本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『本当は危ない植物油』(奥山治美)

 お薦めの本の紹介です。
 奥山治美先生の『本当は危ない植物油 その毒性と環境ホルモン作用』です。

 奥山治美(おくやま・はるみ)先生は、脂質生化学がご専門の薬学博士です。
 日本脂質栄養学会の初代会長であり、現在は日本食品油脂安全性協議会理事長を務められるなど、この分野の権威としてご活躍されています。

「植物油は安全」は単なる“神話”

 食品には,「根拠のない効能・効果」を示唆しながらも、「企業の利益追求」の名のもとに、大量に世の中に出回っている製品が数多くあります。
 動物性油より健康的だといわれている「植物油」もその中のひとつです。

 奥山先生は、これまで脂質生科学者として、多くの動物実験や免疫学的な観点(人での調査)に基いて、健康に良いあぶら、悪いあぶらの判定をしてきました。
 それらの研究結果が載っている、企業側に都合の悪い論文は、ほとんど無視されているとのこと。

 食用油脂の問題は、畜産業全体と深く関わっています。
 肉、卵、乳製品などを安価に供給するための飼料として、油糧種子(大豆、菜種、コーンなど)が使用されています。
 私たちが今あふれるように使い、食用にしている油脂はそれらの副産物です。
 豚や鶏のエサの残りカスを、人間の食用油にして再利用してコスト削減を図るという合理的な目的のためとのこと。
 油脂メーカーだけでなく畜産業界も含めた社会の枠組みに関わる重大な問題であるため、なかなか外部から変えることができないのが現状です。

 本書は、植物性油脂の危険性をデータを元に解説し、植物油の正体とその作用をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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正常な性衝動をかき乱す「環境ホルモン」

 最近の研究で、外部でつくられた物質のなかで、体内に入って体の性ホルモンに影響を及ぼすものがあることがわかっています。
 その物質は「環境ホルモン」と名付けられました。

 よく知られているものに「ダイオキシン」がありますね。
 複雑な環状構造に塩素や臭素が結合した物質で、その種類は100種類以上もあるとのこと。
 焼却場での低温焼却で発生したり、農薬などにも含まれています。

 ダイオキシンは、性ホルモンに似た働きをしてかく乱させ、「受精・妊娠・出産」という生殖生理に影響を及ぼすほか、発がん性や奇形を発生させる性質もあります。
 この問題は、官民挙げて解決に取り組んだ結果、大きな改善がなされました。
 ここ10年で日本人のダイオキシン摂取量は徐々に減りました。

 しかし、少子化や精子減少に一向に歯止めがかかりません。
 そこで急浮上した別の環境ホルモン物質が「植物油」です。

 奥山先生は、植物油の人体への危険性を以下のように説明しています。

 人の場合は特に、五感から入ってくる情報が体のホルモン系に働き、リビドー(性欲・性衝動)をひきおこすように作られています。
 このことは、人類の生存にかかわる重要な「本能的」な作用です。この作用が失われると、人類は破滅です。そんなことはないと、今までは考えられてきました。
 しかしさまざまな現象が、人の性欲の減退、性衝動の変化を現しています。
 これは、世界的な傾向なのです。そしてこのことは、動物にも当てはまっています。しかし動物といっても、自然界の動物ではありません。家畜、いわゆる人間に飼われて餌をもらっている牛や豚などです。つまりこのことは、ある共通する環境ホルモン物質の関与が疑われるのです。

 この「ある物質」は、性のバランスを壊す、身体の中の性ホルモンに似た働きをしている疑いが濃厚なのです。
 その物質は、いくつかあるのですが、我々が研究して確かに突き止めたのは、「カノーラ菜種油」や水添植物油の重大な性かく乱作用です。
 菜種油は、普通、誰でも「健康食品」と考えています。ところが、そうではないのです。
 菜種油は元来、普通の油に比べても副作用が多く、とても食品として一般的に使えるものではありませんでした(その在来種の場合は、食用油としての摂取量は少なかった)。
 そこで、カナダの学者が研究して交配を重ね、副作用の少ない品種に改良しました。それをカナダにちなんでカノーラ(キャノーラ)種と言っています。
 現在はこの種がほとんどですが、しかし、じつは副作用は減ってはいません。

 カノーラ菜種油は、大豆油に比べても危険の多い、もっとも食用に適さない油のひとつです。しかし、日本のみならず世界的にも堂々と、サラダ油として売られ、一般の人は誰も安全性に問題があると思っていません。
 たしかに、すぐに結果の現れる問題ではありません。我々の研究もラット、次にミニブタで確かめた研究です。長い年月がかかりますが、身体に現れてからでは手遅れです。

 『本当は危ない植物油』 第一章 より 奥山治美:著 角川書店:刊

 普段の食事でも使用している「菜種油」。
 動物性油よりも健康的だとして、積極的に利用している人も多いでしょう。

 もし、本当に菜種油に重大な性かく乱作用があるならば、奥山先生の述べているように「身体に現れてからでは手遅れ」となりますね。

植物油脂とダイオキシンの環境ホルモン作用の比較

 日本人のダイオキシン類の摂取量は、1.34ピコグラム(一日、体重1キログラムあたりの量)程度。
 少量を長期に摂取したときに健康被害をおこさない量(耐容一日摂取量、TDI)は4ピコグラムとされているので、その半分以下のレベルであり問題はないとのこと。

 では、植物油の環境ホルモン作用はどの程度の強さなのでしょうか。

 ダイオキシンが動物実験でテストステロンを下げる量は、161ピコグラムですから、日本人の摂取量はその60~100分の1ということになり、二桁近くの安全域があります。
 これに対し、植物油脂はどうでしょう。現在、大豆油やカノーラ菜種油のうち何割くらいが水素添加にまわされているかがわかりません。ですから、カノーラ菜種油の正確な消費量は分かりませんので、そこは大まかな推測になります。
 今のところ、供給油脂の1位をしめるカノーラ菜種油、2位のパーム油、および水添大豆油やココナッツ(ヤシ)油に環境ホルモン作用が認められていますので、わが国の若年層は6~11エネルギー%(摂取カロリー中の割合)くらい、これらの油脂を摂取していると推測できます(他の油脂の環境ホルモン作用は調べられていません。また綿実油は統計に入っていません)。

 ダイオキシンと植物油脂の環境ホルモン作用の強さを比べるのですが、油脂の中の微量成分が特定されていませんので、ダイオキシンと同じ単位に換算できません。
 そのため、食用油脂としてエネルギー%(総摂取エネルギー中のその油脂のエネルギーの割合)で比較しました。

 動物で、テストステロンを下げるカノーラ菜種油の量は22エネルギー%以下です。
 これ以下の範囲では調べられていません。もし脳卒中ラットの寿命短縮作用とテストステロン低下作用が同じように進むと考えますと、テストステロン低下作用は6エネルギー%で有意、と計算されます。
 すなわち100分の1の安全係数をかけるまでもなく、現在の摂取量は動物実験で性ステロイドホルモン代謝を乱す量と大きな差はない、ということになります。
 私がよく「みなさんが毎日食べている植物油脂が、動物に環境ホルモン作用を示す」という話をしますと、“超大量を食べさせたのでしょう”という質問が返ってきます。あるいは、産業界の人は、動物実験の結果を誇張しているのだと非難します。

 しかし現実には若者は油脂摂取量の多い人が多く、かれらの摂取量と動物で性ステロイドホルモンが乱される量との間には、大きな安全域はありません。
 このような計算に基づきますと、もっとも強力であるとされてきたダイオキシンよりも、これら植物油脂の方が、環境ホルモン作用として、もっと身近で深刻な状況にあるといえるのです。

 『本当は危ない植物油』 第二章 より 奥山治美:著 角川書店:刊

 私たちは、動物実験で性ステロイドホルモン低下作用が認められたのと同じ量の植物油脂を摂取している可能性があります。

 ダイオキシンなどよりも大きな環境ホルモン作用として、早急に対策を取るべき問題といえますね。

少量にした方がよい「オリーブ油」

 最近、コレステロールを下げる働きがあり、健康によいと注目を集める「オリーブ油」。
 奥山先生は、オリーブ油の健康効果に疑問を投げかけています。

 オリーブ油はコレステロール低下作用があるような話になっていますが、たとえあったとしても一過性のはずです。そして、コレステロールを下げることが、健康増進につながるわけではありません。コレステロール値は高い方が長生きなのです。
 フランスは北部に比べて地中海地方の心臓病が少なく「フレンチ・パラドックス」と呼ばれています。
 これを、地中海地方ではオリーブ油や菜種油を食べている結果だとする報告もありますが、私は地中海地方で魚介類が多く食べられている結果だと思います。
 日本以外にアイスランドや上海でも魚を食べる人が多く、これらの国・地域ではおおむね心臓病は少なく、長寿です。
 オリーブ油は、動物実験で用量依存的に発癌(はつがん)促進作用を示します(図22)。エネルギーの6%でも有意に発癌促進作用を示すのですから、オリーブ油を愛用する家は、量を考えてみる必要があります。
 使うにしても、できるだけ少量にした方がよいでしょう。
 ちなみに日本人は平均して、油脂の総摂取量はエネルギーの25%ですが、若い人は30%に近づいています。

 カナダのグループは、オリーブ油の脳出血促進作用を見つけました。脳卒中ラットの寿命を短縮するのです。私のグループも確認しています。
 このようなオリーブ油の悪い面は、ちゃんとした論文になっているにもかかわらず、一般の人はほとんど知らされていません。
 オリーブ油は健康に良いとするイメージがメディアを席巻(せっけん)しているからです。オリーブ油の流通に力をもつ国際的なグループの力が強大なのです。

 『本当は危ない植物油』 第六章 より 奥山治美:著 角川書店:刊

オリーブ油の発がん促進作用
図22.オリーブ油は大腸前癌細胞を異常に増やす(『本当は危ない植物油』 第六章より抜粋)

専門家のお勧めする油は?

 カノーラ油をはじめ、パーム油、大豆油、コーン油、オリーブ油などの植物油。
 それにマーガリン、マヨネーズなど。
 これらは、いずれも多量摂取は勧められません。

 奥山先生が推奨する植物油は、「シソ油・エゴマ油」「亜麻仁油(あまにんゆ)・フラックス油」の二種類のみです。

 お勧めできる植物油ですが、現在までのところ、オメガ三群の「シソ油・エゴマ油」と「亜麻仁油・フラックス油」の二種類しかみつかっていません。
 これらは健康食品店やスーパーなどで、高価なプレミアム油として売られています。
 油糧(ゆりょう)種子としてのシソ種子は単位面積あたりの収量が少なく、トウモロコシの5倍ほどの原価となります。亜麻種子はもっと安価でしょう。
 ですから、よい油は現在非常に高価です。しかし、考えてみれば、食用油はもともと高価なものでした。

「安くて美味しい食べ物」をもてはやす現在のメディアの風潮や経済のあり方が、危険な菜種油種の大量使用を増やしているのです。
 すなわち、企業がメディアを使って消費者を「美味しさ」の探求に走らせ、油の安全性に気が向かないようにしていると思います。
 これからは、安全な油を選ぶとともに、「良いあぶらを少量使う」という食生活の改善に取り組むことも必要だと思います。
 そのことが、長寿への最も近道となります。

 シソ油・エゴマ油を野菜、肉類、魚類などの炒め物に使うと(高価なのでわが家では天ぷらには使いません)、一人あたり、1か月700円ほどの出費増となります。炒め物やトンカツなど、あぶら料理はバター、ラードなどを使うことを勧めています。老舗(しにせ)のトンカツ屋ではラードが使われています。
 シソ油・エゴマ油や亜麻仁油・フラックス油は弱点もあります。自動酸化しやすいのですが、抗酸化ビタミン(ビタミンCの脂肪酸エステルとビタミンE)で安定化されたシソ油・エゴマ油は炒め物に使えます(200℃以下の設定)。
 一番搾(しぼ)りを“売り”にしている製品では、低温調理に使うよう勧めているものもあります。

 『本当は危ない植物油』 第六章 より 奥山治美:著 角川書店:刊

「魚油やバター、ラード(豚脂)などの動物性油」も、動物実験で安全性が極めて高いことが確認されている油脂です。
 一方、最も健康に悪いのが、部分水素添加したカノーラ油やマーガリンなどの大豆油です。
 脳卒中促進効果、内分泌(ないぶんぴつ)かく乱作用がもっとも強いとのこと。

 かけがえのない自分たちの健康のためです。
 多少の出費増は必要経費と割り切って、本当に身体に良い油を使いたいですね。

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 おいしい食事を作るためには、調味料は欠かせません。
「油」もその中のひとつです。

 一回の食事で使用する量は限られています。
 しかし、年間通しての摂取を考えるとものすごい量になります。
「ちりも積もれば山となる」ですね。

 植物油の危険性は、奥山先生もおっしゃるように、まだ社会的に認知されていません。
 いずれ真実が明らかになるとは思いますが、それから対策をとっても遅すぎますね。

 私たちにできることは、危険と思われる種類の植物油を極力使用しないことです。
 今、できることから始めましょう。

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