【書評】『継続する心』(山本昌)

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 お薦めの本の紹介です。
 山本昌さんの『継続する心』です。


 山本昌(やまもと・まさ)さんは、プロ野球・中日ドラゴンズのピッチャーです。
29年にも及ぶ現役生活で最多勝3回、沢村賞など数多くのタイトルを受賞され、213勝を挙げて名球会入りを果たし、日本球界を代表する選手です。

チャンスがめぐってきたときのために、いまを努力する


 山本さんは、高校時代はまったくの無名でした。
 しかし、ドラフト5位で指名を受け戸惑いながらもプロ入りを決断します。

 プロに入ってから数年間はまったくの鳴かず飛ばず。
 何度もクビを覚悟したといいます。

 入団5年目には、米国メジャーリーグの1A へ「島流し」にもされています。
 事実上の戦力外通告です。

 山本選手は、そんな崖っぷちの状況から這い上がり、現役最年長選手として30年目のシーズンを迎えようとしています。

 今日より明日、明日より明後日・・・。一歩でも半歩でも向上していくよう努力を尽くしてきた。ただ努力したからといって報われるとは限らない。チャンスがめぐってきたときのために、いまを努力するのだ。
 しめった薪は燃えない。くすぶって煙を出すことはあっても、燃え上がることは絶対にない。だから、いつかやってくる“種火”のために乾燥させておかなければならない。20代で燃え上がる幸運な人間もいれば、40代、50代になっても“種火”に恵まれず、寒風にさらされている人間もいる。そこでくさるか、あきらめるか、いつかのために備えるか。
 ここで人生は決まる。

  『継続する心』 まえがき より  山本昌:著  青志社:刊

 努力だけは人一倍やってきたという自負がある。野球に対して絶対に手抜きはなかったし、決して逃げ出さなかったという山本さん。

 その姿勢や意識が、球界を代表する名ピッチャーにまで成長させたのでしょう。

 本書は、山本さんが自らの半生を振り返り、「いつかめぐってくるチャンスのためにいまを努力する」ための方法や考え方をまとめたものです。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

つねに「次の目標」をつくる


 山本さんは、これまで2歳年上の工藤公康さん(元西武、ダイエー、巨人、横浜)を目標にしてプレーしてきました。

 その工藤さんが2011年に47歳で引退し、山本選手が現役最年長選手となりました。
 しかし、そこで満足して立ち止まることはありません。

 2013年は工藤さんを超えて、30年目のプロ人生を迎える。
 一つの目標を達成したら、その達成感に浸ることなく、すぐにもう一つ新しい目標をつくるようにしている。次の目標は、元阪急ブレーブスの浜崎真二さんが48歳4ヶ月で達成した「日本プロ野球史上最年長公式戦勝利」の記録更新だ。
 それよりもさらに大きい目標がある。「現役最年長であり続ける」ということだ。
 この目標を持ち続けたいという気持ちのほうが、いまは強くなってきている。これまで工藤さんがそうであったように、先頭を行く者としての、いわば「こだわり」だ。
 これからは、僕が試合に出るたびに記録が生まれる。投げるだけじゃない。極端な話だが、バントにしても、三振にしても「最年長記録」なのだ。
 中年世代の選手に対しては
 「マサさんが頑張っているんだから、俺たちだって」
 という励みになりたいし、若手に対しては「俺たちだって、頑張ればあの年までやれるんだ」という目標でありたい。
 そうとなれば、これから1年1年、1試合1試合、いや1球1球が勝負になっていく。毎年毎年モチベーションが高まってくるのは、年を重ねるたびに思いを新たにしてきているからだ。

  『継続する心』 第1章 より  山本昌:著  青志社:刊

 目標を立てると、それを達成したときに、燃え尽きたりして、歩みを止めてしまう人も多いです。

 つねに「次の目標」をつくって、そこに目を向けることが、やる気を長く保つコツなのでしょう。

短所を活かせば、長所に変わる


 山本さんは、投手としては致命的ともいえる身体のつくりの欠点がありました。

 股関節が外側を向いている、いわゆる「ガニ股」です。
 ガニ股だと、投げるときにヒザが外へ割れてしまうので力が逃げてしまいます。

 しかし、山本さんは、その「短所」をも自らの「長所」に変えてしまいます。

 では、なぜ大成できたのかといえば、ガニ股という「短所」のおかげである。ガニ股であったから、僕の決め球になるスクリューボールがマスターできたのだ。少し専門的な解説をすれば、力を逃がす球はよく曲がる。
 力を逃がすには、膝を外に開けばいい。膝を開いたほうがいいなんて言う野球人はたぶんいないと思うが、球をリリースする位置と、反対側の腰の位置が遠ければ遠いほど変化球は曲がる。
 ガニ股の僕は自然にヒザが外に開くので、スクリューボールに合っていた。ヒザが開くという致命的な欠陥が、スクリューボールには「長所」となったのである。
 (中略)
 ガニ股という短所がなければ、僕はこれだけの勝ち星をあげることができなかった。このことから「短所」は活かすことで「長所」に転じるということなのだ。

  『継続する心』 第1章 より  山本昌:著  青志社:刊

 人生、何が幸いするかわかりませんね。
 短所や欠点を嘆いても仕方ありません。

 それらをいかに活かして、長所や武器に変えていくか。
 そういう視点を持って努力することが大切だということですね。

変えていいもの、いけないもの


 ピッチングフォームというものは、知らず知らずのうちに微妙に変化していきます。
 いい方に変わっていればよし、もし妙な癖がついていたら、それは早いうちに直した方がいいとのこと。

 ただ、フォームを直す場合、絶対にいじってはいけない部分があります。

 たとえばピッチャーの場合、投げる側の腕は直してかまわないが、反対側は絶対にいじってはいけない。
 僕のようにサウスポーであれば、右の腕や体側をいう。反対側を「壁」と僕は呼ぶのだが、壁を放るときのタイミングに影響してくるからだ。
 投げる方の手の位置や角度は何度でも変えてもかまわないが、壁を変えてしまうとフォームがガタガタになってしまう。
 放るほうの腕を「家」とするなら、壁は家を支える「土台」と思っていただければいいだろう。壁がしっかりしていると、狙ったラインに乗れる。オーバースローだろうが、サイドスローだろうが、投げる腕は関係ない。

  『継続する心』 第3章 より  山本昌:著  青志社:刊

 自分を成長させるために、変化は必要不可欠です。
 しかし、何でもかんでも変えればいい、というわけではありません。

 何をするにも基礎となる「土台」はあり、それをいじるようなことをしてはいけません。

「変えていいもの」と「変えてはいけないもの」を峻別し、そこにこだわり続ける。
 それが、長く続けるための秘訣なのでしょう。

好調と不調をコントロールする


 山本さんは、自分には「スランプ」はないと言い切っています。

 それはシーズンを通して、不調か、よくて「普通」の状態で投げているため、それを「スランプ」と呼べば、プロ生活のほとんどがスランプになってしまうからです。

 山本さんは、不調の状態を「普通」と思い、それで勝ち星をあげるようでなければやっていけない、それがプロの世界だと述べています。

 プロ入りするような能力を持ったピッチャーは、好調であれば、全投手の3分の2は一軍で投げても6、7回まで完封できる。
 絶好調なら、完投・完封だってできるだろう。
 それだけの能力を持っている。不調の一軍エースと、絶好調の二軍ピッチャーが投げ合えば、二軍ピッチャーが勝つこともある。
 だが、何試合もやれば、不調であってもエースが確実に勝ってくる。ダルビッシュ有のようなレベルの投手であれば、絶不調であっても勝つだろう。配球の妙であったり、フライにしてアウトを稼いだり、何とかして勝利をものにしていく。
 僕たちプロ投手の目から見ていて、「あいつ、調子悪いのに勝ったな」というゲームはすぐにわかるのだ。
 ということは、調子が悪いときにどうやって勝つのか。好調も不調も、ましてスランプも関係ない。いかにして平均点をあげていくか。
 この一点でプロは評価されるのである。

  『継続する心』 第4章 より  山本昌:著  青志社:刊

 調子に左右されず、結果を出し続けることができること。
 それが一流のプロである証です。

 30年近く生存競争の厳しいプロ野球の世界を生き抜いてきた山本選手の言葉。
 だからこそ、説得力がありますね。

 調子が悪いときのパフォーマンスをいかに上げるか。
 コンスタントに高い平均点を維持するためにはどうすればいいか。

 そういう視点はつねにもっていたいですね。

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 今年、2013年に48歳を迎える山本さん。
 現役選手でいることにこだわる理由は、自分との戦いであると同時に、同世代の励ましを受け、それに応えたいという思いがあるからだとおっしゃっています。

 ドラゴンズに入団した30年前の初心にもどり、「今日」を始まりとしたいと決意も新たにされています。
 フレッシュさを忘れないことが若々しさを保つ秘訣なのでしょう。

 50歳を目前に、「いまが一番やりがいがある」と言い切る山本さん。
 これからのご活躍に期待したいですね。

 
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