【書評】『行動科学マネジメント入門』(石田淳)

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 お薦めの本の紹介です。
 石田淳さんの『8割の「できない人」が「できる人」に変わる! 行動科学マネジメント入門』です。

 石田淳(いしだ・じゅん)さん(@Ishida_Jun)は、ビジネスコンサルタントです。
 行動分析を基にしたマネジメント手法を独自の手法でアレンジし、「行動科学マネジメント」として確立されてます。

「行動科学マネジメント」とは?


 一般社員から管理職に昇格して、多くの人が戸惑うこと。
 そのひとつに「部下育成」があります。

 日本企業では、「プレイングマネジャー」であり続けることが要求されます。
 そのため、自分の仕事で精一杯で、「部下の育成にまで手が回らない」と悩む管理職が多いです。

 業務は増える一方で、それをこなす人員は減る一方。

「気合いで乗り切れ!」
「頑張れ!」

 そんな以前のような精神論は、通用しない厳しい環境です。

「行動科学マネジメント」は、人のやる気や態度や性格など、曖昧でバイアスのかかりやすい要素に頼ることなく、行動に着目する科学的な手法です。
 
 本書は、「行動科学マネジメント」の手法を用い、いかに科学的に部下育成に取り組むか、その方法論をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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業績に直結する重要行動、「ピンポイント行動」とは?


 行動科学マネジメントでは、以下の大きく2つの流れで部下を育成します。

  1. 仕事のやり方を正しく理解し、正しく行動してもらう=やり方を教える
  2. その正しい行動を、正しく続け習慣化してもらう=続け方を教える
 結果を出せない部下は、仕事のやり方において、何らかの不手際があります。
 まずは、それをしっかり「観察」することが重要です。

「結果を出している部下や自分はやっているけれど、結果を出せずにいる部下に欠けている行動」

 をあぶり出すことから始めます。

 そのためには、「一連の仕事の流れを、細かい行動に分解していくこと」が必要です。

 一連の仕事の流れを行動に分解して眺めてみれば、それらの行動の中には、売上にする重要な行動と、比較的、重要でない行動が含まれていることに気づくでしょう。
 そして、結果が出せない人というのは、これら重要な行動が取れていない、もしくは続けられない場合が多いのです。
 あなたが取れていて、部下に抜け落ちている重要な行動、業績に直結する行動を、行動科学マネジメントでは「ピンポイント行動」と呼んでいます。
 それを拾い上げ、明確に指摘すれば、どんな部下も同じような結果を出せるようになります。つまり、ピンポイント行動を知ることで、伸び悩んでいた部下が大きな成長を果たすことになるのです。
 あなたの部下が、なかなか結果を出せないでいるとき、その部下はさぼっているわけではないはずです。それなりに一生懸命やっているのに結果につながらず、苦しんでいるのではないかと思います。
 それは、ピンポイント行動を見落としているだけなのです。

 『行動科学マネジメント入門』 1章 より 石田淳:著 ダイヤモンド社:刊

 手際の良い人は、効率のよい作業の手順が、意識しなくても身に付いています。

 しっかり観察して、両者の間のちょっとした差に気づくこと。
 そして、つまづきの要因を取り除いてあげること。

 それが重要となります。

「できるだけ早く」では伝わらない


 石田さんは、仕事の指示に使う言葉は、数値や固有名詞を駆使して、聞いている誰もが同じ状況を想定できるものでなくてはならないと述べています。
 行動はすべて、「MORSの法則」によって定義づけられます。

 MORSの法則とは、以下の四つの要素の頭文字をとったものです。

  • M=Measurable(計測できる)
  • O=Observable(観察できる)
  • R=Reliable(信頼できる)
  • S=Specific(明確化された)
 石田さんは、MORSの法則にかなった行動として以下のような具体的な例を挙げています。

 たとえば、「工場での事故をなくす」とは、誰によるどういう事故をなくすことを意味しているのでしょうか。まず、それを明確にしなければなりません。
「ヘルメット着用を怠った従業員が、上方から落下した金属破片で軽傷を負った」
「指定外の場所に置き去りにされた工具に、従業員がつまずいた」
「床にこぼれおちた薬品に、素手て触った従業員がやけどをした」
 こうしたことを正しく解明した後、それに対する具体的な行動を指示します。
「ヘルメット着用を怠った従業員が、上方から落下した金属片で軽傷を負った」事故に対してなら、せめて次のレベルまで落としこむ必要があるでしょう。
「8時半の始業時に、工場内にいる82名すべてのスタッフのヘルメットが正しく着用されていること。あごにかけたヒモの金具がきちんとはめられ、頭を前後左右に振ってもヘルメットが緩まない状態であること」
 ここまでやって、はじめてすべての従業員が同じように動けます。

 『行動科学マネジメント入門』 2章 より 石田淳:著 ダイヤモンド社:刊

「今すぐに!」と言われても、時間の感覚には個人差があります。

 1分後なのか、1時間後なのか、それとも今日中なのか。
 不明確な指示が元で意思の疎通を欠き、トラブルの原因なることもあります。

 マネジャーの言葉は、「いつでも誰でも同じように理解できる」が大原則
 頭に入れておきたい法則ですね。

「ポジティブ」「すぐに」「確か」なフィードバックを!


 部下が良い行動を繰り返してくれるフィードバックのうち、最も簡単で効果が高いもの。
 それは、「褒める」ことです。
 最近、叱っておさえる上司よりも、褒めて伸ばす上司が望まれるのは、こうした理由からです。

 行動科学マネジメントでは、フィードバックは「タイプ」「タイミング」「可能性」の組み合わせで、結果がパターン分けされます。

 人が積極的に行動を繰り返すのは、「ポジティブ」「すぐに」「確か」の組み合わせです。

 ケーキが「おいしい」という結果は、「ポジティブ」「すぐに」「確か」であり、ケーキを食べたら「太る」という結果は、「ネガティブ」「あとで」「不確実」なものです。だから、ダイエット中であっても、ケーキを食べてしまうことになるのです。
 つまり、あなたが部下に良い行動を繰り返してもらいたいと考えたら、その行動に対して、「ポジティブ(=P)」「すぐに(=S)」「確かに(=T)」なフィードバックを与える必要があります。行動科学マネジメントでは、これを「PST効果」と呼んでいます。
「私の上司は、良い行動をとったら、その場で絶対に褒めてくれる」
 こう感じることができる部下が、良い行動を繰り返さないはずがありません。
 一方、気まぐれで褒めてくれるかどうかもわからなかったり(=不確実)、忙しからとその場で褒めてくれなかったり(=あとで)ということがあれば、部下の良い行動はだんだんと減っていきます。
 ましてや、叱るというような「ネガティブ」なフィードバックが先行すれば、行動を取ること自体をやめてしまいますから、部下は育ちようがありません。

 『行動科学マネジメント入門』 3章 より 石田淳:著 ダイヤモンド社:刊

 同じ「褒める」でも、伝えるタイミングで、その効果は大きく異なります。
 自分のしたことを、その場で、他人の前で褒められて、嫌な気になる人はいません。

 小さなことでも、すぐ、その場で褒めること。
 その習慣を身につけたいですね。

叱った後は、必ず「フォロー」する


 ポジティブなフィードバックが好ましい。
 そうはいっても、部下を正しく伸ばすためには、「叱る」ことも必要。

 その際には、悪い結果をもたらす原因となった行動を具体的に指摘することが重要です。
「クズ」「のろま」などの人格批判などはもってのほかです。

 叱りっぱなしにせず、フォローを入れることも忘れてはいけません。
 自分の存在価値を認めるフォローがあれば、部下はポジティブな気持ちを取り戻せます。

 石田さんは、フォローの言葉で使ってはならない二つのパターンがある、と指摘しています。

 一つは、「キミのためを思っているんだ」というもの。
 たしかに、その通りなのかもしれませんが、部下からすると押しつけがましいだけでなく、自己弁護に聞こえます。自己弁護に走る上司を、部下は信用しません。だから、こんな一言はかえってよけいなのです。
 もう一つは、「本当はこんなうるさいこと言いたくないんだけどさ」というもの。
 会社の方針だからしかたなくて叱っているんだという、これまた最悪の自己弁護です。
 部下に嫌われたくないからつい口をつくのでしょうが、部下にすれば「じゃあ、言わないでくれ」と思うだけです。
「キミのため」「会社が言うから」という理由で叱るのなら、そこにはあなたの意向は存在しません。部下の目には、あなたは無責任な伝言役と映るでしょう。
 褒めることに関しては、「部長も褒めていたよ」「会社にも評価されるよ」という伝言も大いに結構です。しかし、叱るという気の重い作業をするときには、すべて自分の責任で接する姿勢が必要です。

 『行動科学マネジメント入門』 5章 より 石田淳:著 ダイヤモンド社:刊

 自分が部下の立場のときに嫌だったこと。
 上司の立場になると、それをすっかり忘れて、部下に接してしまう人が多いです。

 立場が変わると、つい視野が狭くなって見えなくなる部分もあります。
 伝え方には、くれぐれも気をつけたいですね。

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 今の20代以下の若者たちには「ゆとり世代」とも言われます。

 彼らは、個性を重視し、争うことを避ける風潮があります。
 40代以上の上司世代との間には、大きな価値観のギャップがあることは事実です。

「行動科学マネジメント」は、この世代間の溝を埋めるための強力なツールとなります。
 しっかり身につけて、組織の活性化や部下の人材育成につなげたいですね。


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