本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『メモの魔力』(前田裕二)

 お薦めの本の紹介です。  前田裕二さんの『メモの魔力 The Magic of Memos』です。

 前田裕二(まえだ・ゆうじ)さんは、起業家です。  仮想ライブ空間「SHOWROOM」の創業者で、現在、同社の代表取締役社長を務められています。

「メモの魔力」を持てば、世界に敵はいない!

 前田さんは、自他ともに認める「メモ魔」です。

 とにかく、朝起きてから夜寝るまで、気付いたことがあれば、すべてメモをとっているとのこと。

 なぜ僕は、ここまで狂ったように「メモ」にこだわるのか。  それは、この「魔法の杖なんてない」と言われる世知辛い社会において、メモこそが自分の人生を大きく変革した「魔法の杖」であると直感しているからです。そして、今後も、その魔力で僕の人生を良い方向に導いてくれるであろう、という確信があるからです。  一体、どんな魔力なのか。まず、メモをとると、あらゆる日常の出来事を片っ端からアイデアに転換できます。一見価値のなさそうな、普通の感覚では誰もがスルーしてしまう小さな事象でさえ、メモすることで、それはアイデアになる。メモの魔力は、日常をアイデアに変えるのです。

 また、メモの効用は、アイデアを生み出すことに留まりません。
 対象を「自分自身」に向けることで「自分とは何か」も見えてきます。つまり、自己分析が深まる、ということです。「自分を知る」などと言うと「今さら自分探し?」という声が聞こえてきそうですが、今の時代、自分を知ることはすごく大切です。今後、お金をどれだけ持っているか、ではなく、人の感情や共感などといった「内在的な価値」こそが評価対象になるという「価値経済」が大きく勃興することは、ほぼ間違いないでしょう。そんな時代の中で、「自分をよく知って何かに熱中している人」こそ、多くの共感を集める人になる、すなわち価値を持つのだと強く思います。 (中略)  メモの魔力は、僕らの夢をも、現実のものにしてくれます。  一度きりの人生において「こんなことを実現したい!」「あんなことがしてみたい!」「こうなったらいい!」ということを、ただ心の中で思っているだけでは、ほとんどかないません。いつの間にか気持ちが薄れてしまったり、跡形もなく消えてしまったり・・・・・。我々が持つ多くの願望は、その程度のものです。  それを防ぐのが、メモです。そうした夢、願いを紙に書き付けることで、その想いは格段に強くなります。紙に書いたものを、何度も見返すことで、その想いは本物へと成長し、そうして強くなった願いは、心の中にへばり付いて離れなくなります。想いを持ち続けることができるのです。  現代において、僕が「本当に強い」と思う人材は、「想いの強い人」です。志が高い。夢がある。熱意がある。ちょっとウェットではありますが、そういう強力な軸を持ったある種人間的な人こそが、力強く前に進んで、社会に大きな引っかき傷を残すのです。

『メモの魔力』 序章 より 前田裕二:著 幻冬舎:刊

 前田さんは、メモは単なる“ノウハウ”ではなく“姿勢”であると述べています。

 本書は、「メモの魔力」を使いこなして、人生を劇的に変える方法についてまとめた一冊です。  その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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メモを「第2の脳」として活用する

 前田さんが、狂ったようにメモをとる理由。

 それは、「より本質的なことに少しでも多くの時間を割くため」です。

 本質とは何かというと、コピーではなく創造、代替可能物ではなく代替不可能物、ということ。つまり、クリエイティブで新たな知的生産につながる思考や、自分にしか思いつかないような代替不可能性の高い思考。これら価値のある本質的思考に1秒でも多く時間を割くために、メモをしているのです。  もちろん、ここまで徹底して時間への意識を高めることは、精神的なカロリーを消費します。が、AIの進化や、それに伴うあらゆるタスクの効率化によって、人間の役割が変わっていくこと、つまり、創造力やオリジナリティが求められる仕事が今後飛躍的に増えていくことは誰が見ても自明です。そんな中で、付加価値の低いことに思考労力を費やしている暇はありません。だから、これからの未来を生きる人類すべてにとってメモが見直されるべきだし、身につけねばならない基本リテラシーになっていくと思います。

「時間を割くべき本質的なこと」について、もう少し、具体例を出して考えてみます。例えば、「過去のミーティングでどんな議論があったか」とか、「そこに誰が何人座っていたか」とか、「打ち合わせの日時はいつだったか」などといった情報自体は決してクリエイティブなものとは言えず、単なる「ファクト(事実)」です。

 そのファクトは最初から与えられたものとしてわかっている前提で、では今度は、そこから何が言えるのか、そして、どうアクションするのか。これらを一歩踏み込んで考えることこそが、クリエイティビティです。要は、「過去のファクトを思い出す」という余計なことに思考の時間を割かないために、メモをするわけです。  メモやノートは、記憶をさせる「第2の脳」です。いわば「外付けハードディスク」として、あとで検索できるように書いているのです。言うまでもなく、第1の脳は、創造力を発揮させる自分の脳です。  第2の脳である外部ハードディスクに記憶の部分を頼ることで、空いた自分の脳の容量を、創造力を要することにめいっぱい使う。そのほうがより多く付加価値を生むことができるわけです。第2の脳に蓄積したファクトが、第1の脳で新しいアイデアを生む際の種になることもあるため、気づいたら何でもメモをしておくという意識が、創造力を高めるための第一歩です。

『メモの魔力』 第一章 より 前田裕二:著 幻冬舎:刊

 メモをとると、当然、紙の上に“情報”として残ります。  それとともに、「手を使って書く」という行為によって、潜在意識にも刷り込まれます。

 何のつながりもなかった情報同士がくっつき、意味のあるアイデアとしてひらめく。

 メモをとることで、そんな可能性が飛躍的に高まるということですね。

抽象化の3類型「What」か「How」か「Why」

 前田さんのメモ術の根幹をなすもの。  それは、「抽象化」です。

 前田さんは、人間に与えられた最も重要な思考機能であり、最大の武器であると述べています。

 僕がどのように「抽象化」をしているか、頭の中の整理のプロセスをお伝えしたいと思います。

 まず、一番重要なのは、抽象化する際の「問い」です。自分に、「What?」を投げかけるのか、「How?」を投げかけるのか、「Why?」を投げかけるのか。シンプルですが、抽象化のコツをつかむ上で、これがとても重要です。

 例えば、目の前の現象や考え方を抽象化して、また別の名前をつけて呼び直す。これは、「What型」と呼べるでしょう。

 一方で、目の前の現象にはどんな特徴があるか、ということを深掘りして考える。これは、「How型」と呼びます。

 そして、ヒット映画が当たった理由を抽出して、また別の企画に転用したい。このとき僕らは自分の心に、「Why?」と問うでしょう。

 抽象化として価値が高いのは、後者の二つ、「How型」と「Why型」です。なぜなら、他の具体への転用可能性が高く、また、転用したときのインパクトが大きいからです。

『メモの魔力』 第二章 より 前田裕二:著 幻冬舎:刊

図 抽象化の際に考える三つの型 メモの魔力 第二章
図.抽象化の際に考える三つの型
(『メモの魔力』 第二章 より抜粋)
 前田さんは、これら三つの型の使い方を以下のように具体的な例を用いて、以下のように解説しています。

①What型
■物質軸
例:【空から降る水の粒】→「雨」   【光を発し熱を帯びた穂のような何か】→「炎」

■関係性軸 例:【左と右、男と女、賛成と反対】→「反対」   【数学の方程式(例えば、1次関数)】→「y=ax+b」

※What型については個人が抽象化する意味合いが薄いことが多いので、具体→抽象→転用の例を割愛します。

②How型 ■特徴軸(どんな) 例:ポケモン ・特徴(ファクト)・・・ポケモンというゲームにおいては、それぞれのモンスターに属性があり、属性に応じた攻撃を仕掛けることによって、効果が増大する。 ・抽象化・・・相手に応じて攻撃方法を変える。 ・転用・・・就職試験の面接でも、面接官の特徴に応じて、話すエピソードを変えるべき。

③Why型 ■ヒット軸(当たった/刺さった理由は何か) 問いの例: ・ある商品が最近一気に売上を伸ばしたが、その理由は何か。 ・あるアプリのユーザー数が最近一気に伸びたが、その背景は何か。 ・ある映画が最近大当たりしたが、なぜだったのか。

※必ずしも大ヒットしていなくても、自分の琴線に触れるものについて、なぜ自分の琴線に触れるのか、を深掘りして考えてみるのも訓練になる。例えば、歩いていたら目に飛び込んできた広告が、なぜ自分には刺さるのか、など。 具体例:『カメラを止めるな!』のヒット ・ファクト・・・出演は無名俳優のみ、かつ、300万円という低予算で作られたのにもかかわらず、上映館は公開当初(2018年6月23日)の都内2館から、1ヶ月強で一気に全国150館に拡大。その後も上映館を拡大し、興行収入も大作に並んだ。 ・抽象化・・・  ①ヒットには落差が重要(AなのにB。今回であれば、制作費をかけていないのに面白い)。  ②ヒットには共感も重要(「制作費をかけなくても面白いものは作れる」といったように、皆が今言いたいことを体現すると拡散される)。 ・転用・・・SHOWROOMのキャンペーンにも、落差と共感を入れ込む。 ■インサイト軸(本当は何が言いたいか) 具体例:SHOWROOMのアーカイブ機能 ・ファクト・・・ユーザーはアーカイブ(録画が見られる機能)を求めている。 ・抽象化・・・あとで見返したいから→純粋にコンテンツとして見返したい、ということではなく、本質的には、すべてのコンテンツを見逃さずに話題についていきたいという、コミュニティ所属欲求や、演者とのコミュニケーション・応援欲求がベースにあるのではないか。 ・転用・・・むやみにアーカイブを入れてリアルタイム配信を見なくてもよい(=ライブ配信の優先順位を下げる)理由を作ってしまうのではなく、例えば配信後にまとめサイトなどでニュースが上がるように、きちんとパブリシティを徹底して、コミュニケーションの種を得られる状態を確保することで、本質的(だと今は考えられる)欲求を一定程度満たす。

『メモの魔力』 第二章 より 前田裕二:著 幻冬舎:刊

 ヒットした商品には、それなりの理由があります。  その理由を、本質的な部分まで深掘りできれば、他の商品やサービスに応用ができます。

「抽象化」は、そんな発想を生み出す有効なツールです。  メモをとる作業が、そんな創造的な力を発揮するというのは、驚きですね。

「時代に取り残されない人材」になるためには?

 前田さんは、自分とは何か? 自分が本当に望んでいるものは何か? それを明らかにするときにもメモは本当に役に立つと述べています。

 これからの時代、「自分が何者か」「何をやりたいのか」を見つけることは、より重要となります。  それを強力にバックアップしてくれるのが、「メモ」です。

 一つ僕が予測している流れは「個」へのフォーカスです。インターネットが可能にする個のエンパワーメント(要は個人が自助努力でフェアに力をつけやすくなった、ということ)によって、これから、今以上に個人が取り沙汰される時代になると考えています。  人生を組織に委ねることで生きていけた時代も、終焉(しゅうえん)を迎えつつあります。今後は、組織の中でも個人のスキルや仕事力が今以上に可視化・フィーチャーされていくし、組織の枠を超えて、プロジェクトベースで働くことも増えるでしょう。  ブロックチェーン技術が生活の至るところに行き渡り、分散型社会への変革が進めば、組織や企業という概念、枠組みさえ、薄まってしまうかもしれない。
 そこで、「個」として戦う上で必要な基本姿勢やスキルを身につけていないと、気づけば時代に取り残されてしまう。僕らは今、とてもチャレンジングな局面に立たされています。

 では、これからの社会において、どんな「個」が価値を持つのか。  僕は、何かに熱狂している「オタク」であることが、価値創出の根源になると考えます。あることについて、めちゃくちゃ詳しくて、好きで好きでたまらない。いつだって、ついそのことばかり考えてしまうような人物です。

 例えば、堀江貴文さん。  彼が和牛やロケットについてひとたび熱くしゃべり始めたら、もう止まりません。一つのことにそれだけの熱量を注ぎ込める人が、多くの人の共感を集め、お金も集める時代になる。

 もちろん、オタクである、熱狂している、というだけでは不完全で、独自の視点やセンスも非常に重要です。単に「詳しく知っている」というだけではなくて、知識を得る中で研ぎ澄まされていった独自の「視点」こそが価値として定義され、消費されていくのです。  例えば、キングコングの西野亮廣さんが考案した、誰でも古本屋を出店できるプラットフォーム「しるし書店」では、普通に流通している書籍が、とある理由で、定価の何倍もの値段、時には、3万円などの高額で売れることもある。  そんな魔法のようなことが起きるのは、しるし書店が「キズ本」、すなわち、「自分なりの“しるし”を入れた本」を取り扱っているから。読み手が気になった部分にマーカーでラインを引いたり、コメントを書いたりした古本、ということです。  ここでは、本に記載されている「情報」ではなく、読み手の「視点」に価値が見出(みいだ)されます。

 夢中になれるもの、熱中できるものがある人はこれからの時代、とても強い。そのためにも自分を知り、自分の望みを理解しておくことが大切なのです。

『メモの魔力』 第三章 より 前田裕二:著 幻冬舎:刊

 私たちは、自分が思っているほど、自分自身を理解していないものです。

 今まで潜在意識の奥深くに眠っていた「本当の自分」に気づく。  そのためには、客観視、つまり、自分を外側から見る視点が必要です。

 メモは、そのための有効な手段となるということですね。

「言語化」で夢は現実になる

「夢を紙に書くと現実になる」

 前田さんは、その理由の一つを、以下のように説明しています。

 一つは、マインドシェアの問題です。つまり、その夢について、まず紙に書いた時点で、潜在意識に刷り込まれる度合いが高くなります。書く瞬間に脳が受けるインパクトは思いのほか大きく、その結果、紙に書く行為は記憶に残りやすいためです。もちろん、まず言葉にすることに大きな意味があるので、どうしても紙に書けない環境下で何かやりたいことを思いついた場合は、デジタルメモでも構いません。しかし、しっかり脳に染み込ませる意味では、情報量が多く右脳でも記憶しやすい、アナログの文字にして一度見つめてみるべきだと思います。  夢へのマインドシェアが高くなるほど、すなわち、夢について考える時間が長ければ長いほど、夢をかなえるために必要なことをブレイクダウンして考えたり、現在地点との距離を測ってその差分を埋めるための努力方法を見極めたり、また、妨げになりそうな障害や課題をつぶしていこう、という問題意識も芽生えます。  こうした、夢への思考を深めていけるのも、具体的な「言葉」があるからです。ふんわりとしてつかみどころのない願いをもっているだけでは、よほどの強運がない限り、夢は自分から近づいてきません。言語化の過程で、抽象的な夢を具体化したり、また抽象化してみたりして、自分の夢にまつわる言葉群があらゆる抽象度でどんどん磨かれていく。こうした、思考することができる言葉を携えておくことによって、考えるきっかけが、時間が、マインドシェアが増え、夢が現実のものとなりやすくなるのです。

 突然ですが「なぜ流れ星を見た瞬間に願いを唱えると夢がかなうのか?」、考えてみたことがありますか? 願いがお星様に届くからでしょうか。おそらく、違います。僕が思うには、「流れ星を見た一瞬ですら、瞬間的に言葉が出てくるくらいの強烈な夢への想いを持っているから」です。そして、その強烈な夢への想いの結果、片時も忘れず、ずっと願っているからです。想いは強ければ強いほど、行動への反映率が上がります。そして、行動こそが、夢が手に届く場所に僕らを連れて行ってくれます。  では、こうした「ずっと願っている状態」を擬似的に作るにはどうすればいいのでしょうか。それはやはり、夢のことを考えるきっかけを増やすことです。その意味では、紙に書いて、毎日の生活動線上にある身近なところに置いておくことで、その紙を何度も見る可能性を高めるのも、夢へのマインドシェアを高めるコツです。たとえば手帳の1ページだったり、ベタですがトイレに張り紙をしたり。夢を紙に書いたものを撮影して、スマホの待ち受け画面にしてもいいでしょう。  ある人は、「デジタルのメモは、ブラックホールの彼方(かなた)に消えてしまう」とよく言っています。もちろん検索可能性の高さは時にすごい威力を持ちますし、僕もうまく使い分けして活用していますが、デジタルのメモは、何度も見返すきっかけを作ることはなかなか難しいという欠点があります。

『メモの魔力』 第四章 より 前田裕二:著 幻冬舎:刊

 漠然としたイメージより、具体的な言葉の方が、潜在意識にしっかり刷り込まれる。  何となく、理解できますね。

 目を閉じると、夢がかなった場面が、ありありと思い浮かぶ。  それくらい現実的で、具体的な形にまで落とし込む。

 そのためには、言葉の力が必要不可欠だということです。

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「メモ」という“魔法のツール”を使いこなすコツ。

 前田さんは、それはとにかく体中の毛穴をむき出しにして、あらゆる情報を体に吸収させる姿勢を保つこと。すなわち、「メモをとり続ける姿勢」を保つことだとおっしゃっています。

 メモをとることが、毎朝の洗顔や歯みがきと同じ「習慣」になるまで続ける。  とにかく「量」を積み重ねる。

 それが重要だということです。

 斬新な発想を生み出し、人生の新たな可能性を切り開く。

 必要なのは、紙とペンだけです。

 私たちも、本書を片手に“メモの魔力”を身に着けたいですね。

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