【書評】『プロの代筆屋による心を動かす魔法の文章術』(中島泰成)

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 お薦めの本の紹介です。
 中島泰成さんの『プロの代筆屋による心を動かす魔法の文章術』です。

 中島泰成(なかじま・やすなり)さんは、プロの代筆屋、行政書士です。

「心を動かす文章」には、技術が必要


 代筆屋は、他人の想いを文章にする少し変わった仕事です。

 ラブレター、プロボーズ、謝罪文、復縁の手紙、遺言書・・・・。
 その内容は多岐にわたります。

 中島さんは、数多くの文章を考案する中で、「言葉の怖さ」と「言葉の優しさ」を学びました。
 そして、たどり着いたのが、中島さんにしか書けない、「心を動かす文章術」です。

 本書は、誰でも実践できる中島流「心を動かす文章術」のノウハウをまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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小説家みたいな文章は誰も期待していない


「伝わりやすい文章」とは、どのようなものでしょうか。
 中島さんは、伝わりやすい文章=読みやすい文章だと述べています。

 夕陽が辺りを紅く輝かせていた。花や草木、動物たちは、一点を見つめて動かない。なにか神秘的な力に怯えているようにも見える。視線の先、草原に立つ1人の少女は黄金色の輝きを放っていた。頬を伝う一筋の光。夕日に照らされた、彼女の美しい涙に、生きとし生けるもの全てが心を奪われていたのだ。

 この文章を読んで、「何だかいい文章だ」と思ったあなたは危険です。これは私が作った、堅苦しくて読みにくい文章の典型です。堅苦しくて読みにくい文章は、伝わる文章とは言えません。少なくともあなたが書く必要のない文章です。そこに気付いてほしいのです。
 仕事や家庭、ライフワークで使用する文章は、小説とは違います。日常で使う文章に、演出や脚色や格好よさは必要ありません。
 誰でも、楽しく自由に、わかりやすく書く。それが本来の「書く」という行為です。書くことは自分の想いを形にして、誰かに伝わるから意味があります。読む人が理解できなければ意味がありません。
 書くとは、自分のために「書く行為」ではなく、相手へ向けて「書く好意」です。先ほどの文章も、

 夕陽の中、花や草木や動物は、動きを止めていました。泣いている女の子の涙が美しくて、見とれていたからです。

と書けば十分、読んだ人に伝わります。
「文章を書こう」と思った途端に、肩に力が入り、先ほどの変に堅苦しい文章を書こうとするのはなぜでしょうか?
 恐らく、子供の頃国語で習った堅苦しい文章の影響が大きいのでしょう。歴代の文豪たちが書いた有名な小説を意識するあまり、書くことに過剰反応しているのかもしれません。

 『プロの代筆屋による心を動かす魔法の文章術』 第1章 より 中島泰成:著 立東舎:刊

 文章は、相手に伝わってはじめて、意味を持ちます。
 相手の立場に立って、言葉や言い回しを選ぶ必要がありますね。

 中島さんは、誰にも理解されやすい文章を書こうと思ったら、「中学生がわかる」は絶対に外せないポイントになると述べています。

 コツをつかむには、とにかく「文章を書く」こと。
「習うより慣れろ」という言葉もありますね。
 日々の生活に、言葉で表現する習慣を取り入れていきましょう。

「他には言っていない」と思わせる


 相手の心に刺さる文章は、どうすれば書けるのか。
 ここでは、さまざまな場面で応用できるテクニックを紹介します。

 いわゆるお付き合いで飲みに行かれ、水商売の女の子と出会うこともあるでしょう。女の子の会話やメールから学べることは意外と多いってご存知でしたか?
 彼女たちにハマる男性の多くは、自分だけに話してくれた、自分だけにメールを送ってくれたと思い込んでいます。
 これは、彼女たちのテクニックです。「あなただけに話したの」「あなただけにメールを書いたの」「あなたは私にとって特別な人」――そんな風に錯覚させるのです。若い頃、実地で学んだ私から言えることは、彼女たちは確かな技術を持っているということです。
 例えばメールで、

■ここだけの話だけど――
■これ、絶対に誰にも言わないでね。
■こんなこと、普段は言わないんだけど――


と書かれていたら、多くの男性が、自分だけにメールしてくれた、きっと自分は特別な存在なんだ、と錯覚してしまいます。
(中略)
 このテクニックは、ビジネスの手紙やメールでも使えます。

■ここだけの話ですが、◯◯商事は今勢いがあります。
■これ、絶対に内緒にしておいてください。来週新商品が発売されます。
■こんなこと、誰にも言ったことないです。◯◯さんになら安心して話せます。


このテクニックのポイントは、「誰にも言っていない秘密をあなただけに教える」と思わせることです。秘密は教えてもらえないから気になります。自分だけに教えてくれたとしたら、つい相手のことを信用してしまいますね。

 『プロの代筆屋による心を動かす魔法の文章術』 第2章 より 中島泰成:著 立東舎:刊

 どんな人でも、自分が特別扱いされていると感じると、嬉しいものです。
「ここぞ」というとき、相手との距離を一気に縮める切り札に使えますね。
 頭の片隅に入れておきたいテクニックです。

言葉は「食材」、句読点は「スパイス」


 読みやすい文章を書く上で欠かせないのが、「句読点」です。
 文章を、句読点を使って適当な位置で区切ると、読み手はリズムよく読むことができます。

 句読点のセンスを磨くには、句読点の足りない文章と、打ち過ぎた文章を見比べることです。こっちは気持ち良い文章、あっちは気持ち悪い文章、その違いに気付く感性を磨きましょう。
 また句読点には、漢字が連続して読みにくい文章を読みやすくする効果もあります。
 一昨日飛行機で海外から帰国した。
      ↓
 一昨日、飛行機で海外から帰国した。

 漢字と漢字の間に読点を打つだけで、見た目もすっきり読みやすくなりましたね。句読点は、とにかく読み手に優しいのです。
 小説では、句読点を付けずに一気に読ませるテクニックもありますが、日常生活で使う文章には、しっかりと句読点を付けることをお勧めします。
(中略)
 文章というのは、不思議なものです。同じ言葉を使っていても書き手の使い方によって、まるで違う言葉に生まれ変わります。
 書き手を料理人で、言葉を食材とすれば、句読点はいわばスパイスです。使い方によっては、料理にアクセントを加え、食材の良さを最大限引き出してくれます。けれど、使い過ぎると食材そのものを殺しかねません。
 つまり、句読点は書き手のセンスが最も試されます。句読点を自在に操れるようになると、書く技術は飛躍的に向上します。

〈読点のない文章〉
 伝わる文章というのはわかりやすく読みやすい文章です。技術力や表現力が乏しくても句読点を使うことで伝わる文章は誰でも書くことができます。
      ↓
〈読点のある文章〉
 伝わる文章というのは、わかりやすく読みやすい文章です。技術力や表現力が乏しくても、句読点を使うことで、伝わる文章は誰でも書くことができます。


 3つの読点の位置に注目してください。
 最初の読点は、「わかりやすく読みやすい文章」を強調するためのものです。
 2つ目の読点は、技術力や表現力の乏しさを句読点で補えることを強調するためのものです。
 3つ目の読点は、冒頭にかかる伝わる文章の結論である「伝わる文章は誰でも書くことができます」を一気に読ませる前の、息継ぎの役目を果たします。
 読点の使い方で文章は生まれ変わりますね。

 『プロの代筆屋による心を動かす魔法の文章術』 第3章 より 中島泰成:著 立東舎:刊

 たかが「句読点」、されど「句読点」。
 文章の中に、点をひとつ打つか打たないか。
 それだけで、リズム感や読みやすさが大きく変わってきます。
 まさに、食材を活かす”スパイス”のような存在ですね。

「メリット」より「ベネフィット」を強調する


 私たちもよく目にする、お店のチラシやPPC(Pay Per Click)広告。
 目的は、文章を読んでその商品に興味を持ってもらうことです。
 チラシやPPC広告を書く上でのポイントは、どこにあるのでしょうか。

 チラシやPPC広告を観察していて気付いたことがあります。ベネフィット(効能)よりもメリット(効果)ばかり謳(うた)っているということです。
 どういうことでしょう? 例えば、◯◯式ダイエットです。

■何キロ痩せました!
■何センチ減りました!


 これは使用した効果です。◯◯式ダイエットに取り組んだことによる、メリットしか書かれていません。
「メリットを書いて何が悪いんだ?」と反論されるかもしれませんね。もちろん、メリットを書くことは悪いことではありません。
 ただ、メリットだけを書くと、こうなります。

■15キロ痩せました。
    ↓
「でも、私には――」

■10センチ減りました。
    ↓
「でも、この人は特別よ――」


「でも」が邪魔して「無理」になる人が出てきます。メリットだけで「よしやってみよう」と思わせることはとても難しいです。
「でも」をなくすには、メリットより、ベネフィットを載せると効果的です。

■憧れのあの人が振り向いてくれた。
■昔の服を着て、おしゃれをして、街を歩く。
■旦那が惚れ直したと言ってくれた。


 ダイエットした結果によって、何ができるようになるのか。どんな自分になれるのか。叶えたい夢を想像させるような文章なら、人の心をキャッチできます。
 チラシやPPC広告に具体的なベネフィットが書いてあれば、

「でも、無理」
    ↓
「でも、そうなりたい」


に変えられます。
「メリットよりもベネフィット」一度試してみてはいかがですか。

 『プロの代筆屋による心を動かす魔法の文章術』 第5章 より 中島泰成:著 立東舎:刊

 その商品がどれだけすごい効果(メリット)を生むのか。
 それだけを伝えられても、いまいちピンときません。

 その商品で、自分にどんな効能(ベネフィット)が生まれるのか。
 それがはっきりイメージできると、「ほしい」という気持ちが湧いてきます。

「メリット」より「ベネフィット」。
 いろいろな場面で、応用が効きます。
 覚えておきたいですね。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 中島さんは、人の心は、技術ではなく、書き手の魂に動かされるとおっしゃっています。
 どんなにきれいな文章でも、気持ちがこもっていなければ、相手の心には届きません。

「伝えたい!」
 そんな熱い気持ちがあって、はじめて、言葉に魂(=エネルギー)が入ります。

 本書に書かれている内容は、その言葉のパワーを最大限に引き出すものです。
「伝えたい!」を文章という形で実現してくれる、“魔法の文章術”。
 皆さんも、ぜひお試し下さい。


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