【書評】『記憶力』(ウィリアム・ウォーカー・アトキンソン)

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 お薦めの本の紹介です。
 ウィリアム・ウォーカー・アトキンソンさんの『記憶力』です。

 ウィリアム・ウォーカー・アトキンソンさん(William Walker Atkinson、1862〜1932)は、米国の思想家・作家です。
「ニューソート」と呼ばれる思想に傾倒し、精神医学や東洋思想、ビジネス、人間関係など幅広いテーマで執筆活動を行い、生涯に100冊以上の著作を書かれています。

「記憶の本質」とは何か?


 アトキンソンさんは、人間の記憶を支配している法則を理解するには「潜在意識の領域」についての知識が不可欠だと述べています。

 多くの心理学者の研究により、顕在意識(意識の中の自覚できる部分)の領域の奥には、潜在意識の広大な領域が広がっていることが突き止められています。

 日常の精神活動のうち、顕在意識の領域で行われるのは10パーセント以下で、活動の大部分は潜在意識の領域で行われているともいわれています。

 月のない夜、暗い森の中にいるところを想像してみましょう。手に持ったランプが私たちの周囲に小さな光の輪を投げかけ、その向こうには薄明かりの輪が大きく広がり、そのさらに向こうは完全な暗闇です。知的作業はこの薄明かりと暗闇の中で行われ、その作業の結果は必要に応じて、ランプの光の輪、つまり前面にある顕在意識の中に移動させられるのです。
「記憶」という機能は、おもに潜在意識が担当しています。潜在意識の領域には、巨大な記憶の貯蔵庫が広がっています。私たちが何かの印象を心に取り込んだ瞬間から、それがふたたび顕在意識の領域に戻ってくる瞬間まで、潜在意識は自分の役割を果たしています。
 私たちは何かの印象を取り込み、保管します。どこに保管するのでしょうか? 顕在意識の領域ではありません。それなら、つねに目の前にあるはずです。取り込んだ印象は潜在意識の貯蔵庫の奥深く、ほかの印象とともに保管されるのですが、保管のしかたがあまりにも無雑作であるために、いざ必要なときにはほとんど見つからないのです。
 印象を保管してから次に取り出すまで、何年もたっていることもめずらしくありませんが、その間、印象はどこにあるのでしょうか? 潜在意識の広大な貯蔵庫の中です。では、その印象を呼び戻すきっかけになるものは何でしょうか? それは、意志からの命令です。潜在意識の貯蔵庫にいる作業員たちに対して、昔持ち込まれた印象を明かりの中に持ってきなさいと、意志が命令を送るだけのことなのです。
 この作業員たちは、仕事のこなし方を十分に訓練されていますから、意志の命令をすぐに理解して、したがいます。さらに、自分の手にゆだねられた宝物を慎重に保管し、場所を覚えておくように教え込まれていますから、命令されれば迅速に、間違いなく取り出してきてくれます。

 『記憶力』 レッスン1 より ウィリアム・W・アトキンソン:著 ハーパー保子:訳 サンマーク出版:刊

 アトキンソンさんは、「いったん心に印象を焼きつけられれば、完全に忘れ去られてしまうものは何一つない」と断言できる証拠は十分にあると述べています。

 取りこんだ印象はただ目につかないだけ。
 顕在意識の領域の外、つまり、潜在意識の中に存在しています。

 記憶力を高めるということは、『潜在意識の中にある、自分が過去に得た印象を顕在意識の中に呼び戻す能力を鍛える』ことです。

 本書は、記憶力を強化するための「潜在意識の機能の訓練法」について解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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人は五感を通して印象を受け取る


 潜在意識は、目の前の印象を残らず受け取り、強大な貯蔵庫に保管します。

 ただ、受け取る印象の性質は千差万別です。
 際立って強烈な印象もあれば、おぼろげで不明瞭な印象もあります。

 アトキンソンさんは、この印象の「強さ」を決めるのは、感覚が何かを認識したとき、それに対して心に生まれる興味の度合いと、対象物に向けた意識的な注意力の量だと指摘しています。

 自分が興味のあるもの、あるいは意識的に注意を向けたものは、どんなに素晴らしくても興味も関心もないものよりも、はるかに印象が強くなり、保存された記録は必要なときに簡単に呼び出すことができます。
 潜在意識の貯蔵庫の性質を考えると、五感を通して頭に入ってきたものに向ける注意力が、保存されるもののサイズと形を決めると言えそうです。そして印象を認識した時点で生まれる興味が、その印象に色を与えます。これを忘れないでください。
 注意力がサイズを決め、興味が色を決めるのです。
 貯蔵庫にしまってあるものを取り出したいと思ったとき、小さなものより大きなもののほうが簡単に見つかります。同様に、淡い色よりも、強烈な赤い色はずっと簡単に場所がわかります。注意深く整理して保存されたものにも、乱雑に保存されたものにも、この法則はあてはまります。きちんと秩序立てて保管すると探しものを見つけやすくなるのは言うまでもありませんが、サイズと色は探しているもの自体を目立たせてくれるのです。
 ある項目を頻繁に思い出したり利用したりすると、貯蔵庫の番人がその項目の場所を熟知するようになります。さらに、貯蔵庫から取り出されるたびに興味と注意力が向けられますから、その項目がサイズと色を持つようになります。注意力とは、言い換えれば「意識を集中する力」です。太陽の光がありとあらゆるものの上に降りそそぐように、意識も多くのものに向かって広がっていくことがあります。かと思えば、レンズを使って太陽の光を一点に集めるように、意識も特定の対象物に集中することがあります。注意力の度合いこそが、潜在意識に焼きつけられる印象の強さを左右するのは、間違いありません。

 『記憶力』 レッスン3 より ウィリアム・W・アトキンソン:著 ハーパー保子:訳 サンマーク出版:刊

 対象物に向けた注意力の量が印象の「強さ」を決めます。
 たしかに、いわゆる「〜オタク」と言われている人たちの、自分の興味のある分野に対する記憶力は、驚異的ですね。

「注意力がサイズを決め、興味が色を決める」

 覚えておきたいですね。

「聴覚」による記憶について


 人は「五感」を通して印象を受け取り、それらは潜在意識の中に保管されます。
 受け取った印象を維持する能力には、大きな個人差があります。
 目で見たものは何の苦労もなく思い出せるという人もいれば、耳から入ってきた印象を思い出すほうがずっと簡単だという人もいます。
 アトキンソンさんは、「聴覚」のよる記憶の特徴を以下のように説明しています。

 一般的に、目から入ってくる印象のほうが早く取り込まれますが、耳から頭に入ってくるもののほうが記憶に留まりやすいようです。実際、たいていの人は、読んだことよりも聞いたことのほうが、ずっと思い出しやすいものです。しかし作家の中には、「講演などで聞いた言葉を思い出す場合は、聴覚のはたらきに加えて、話者の容貌や身振り、表情を思い出すといった形で、視覚にも助けられている」と考える人もいて、たしかに納得できる面もあります。
 とはいっても、講演や説話をその場で聞くのは、あとで印刷物になったものを読むのと比べて、ずっと印象が強いものです。理想的なのは、まず耳で聞いたあとに文字で読んで、聴覚と視覚の両方から情報をもらうことでしょう。
 聴覚を素晴らしいレベルまで鍛えている人たちの代表は、もちろん音楽家です。音楽家の耳は、どんなかすかな不協和音も、楽譜からほんの少しずれたバイオリンの音もキャッチします。けれど、このような能力が鍛えられている人は、音楽家以外にもたくさんいるでしょう。
 修理工は機械をハンマーでたたき、正常時とほんの少しでも違う音がすれば聞き逃しません。列車が高速で走っているとき、車輪や線路に何か異常があっていつもと違う音がすれば、どんな小さな違いでも鉄道員は気づきます。エンジニアはエンジンの響きの微妙な違いに気づき、どこかに異常があると判断して、すぐに電源を切ります。ベテランの水先案内人は、どの汽笛がどの船のものかすべてわかりますし、大きな町にはいくつも教会がありますが、住民は自分の教会の鐘の音を聞き分けることができます。電信技手は電話交換手のさまざまな癖を聞き分け、ほとんど聞き取れないようなかすかな機械の金属音だけで、これは新入りの交換手だとすぐにわかるといいます。

 『記憶力』 レッスン5 より ウィリアム・W・アトキンソン:著 ハーパー保子:訳 サンマーク出版:刊

 記憶力を高めるためには、なるべく、視覚と聴覚、視覚と嗅覚など、複数の感覚を同時に働かせて、印象を取り込むことが大切です。
 自分がどの感覚から取りこんだ印象が、もっとも思い出しやすいかを認識することも重要ですね。
 これらの能力は、それぞれの感覚器官を意識して使うことで、鍛えることができます。

「テン・クエスチョン・システム」


 人は誰でも潜在意識の貯蔵庫に、膨大な種類の情報や知識を持っています。
 アトキンソンさんは、知的なアプローチを使い、保管された情報にときおり光をあてることで頭脳が鍛えられると述べています。

 保管されている情報を呼び出すと、その情報を分類し正しい順番に並べ、比較し、関連性を検討して結論を引き出すというように、頭脳のさまざまな機能を活用せざるを得なくなるからです。

 記憶力を高めるためには、五感を通して得た情報や意識の「印象」を、潜在意識の貯蔵庫からいかに復活させるかが大きなカギです。
 アトキンソンさんは、「印象を復活させる」ためのツールとして、《テン・クエスチョン・システム》を紹介しています。

 このシステムはシンプルでありながら効果は絶大で、継続して利用すれば、費やした時間と手間は必ず報われます。さまざまな面で頭脳を活性化してくれる、非常に効果的なメソッドです。
《テン・クエスチョン・システム》は文字どおり、十の質問で構成されています。考えていることがらについて十個の質問をし、それに答えるために、保管されている印象をすべて顕在意識の領域に引き出してくることによって、そのことがらに関してあなたが持っている情報が残らず活動しはじめます。このシステムのアウトラインを次に示します。最初の質問でテーマを明らかにし、続く九つの質問を一つずつ、自問自答していきましょう。

 考察中のことがらに関する十の質問

  1. その由来または起源は?
  2. それはどんな理由で始まったか?
  3. それにはどんな歴史があるか?
  4. それはどんな特質や個性を持っているか?
  5. それを連想させるものや、関連しているものは?
  6. それをどのように利用(活用)するのか?
  7. それは何を表しているか?
  8. それからどんな結果が生まれ、どんなことが起こるか?
  9. それは最終的に、あるいは将来的にどうなるか?
  10. それについて自分はどう考えているか? その理由は?
 この《テン・クエスチョン・システム》を実行すると、考えていることがらに関する過去の印象がすべて姿を現すとともに、その印象を分類し、整理し、吟味し、さまざまな特徴を明らかにする必要に迫られます。つまり、思い出し、考え、調べ、観察する力が磨かれるのです。それぞれの質問がヒントを与えてくれますから、やり終わったあとには、思いもしなかったほど多くの情報を手にしているでしょう。さらに、十の質問が頭に入っていると、何を観察するときでも自然に《テン・クエスチョン・システム》に沿って考えられるようになります。
 一見、単純そうだからという理由で、試しもせずにこのシステムを無視しないでください。適切な状況で一度だけでも試してみれば、効果が実感できるはずです。言うまでもありませんが、頭が尋問の作業に慣れてしまえば、質問に答える訓練を重ねるごとに、印象をよみがえらせる能力は着実に伸びていきます。

 『記憶力』 レッスン10 より ウィリアム・W・アトキンソン:著 ハーパー保子:訳 サンマーク出版:刊

 潜在意識に眠っている「印象を復活させる」能力を鍛える。
 そのためには、ことあるごとに「潜在意識の中から目的のものを“掘り起こす”作業を繰り返すこと」が最も効果的です。
 《テン・クエスチョン・システム》の十の質問をしっかり覚えて活用したいですね。

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 本書が刊行されたのは1903年のこと。今から100年以上も前になりますね。
 今でこそ、顕在意識の奥底にある潜在意識の重要性がクローズアップされています。
 しかし、当時はそのような考え方は、かなり異端であったのではないでしょうか。
 アトキンソンさんの先見の明には、感嘆するばかりですね。

 記憶力を高めるためには、まず、あらゆることに興味をもつことが大切です。
 感覚器官を通して入ってくる印象を強めることが、潜在意識から再びそれを取り出すことを容易にしてくれるからです。
 いつまでも、心も体も、そして頭も健康でいられるように、好奇心を忘れずにいたいものです。


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