【書評】『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 』(藤本靖)
お薦めの本の紹介です。
藤本靖先生の『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』です。
藤本靖(ふじもと・やすし)先生は、「ロルフィング」という米国生まれのボディワークのセラピストです。
ロルフィングは、『筋肉や骨を包みこんで身体全体を一つにまとめあげている「筋膜」という組織に働きかけて、重力と調和のとれた身体を目指す』ための手技療法です。
「疲れない身体」になるためには?
「最近なんだかよくわからないけれど、疲れがとれない・・・」
そう感じる方は、意外と多いのではないでしょうか。
藤本先生は、疲れがとれないのは年齢のせいではなく、身体の「センサー」の使い方の問題だ
と強調します。
センサーとは、目・耳・口・鼻などの感覚器官のこと
です。
その他にも、筋肉や内臓、皮膚にもセンサーはあります。
これらのセンサーがうまく働かなくなると、身体は緊張して固くなります。
なぜ、センサーがうまく使えないと、身体は緊張するのか。
その理由について、藤本先生は、グラグラする身体を安定させるために余計な力を使って踏ん張ってしまい、無駄なエネルギーを使うことになるためだ
と説明します。
つまり、センサーがうまく機能しないと、自分の身体が「ブレる」ことになります。
身体が「ブレる」と、つねに緊張を強いられて、結局は疲れてしまいます。
高いパフォーマンスを発揮できる人のことを、「あの人はセンスがいい」といいます。
この「センスがいい」とは、「センサーをうまく働かせている」状態ともいえます。
本書は、「センサー」の使って「疲れない身体」を作る具体的な方法やワークをまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「身体の芯」がゆるむ、とは?
身体の芯にある緊張の原因は、身体の内外にある、情報を取りいれるセンサーの緊張にあります。
身体の不調を治すには、それをゆるめればいいということです。
「身体の芯」とは、身体の内臓空間およびその周辺部分のことです。内臓空間は、上はのどの上側にある蝶形骨(ちょうけいこつ)という骨から始まり横隔膜を経由して骨盤底まで続きます。
蝶形骨とは頭蓋骨のセンターにある蝶の形をした骨で、脳をのせるお皿のような構造をしています。整体やボディワークでは、身体全体のバランスを調整する大事な骨とされています。
横隔膜はみぞおちの奥にあるドーム形をした筋肉で、呼吸をする上で大事な役割を果たしているということは皆さんもご存知だと思います。
骨盤底は股にあるハンモック形の筋肉群でお腹の内臓を支えています。お相撲さんのまわしの股の部分です。
これらの3つの組織は膜を介して内臓空間をつくっています。
その中でも蝶形骨は特に「頭の芯」といえます。
目耳口鼻など感覚器官のほとんどは、首から上に集中しています。そしてそれらの器官の緊張は「頭の芯」である蝶形骨を介して、「身体の芯」である内臓空間に伝わり、さらには身体全体の緊張につながるのです。『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本』 プロローグ より 藤本靖:著 さくら舎:刊
目・耳・口・鼻などの顔の感覚器官の緊張が、身体全体の緊張となって現れるメカニズムがよくわかりますね。
キーになるのは、頭蓋骨のセンターにある「蝶形骨」という骨です。
下の「両耳を引っぱることで身体の芯がゆるむ」エクササイズも、この「蝶形骨」をゆるめるためのものです(下図を参照下さい)。
(『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 』 P21 より抜粋)
「アゴの力」を抜いて身体の芯をゆるめる方法
蝶形骨は、気道、食道などを取り囲む筒のような膜構造を介して横隔膜につながっています。
蝶形骨が変位すると、この膜構造が緊張して横隔膜の運動が制限され、筋肉が緊張しやすい状況になります。
蝶形骨は、「耳」以外にも、「目」「鼻」「口」とも関係が深いです。
そのため、この蝶形骨から横隔膜へのつながりは、身体の健康にとって、非常に重要なポイントです。
藤本先生は、「アゴ」のゆるめ方について、以下のように説明しています。
まず、立った状態から楽にできる範囲で前屈してみてください。
どのくらい前にかがむことができるか、身体の柔軟性はどうかなどを覚えてください。
今度は左右どちらかの奥歯に割り箸をくわえて前屈してみてください。
身体が柔軟になってかがみやすくなったことに驚いたのではないでしょうか?
アゴが広がってゆるむと、身体もゆるむことが実感できたはずです。今度は仰向けに寝た状態で、割り箸を奥歯に挟んでください。しっかりアゴを開きたいので縦方向に挟みます。
挟んでしばらくリラックスして、自分が今行っている呼吸を感じながら身体の変化を観察してください。
どんな感じがしますか?
アゴの奥が開いて、くわえた側のこめかみ周辺の筋肉がひき伸ばされている感覚があるはずです。その感覚を味わっていると、首筋や肩、股関節あたりまでゆるむ感じが広がってきます。
片側のアゴをゆるめたら、一度立って身体全体の感覚を確認してみましょう。
ゆるめたアゴ側の身体全体がゆるんで、そちら側の脚がバランスよく立てているのがわかるでしょう。『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本』 第1章 より 藤本靖:著 さくら舎:刊
アゴに力が入っていると、身体全体も緊張してスムーズな動きができなくなります。
このエクササイズは、アゴの緊張が強くて口を開けにくかったり痛みがある方、あるいは肩や首の緊張が強くてなかなか抜けない人にも効果があります。
楽に座るには「脚の使い方」が大事
現代では、仕事でパソコンを使用する機会も多くなっています。
一日座りっぱなし、という方も多いのではないでしょうか。
楽に座るポイントは、「お尻だけでなく、両脚を含めた3点で身体を支えるようにすること」です。
「座っているのに脚も支えとして参加している」
そんな感覚を簡単に体験するためのワークが、「お尻だけにかかっている重心を足裏にも移していく」方法です。
お尻から重心を脚に移していくためには、骨盤が椅子の上で自由に動けるようになる必要があります。
お尻(座骨)に全部の重さをかけたままだと、骨盤は動かしにくいのでちょっとした工夫をします。両手を太腿(ふともも)の裏側、座骨より少し膝よりの部分と座面の間に挟むようにして入れて下さい。
骨盤が前後に動きやすくなったのがわかりますか。
これだけで背中や腰が軽くなった感じがする方もいるはずです。
骨盤がなめらかに前後に傾く動きができるようになるのを確認したら、そのままゆっくりと身体を前に傾けてください。いわゆる「お辞儀(じぎ)」の動きです(下図a)。
このとき肩や背中など身体全体の力を抜いて、その重さを足裏で受け取るような感覚を持ってください。
膝の真下に足裏の土踏まずがくるようにして、脛(すね)がまっすぐ立つようにします。
そして、ある程度前にかがんで足裏にしっかりと重さがかかったら、今度は足裏で地面を踏んで身体をゆっくり起こしてきてください(下図b)。
このとき、背中の力を使って身体を起こさないようにしてください。
骨盤から上は脱力したまま、足裏で床を押す反作用で身体が起こされてくるのを感じながら、ゆっくりと戻ってきてください(下図c)。
両足裏とお尻の3点で身体(頭~骨盤)を支えているのが感じられますか?
お尻に座り込んでいたときに比べると上半身の力が抜けて、脚を含めた下半身がどっしりしているはずです。
この状態では、脚を組んだり、貧乏ゆすりをするという気はまったく起こらないはずです。『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本』 第2章 より 藤本靖:著 さくら舎:刊
座っている姿勢で胴体がつながっている。
そのことは、脚を介して身体が地面とつながるということも意味します。
いわゆる、「地に足がついた状態」です(下図を参照)。
自分を支えるために地に足がついていることは、たいへん重要です。
それがあると安心するし、ないと不安になります。
一日のうちで座っている時間は想像以上に多いです.
「楽に座る方法」をしっかり身体に覚え込ませておく。
そのことが、身体を疲れさせず、「センサー」のうまく働かせるために欠かせないということです。
(『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 』 P87 より抜粋)
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
身体の各器官は、頭の先から足の先まで、しっかりつながっています。
どこかの器官の働きが悪くなれば、その影響は他の器官にも及びます。
大事なのは、「身体の芯がゆるむ」こと。
そのためには、目や耳などの感覚器官の緊張を取り除き、働きを良くしておくことが不可欠です。
「身体の芯がゆるむ」というのは、感覚的なことで、なかなか感じるのが難しいです。
藤本先生は、大事なポイントは、「自分の中で起こる小さな変化を信じてみる」こと
だとおっしゃっています。
「なんとなく、ゆるんだ気がする」
そんな感覚を大事にすることが、このワークを続けていくコツです。
本書のワークを実践して、自分の身体の中に眠っていた「感覚」を取り戻す。
健康的な「疲れない身体」を手に入れたいですね。
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