【書評】『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』(俣野成敏、中村将人)
お薦めの本の紹介です。
俣野成敏さんと中村将人さんの『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』です。
俣野成敏(またの・なるとし)さん(@MatanoAsia)は、実業家・起業コンサルタントです。
大手時計メーカーから独立、複数の事業経営をされるかたわら、私塾『プロ研』でサラリーマンの自立を支援されています。
中村将人(なかむら・まさと)さんは、起業コンサルタントです。
「お金の学校」を主宰され、人生を豊かに過ごすためのお金の知識を広める活動をされています。
知らないと損をする「お金の真実」
日本の国の財政問題は、すでに抜き差しならぬものとなっています。
しかし、多くの人は、それに目をつぶり、見ないふりをしています。
国のお金の問題と、個人のお金の問題。
その根っこの部分は一緒です。
「自分には関係ない」と言い聞かせて、何とかやり過ごそうとする。
著者は、そんな日本社会の風潮に、警鐘を鳴らします。
まずは、逃げずに現実を受け止めてみましょう。「自分のお金の問題と向き合い、対処する」ことは、その第一歩です。中には節税についてなども述べていますが、節税自体が真の目的ではありません。
自分の身は自分で守る術を知ること。「言う通りにすれば、代わりに老後を保証してくれるんでしょ?」という考え方が、国でも会社でもすでに幻想にしかすぎないことを、私たちは心の底ではわかっています。
今、時代は変革期にさしかかっています。私たちは、真剣になって取り組まなければなりません。自分の身を守るのは自分を置いて、他にはいません。
私たちが本気で変われば、国も変わらざるを得なくなります。なぜなら、意識はしていなくても、この日本国を運営しているのは、私たち一人ひとりだからです。
お金について真剣に考えるようになったとき、あなたはすでに変化し、自立への第一歩を踏み出しているに違いありません。日本という国の将来についても真剣に考えるようになっていることでしょう。『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』 はじめに より 俣野成敏、中村将人:著 日本経済新聞出版社:刊
私たちが自由な自立した存在でいるためには、お金の問題は避けて通れません。
本書は、皆が目をそむける「お金の真実」を知り、お金の新常識をインストールする一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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あなたの稼ぎは、「残りカス」?
私たちは、自分の払っている税金について、ほとんど意識しないまま過ごしています。
たとえば所得税は、7段階に分けられ、一番低い人で所得額の5%、一番高い人で45%が税として徴収されます。
さらに、住民税は一律10%。社会保険料は目まぐるしく変化していますが、会社が負担する社会保険料は約15%。そして社員が負担する社会保険料は約14%となっています。
年収4000万円の所得がある人は、稼いだお金の内実に68%を、国に税金として納めているということになります。
稼ぎが900万円クラスの人でも、およそ50%が税金などで持っていかれているのが現状です。
それはたとえば、年収4000万円をもらっている会社役員であれば、8月まではひたすら税金を納めるためだけに働き、9月からようやく、自分の手取りになるということ。
せっかく厳しい出世競争を勝ち抜き、現在も会社の生き残りをかけて、日々しのぎを削っているというのに、これではあまりにも夢がない。
つまり、日本人の間に漠然とある「年収1000万円以上は高給取り」という認識も、“手取り”ということになれば、額面の半分しか受け取っていないということなのです。
その“半分に減らされた”稼ぎの中から、家賃や住宅ローンを払い、生命保険を払い、車を買い、子供の養育費を払い・・・・・残ったお金の中から、自分の趣味、やりたいこと、買いたいモノを買うお金をねん出している・・・・・。
それが一般的なサラリーマンです。
「もっとお金がほしい」
「お金持ちになりたい」
多くの人が、そう考えていることでしょう。
だから、今やっている仕事に精を出します。
ある人はサラリーマンとして、会社の業績を伸ばすことに全力を注ぐ。
上司との関係、社内での地位を考えつつ、もっと給料を上げることを考えます。
また、ある人は個人事業主として、自分の能力を最大限に発揮することに全力を注ぐ。
寝る間も惜しんで、自分が動ける限りの仕事をします。
そうして、自分の持つパワーを最大限に使います。
時間のパワー、労働のパワー、そして情熱のパワー・・・・・。
しかし、いくら仕事にパワーを使っても、稼げば稼ぐほどお金(税金)を取られてしまう・・・・・。
それが今の日本の実情なのです。『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』 第1章 より 俣野成敏、中村将人:著 日本経済新聞出版社:刊
税金は、国が成り立つ上で、欠かすことはできません。
とはいえ、所得の半分が税金として持っていかれ、しかも、稼げば稼ぐほどその割合が多くなる。
それを知ってしまうと、一生懸命に働く気も失せてしまいます。
1000兆円を超える膨大な国の借金、急激に進む少子高齢化。
それら深刻な問題を後回しにしてきたつけを、私たちはこれから払わされるというわけです。
最強の節税対策は「個人」から「法人」へ!
せっかく稼いだお金が、みすみす国の借金返済のために吸い上げられる。
そうならないためには、「節税」の意識を持つことが大切です。
著者が提唱する“最強の”節税が、「会社を持つ」こと。
会社を持つことで、日常でのさまざまな出費が法人の「出費」となり、税金控除の対象
となるからです。
サラリーマンが個人でモノを買う場合、すべて手取りのお金から賄います。それは、すでに税金を引かれたあとの残ったお金から、ということ。
この“順番”を、変えるのです。
先に自分で何にどう使うのかという方針を持ち、税金対策をした上で所得を得る。その過程で「経費」としてモノを買う。
自分の手取りのお金でモノを買うのではなく、自分の(つくった)会社に買ってもらうのです。この仕組みこそが、最強の節税対策です。
そして、自分のつくる会社・・・・・法人は、最強の「節税マシン」となるわけです。(中略)
極論でいえば、何の設備がなくても会社は起こせます。
一番小規模の合同会社であれば、期間は1週間で、費用はおよそ12万円もあれば設立可能です。
定款に記載する事業内容、目的などは、あくまでも「予定」で構わないのです。
また、副業禁止の会社であっても、内緒で代表に就任しても咎(とが)められずに済む方法があります。
それは、代表として役員報酬を得ないことです。報酬を得ていないなら、それは株主というだけの話ですから咎めようがありません。先述の不動産賃貸業や株式投資には寛容な会社がほとんどですから、自社の株式を持っているだけなら株式投資と同じ理屈です。また、どうして会社の代表になることに抵抗がある、という人の場合は、妻や夫、親兄弟親戚を代表取締役に据えて、株式を全部自分が持つ、という方法もあります。
要するに株式投資と一緒。これなら「会社を興す」ことへの抵抗も少ないはずです。この他に必要なものといえば、「法人住民税」としてかかる年間7万円の法人税のみ。ランニングコストはこれだけでOKです(利益が出た場合を除く)。
設立費用の12万円と合わせて、初年度の最低費用としては年間19万円で会社を運営できるのです。
最強の節税マシンを持つのに必要な経費は、19万円。
しかし、実は一番大きなハードルといえるモノがまだあります。
それは、「常識」。
つまり、自分自身の思い込みです。
「サラリーマンのくせに、会社を立ち上げるなんて・・・・・」
という、会社に対する罪悪感です。それは本当は、まったく気にする必要のないことなのですが。
このメンタルブロックがもっとも厄介なのです。『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』 第2章 より 俣野成敏、中村将人:著 日本経済新聞出版社:刊
「会社を起こす」
そう聞くと、とても大変な手続きが必要なように感じます。
しかし、実際には、少しのお金と手間だけで、誰でもできることなのですね。
大切な資産を少しでも目減りさせない。
そのためにも、ぜひ、頭に入れておきたい知識です。
師匠のすべてを受け入れろ!
投資の際には、人からさまざまなことを学ばなければなりません。
著者は、このとき、相手から、すべてを吸収するつもりで臨む
ことが大切だと指摘します。
あなたが“投資の師匠”とする人であるならば、その人のいうことはすべて聞く。
「やれ」といわれたことは、「ホントかよ・・・・・」と思いながらも、全部やります。
「ホントかよ・・・・・」と思う気持ちは、あってもいいのです。
なぜなら、自分と違う価値観を教えてもらっているのですから。
そこに違和感が生じることは、ある意味「正しい」のです。ここで一番やってはいけないのは、その違和感にこだわり、他の人の意見を求めてしまうことです。
「◯◯さんがいうにはこうしろ、ということなんですが・・・・・ホントにそうしたほうがいいんですかね?」
そんなふうに、他の人に意見を求めたり、同じ質問を別の人にしたりする・・・・・そのような疑問を抱いている人に対して、師匠がすべてを教えようと思うでしょうか?
これでは一気に師匠からの信用を失うことになってしまいます。
いわゆる「セカンドオピニオン」は、医療の世界では有効であるかもしれませんが、「学びの世界」ではNGなのです。
意見を聞くなら鵜呑(うの)みにする。
突っ込むなら片足でなく、両足をズッポリ・・・・・が正解です。
これが、投資の師匠から一番かわいがられ、有益な情報やノウハウを教えてもらうための秘訣です。
私たちにももちろん、今でも人からモノを学ぶことは多々あります。学びという世界には、教える側に教え方という選択肢があるだけです。
そのときの心構えは「盲信」。
誰かからモノを学ぶことを決意する・・・・・つまり入門すると決めるまでは、いくら悩んでもいいのです。
「ホントにこの人に学ぶのがいいのかな」
「この人から何が得られるのかな」
しかし、「この人から学ぶ」と決めたなら、あとは盲信です。
また、「何を学ぶか?」ということもじっくり考えなければなりません。
自分に必要な知識は何なのか?
投資のリテラシーなのか? ビジネススキルなのか? あるいは自己啓発的なものなのか・・・・・。
これをしっかり見極め、分野を絞って学ばなければその学びは無駄骨になりかねません。
よく「メンターが必要」という話がありますが、私たちは、各分野の専門家に教えを請うことはあったとしても、「人生のメンター」を持とうとは考えていません。
当然、リスペクトする先輩や影響を与えてくれた人はたくさんいます。
しかし、誰か特定の人を「人生のメンター」にしてしまうと、その相手にすべてを依存してしまう可能性が出てくるのです。
「誰かに依存する」・・・・・これは投資においても絶対にタブーです。
“盲信”と”依存”は違います。
それは、何かがあった場合に、責任の所在がどこにあるか? の違いです。
すべての責任は自分にある。
モノを学ぶ際には、最初からその覚悟が必要なのです。『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』 第3章 より 俣野成敏、中村将人:著 日本経済新聞出版社:刊
色々なところから、自分が理解できる部分だけを拾って、つまみ食い。
それでは、いつまでたっても上達しません。
「依存」はせずに、「盲信」する。
そして、新しい思考を柔軟に取り入れ、古い常識を打ち破ること。
飛躍的な成長を遂げるには、それしか方法はありません。
投資だけでなく、すべてのスキルの習得に当てはまりますね。
お金を増やすために必要なのは、「学歴」より「経験知」
投資の世界では、学歴は何の役にも立ちません。
必要なのは、「経験知」です。
投資に失敗しても、それを経験知と捉えることで、再利用することが可能
となります。
こうして経験知を積んで、それをネタに転化させる”転んでもタダでは起きない精神”を養っていると、物事の裏側=カラクリに着目する視点が養われていきます。
私・中村は、人とビジネスの話をする際には、相手の“キャッシュポイント”を必ず探るようにしています。
キャッシュポイント・・・・・つまり、「この人のビジネスは、どこでどうやって稼いでいるんだろう? いったいどこで利益を出しているんだろう」ということを常に意識する、ということです。
たとえばエステのフランチャイズ本部が、フランチャイズ店に対して高性能脱毛器を安価な値段で与え、宣伝をバンバン行い集客を手伝います。
フランチャイズ店は大喜び。脱毛の効果も好評で、本部としても大満足・・・・・と、ここで話は終わりません。
本部のキャッシュポイントは実はそこではない・・・・・ということに気づいたのです。
フランチャイズ店に与えた脱毛器は、交換に10万円以上するカートリッジを使用しています。お客が増えればカートリッジの使用量もガンガン増え、1個10万円するカートリッジが次々と必要になってきます。そう、本当はここで一番利益を生んでいる・・・・・本体は安いけど交換部品が高いという、有名な“替え刃モデル”同様の仕組みがこのエステサロンのビジネスには潜んでいたのです。
このように、儲けているところには、必ず裏にカラクリがある(それは決してイリーガル=違法ということではありません)。
そのような商法に気づく嗅覚もまた、さまざまな経験知、つまり「どれだけ多くのケースを見てきたか」によって養われていきます。
投資家もまたしかりです。
「なぜ儲かるのか?」
「なぜ利回りが高くなるのか?」
そのカラクリを見定める目もまた、経験知によって養われた嗅覚です。
学歴よりも経験。
これはもう、お金儲けの世界では当たり前のことと認識しておきましょう。『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』 第4章 より 俣野成敏、中村将人:著 日本経済新聞出版社:刊
知識として知っているだけでは、不十分。
その知識を利用し、実際に経験してみることで、はじめて身につきます。
成功も、失敗も、終わってしまえば一緒。
どちらも、貴重な「経験知」になります。
とにかく、実行あるのみですね。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
先が見通せず、変化の激しい現代社会。
名の知られた大企業でも、いつ経営危機に陥って破綻するかわかりません。
国も国で、多額の借金を抱えて、すでに身動きがとれない状態です。
これまで依存してきた、会社や国は、もはや信頼できない。
そうなると、結局、最後に頼れるのは自分自身しかありません。
リストラや病気で働けなくなる。
そんな“もしも”のための備えが必要となります。
この不安定な時代を、自由に伸び伸びと生きていく。
そのために、本書はとてもためになります。
「お金に働いてもらう」という新たな発想。
私たちも、ぜひ、手に入れたいですね。
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