本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『リーダー論』(高橋みなみ)

 お薦めの本の紹介です。
 高橋みなみさんの『リーダー論』です。

 高橋みなみ(たかはし・みなみ)さんは、アイドルです。
 AKB48の第一期メンバーで、「たかみな」の愛称で親しまれています。
 2012年から、AKB48グループの総監督に就任されています。

たかみな流「まとめる力」とは?

 自らを、飛び抜けた才能のない“凡人”だという高橋さん。
 それでも、人一倍の努力を重ね、300人以上のメンバーをまとめあげてきました。
 

 10年間活動してきた今、確信していることがあります。
 私のような凡人が認められるには、頑張るしかない。
 近道なんてないんです。時間をかけて、ゆっくりと一歩ずつ、自分の道を踏みしめていくしかない。
 私は何でもできるタイプではないんです。ダンスだってもともと劣等生だし、歌だってそれほどうまくない。トークで必ず面白いことを言えるかというと、決してそんなことはない。
 自分に自信がないからこそ、努力するんです。周りに少しでも追いつくため、自分が掲げる「理想の自分」に近づくために。
 そうやって10年間、凡人なりにもがき続けてきました。近道はできなかったぶん、その途中で見えた景色がたくさんありました。人からは寄り道だったねと言われるかもしれないけれど、もがきながら、努力しながら見たその景色は今、私にとって大きな財産です。
 そんな自分だからこそ、伝えられることがあるかもしれない。
 自分の選んだ道が正しいかどうか、不安になっている人はたくさんいるとと思います。将来どんな道に進もうか、悩んでいる人はたくさんいると思うんです。
 そんな人たちが、ちょっとだけ立ち止まって、考えて、一歩を踏み出してみるきっかけに、この本がなればいいな、と心から願っています。

 『リーダー論』 はじめに より 高橋みなみ(AKB48):著 講談社:刊

 本書は、個性派軍団、AKB48グループを引っ張る、「たかみな流リーダーシップ」の極意をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「ひとりひとり」が集まって「みんな」になる

 チームのメンバーにとって、「いいリーダー」とは、どういう人か?
 高橋さんは、それは、「自分のために」何かしてくれる人だと述べています。

(前略)「自分のために」頑張ってくれているんだ、「自分を見てくれているんだ」という信頼感がないと、いいリーダーとは思われないんじゃないでしょうか。
 例えば新入社員に、社長が朝礼でいいことを言ってたとしても、「あー、なるほどなー」ぐらいで終わってしまうかもしれない。だけど、もしも社長が「ご飯一緒に行こうか」「悩みあるのか?」とピンポイントで声をかけてきてくれたりして、「社長はいい人だ」という認識がその新入社員の中にあったとしたら、「すごくいい話だな!」と心に刺さるし、みんなに向かって話している言葉なのに、自分に向かって話しているように聞こえると思うんです。
 リーダーは、メンバー個人に対して「この人は信頼できるな」と思われる関係性を1個ずつ作っていかないといけない。日頃から、「私は君のことを見てるんだよ」という認識を、ひとりひとりにとちょっとずつ植え付けておかないといけない。
 その人がいいことをしたならば、誰よりも早く褒めてあげたいです。でも、もしもダメなところを見つけたら、その子といい関係性を築いてから、「ここはこうしたほうがいいんじゃない?」と伝えるようにしています。その前段階で言ったら、「なんでこの人に言われなきゃいけないんだ」と反発されて終わってしまう。「この人が言うなら、正しいんだろうな」と聞いてもらえる関係性を日頃から作っておかなければ、伝わるものも伝わらないんです。
 悩んだり不安で押しつぶされそうになった時、この人に頼ればいい、きっと助けてくれると感じられる関係性がひとつでもあれば、頑張れる理由になるんじゃないかとも思います。逆に私のほうからどうしても頼みごとをしなければいけなくなった時に、受け入れてもらえる理由にもなる。
 ひとりひとりといい関係性を築くためには、時間も気力も必要です。でも、「ひとりひとり」が集まることで、「みんな」になる。ひとりひとりとの関係性が良くなければ、みんなとの関係性も良いものにはならないんです。

 『リーダー論』 第三章 より 高橋みなみ(AKB48):著 講談社:刊

 人間関係の基本は、「1対1」。
 それは、AKB48のような大人数のグループでも同じです。

 メンバーひとりひとりと、強い信頼関係で結ばれているリーダー。
 “扇の要”のような存在の高橋さんがいるからこそ、抜群のチームワークが発揮できるのですね。

小さい集団の“ダマ”を取る

「何物にも捕らわれず縛られずただあるがままに己を生きる」

 これは、高橋さんが「座右の銘」にしている言葉です。

 大好きな漫画『最遊記』に出てくる言葉です。
 AKB48というグループに入ってから、ますますこの言葉の大事さを痛感するようになりました。チームのメンバーにとって一番大事なことは、「自分を持っていること」だと私は思います。
「己のために」という気持ちと、「チームために」という気持ちは、両立することができる。個人主義が強いと協調性をなくしてしまうのでは、と思う人がいるかもしれませんが、「チームのために」という圧力のせいで、それぞれが個性をなくしてしまうことのほうが怖いです。個人のキャラクターがしっかり立っていなければ、みんなが集まった時のチームの総合力が弱まってしまうと私は思います。
 強いチームであるためにも、「ひとりひとり」でなければいけないんです。
(中略)
 そうは言っても、女の子は小さな集団を作る生き物です。何人かでいつも一緒に行動して、内輪だけに通じるおもしろワード作ってしゃべっている。
 それが学校の教室だったら別にいいと思うんです。でも、みんなで力を合わせてひとつのことを成し遂げようとしているなら、それは良くない。
 もう一度言います。強いチームであるためには、「ひとりひとり」でなければいけません。
 小さな4人グループが4つある16人チームより、ひとりひとりがそれぞれ独立してパワーを持っている16人チームのほうが、チームとしての総合力は絶対に強いんです。
 ですから、リーダーがチーム作りをするうえで最初にするべきことは、小さなグループで固まってしまっているメンバーたちを、「ひとりひとり」にほぐしていくことだと思います。私はそのことを、「“ダマ”を取る」と表現しています。
 料理をする人なら分かると思うんですが、ボウルに入れた小麦粉を水で溶くと、ツブツブの小さなかたまりができてしまう。ダマです。よく混ぜてダマを全部潰していって、なめらかな状態にしなければ、美味しい料理はできあがりません。
 チーム作りでも同じです。ダマになって固まっているグループを見つけたら、「何の話しているの?」と自分から割って入る。そのダマの中からひとりを連れ出して、別のダマの中へ持っていく。
 もしくは、別のメンバーを連れてきて、そのダマの中に入れる。そうやって人間関係を混ぜこぜに「かきまぜる」ことで、「ダマを取る」。
 AKB48も初期はダマがありました。典型的なのが「年長組」と「年少組」の世代によるダマです。私も最初は「年少組」のダマの一員だったのでよく分かります。
 他にも、同期だけで固まってしまうというのも、ありがちなダマです。ダマがあると、どうしてもチームの雰囲気が澱(よど)んでしまうんですよね。だから、そこをほぐしていく。
 言い方を変えれば、「もっと人を知ろうよ」ということです。
 仲のいい人同士で集まっているのは楽しいかもしれない、でも、まだ仲良くはなっていないし、まだ話したことのない人こそが、自分の新しい可能性を広げてくれるかもしれない。
 世の中のイジメ問題も、ダマから発生するものだと思うんです。ダマが、グループだったり、クラスを壊していくものだと思います。
 だからリーダーは、メンバーがダマになっていないか、「個」として行動できているかどうかを、一歩引いた視点から見守り続けなければいけない。
 チーム全体をどうまとめるかと考える前に、「ひとりひとり」にほぐしておかなければ、意味がないんです。下準備をちゃんとしておかなければ、美味しくできあがるはずの料理も、失敗するだけです。

 『リーダー論』 第四章 より 高橋みなみ(AKB48):著 講談社:刊

 女の子のグループには、それなりの難しい問題があるのでしょう。
 高橋さんは、それらに対して逃げずに、正面から受け止めて、解決策を探します。

 小麦粉を水で溶くのも、「ダマ」をしっかりつぶす。
 ”名料理人・たかみな”の、きめ細かい下ごしらえがあってのAKB48の団結力ですね。

「努力は必ず報われる」の真意とは?

 リーダーの大きな仕事のひとつは、「メンバーに手本を示す」ことです。
 一番やってはいけないのは、「言っていることと、やっていることが違う」こと。

 高橋さんの口から出た名言といえば、「努力は必ず報われる」です。
 マスコミやインターネットでも取り上げられ、賛否両論を巻き起こしたこの言葉。
 高橋さんのこの言葉に込めた想いは、どのようなものなのでしょうか。

 言葉が一人歩きする・・・・とは、このことだなと思っています。その言葉を口にしたことで、希望を持ってくれた人もいたけれど、キレイ事だと批判する人もたくさんいました。この数年間、自分の言葉に首を絞められていると感じることもあったんです。
 誤解があるんです。私の思いとしては、あの後に続く言葉が大事なんです。私は2011年のスピーチで、こう口にしました。
「“努力は必ず報われる”と、私、高橋みなみは、この人生をもって証明します」

 この世界は理不尽なことの連続だから、夢を叶えられるかどうかは、正直分かりません。いっぱい努力しても、報われないことのほうが多いのかもしれない。でも、夢を叶えるために、私は、努力をやめるつもりはありません。そんな私の姿を見て、「自分も努力したい」と思ってくれる人がいるんじゃないかなって・・・・・。
 あの総選挙があった頃、私はすごく悩んでいました。当時は「総監督」という肩書もついておらず、AKB48内での序列を気にしている時期でした。
 選抜に選ばれはするものの、後輩がどんどん前に出ていき、自分はちょっとずつ後ろの列へ下がってきている。私はソロ歌手になるのが夢なのに、他のメンバーのほうが先にソロデビューしていく・・・・・。自分なりに頑張っているのに、「どうして?」という気持ちが渦巻いていた。
 ふっと周りを見渡してみたら、他のメンバーも同じ気持ちを抱いているんじゃないかと思ったんです。この世界は、頑張っている順にメンバーが選ばれたり、総選挙で上位になるのかと言ったら、そうじゃない。人より何倍も努力しているのに報われず、悔しい思いをして、もがき苦しんでいる子がいっぱいいる。
 努力の先には、夢を叶えた未来が待っている。そう思えなかったなら、努力することを諦めてしまう。努力なんて無意味だと思ってしまう。メンバーたちに希望を示さなければいけないと思いました。自分の言葉と、態度によって。
 あのスピーチで伝えたかったのは、「私は努力をやめない」ということだったんです。そして、「言っていることと、やっていることが違う」のは最高にかっこ悪いと私は思うから、それを言っちゃったら、私は努力をし続けなければいけない。でも、だからこそ、「言っちゃえ!」と思ったんです。自分の退路を断つために、そうすることで、みんなに希望を与えるために。

 『リーダー論』 第六章 より 高橋みなみ(AKB48):著 講談社:刊

 何ごとも、精一杯の努力で目標に向かって突き進んできた、高橋さんらしいですね。

 数百人もの大人数の集団を引っ張っていく。
 そのためには、「有言実行」のリーダーシップが不可欠です。

 高橋さんは、自ら先頭に立ち、チームを「背中で引っ張る」、理想のリーダーですね。

弱さを見せられることが、一番の強さ

 完璧な人間はいません。
 リーダーといっても、悩みもあるし、弱点や短所もあります。
 高橋さんは、弱さを見せられることもまた、強さだと述べています。

 2015年、私にとって最後の総選挙で、初めて「1位になりたい」と宣言しました。なれないものに挑戦するって、怖いことです。でも、そこに挑戦する姿をメンバーに見せることが、選挙ポスターのキャッチコピーにもした「私が皆に残せるもの」になると思ったんです。
 それまでの総選挙では、ファンの方に「応援するよ」と言われても、私のほうから「いいよいいよ」「他の若いメンバーのことを応援してよ」と言っていました。リーダーだから、総監督だから、周りを引き立てないといけない立場だから・・・・・と。
 でも、それは言い訳だった。「1位になれない自分」と向き合うのが怖い。だから私は、自分の気持ちに蓋をしていたんです。
 その蓋を、最後の最後で開けました。すると、ファンのみなさんは「たかみなが最後にやっとワガママを言ってくれた!」と喜んでくれたんですよ。
「たかみなのために頑張ろう!」と結束する姿を見せてくださった。結果、1位にはなれませんでしたが、4位という過去最高の順位をいただけることになったんです。
 今では「アイドルとファン」という関係ではないのかもしれません。出会い方が違ったら、「親友同士」になったと思う。素の自分の激弱な部分を、さらけ出せたからこそ、関係を深めることができた。
 強がるのも大事です。でも、弱さを見せられることが、一番の強さだと思います。

 『リーダー論』 第七章 より 高橋みなみ(AKB48):著 講談社:刊

 自信がなくて不安な人は、自分をより大きく見せようとするものです。
 弱みを見せられるのは、自分をありのまま受け入れられている証拠ですね。

 普段は厳しいけれど、ときどき弱音も吐く。
 そんな人間味あふれるところも、たかみなの魅力でしょう。

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「AKB48とは、高橋みなみのことである」
 AKB48グループ総合プロデューサーの秋元康さんの言葉です。

「アイドル」と呼ばれる女の子たちが、自分の持てる力を全て出し切り、全力で歌い、踊る。
 何ごとにもくじけずに、前を向いて進み続ける。
 その姿勢が、多くのファンの共感を呼びます。
 高橋さんは、まさにそのAKB48のシンボルともいうべき存在です。

「努力する姿は、かっこいい!」

 そう言い切る高橋さん。
 今後、歌手として一人立ちし、どんな姿をファンに見せてくれるのでしょうか。
 努力し、進化し続ける「たかみな」の、これからのご活躍に期待したいですね。

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