【書評】『続けるスイッチの作り方』(松島直也)
お薦めの本の紹介です。
松島直也さんの『「やめた!」がなくなる 続けるスイッチの作り方』です。
松島直也(まつしま・なおや)さんは、国内で数少ないNLP(神経言語プログラミング)トレーナーの一人です。
NLPの創始者の一人である、グリンダー博士から直接トレーニングを受け、ビジネスパートナーとして活動するという貴重な経験もお持ちです。
無意識とうまく向かい合い「続ける力」を高める
NLPとは、1975年に米国で開発されたコミュニケーション実学です。
「天才と普通の人の違いは何か」
そんな疑問から研究をスタートさせ、天才が行なっている思考(イメージ、言葉)や無意識的な行動のプロセスを明らかにし、誰にでも活用できる手法として体系化したものです。
NLPでいう「コミュニケーション」とは、対人コミュニケーションだけではありません。
自分自身とのコミュニケーション、つまり、自分の無意識(本音)とのコミュニケーションも含まれます。
いかに自分の無意識(本音)とうまく向かい合えるかどうかが重要ということですね。
本書は、最新のNLPの理論を応用した「続ける力」を高める方法についてまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
「無意識(本音)」を無視すると行動ができない
私たちは経験することで、無意識にパターンを形成して活動しています。
例えば、朝起きて顔を洗う、というようなことですね。
繰り返し経験する中で、脳にプログラムが作られているので、意識しなくてもできるようになっています。
経験から作られる無意識のパターンの力は、私たちが思っているよりもずっと強力なものです。
私たちは、日常の活動を全て意識的に行なっている、と勘違いしがちです。それは無意識を自覚していないからなのですが、「続ける力」を発揮するのにも無意識の働きを無視しては思い通りにはいきません。
意志や思考、想像することは主に意識の役割領域です。一方、五感から情報を収集することは、主に無意識の役割領域です。ですから、無意識(本音)を無視してむりやり行動するのではなく、無意識(本音)を理解できれば、無理せずに「続ける力」を発揮できるのです。無意識(本音)を無視してしまうと一時的には実行に移せても元に戻ってしまいます。
『続けるスイッチの作り方』 第1章 より 松島直也:著 明日香出版社:刊
意識と無意識も人間関係と同様に、どちらかが一方的に押しつけられてもうまくいきません。
松島さんの提案する方法は、無意識との良好な関係を形成することで、無理をせずに行動力や「続ける力」を発揮するものです。
松島さんは、「続ける力」がないという人は、ほとんどが思い込みであると言っても過言ではない
と述べています。
つまり、「続ける力」がない、という無意識のパターンを変えることで、誰でも「続ける力」を持つことができるということです。
いきなり難しいことに挑戦しない
無意識には、ホメオスタシス(恒常性)と呼ばれる機能があり、今の状態を保とうという力がつねに働いています。
無意識のパターンに変化を起こそうとすると、必ず、この力が抵抗力として働きます。
習慣とはかけ離れていたり、自分にはないパターンなど、極端に違う行動をしようとしたり、取り入れようとしたりすると無意識は拒絶反応を起こします。自分の安全を守るためにです。
ですから本を読む場合でも、今まで習得してきた知識とは違った分野のものや、難解な専門用語が使われているものを読もうとすると拒絶反応が起きるので、情報を理解しにくく記憶にも残りにくくなります。
もし違った分野の本を読むならば、なるべく優しく、現在の自分で理解できるような本を選ぶのがポイントです。無意識の習性を知っていれば、このような判断もできるようになってきます。
新しい行動をする場合も同様です。日常と極端に違うことや難しいことをやろうとするのはやめた方が賢明です。少しだけ違うこと、少しだけレベルの高いことを取り込みましょう。『続けるスイッチの作り方』 第2章 より 松島直也:著 明日香出版社:刊
物体が空気中を進むときに空気から受ける物体の抵抗力。
それは、起こそうとする力が強ければ強いほど大きくなります。
無意識の拒絶反応も同じです。
まずは、無理なく進める程度の速度で動き始めるということが大事です。
松島さんは、無意識にとって少しだけレベルの高いことを知るには、「自分の感情と体の反応」を確かめることが大事だ
と述べています。
「これならできる」と思えるくらいが、ちょうどいいレベルの高さです。
なぜその行動をするのか自問する
無意識は、「心の本音」です。
無意識とのコミュニケーションは、自分に対する理解を深めることでもあります。
そのためには、自分自身のとった行動の意図を明確化することが重要です。
意図を明確化するには、行動しようと思っていることを自問することで明らかになります。
脳には、質問をするとその質問に対しての自動的に答えを返す働きがある
からです。
意図を明確にするための質問は、「何のためにそれをしようと思っているの?」という非常にシンプルな質問をすればいいのです。
しかし、自問しはじめの頃は、「意図(直接の動機)」ではなく、「メリット(間接的な動機)」が出てくることが考えられます。メリットは表面的なものなので、すぐに思いつきそうなものが出てくるのです。しかし、何度か繰り返し自問することで、本質的な次の「意図」が明らかになってきます。
例えば、私の場合、朝にウォーキングしたいなーと思ったわけですが、そこで、「何のためにそれをしようと思っているの?」と自問します。「ストレスを解消するため」などの答えが返ってきます。
次に「ストレスを解消するのは、何のためにしようと思っているの?」と、自問を重ねます。「ストレスを解消することで、心がいい状態になり、いいアイデアが出てくるから」と返答が返ってきます。
さらに「心がいい状態になり、いいアイデアを出すのは、何のためにしようと思っているの?」と自問します。「いい状態をもって、ビジョンを描き、今日1日に実現したいことが明らかになるから」と返答が返ってきます。
(中略)
このように自問を重ねることで肯定的な意図が明確になっていきます。このように質問を行うと、願望や夢が膨らむので慣れてくるととても楽しい気分になります。試してみてください。『続けるスイッチの作り方』 第3章 より 松島直也:著 明日香出版社:刊
自分の行動に隠されている真の意図は、なかなか自分でも掴めていないものです。
簡単で誰でもできるので、ぜひ試してみたいですね。
行動の最低ラインを設定しておく
松島さんは、実際にある行動を習慣づけようとしたとき、その行動の「最低ライン」を予め設定しておくことが重要
だと述べています。
計画を立てても予定通りに進むとは限りません。計画に柔軟性を持たせるためには、最低ラインを決めておき、それができればOKとするのです。
調子が良ければ計画通り、またはそれより多少多くの行動を試してみてもいいかもしれません。しかし基本的には、精神的に余裕を持たせるような行動の最低ラインを決めておくと、楽しく続けやすくなります。私は家から事務所まで片道50分を毎日ウォーキングしています。
線路沿いに歩くのですが、「ひと駅歩けばOK」と最低ラインを決めています。
調子が悪いときには、電車に乗ってもOKです。ひと駅歩いたときに、次の駅までは行けそうだと思えば行きます。さらに、次の駅までも行けそうだと思えば行きます。しかし、辛かったらいつでも電車に乗ってもいいというようにしておくわけです。たったひと駅だけでも歩けたらOKなのです。そうすることで、継続できないということがなくなります。最低ラインを決めておかないと、「歩く」か、「歩かない」かという選択になりがちです。
しかし最低ラインを決めていると、ひと駅歩くのか、2駅歩くのか、最後まで歩くのか、というように歩くことが前提となり、歩かないという可能性が思い浮かばないのです。少しの努力を自分で認めてあげると、自己評価が高まりいい気分になります。最後まで歩ければ大満足となり、さらにいい気分になります。
0か100という極端な結果ではなく、「どれだけプラスできたか」だけなのです。『続けるスイッチの作り方』 第4章 より 松島直也:著 明日香出版社:刊
続けるためには、「やった」という事実を積み重ねが、何よりも重要です。
そのためには、「白」でも「黒」でもなく、「灰色」の部分が大事です。
「ON」と「OFF」がはっきり決まっているデジタル式ではなく、微妙なさじ加減が調整できるアナログ式。
その方が、人間の脳には馴染みやすいということでしょう。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
私たちは、何かを続けようとするとき、つい、自分の「弱い心に打ち勝って」とか「自分自身と勝負する」という考えを持ちがちです。
しかし、それはNLP理論の考え方では、自分の無意識とのコミュニケーションがうまく図れていない、ということになります。
「自分の敵は自分」
たしかにその通りかもしれませんが、その「敵」を作り出しているのは「自分」である、といえます。
無意識を「敵」に回すか、「味方」につけるか。
それは自分の考え方次第です。
協力してもらえば、これほど力強い援軍はありません。
本書の内容を普段の生活で実践し、無意識と仲良く協力していきたいですね。
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