本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『サボリ筋コンディショニング』(笹川大瑛)

お薦めの本の紹介です。
笹川大瑛さんの『腰の痛みが10秒で解消!サボリ筋コンディショニング 体操やストレッチより効果絶大!』です。

腰の痛みが10秒で解消!サボリ筋コンディショニング 体操やストレッチより効果絶大!

笹川大瑛(ささかわ・ひろひで)さんは、理学療法士です。

あなたの腰周りには「サボっている筋肉」がある!

腰痛が起こるのは、腰から股関節(こかんせつ)の「関節」と、その周りにある「筋肉」にトラブルが発生しているからです。

笹川さんは、これらの関節と筋肉が、本来の機能をきちんと果たしていれば、腰痛など起こるはずはないと述べています。

 しかし、腰から股関節を支えている筋肉の中には、これまで繰り返してきた動作や姿勢のクセ、加齢などの影響から「働きづらくなる筋肉」が存在します。
それは、ひとことでいえば働いていない=サボっている筋肉。つまり「サボリ筋」なのです。
こうした腰周りのサボリ筋こそが、腰痛をはじめとした腰トラブルの根源になっています。
①腰周りのサボリ筋が、本来の働き、機能を果たしていない

②サボリ筋のそばにある「他の筋肉」にも悪影響が及ぶ

③腰から股関節の関節・骨盤の状態も悪くなる

④腰痛や坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)が発生する

腰痛に悩まされている方のほとんどは、このようなサボってきた筋肉=サボリ筋からはじまる“負のスパイラル”を経たうえで、不調を抱えているということなのです。

腰周りにサボリ筋があると、そのサボリ筋が本来果たすべきだった役割を、そばにある複数の筋肉が頑張ってフォローしようとします。
ですから、サボり筋の周囲にある筋肉にとっては、過剰な働きをこなさなければいけなくなります。
それはまさに、前ページでご説明した「②サボリ筋のそばにある『他の筋肉』にも悪影響が及ぶ」ということです。

私は、こうしてサボリ筋の”マイナスぶん”を補うために働く筋肉を「ガンバリ筋」と呼んでいます。
例えば、腰周りにある「腸腰筋(ちょうようきん)」という筋肉がきちんと働かず、サボリ筋になると、そばにある「大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)」「大腿直筋(だいたいちょっきん)」「梨状筋(りじょうきん)」などの筋肉がガンバリ筋になっしまうということです(下の図1を参照)。
(中略)
サボリ筋へのピンポイントの刺激によって、

●サボリ筋が本来果たすべき働き、機能を回復させられる
●サボリ筋がきちんと仕事をこなせるようになるため、ガンバリ筋が自動的に緩む
●腰周りの「筋肉を使う割合」が理想の状態に変わる
●腰から股関節の動き・安定性が向上し、骨盤の状態も整う
●脊柱菅狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)・椎間板(ついかんばん)ヘルニア・ぎっくり腰などの腰痛に加え、坐骨神経痛も改善・解消する

という好循環が生まれるのです。

また、腰を支える筋肉に必要な要素は、太さや量だけではありません。
実は、脳からの「働け」という指令の頻度・伝達ぐあいも大きく影響しています。
普段の動作や姿勢のクセ、加齢などの影響で、脳からの「働け」という指令通りに働けなくなってしまった筋肉に、サボリ筋コンディショニングはピンポイントでアプローチするので、生理学的には10秒間で弱っていた筋肉を強化できるのです。

こうしてサボリ筋の状態を整えることにより、“眠っていた力”を目覚めさせるからこそ、腰のトラブルはみるみるよくなっていくのです。

『サボリ筋コンディショニング』 はじめに より 笹川大瑛:著 KADOKAWA:刊

図1 サボリ筋 と ガンバリ筋 サボリ筋コンディショニング はじめに
図1.「サボリ筋」と「ガンバリ筋」
(『サボリ筋コンディショニング』 はじめに より抜粋)

本書は、腰回りの筋肉の「アンバランスな状態」を瞬時に解消し、「理想的・健康的な腰の状態」に整える方法である「サボリ筋コンディショニング」のノウハウをわかりやすくまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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腰痛には、「腰が反るタイプ」と「腰が丸くなるタイプ」がある

腰のトラブルは、次の流れで大きくなっていきます。

①腰周りのサボリ筋が、本来の働き・機能を果たしていない
②サボリ筋のそばにある「他の筋肉」にも悪影響が及ぶ
③腰から股関節(こかんせつ)の関節・骨盤の状態も悪くなる
④腰痛や坐骨神経痛が発生する

図2 腰周りの骨と関節 サボリ筋コンディショニング 第1章
図2.腰周りの骨と関節
(『サボリ筋コンディショニング』 第1章 より抜粋)
図3 腰が反った状態 と 腰が丸くなった状態 サボリ筋コンディショニング 第1章
図3.「腰が反った状態」と「腰が丸くなった状態」
(『サボリ筋コンディショニング』 第1章 より抜粋)

 腰には、仙骨(せんこつ)・寛骨(かんこつ)(腸骨(ちょうこつ)、恥骨(ちこつ)、坐骨(ざこつ)が癒合(ゆごう)したもの)・尾骨(びこつ)から成る「骨盤」があります。
また、背骨全体(脊柱(せきちゅう))の中では、5個の骨(椎骨(ついこつ))が縦に重なって“腰の部分”を構成しています。それら5個の「腰椎(ようつい)」の間にある関節を「椎間関節(ついかんかんせつ)」といいます(上の図2を参照)。
サボリ筋、そしてガンバリ筋があると、この腰椎に対しても多大な悪影響が及びます。
腰椎を含めた背骨は、本来、全体を横から見ると緩やかなS字カーブを描いています。腰に相当する5個の腰椎の部分は、緩やかに反った「前弯(ぜんわん)」の形をしています。
こうした緩やかなカーブがあるおかげで、体重や重力からくる負荷、地面からの衝撃がうまく分散・緩和されるようになっています。

ところが腰回りには、すでにお話してきたとおり、「腰を支えている重要な筋肉なのにサボりがちな筋肉」があります。
そして、「サボりがちな筋肉が機能しない⇒ガンバリ筋が緊張・硬直する」という状況に陥ると、以下のような「2つのタイプの悪影響」が現れ、腰痛が増幅されるのです。
●骨盤が前傾し、「腰が反るタイプ」
●骨盤が後傾し、「腰が丸くなるタイプ」

前者の場合は、骨盤が前傾することによって、上半身が前に倒れないように「反り腰」になるということです。つまり、腰椎が本来描いている前弯の形は、前述したように「緩やかに反ったカーブ(生理的前弯(せいりてきぜんわん))」であるはずなのに、きつい角度で腰が反りすぎることにより、痛みを強くさせやすいのです。
一方、後者の場合は、骨盤が後傾することによって、今度は上半身が後ろへ倒れないようにバランスを取るため、腰が丸まります。腰椎の緩やかに反った前弯のカーブが失われ、“真っ直ぐに近い状態”(スウェイバック姿勢)になることから、痛みを悪化させやすいということになります。
いずれにしても、サボリ筋を根源として、腰の骨・関節の配列・並び方(アライメント)が大きくずれているということなのです(上の図3を参照)。

皆さんの中には、総合病院や整形外科医院などで、“腰痛の原因としての疾患名”を告げられた方は多いと思います。
そこで、前項でお話した「腰が反るタイプ」「腰が丸くなるタイプ」と、脊柱菅狭窄症・椎間板ヘルニア・腰椎分離症(ようついぶんりしょう)(以降は「分離症」と表記)・腰椎すべり症(以降は「すべり症」と表記)などの代表的疾患との関係にも触れておきましょう。

「腰が反るタイプ」では、分離症やすべり症、坐骨神経痛も多く見られます。その理由は、特に分離症・すべり症の発生メカニズムを知ればご理解いただけるはずです。
まず、腰椎の分離症とは、腰椎の後方にある突起部分が折れ、その名のとおりに分離している状態です。痛みが出るのは、腰椎が不安定になって神経を刺激したり、分離部で炎症を起こしたりしたりするためとされています。
一方、すべり症とは、5つある腰椎のうちのいずれかの骨が、主に前方へズレて(すべって)いる状態です。厳密にいえば、前記した分離症によって分離した骨がすべる「分離すべり症」と、分離がなくてもすべりが起きている「変性すべり症」があります。

では、これらの分離症とすべり症が、どうして「腰が反るタイプ」でよく見られるのかーー。その答えこそが「反り腰」で、腰椎全体としての「緩やかな前弯」の度合いを超えた角度で腰を反りすぎていることなのです。

腰が反りすぎていれば、本来かかってくる以上の負荷が腰椎後方に押し寄せます。その過剰な負荷が、腰椎後方にある突起部分の分離につながっていることは容易に想像できるでしょう。

また、反り腰になると5つの腰椎はもちろん、その下にある仙骨(せんこつ)という骨も、前方へ向けて傾く角度が大きくなります。すると、縦に5つの骨が連なる構造になっている腰椎は、必然的にすべりやすくなってしまうのです(下の図4を参照)。
「5つある腰椎の並び方が“ガタガタの状態”になる」⇒「腰椎の中にある神経の通り道(孔(あな))の並び方もズレる」⇒「神経が圧迫されて痛みが生じる」というわけです。
また、仙骨が前傾しすぎることによって、仙骨と腸骨(上の図2を参照)からなる関節(仙腸関節(せんちょうかんせつ))に過剰な負荷がかかり、炎症(仙腸関節炎)による痛みも起きやすくなります。

対して、「腰が丸くなるタイプ」では、脊柱菅狭窄症が多く見られます。椎間板ヘルニアも、「腰が反るタイプ」よりも少し多い印象があります。
腰の椎間板ヘルニアとは、腰椎の骨と骨の間にある椎間板から、髄核(ずいかく)という組織が飛び出し、そのヘルニア部分が神経を圧迫して痛む疾患です。
腰が丸くなったせいで増大した負荷に椎間板が耐えられず、内部に収まっているべき髄核が押し出されてしまうのです。
さらに、縦方向の圧が高まっているため、腰椎の骨どうしのすき間は狭まっていきます。すると、骨と骨との摩擦の高まりなどによって、骨にトゲ状のもの(骨棘(こつきょく))ができるなどの変形が起こり、脊柱管狭窄症にまで進行してしまうこともあるのです。

脊柱菅狭窄症とは、背骨(脊柱)の中の孔のスペース(脊柱管)が狭くなり、中を通る神経(脊髄(せきずい)・馬尾(ばび)・神経根)が圧迫されて、痛みやしびれが生じる疾患です。
その孔のスペースが狭くなる要因は、椎間板そのものがつぶれてはみ出したり、前述したような骨棘ができたり、腰椎どうしをつないでいる靭帯が厚くなって脊柱管の中に張り出したりするなど、さまざまな問題が関係しています。

椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症は“まったくの別物”という印象を抱いている人もいるようですが、このように実は深い関係があります。

『サボリ筋コンディショニング』 第1章 より 笹川大瑛:著 KADOKAWA:刊

図4 腰椎すべり症の仙骨の状態 サボリ筋コンディショニング 第1章
図4.腰椎すべり症の仙骨の状態
(『サボリ筋コンディショニング』 第1章 より抜粋)

同じ腰痛でも、「腰が反るタイプ」なのか「腰が丸くなるタイプ」なのかで、症状が変わってきます。
当然、原因も違うので、対処法も変わってきます。

腰が「反る」と痛むか?「丸くなる」と痛むか?

腰痛は、腰回りを支える7つの筋肉(下の図5を参照)の中に機能していない筋肉=「サボリ筋」があることで起こります。

図5 腰を支える 7つの重要な筋肉 サボリ筋コンディショニング 第2章
図5.腰を支える「7つの重要な筋肉」
(『サボリ筋コンディショニング』 第2章 より抜粋)

笹川さんは、そのため、どこが「腰痛の発端となるサボリ筋か」によって、腰が「反る」と痛むか、「丸くなる」と痛むかが分かれると指摘します。

 ですから、「サボリ筋コンディショニング」をはじめる際は、大別して2つある腰痛タイプのどちらに自分が当てはまるのかを知ることからスタートしましょう。
36〜41ページにあるセルフチェック(下の図6〜図8を参照)で当てはまるものを選び、「自分に最適な腰痛解消メニュー」を見つけることで、効率よくサボリ筋を刺激しましょう。
(中略)
3つあるチェックのうち、まずは「セルフチェック①」と「セルフチェック②」で、それぞれに当てはまった数を比べましょう。
すると結果は、以下の3つのパターンのうちのいずれかになり、48〜63ページにあるサボリ筋コンディショニングを行ううえでの目安になります。

セルフチェック①で行う動作のほうが、腰に痛みを感じることが多い人は、骨盤が前傾して「反り腰」になっている傾向があります。
腰の骨・関節の並びが崩れ、腰周りにある背面の筋肉が「ガンバリ筋」となり痛みを発生しているので、「サボリ筋」となっている体の前側の筋肉を強化する「腰が反るタイプ向け」のコンディショニングを多めに行うことで、痛みを解消できます(下の図9〜図11を参照)。
セルフチェック②で行う動作のほうが痛む人は、体の前側の筋肉が「ガンバリ筋」となり余計な負荷がかかっているため、屈むと痛みを感じやすい傾向にあります。そのため、「サボリ筋」となっている背面の筋肉を強化する「腰が丸くなるタイプ」のコンディショニングを多めに行いましょう(下の図13〜図15を参照)。後傾した骨盤を正しい位置に戻す効果もあるので、腰痛を招く原因のひとつといわれている猫背も解消できます。
どちらも同じ数が当てはまる人は、セルフチェック③で“隠れサボリ筋”があった人は、隠れサボリ筋対策(下の図12、図16を参照)も行えば、腰痛はいっそうスムーズに改善・解消へ向かいます。

「サボリ筋コンディショニング」の効果は、筋力バランスが整うことでより早く、確実に実感できるものです。そのため、「該当するタイプ向けのコンディショニングだけ行う」「体の左右で痛み・しびれ・動かしづらさがあるほうだけ行う」などの偏りがあっては本来の効果が期待できません。該当するタイプは「実践する割合の目安」としてとらえ、ぜひすべてのコンディショニングを行ってください。

『サボリ筋コンディショニング』 第2章 より 笹川大瑛:著 KADOKAWA:刊

図6 腰が反るタイプ はこんなときに痛みを感じる ① サボリ筋コンディショニング 第2章
図6 腰が反るタイプ はこんなときに痛みを感じる ② サボリ筋コンディショニング 第2章
図6.「腰が反るタイプ」はこんなときに痛みを感じる!
(『サボリ筋コンディショニング』 第2章 より抜粋)

図7 腰が丸くなるタイプ はこんなときに痛みを感じる ① サボリ筋コンディショニング 第2章
図7 腰が丸くなるタイプ はこんなときに痛みを感じる ② サボリ筋コンディショニング 第2章
図7.「腰が丸くなるタイプ」はこんなときに痛みを感じる!
(『サボリ筋コンディショニング』 第2章 より抜粋)

図8 腰痛にかかわる 隠れサボリ筋 がないかチェック ① サボリ筋コンディショニング 第2章
図8 腰痛にかかわる 隠れサボリ筋 がないかチェック ② サボリ筋コンディショニング 第2章
図8.腰痛にかかわる「隠れサボリ筋」がないかチェック!
(『サボリ筋コンディショニング』 第2章 より抜粋)

図9 腸腰筋コンディショニング サボリ筋コンディショニング 第2章
図9.腸腰筋コンディショニング
(『サボリ筋コンディショニング』 第2章 より抜粋)

図10 内側ハムストリングスコンディショニング サボリ筋コンディショニング 第2章
図10.内側ハムストリングスコンディショニング
(『サボリ筋コンディショニング』 第2章 より抜粋)

図11 後脛骨筋コンディショニング サボリ筋コンディショニング 第2章
図11.後脛骨筋コンディショニング
(『サボリ筋コンディショニング』 第2章 より抜粋)

図12 母趾球コンディショニング サボリ筋コンディショニング 第2章
図12.母趾球コンディショニング
(『サボリ筋コンディショニング』 第2章 より抜粋)

図13 多裂筋 腹横筋コンディショニング サボリ筋コンディショニング 第2章
図13.多裂筋・腹横筋コンディショニング
(『サボリ筋コンディショニング』 第2章 より抜粋)

図14 内転筋コンディショニング サボリ筋コンディショニング 第2章
図14.内転筋コンディショニング
(『サボリ筋コンディショニング』 第2章 より抜粋)

図15 腓骨筋コンディショニング サボリ筋コンディショニング 第2章
図15.腓骨筋コンディショニング
(『サボリ筋コンディショニング』 第2章 より抜粋)

図16 小趾球コンディショニング サボリ筋コンディショニング 第2章
図16.小趾球コンディショニング
(『サボリ筋コンディショニング』 第2章 より抜粋)

「反ると痛いタイプ」は骨盤の前を整える

「腰が反るタイプ」の人は、「腸腰筋(ちょうようきん)」「内側(ないそく)ハムストリングス」「後脛骨筋(こうけいこつきん)」がサボリ筋になっていて、そのことが腰痛や坐骨神経痛の原因になっている可能性がきわめて高いです。

 腸腰筋は、腰・股関節(こかんせつ)の前側を支える代表的な深層筋(しんそうきん)(インナーマッスル)です
また、正確にいうと、腸腰筋は「大腰筋(だいようきん)」「小腰筋(しょうようきん)」「腸骨筋(ちょうこつきん)」という3つの筋肉から構成されています(下の図9を参照)。腸腰筋とは、これら3つの筋肉の総称です。
その腸腰筋がサボってくると、当然ながら腰を支える力が弱くなります。そして、弱くなったぶんを補うため、腸腰筋とは反対側=腰・股関節を後ろ側で支えている「多裂筋(たれつきん)」という筋肉に負荷がかかります。
この多裂筋という筋肉は、92ページでも詳しくご説明しますが、背骨の後ろ側にあり、腰から上半身を反らせる働きがあります。ですから、過剰に働いた多裂筋は、緊張・収縮しっぱなしで硬くなり、おかげで腰が反りやすくなってしまいます。
腰から背中にかけての張りやコリ、筋肉痛=筋筋膜性(きんきんまくせい)腰痛の原因になり、腰椎(ようつい)本来の緩やかな前弯(ぜんわん)カーブ以上の「反り腰」にもなってしまうということです。

悪影響は、前項の話だけではありません。
腸腰筋の主な働きは、「股関節を曲げて太もも(脚)を持ち上げること(屈曲(くっきょく))」です。
腸腰筋がサボリ筋になり、この力が弱くなると、太ももを上げるときには他の筋肉の力が必要となります。そのときに働くのが、太ももの斜め前にある「大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)」や、太ももの前側中央にある「大腿直筋(だいたいちょっきん)」などの筋肉です。
つまり、これらの筋肉が過剰に働いて、ガンバリ筋になってしまうのです。

こうなると、骨盤が前傾しやすくなります。なぜなら、これらの筋肉は骨盤の一部についているので、これらが緊張・収縮・硬直した状態になると骨盤を前方へ引っ張り続けることになるからです。
そして、骨盤が前傾すれば、腰はいっそう反りやすくなるという“負のループ”まで生まれます。腰椎や、腰椎の間にある椎間板(ついかんばん)などをはじめ、腰周りの組織全体に余計な負荷がかかり続けることになるためです。

また、腸腰筋には「股関節を外側に開く(外旋(がいせん))」という働きもあります。腸腰筋がサボリ筋になるということは、こちらの力も弱くなるということです。
すると、その働きをフォローするためにお尻のほぼ中央の最深部で左右にある「梨状筋(りじょうきん)」という筋肉が過剰に働いてガンバリ筋になり、緊張・収縮・硬直した状態になってしまいます。これが、お尻自体の張り・コリ・痛みにつながります。
さらに、梨状筋の下には脚の感覚や動きを支配し、人間の体の中で最大の直径と長さがあるといわれる「坐骨神経(ざこつしんけい)」が通っています。この坐骨神経を、ガンバリ筋になった梨状筋が締めつけてしまうと、お尻や脚の痛み・しびれを引き起こすのです。
(中略)
「内側(ないそく)ハムストリングス」とは、「半腱様筋(はんけんようきん)」「半膜様筋(はんまくようきん)」から構成されている筋肉の総称で、太ももの後ろ側の筋肉の内側にある筋肉群です。“走行ルート”は、骨盤の左右の下端(坐骨(ざこつ))から、左右の太ももの内側の裏を通り、すねの内側の骨(脛骨(けいこつ))の上端内側まで伸びています。ですから、この内側ハムストリングスの主な働きは、股関節を後方に伸ばすこと(伸展(しんてん))と、膝関節を曲げること(屈曲)になります。

また、内側ハムストリングスは、ひざの位置(脛骨)を後方に引っ張って「前に出すぎないようにする」という役割も担っています。そのため、歩いているときにかかとを地面につく際は、内側ハムストリングスが本来はグッと働いて、ひざを軽く曲げた状態が生まれることで、ひざに過剰な負荷がかからないようなメカニズムが機能しています。
ところが、内側ハムストリングスがサボリ筋化し、その作用が低下してしまうと、ひざがピンと伸びた状態でロックしたまま、歩くことになります。
すると、その状態で歩くためには、骨盤を前傾させていないと、体のバランスを保つことができなくなります。
その結果、骨盤を前傾させる筋肉であり、ひざを伸ばす筋肉でもある大腿直筋にダイレクトに負荷がかかり、過剰に働いて緊張・収縮・硬直し、ガンバリ筋になってしまいます(下の図10を参照)。

そして、大腿直筋がサボリ筋になるいうことは、68ページでご説明したように、骨盤を前傾させたり反り腰にさせたりすることになります。
それと同時に、同じく骨盤前傾に働く大腿筋膜張筋も必然的にガンバリ筋になるため、骨盤前傾や反り腰はいっそう加速しやすくなります。
それだけ腰痛が現れやすく、痛みも悪化しやすいということなのです。
(中略)
「後脛骨筋」は、すねの内側にある筋肉です。すねの内側の骨(脛骨)の上のほうから、ふくらはぎの最も深層の内側を通り、足首を内側から支えます。
この筋肉は、足首を内側の下方向にひねるとき(内返し)や、足首を伸ばすとき(底屈(ていくつ))に働きます。

そのため、後脛骨筋がサボリ筋になると、足首の内返しでは、「後脛骨筋がサボったぶん」を「前脛骨筋(ぜんけいこつきん)」という筋肉が、底屈では「後脛骨筋がサボったぶん」を「腓骨筋(ひこつきん)」という筋肉(114ページ参照)がフォローします。
つまり、これらの筋肉が余計に働くことで、ガンバリ筋になったり、硬くなったりしやすいということです(下の図11を参照)。
さらに、足首からつま先が外側に向きやすくなることで、脚全体としては外側の筋肉を使いやすくなります。
その「脚の外側の筋肉」の代表的なものが、本章でここまで何度も登場してきた大腿筋膜張筋です。

つまり、位置的には腰から離れたところにある後脛骨筋がサボったときでも、大腿筋膜張筋がガンバリ筋になり、骨盤前傾・反り腰・腰痛の原因になるわけです。

後脛骨筋がサボリ筋になると、前項でお話したものとは別の「腰に悪影響を及ぼすメカニズム」も働いてしまいます。

後脛骨筋の“いちばん下の部分”は、つちふまずのほぼ真上にある「舟状骨(しゅうじょうこつ)」という骨についていて、本来は足裏のアーチ(内側の縦アーチ)を引っ張り上げるように支えています。
そのため、後脛骨筋がサボリ筋になると、前項でご説明した腓骨筋が緊張・収縮・硬直することに加えて、舟状骨が落ち込んで足裏のアーチが下がってしまい、扁平足(へんぺいそく)にもなりやすくなります。
扁平足になるということは、その「足裏のアーチがつぶれたぶん」だけ、立っているときには股関節から足裏(地面)までの距離が短くなり、従来よりも大腿骨のいちばん上の部分(大腿骨頭)の位置が下がることになります。
アーチが下がると足の親指側(内側)に体重が乗ることになるので、すねや大腿骨(だいたいこつ)が内側にねじれやすくなります。すると、太ももの骨もいっしょに内側にねじれるので、大腿骨のいちばん上の部分(大腿骨頭)も内側に向き、股関節のところでは骨盤が大腿骨に覆いかぶさるようになります。
つまり、骨盤が前に倒れてしまうのです。

ここまで読んでくださった皆さんなら、もうおわかりですね。
骨盤が前傾するということは、「反り腰にもなる」「腰全体のアライメント(骨格の並び)が崩れる」「腰痛が加速する」ということです。
そのため、腰から少し離れたところにある後脛骨筋も、腰痛解消のためには決して見逃せないポイントなのです。

『サボリ筋コンディショニング』 第3章 より 笹川大瑛:著 KADOKAWA:刊

図17 腸腰筋と頑張り筋の関係 サボリ筋コンディショニング 第3章
図17.腸腰筋と頑張り筋の関係
(『サボリ筋コンディショニング』 第3章 より抜粋)

図18 内側ハムストリングスとガンバリ筋の関係 サボリ筋コンディショニング 第3章
図18.内側ハムストリングスとガンバリ筋の関係
(『サボリ筋コンディショニング』 第3章 より抜粋)

図19 後脛骨筋とガンバリ筋の関係 サボリ筋コンディショニング 第3章
図19.後脛骨筋とガンバリ筋の関係
(『サボリ筋コンディショニング』 第3章 より抜粋)

「屈むと痛いタイプ」は骨盤の後ろを整える

「腰が丸くなるタイプ」の人は、「多裂筋(たれつきん)・腹横筋(ふくおうきん)」「内転筋(ないてんきん)」「腓骨筋(ひこつきん)」がサボリ筋になっているパターンがほとんどです。

 まずは、多裂筋・腹横筋についてです。
多裂筋と腹横筋は、組織としては「別の筋肉」ですが、機能としては「必ず同時に働く筋肉」なので、腰痛解消のためのサボリ筋コンディショニングにおいては並列的に考えるのが賢明です。
こうした理由から、「多裂筋・腹横筋」という“枠組み”にしています。
ただ、それぞれがサボリ筋になってから、具体的なトラブルが現れるまでの経緯などには違いがありますので、順を追ってご説明していきます。

多裂筋は、背骨の後ろ側の左右両側にあり、背骨を構成する1つひとつの骨(椎骨(ついこつ))を安定させたり、腰・上体を反らせたりする働きがあります。
つまり、腰を「最深部の後ろ側」で支えている深層筋(しんそうきん)(インナーマッスル)ということです。

そのため、多裂筋がサボリ筋になってしまうと、腰を「最深部の前側」で支えている腸腰筋(ちょうようきん)が余計に働く必要が出てきて、腸腰筋が過緊張となり、どんどん硬くなっていきます。
(中略)
また、多裂筋がサボってしまうと、内側(ないそく)ハムストリングスにも過剰な負荷がかかることになります。
こちらもすでにご説明した筋肉ですが、その主な働きは、「股関節を後方に伸ばすこと(伸展(しんてん))」です。この内側ハムストリングスが緊張・収縮・硬直し続けたとき、太ももの骨(大腿骨(だいたいこつ))がただ静止していると、骨盤を後ろへ引っ張ることになります。
すなわち、骨盤が後傾するということです。

ですから、多裂筋がサボリ筋になると、「腰が丸くなると痛むタイプ」の腰痛を抱えてしまうということなのです。

腹横筋は、お腹の最深部の左右両側を広く覆うようにある深層筋(インナーマッスル)です。腰や体幹を安定させるためには特に重要な筋肉で、腰を「最深部の横側」で支え、呼吸機能にもかかわっています。
前項でお話した多裂筋については、腰(骨盤)を「前後の観点(=横からみた視点)でご説明しましたが、この腹横筋については「左右の観点(=正面からみた視点)でたいせつな内容をお伝えしていきます。

というのも、腹横筋は、「骨盤の左右水平のバランス」で重要なカギをにぎっているからです。
例えば、歩くときのことを考えましょう。
歩くという動作は、「片脚立ち」の連続です。では、片脚立ちになったときに、私たちはなぜ倒れず、骨盤のバランスも保って体を支えることができるでしょうか。

そこで、片脚立ちになった瞬間の状態を、テコに当てはめてみましょう。
すると、右足で片脚立ちをしている瞬間には、「支点」に相当する股関節を中心に、テコの片側=体の中心(背骨のライン)には、体重がかかっています(下の図21を参照)。
てこが平行な状態でバランスをキープするには、テコの反対側=体の外側の筋肉がグッと働き、体重と同じ力で体を支えなければ釣り合うことができません。
その役割を担っているのが、まさしく腹横筋です。骨盤の左右真横にある「中殿筋(ちゅうでんきん)」という筋肉とコンビを組んで“重労働”をこなしています。

腹横筋はダイエットやメタボリック症候群の解消を目的とした、「お腹を引っ込める作用」ばかりが強調されていますが、上半身と骨盤をつなぎ、肋骨(ろっこつ)を引き下げたり、骨盤を引き上げたりする作用を見逃してはいけません。
なぜなら、ここで腹横筋がサボリ筋になってしまうと、“重労働”を中殿筋だけでこなさなければならなくなります。
そして、そんなしわ寄せを受けた中殿筋は、当然ながらガンバリ筋となり、緊張・収縮してどんどん硬くなっていきます。
そのため、腹横筋がサボリ筋になると、腰・お尻・股関節の側面で張り・コリを感じたり、痛くなったりしやすいのです。

そのうえ、中殿筋はガンバリ筋になってでも頑張りますが、それにも限界があるため、どうしても歩き方が崩れていきます。
先ほどのテコの話に当てはめると、体重(重力)のほうがどうしても勝ってしまい、左右のバランスがとりにくくなるからです。

すると必然的に、「お尻を左右に振りながら歩く」姿勢となり、小指側(脚の外側)に体重が乗るので、ひざの外側にある外側広筋(がいそくこうきん)(大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の中のいちばん外側にある筋肉/107ページ図を参照)を余計に使うようになります。
すると、ひざが外を向いて曲がった状態になりやすく、ガニ股で歩いたりO脚になったりするという、歩き方の変化が起こってくるのです。
これが、腰に”本来は不要な負荷”をかけてしまうことは、あえていうまでもないでしょう。

「腹横筋がサボリ筋になる⇒中殿筋はガンバリ筋になる」という過程を経ると、坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)のような症状が現れやすくもなります。
その理由は、脚につながる非常に大きな神経群(仙骨神経叢(せんこつしんけいそう))の中の神経である上殿神経(じょうでんしんけい)が、硬くなった中殿筋によって圧迫されてしまうからです(下の図22を参照)。

一般によくみられる坐骨神経痛は、70ページでお話したように、梨状筋(りじょうきん)が坐骨神経を締めつけることによって起こります。その走行ルートからしても中殿筋のサボリ筋化による直接的な影響はほぼありません。
しかし、上殿神経が中殿筋で圧迫されると、同じ大きな神経群の中にある坐骨神経などにも悪い影響及ぼすため、腰・お尻から脚にまで広がる痛みやしびれなどの関連痛が起きるとされています。

このとき腰では、腹横筋がサボリ筋となったぶんの負荷がかかった中殿筋が、ガンバリ筋化しています。緊張して硬くなった中殿筋は、それ自体から痛みを発生している状態です。
そのうえに、ガンバリ筋になった中殿筋が神経を圧迫することによって、さらなる痛みとしびれがプラスされてしまうわけですから、よりいっそうつらさが増幅してしまうのです。

これらの筋肉のサボリ筋化・ガンバリ筋化、ならびに腰痛・しびれの関連は、一般的にはあまり取り上げられてきませんでした。そのため、これまでの治療法では、痛み・しびれがなかなか消えなかったのです。
しかし、サボリ筋コンディショニングを行えば、根本的な問題を解決でき、やっかいな痛みやしびれを自力で解消できるということです。
(中略)
腓骨筋は、すねの外側の骨(腓骨)の上のほうから足首まで伸びていて、足首を外側から支えている筋肉です(下の図23を参照)。この筋肉は、足首を外側にひねるとき(外返し)や、足首を伸ばすとき(底屈(ていくつ))に働きます。その代表的な動きといえば、歩くときにつま先を外側に向けながら、地面を蹴る動作です。
そして、実際にこの動作をすると、ひざが内側に入ることになります。
ところが、腓骨筋がサボリ筋になってしまうと、つま先を内側に向けながら、地面を蹴って歩くことになります。つまり、ひざからすねを内側に入れられず、外側へスライドすることになるーー。ひとことでいえば、O脚を助長してしまうのです。

また、腓骨筋がサボると、外側と底屈の力が弱くなるため、そのフォローをする筋肉に負荷がかかります。
すなわち、外返しをするための「長趾伸筋(ちょうししんきん)」がガンバリ筋になり、底屈をするための後脛骨筋などが緊張・収縮・硬直するのです。
84ページでもご説明したとおり、後脛骨筋には足裏のアーチを上げる作用があります。その後脛骨筋が過剰に働くと、足裏のアーチが高くなりすぎるハイアーチの状態になっていきます。

そして、ハイアーチになると、「足裏のアーチが高くなったぶん」だけ、立っているときには足の小指側(外側)に体重が乗ります。その姿勢ではすねや太ももの大腿骨が外側にねじれ、大腿骨の上の部分(大腿骨頭)は前方を向きます。すると、大腿骨に対する骨盤のかぶりぐあいが浅くなる=骨盤が後傾した状態になり、それに連動して腰が丸くなるのです。
そして、腰周りに余計な負荷が増え、腰痛の発症や悪化につながっていきます。

しかし、腓骨筋コンディショニング(上の図15を参照)を行えば、硬くなった後脛骨筋やガンバリ筋となってしまった長趾伸筋が緩むことはもちろん、O脚の矯正効果が現れ、ハイアーチの抑制・矯正作用も働き、骨盤や腰椎のアライメント(骨格の並び)も正常に近づきます。

『サボリ筋コンディショニング』 第4章 より 笹川大瑛:著 KADOKAWA:刊

図20 多裂筋 腹横筋とガンバリ筋の関係 サボリ筋コンディショニング 第4章
図20.多裂筋・腹横筋とガンバリ筋の関係
(『サボリ筋コンディショニング』 第4章 より抜粋)

図21 骨盤の水平を保つためには サボリ筋コンディショニング 第4章
図21.骨盤の水平を保つためには・・・・・
(『サボリ筋コンディショニング』 第4章 より抜粋)

図22 腰の痛み しびれにかかわる神経 サボリ筋コンディショニング 第4章
図22.腰の痛み・しびれにかかわる神経
(『サボリ筋コンディショニング』 第4章 より抜粋)

図23 腓骨筋とガンバリ筋の関係 サボリ筋コンディショニング 第4章
図23.腓骨筋とガンバリ筋の関係
(『サボリ筋コンディショニング』 第4章 より抜粋)
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