【書評】『酒好き医師が教える最高の飲み方』(葉石かおり)

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 お薦めの本の紹介です。
 葉石かおりさんの『酒好き医師が教える最高の飲み方』です。

 葉石かおり(はいし・かおり)さんは、エッセイスト・酒ジャーナリストです。
 2015年に一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションを設立され、国内外にて世界に通用する酒のプロの育成に励まれ、各地で日本酒のイベントをプロデュースされるなど、ご活躍中です。

 浅部伸一(あさべ・しんいち)さんは、肝臓病学、ウイルス学がご専門の内科医です。

一生、お酒を楽しむためには?


「お酒は大好き、だけど飲み過ぎで体が心配」

 そのような不安を抱えている人は、多いのではないでしょうか。

 自他ともに認める「酒好き」である葉石さんも、その一人です。

 酒はおいしいし、楽しい。でも健康不安を抱えながら、このペースで飲み続けていていいのだろうか?
 そんな不安を抱えて飲んでいたアラフィフの私が、「お酒と健康」をテーマにした本を出すことになった。正直、医療分野に長けているわけではない。だが酒好きの気持ちは誰よりも良く熟知している。そうだ、酒好きを代表して、酒飲みの素直な疑問や不安を医師や専門家にぶつけてみようではないか。本書はそんな思いをもって書いた。
 酒好きの多くは「どうせ医者は、適量を飲め、としか言わない」と思っているかもしれない。いや、確かにそうなのだが、話をうかがった医師や専門家は、自身も酒好きという方がほとんどだった。つまり我々の気持ちがよく分かる方々なのである。だからこそ、自分の経験談を交えながら、どうすれば酒をやめることなく、長く健康でいられるかを教えてくれた。
 取材を進める中であらためて感じたのは、「酒は飲み方によっては毒にもなり、薬にもなる」ということだ。
(中略)
 私自身は、取材を進めるうちに飲み方が変わった。自宅で晩酌するのが当たり前だったが、会食が多い週は自宅飲みをやめる。休肝日を増やす。朝晩、体重計に乗るのを日課にする。つまり、健康を気遣って酒を飲むようになったのである。
 相変わらず外飲みは、ほぼ毎日のように「適量」を超えてしまうが、それでもこうしたケアによって、体重は3キロ減り、体脂肪は5%減った(ダイエットは現在も継続中)。
 オーバーしていた中性脂肪も基準におさまった。
 朝の目覚めも良く、むくみもなくなり、以前よりもすこぶる体調も肌の調子もいい。
 数値に結果が出たことで、「やはり医師のアドバイスは間違いない」と実感している。
 もし以前のようにダラダラと飲み続けていたら、酒に関わる仕事すらできなくなっていたかもしれない。
 酒好きの左党の皆さん、だまされたと思って、本書に書かれている飲み方をぜひとも実践してみてください。
 そりゃあ「適量」を守るのに越したことはないが、そう簡単ではないことも私はよく知っている。なので、かたく考えず、たまにやらかしたっていいくらいの気持ちで実践すればいい。適量を「死守」するのではなく、適量を「意識」するだけでもカラダは変わってくる。
 継続しているうちに、「あれ、最近調子いいな」と思ったらしめたもの。自分にとっての適量、翌日に残らない飲み方をカラダが自然と覚えてくれたということだ。

『酒好き医師が教える最高の飲み方』 はじめに より 葉石かおり:著 浅部伸一:監 日経BP社:刊

 本書は、お酒を一生味わいながら、健康的に生きるにはどうしたらいいか、最新の医学的な知見をもとにまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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飲み会では“油を使ったもの”を先に食べる


 二日酔い、悪酔いを防ぐのに、気をつけなくてはならないこと。
 それは、アルコールの血中濃度を急激にアップさせないことです。

 アルコール全体の吸収に占める割合の5%は、「胃」です。
 残りの95%は、「小腸」で吸収されます。

 つまり、アルコールの血中濃度を上げない(=酔いを遅くする)ためには、いかに胃でのアルコール滞留時間を長くし、小腸へ送る時間を遅くするかが大切になります。

 では、「胃の中でできるだけ長く滞留する食べ物」とは、具体的に何でしょうか。

 それはです。油分は胃での吸収時間がとても長い。消化管ホルモンの一種であるCCK(コレシストキニン)などが働き、胃の出口となる幽門を閉め、胃の中を撹拌する働きがあるのです」(下の図1も参照)
 何と油とは! 確かに、油は胃にもたれそうだし、胃の中での滞留時間が長くなりそうではある。
 胃の滞留時間は、食べ物によってかなり異なる。例えば、米飯(100グラム)は2時間15分で消化するのに対し、ビーフステーキ(100グラム)は比較的長く、3時間15分程度かかる。油は最も長く滞留し、バター(50グラム)は12時間もかかる。こうしたデータを見ても、いかに油が長時間胃に留まるかが理解できる。
 とはいえ、いくらアルコールの吸収を遅らせるといっても、「油を最初にとるのは、ちょっと・・・・・」と思う人も多いだろう。
「血中アルコール濃度を上げないという観点では、油分を先にとることが理にかなっています。ただし、油といってももちろんそのままではなく、刺し身にオリーブオイルをかけた魚介類のカルパッチョ、マヨネーズを使ったポテトサラダなど油を使った前菜向けの料理は多くあります。こういった油を使った料理を最初に食べるといいでしょう。
 最初に食べるともたれそうですが、唐揚げ、フライドポテトなども効果が期待できます。お酒と混じり合って半固形になるような食べものだと、より腸に送られにくくなります。胃や腸にとってアルコール吸収が不利となる状況を、いかにおつまみで作るかがアルコール血中濃度を上げないポイントとなります」
 いきなり油を使った料理はきついという人には、乳脂肪分を含むチーズを食べるという方法もあるという。

『酒好き医師が教える最高の飲み方』 第1章 より 葉石かおり:著 浅部伸一:監 日経BP社:刊

図1 胃で吸収されるアルコールは5 程度 最高の飲み方 第4章
図1.胃で吸収されるアルコールは5%程度
(『『酒好き医師が教える最高の飲み方』 第1章 より抜粋)

「油」が、アルコールの血中濃度が上がるのを妨げる。
 たしかに、意外な感じがしますね。

 飲む前に、油ものを少々・・・・・。
 お酒の席での新常識、覚えておきましょう。

アルコール代謝中は、脂肪の燃焼が阻害される


 今や、「日本人の3人に1人が罹患している」ともいわれる「脂肪肝」

 脂肪肝は、肝臓(肝細胞)に脂肪(特に中性脂肪)が蓄積した状態のことです。

 放置すると、炎症を起こしたり、線維化が進んで肝臓が硬くなったりして、果ては肝硬変、肝がんになる可能性があります。

 脂肪肝の原因は、肥満、脂質異常、糖尿病が関与する非アルコール性脂肪肝だけではありません。

 もう一つ、大量飲酒が原因のアルコール性脂肪肝があります(下の図2を参照)。

図2 脂肪肝の分類 最高の飲み方 第2章
図2.脂肪肝の分類
(『酒好き医師が教える最高の飲み方』 第2章 より抜粋)

 浅部さんによると、大量のアルコール摂取が脂肪肝につながる理由は2つあるという。
「まず、アルコールは中性脂肪の材料になるんです。肝臓に運ばれたエタノールは、アルコール脱水素酵素(ADH1B)によってアセトアルデヒドになり、次にアルデヒド脱水素酵素によって酢酸となります。その後アセチルCoAを経て、最終的にエネルギーを生むとともに脂肪酸を生成します。この脂肪酸こそが中性脂肪のもととなります。
 もう一つの理由は、アルコールが肝臓で代謝されている間は燃焼が阻害されるからです。普段、私たちの体は脂肪酸を「β(ベータ)酸化」によって代謝しています。β酸化とは脂肪酸を酸化して、最終的に細胞が必要とするエネルギー源を生成するプロセスのことです。しかし、アルコールが肝臓で代謝されている間はβ酸化が抑制されてしまうため、脂肪が燃焼されにくくなり、代謝されない過剰な脂肪酸は肝臓に蓄積されやすくなります。そのためお酒好きな方は脂肪肝になりやすいのです(下の図3を参照)」

 なるほど、「大量飲酒は脂肪肝に向かって一直線」というわけだ。
「1日の純アルコール摂取量が60グラム(日本酒にして3合)を超えている場合、アルコール性脂肪肝であることがほとんどです。アルコールのとりすぎが脂肪肝につながることは、教科書に載るくらい、医療の分野では常識中の常識です
 私はそんな常識を知らなかった・・・・・。

 アルコール性脂肪肝の場合、原因は酒と分かっているのだから、手っ取り早く休肝日を取ればいいと思うのだが、「休肝日よりもアルコールの総量を減らすことが重要」だという。
「適量は純アルコールに換算して週に150グラム程度。休肝日を取ることも有効ではありますが、休肝日明けにどか飲みしてしまっては何の意味もありません。脂肪肝を改善したいなら、休肝日よりも“量を守ること”に注力するといいでしょう」
 また、一緒に食べるおつまみの選択も大事だという。
「特に炭水化物(糖質)のとりすぎには注意が必要です。アルコールは肝臓からのブドウ糖放出を抑制するので、血糖値が上がりにくく、空腹感を覚えがち。そこで空腹感を満たすため、糖質となるお好み焼きや、焼きそばといった炭水化物をおつまみに選んでしまうと、ますます脂肪が蓄積されるという負のスパイラルに陥ってしまいます」
 アルコール代謝によって脂肪が蓄積されるうえに、おつまみからの脂肪も加算されるとなれば“脂肪のダブルパンチ”である。飲んだ後の締めのラーメンの味は格別だが、アルコールが生み出す空腹感にだまされてはいけないのだ。

『酒好き医師が教える最高の飲み方』 第2章 より 葉石かおり:著 浅部伸一:監 日経BP社:刊

図3 アルコールの代謝のプロセス 最高の飲み方 第2章
図3.アルコールの代謝のプロセス
(『酒好き医師が教える最高の飲み方』 第2章 より抜粋)

「アルコールはカロリーがない。だから、内臓脂肪は増えない」

 そう思い込んでいる人は、考え方を改めたほうがいいですね。

 飲むお酒の総量を減らす。
 おつまみは、炭水化物(糖質)以外のものにする。

 それが脂肪肝にならないためのポイントです。

「アセトアルデヒド脱水素酵素」の活性がカギ


 顔が赤くなる。
 冷や汗をかく。
 動悸がする。

 お酒を飲んだときに出る、それらの複合的な症状を「フラッシャー」と呼びます。

 フラッシャーの大きな原因は、体内でアルコールが代謝される際に発生するアセトアルデヒドの毒性です。

「実は顔が赤くなる、ならない人の差には、アセトアルデヒドを分解するアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)が大きく影響しています。ALDHの一つであるALDH2の活性は、その人の遺伝的要素によって決まります。ALDH2の活性には人によって生まれつきの強弱があり、3タイプに分類することができます」
 体内に入ったアルコールの約9割は肝臓で代謝される。その際、アルコール脱水素酵素によって、アルコール(エタノール)はアセトアルデヒドに分解。その後、「アセトアルデヒド脱水素酵素」(英語の略称はALDHで、1・2・3の3つの型がある)により、アセトアルデヒドは無毒な酢酸になり、肝臓から排出される(上の図3を参照)。このALDHのうち、ALDH1とALDH3は個人差が少ないが、ALDH2は個人差が非常に大きく、その差が酒に強いか弱いかを決めるカギを握っているのだ。
 ここでALDH2活性の3タイプの違いを知っておこう。
 ALDH2が安定で正常な動きをするのが「活性型(NN型)」。両親から、分解能力が高いとされるN型を受け継いだ人だ。自他ともに認める酒豪で、酒を飲んでも赤くならないノンフラッシャーがほとんど。
 2つ目は「不活性型(ND型、低活性型と呼ぶ場合もある)」。分解能力が高いN型と、分解能力が低下したD型をそれぞれ引き継いだタイプで、全く飲めなくはないが、基本的には酒に弱くなる。普段からアルコールに親しんでない場合、顔も赤くなりやすい。
 3つ目はALDH2が完全に失活した「失活型(DD型)」。両親からD型を引き継いだタイプだ。酒に弱いどころか、全く飲めないといったほうが正しく、ほとんどの場合がフラッシャー。奈良漬けを食べた程度でも真っ赤になってしまうのがこのタイプだ。
 ちなみに、日本人などの黄色人種の場合、活性型は50%程度、不活性型が40%で、失活型が10%程度となっている。一方、白人や黒人はほぼ100%が活性型だ。

『酒好き医師が教える最高の飲み方』 第3章 より 葉石かおり:著 浅部伸一:監 日経BP社:刊

図4 ALDH2活性の3タイプとアルコールの強さ 最高の飲み方 第3章
図4.ALDH2活性の3タイプとアルコールの強さ
(『『酒好き医師が教える最高の飲み方』 第3章 より抜粋)

 お酒に強い・弱いは、体質で決まる。
 それは医学的にも証明されている事実だということです。

 お酒を無理に飲まない、飲ませない。
 健康のためにも、その場を楽しく過ごすためにも、忘れないようにしたいですね。

急性症状が治まっても「完治」ではない?


 肝臓とともに、アルコールと深い関係にある臓器。
 それは「膵臓(すいぞう)」です。

 膵臓の働きには、主に「外分泌機能」「内分泌機能」の2つがあります。

 外分泌機能は、たんぱく質、脂質、糖質を消化する酵素を分泌する機能です。
 内分泌機能は、インスリンやグルカゴンといった血糖値のコントロールに寄与するホルモンを分泌する機能です。

 お酒飲みが気をつけるべき病気のひとつが「膵炎(すいえん)」です。

 膵炎は、膵臓に炎症が起きた状態のことで、上腹部や背中などに激しい痛みや、吐き気などの自覚症状を伴います。

「膵炎には急性と慢性の2つがありますが、もしも急性であったとしても症状が治まれば完治したということではありません。アルコール性急性膵炎にかかる人の多くは、長年の常習的な飲酒によって既に慢性膵炎が存在し、忘年会などで飲酒量が増える日がしばらく続くとアルコールがトリガー(引き金)となり、“急性”として現れる。つまり症状が出た時点で、膵臓が慢性の炎症を抱えていることが多いのです」
 急性であっても、重篤なケースに至っては、複数の臓器に障害を起こす「多臓器不全」に至ることもあるという膵炎。なぜこのような症状が起こるのだろうか?
「まず膵炎になる主な要因は、タンパク質を分解する『トリプシン』という消化酵素を含む膵液の分泌異常によるものです。正常な状態であれば、トリプシンは非活性型のまま十二指腸に届き、小腸から分泌される酵素のエンテロキナーゼと合わさることで、さまざまな原因でこのトリプシンが膵臓の中で活性化し、膵臓を“自己消化”してしまう疾患が膵炎です。重症急性膵炎では、膵臓が広範囲に壊死することで大量の活性物質が全身に放出され、多臓器不全に至り、不幸にして亡くなる場合もあります。膵臓の炎症が持続的に続いているのが慢性膵炎で、何年もかけて正常な組織が壊され、やがて線維化(萎縮)することで、消化吸収障害を引き起こします。さらに内分泌機能が低下すると、糖尿病にかかるリスクも高くなります」

『酒好き医師が教える最高の飲み方』 第5章 より 葉石かおり:著 浅部伸一:監 日経BP社:刊

図5 慢性膵炎を引き起こす主な原因 最高の飲み方 第5章
図5.慢性膵炎を引き起こす主な原因
(『酒好き医師が教える最高の飲み方』 第5章 より抜粋)

 膵臓は、「沈黙の臓器」呼ばれるほど、自覚症状の少ない臓器です。
 しかも、一度、膵炎を発症したら膵臓の機能が元に回復することはかなり難しいとのこと。

「後悔先に立たず」

 膵炎を未然に防ぐためにも、飲み過ぎにはくれぐれも注意したいですね。

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「お酒の飲み過ぎは、体に悪い」

 昔から、そう言われてきました。

 でも、お酒の何が悪いのか、個人差が出るのはなぜか、具体的に説明できる人は少ないでしょう。

 お酒は、社会生活をしていく上で、欠かすことのできないコミュニケーションの道具でもあります。

 お酒を毎日のように飲む人も、たまにしか飲まない人も、ぜひ、知っておきたい「お酒の新常識」。

 監修者の浅部さんが、現時点で分かっている、飲酒と健康に関する情報が幅広く網羅された「決定版」と自負されているとおり、中身の詰まった充実の一冊。

 極上のワインのような風味を、皆さんもぜひ、堪能してみてくだい。

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