを見て、それとなく、「英語がうまくなったら、女の子にモテるかもね」と伝えました。英語で話してみせて、英語が話せることが以下にカッコ良いか(少なくとも日本ではそう思われるか)ということを、示してみせました。
 そこから彼が豹変しました。まず、僕の予習課題を欠かさずやるようになりました。超真面目に予習をしてくるようになって、一気に英語の成績が伸びました。彼のモチベーションの源泉が、「モテたい」というところにあったんだと、気付きました。これも、バカみたいな方法かもしれません。が、本来の英語力を伸ばすという目的は叶いました。
 もちろん、異性にモテたいという欲望が低い生徒もいます。
 お母さんに褒められたいとか、◯◯くんには負けたくないとか、動機は人それぞれです。
 ポイントは、「相手目線」に立って、それぞれが求めているモチベーションを冷静に見つめ、分析することです。
 そして本質的に成果の上げられる方法を、個別に手ほどきしていきます。そうして、受け持った生徒全員の成績を伸ばしていきました。

『人生の勝算』 第3章 より 前田裕二:著 幻冬舎:刊

「自分はこう思っているから、相手も同じように思うだろう」

 そういう考えは、自分勝手な、ご都合主義です。

 相手は、どんな性格で、どんな価値観を持っているのか。
 じっくり観察する“眼”を養うこと。

「他者の目」の視点で、ものごとを考える。
 忘れないようにしたいですね。

見極めてから、掘れ!


 前田さんは、世の中の課題は、大体モチベーションで解決できると考えています。

 モチベーションを生むために、必要なのが「見極め」です。
 見極めが甘いと、頑張り続けることはできません。

 よく、「投資銀行で成功したのはなぜですか」とか、「新規事業立ち上げの秘訣は?」と聞かれるのですが、ひと言でいえます。「頑張る」ということです。

 頑張るという言葉を分解すると、「見極めて、やり切る」ということになります。例えば宝の山が眠る鉱山を掘って、宝石を探り当てるレースをするとします。
 ここで、ほとんどの人が「俺の筋肉を見よ」と言わんばかりに山のすそ野からスコップでこつこつと掘り進める。掘り始めると、仕事をしている感じがすごくあるし、思考停止してそのまま掘り続けます。しかし、掘っている途中で、だんだん疲れてきますし、「もしかしたら、ここには宝がないかもしれない」という不安が頭にちらつき、途中できっと挫折します。
 僕だったら、まずは宝石がこの大きな鉱山のどこに埋まっているのか、どのようにしたら効率的に掘ることができるのかを全力で考えて、仮説を立てることにエネルギーを注ぎます。
 すでに掘り始めているライバルをよそに、山の麓に住む街の長老にヒアリングしたり、実際に採掘できた地元の人に会ってみたり、宝石のありかの地図や探知機のようなものを探してきたり、あらゆる手段を使って効率的な採掘手段は何か、仮説を立てます。
 その鉱山のA〜Zの採掘地点のうち、CとDに原石が埋まっている可能性が高いとわかると、他の地点は捨てて、CとDを掘るのに全力注ぎます。
 このポイントを探し当てることが、「見極め」です。
 見極めたら、後は血みどろになっても掘る。絶対に、見つけるまで掘る。
 原石がそこにあると見極めた以上、迷わないで、エネルギーを出し尽くします。そして、最短距離で、宝を掘り当てる。このたとえで考えると当たり前ですが、実際の仕事で掘るべき場所はここ、解くべき問題はここ、と本質を見極めて、その後で掘っているケースは実はすごく少ないと思います。
 どんなに熱を投下しても、その前の「見極め」をしっかりやっていなければその熱は無駄になります。
 これがビジネスのPDCAサイクル(Plan[計画]Do[実行]Check[評価]Act[改善])を回す、基本中の基本です。
 モチベーションが高まらない人の多くは、見極めが甘い。自分という大きな航海に出ているのに、方角を示すコンパスを持っていない。自分の進むべき道を定めていないから、途中でどこに向かっているのかわからなくなり、広い海の上で途方にくれます。そうなったら、一旦陸に戻ってでも、自分自身のコンパスを得るのが、結局遠回りに見えてベストだと思います。
 自分の進む道は、現時点では少なくともこれで間違いないと言える、信じ切れる、というところまで見極め作業を徹底すれば、モチベーションは身体から湧いてきます。

『人生の勝算』 第4章 より 前田裕二:著 幻冬舎:刊

「見極め」て「頑張る」。
 ただ、やみくもに掘り進めればいい、というわけではないのですね。

 自分なりに納得し、確信を持って決断すること。
 それが、何があっても崩れないモチベーションを生み出します。

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 人生で訪れる、幾多の試練を乗り越えるために、もっとも必要なもの。
 それは、人生の価値観、向かうべきベクトルを明確に持つことです。

 前田さんは、そのためには、とことんまで自分の向き合って、自分の心と深く対話する必要があるとおっしゃっています。

「こうすれば、絶対に負けない」

 そんな必勝法は、ビジネスにも、人生にもありません。

 最終的に、自分はどこに行きたいのか。
 それを明確にし、そのための方法を自分なりに考え、行動に移す。

 それが、成功するための近道だということです。

 私たちも、本書を読んで、自分なりの「人生の勝算」を手に入れたいですね。

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