【書評】『リーダーの伝え方』(吉田幸弘)

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 お薦めの本の紹介です。
 吉田幸弘さんの『部下がきちんと動く リーダーの伝え方』です。

 吉田幸弘(よしだ・ゆきひろ)さんは、コミュニケーションデザイナー、人材育成コンサルタントです。
 人材育成、売上改善の方法を中心としたコンサルティングの分野で幅広くご活躍されています。

「伝わらない」には、理由があった!


 吉田さんは、初めて管理職になったとき、場当たり的で独りよがりな指示を出し続け、チームを混乱させてしまいます。
 部下の心は離れ、チームの成績も低迷。
 とうとう降格となり、部署も移動となってしまいます。

 しかし、この異動が吉田さんのコミュニケーションの取り方を変える、大きな転機となりました。

 その異動先の上司が、伝え方が非常に上手な方だったのです。このときはじめて、自分のコミュニケーションのとり方が、大間違いだったことを自覚しました。
 猛省した私は、その上司を手本に、さらにはコーチングを学び、本を読み、外部のセミナーにも通うなどをして、伝え方の勉強をするようになったのです。

 学んでいくうちに、いかに私の「伝え方」がよくなかったかに気づかされました。
 それまでは、営業でお客様を訪問しても、一方的に話をしていました。会社の説明や商品の話を長々とするので、相手が商談中にあくびをしてしまうこともあったのです。その割には、大事な部分をきちんと説明できず、クレームになることもありました。

 それが「伝え方」を学んでからは、お客様とのコミュニケーションが格段によくなったのです。
 結果、新規のお客様も増え、既存のお客様が勝手に別のお客様を紹介してくれるようになりました。気づけば、営業成績は5ヵ月連続トップになり、課長に再昇格できたのです。
 さらに課長としてもチームをトップに引き上げ、MVPまで獲得しました。何より部下が思う通り動いてくれるので、ストレスもなくなったのです。

 『リーダーの伝え方』 まえがき より 吉田幸弘:著 明日香出版社:刊

 チームのパフォーマンスを飛躍的に伸ばした、部下を思い通りに動かす「伝え方」。
 そこには、どんな秘訣があるのでしょうか。

 本書は、すぐに実践できる「わかりやすい正しい伝え方」のノウハウをまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「伝えたつもり」と「伝わる」は違う!


 伝えたつもりなのに、きちんと伝っわっていなかった。
 そんな経験は、誰にでもあるでしょう。

「伝える」だけでは、コミュニケーションは成立しません。
「伝える」と「受けとる」がセットになって、はじめて「伝わる」になります。

 例えばキャッチボールをしているとします。相手のいる方向にボールを投げれば、相手はボールをキャッチすることができ、「伝わる」になります。一方、自分勝手に相手のいない方向にボールを投げても、相手はとることができません。これは「伝えたつもり」になっているだけの典型と言えます。
 リーダーは部下よりも業務や知識や経験も豊富ですから、こんなの分かるだろうと一方的に「伝えたつもり」になってしまいがちです。部下の目線とかけ離れているのです。

 私がかつて旅行会社で新人だった頃、課長から「エアーのリザーブは済んだか? ホテルはアーリーチェックインは可能か?」と聞かれたことがありました。しかし、さっぱり意味が分かりません。
 当時、課長にどういう意味なのかと聞くのが怖かったため、知ったかぶりをして、あとで優しい先輩にこっそり聞いていました。伝わっていなかったのです。
 業界の専門用語は、新人の場合あまり分かりません。ちなみに「エアー」は「航空機」の意味であり、「リザーブ」は「予約」を指します。「アーリーチェックイン」は、「チェックインを早めること」です。

 つい、リーダーは自分か慣れた言葉を使ってしまいます。しかし、リーダーと部下はものさしが違います。仕事における経験もスキルも違います。だから、伝わりにくいのです。
 大切なのは「何を伝えたか」よりも、「どう伝わったか」「相手がどのように受け止めたか」です。相手に「伝わる」ようにするためにも、相手の反応に注意しましょう。また、できるだけ分かりやすい言葉を使って伝えるようにしていきましょう。

 もし、「伝わっていないかもしれない」と思ったら、部下に確認し、言葉を換えてもう一度説明してください。

 『リーダーの伝え方』 第1章 より 吉田幸弘:著 明日香出版社:刊

「伝わる」指示とは、相手目線での指示です。

 相手の理解力、経験、立場などを理解した上で、その人に合った言葉を選ぶ。
 そうすれば、「伝えたつもり」もなくなりますね。

「伝える」と「受けとる」がセットになって、はじめて「伝わる」。
 指示する立場の側こそ、しっかりと頭に刻み込んでおきたい言葉です。

「優先順位」ではなく、「劣後順位」を明確にする


 上司は、新しい仕事を頼むとき、取りかかる順番と期限を定める必要があります。

「なるべく早くやって」

 このような曖昧な指示ではいけませんね。

「急ぎでないから空いた時間にやっておいて」と頼んだ仕事が、1週間後に部下に確認したらやってなかった、ということもあるでしょう。でもそうなる原因は、部下ではなくリーダーにあります。

 では、どのように伝えればいいのでしょうか。
 そもそも部下に物事を伝えるとき、多くの人は優先順位を気にします。しかし、「劣後順位」を決めることのほうが重要なのです。この仕事はやらなくていいと、部下に明確にしてあげるのです。
 目の前にあるさまざまな業務をその重要度や緊急度で比較し、まずやるべきことから順に進めていくというのが優先順位です。
 リーダーともなれば、仕事の優先順位を的確に判断できますが、経験の浅い部下からすると、何でもやらなければならないと思ってしまいます。しかもリーダーからの仕事は、すべて優先順位の高いものだと判断してしまうのです。だから消化不良を起こして、期限までにできない仕事が出てきてしまうのです。

 リーダーが部下に仕事を与えるときには、必ず「劣後順位」を明確にしてあげてください。TODOリストと正反対の“やらないことリスト”をつくって、「無駄なこと、余計なことをやっていないな」とチェックするのもいいでしょう。
「1つ仕事を増やしたら、1つ減らす」、「優先順位の高い仕事を1つお願いしたら、劣後順位の高い仕事を1つつくる」くらいの考えを持つべきです。

 『リーダーの伝え方』 第2章 より 吉田幸弘:著 明日香出版社:刊

 部下は、上司からの仕事をすべてこなそうとし、目の前の作業で手一杯なことも多いです。
 そんなとき、「この仕事は後回しでいい」と言ってもらえると、部下も精神的に余裕が出ますね。

「1つ仕事を増やしたら、1つ減らす」
 上司の方こそ、心にゆとりを持って、指示を出せるようにしたいですね。

納得できない指示を部下に伝えなければならないとき


 リーダーには、上層部から発せられるメッセージを翻訳して、部下に伝えるという役割があります。
 ときには、納得できない指示や方針を部下に伝えなければならないこともあります。

 ここで事例を用いながらお話していきたいと思います。
 以前、私が在籍した会社で、新商品開発のプロジェクトリーダーをしていたときのことです。部下と外部の協力会社などを巻き込みながら、話を進めていきました。いい商品になりそうだから必ず売れるだろうと、メンバーは皆いきいきと仕事を進めてくれていたのです。
 そんなとき、リーマンショックの影響でいくつかのクライアントが取引を縮小してきました。会社の売上は大幅な減少となったのです。それを踏まえて、経営陣から「今回のプロジェクトは中止せよ」との通達がきました。

 当然、私は納得できませんでした。部下と協力会社にどのように頭を下げたらいいか悩みました。部下は毎日、夜遅い時間まで活動してくれていたのです。
 これを上層部の指示に従って、「リーマンショックの影響で、会社がダメと言っているから、このプロジェクトを中止しよう」と言っても、部下は納得しません。リーダーである私に対しても、「ただの会社の言いなりじゃないですか。自分の意見はないのですか」と軽蔑され、今後の士気にもかかわってきます。下手をすると、誰も私の言うことを聞いてくれなくなるかもしれません。
 だからといって、上層部がダメと言っていること続けさせることはできません。一生懸命翻訳する手段を考えたのですが、そもそも自分がこのプロジェクトを止めることに反対なので、うまく伝えられません。

 考えた私は、「この方針は自分の本意ではない」と伝えました。自分の本意ではないことを伝えることで、自分の立場を明確にしたのです。
 しかし、伝えたからには、実行は率先垂範(そっせんすいはん)でしなければなりません。協力会社にもできるだけ一緒に謝罪に行くと部下に話しました。

 部下は納得してくれました。そして一生懸命に働いてくれました。このとき、私が「会社の指示だし、言っていることは分かるんだ。売上が大変なときに投資を続けるのはよくないから」などと、都合よく翻訳していたら、部下は納得してくれなかったでしょう。

 納得できない指示、方針を部下に伝えなければならないときは、「本意ではない」ということを伝えてもいいのです。しかし、その分、自分が率先垂範して動かなくてはなりません。

 また、納得できない方針で、部下に伝えなくても業務が回るものは、伝えないというのも選択肢に入れてもいいと思います。無駄に心配を煽(あお)るのはよくないからです。

 『リーダーの伝え方』 第3章 より 吉田幸弘:著 明日香出版社:刊

 言いにくいことほど、包み隠さずに本音で話すこと。
 それが相手の信頼を得るための重要なポイントです。
 もちろん、上司と部下の関係でも例外ではありません。

 自分の言葉で話し、それを行動で示すこと。
 リーダーの立場の人は、つねに意識しておきたいですね。

褒め上手になるための5つのポイント


 部下を育てるには、「褒める」ことも必要です。
 吉田さんは、“褒め上手”になるためのポイントをいくつか挙げています。

1具体的事実を褒める
 よく使ってしまうのが、「頑張っているね」「最近すごいね」などの言葉です。
 私は単純な性格なので、リーダーからこのように認められると嬉しく思っていましたが、そうでない人もいます。なぜなら、根拠がないからです。根拠がない褒め言葉は、「おだて」と思われてしまうのです。
 ですから、必ず具体的な言葉を使って褒めるようにしましょう。
 例えば、次のような褒め方がいいでしょう。

「新規顧客の獲得数が、先月の3件から今月はもう5件になっているね」
「この企画書のチャート図が、すごく分かりやすいね」

 これなら事実なので、部下も抵抗なく、褒め言葉を受け入れてくれるでしょう。

2肯定的な相づちを打つ
 何気なく使っている「相づち」にも褒め言葉があります。私はこれを「さ行褒め言葉」と言っています。

  • さすが
  • 知らなかった
  • すごい
  • せっかくだから教えて
  • そうくるか/それはすごいね/そんな考え方もあるね
 どれも嬉しく感じませんか? これらの肯定的な相づちを使うだけで、部下は褒められている感じます。ただし、相づちだけでは嫌がる部下もいるので、さらにひと言付け加えるようにしましょう。
  • さすが! 今月もチームトップだね!
  • 知らなかった。次回プレゼン資料をつくるとき、その機能使ってみるよ
  • すごい! さっき頼んだばかりなのにもうつくってくれたんだ!
  • 面白そうな案だね。せっかくだから教えてよ
  • 住宅メーカーへのアプローチか。そんな考え方もあるね
 逆に使わないほうがいいのは、否定ワードの「でも」「どうせ」「だからさあ」「それは違うよ」などです。
 ちょっとした相づちですが、肯定的なものは効果抜群です。

3成長を褒める
 部下の過去と比較して、改善できている部分を褒めましょう。

「お客様へDMを送るときの手紙文が非常に読みやすくなったね」
「入社して半年、お客様とのやりとりが流暢(りゅうちょう)になったね」

 少しでもよくなっている部分があったら、褒めるようにするのです。実はよくなっているということを本人が気づいていない場合があります。それはもったいないことです。そこを気づかせてあげれば、本人のモチベーションは高まります。

4年上の部下や気難しそうな部下には質問しながら褒める
 年上の部下や気難しそうな部下に、例えば「企画書のつくり方が上手ですね」「プレゼンが上手ですね」といった褒め方をすると、「お前に言われたくないよ」「調子がいいな」と逆に反感を買ってしまうかもしれません。
 そこで、「どうしたら、そんなに分かりやすく企画書をつくれるのですか」「どうしたら○○さんのようなプレゼン資料をつくれるようになるのですか」と質問形式で褒めるのです。
 たいていの人は教え好きです。しかも「教えてください」というような質問をされると、自尊心が満たされます。「教えて」と言われて嫌な気持ちになる人は、ほとんどいないでしょう。
 質問形式で褒めるのは効果的です。

5数字を使って褒める
 論理的に物事を考える部下に対しては、数字を使って褒めると効果的です。数字は根拠になります。
 例えば、「不良品の発生率が20%から15%に下がりましたね」、「リピート率が30%から40%に上がりましたね」などと数字を使うことで、納得してもらえます。

 『リーダーの伝え方』 第6章 より 吉田幸弘:著 明日香出版社:刊

 部下は、上司の何気ないひと言がとてもうれしく感じるものです。

「こんなことは、わざわざ褒めなくても・・・・・」

 と面倒くさがらずに、どんどん声をかけていくようにしたいですね。

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 会社は組織ですから、「チーム」で結果を出す必要があります。
 メンバーが同じベクトルを持ち、協力し合いながら目標を達成していく。
 そんなチームが、大きな成果を上げる「強いチーム」になります。

 チームを一つにまとめるために、欠かせないのが「コミュニケーション」です。
 なかでも、とくに重要なのが、リーダーと他のメンバーとの意思の疎通です。
 ここがうまくいかないと、個々の力がチームに還元されません。

 上司も、かつては自分の部下と同じポジションにいたはずです。
 しかし、立場が変わると、そんなことはすっかり忘れて、自分の都合のいい解釈をしがちです。

 指示が伝わらないのは、指示する側に問題がある場合がほとんど。
 部下とのコミュニケーションに悩む、すべてのリーダーに読んで頂きたい一冊です。


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