本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『媚びない人生』(ジョン・キム)

 お薦めの本の紹介です。
 ジョン・キムさんの『媚びない人生』です。

 ジョン・キム(@kimkeio)さんは韓国生まれで、19歳の時に日本に留学、以降アジア、アメリカ、ヨーロッパ等3大陸5カ国を渡り歩いた経歴の持ち主です。
 メールマガジンなどで独自の人生哲学を展開、特に30代以降の若い世代で大きな支持を集めている注目の思想家の一人でもあります。

「内面の革命」を起こせ!

 今どきの日本の若者は冷めていて、自分の将来について悩んだり、熱く考えたりすることはないのではないか。
 そのように思われがちです。

 しかし、キムさんは、自分が受け持っている大学でのゼミの講義などで、学生たちとじかに接し、彼らも激しく苦悩し、漠然とした不安と戦っていると感じました。

 若者たちのそのような姿は、「青春そのものの姿」であると共感を覚え、自分が今、苦悩していること、さらには社会や未来と戦っていくことそのものが、実は大いなる成長の糧になると歓迎します。

 キムさんが孤独と向き合って得たもの、それは「内面の強さ」でした。

 キムさんは、孤独な体験や苦しい体験は、後の自分を強くし、幸せにしてくれると確信しています。
 大事なのことは、自然体で生きていくこと。自分らしい人生を生きていくことです。

 社会に革命を起こすことは難しく、時間がかかるものです。
 しかし、内面の革命は、誰でも今この瞬間にスタートできます。

 キムさんは、内面とは、「感情」「思考」「言葉」「行動」の4つで構成されていると述べています。
 そして、内面的なこの4つの強さがあれば、自然体になれると指摘します。

 本書は、キムさんが5カ国を渡り歩き、孤独の中、自らと向かい合うことで得た、自分を強くする「内面からの革命」を起こすためにすべきことをまとめた一冊です。
 その中からをいくつかピックアップしてご紹介します。

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「自然体」であれ!

 人は、成長して周りに評価されたり形容される中で、社会的に生きやすい自分を作り上げていきます。
 キムさんは、それを「ペルソナ」と呼びます。

「本来の自分」は、まだ社会性を持っていない「幼児の自分」です。
 つまり、何にも縛られず、制限されていない自分のこと。

 社会に出ると、自然体の「本来の自分」と、「今の自分」にギャップがあることに気づかされます。
 しかし、多くの人は、そのギャップに気づかないふりをして、「ペルソナ」で自分自身を覆ってしまいます。

 不自然でいることは、社会の中では、自然なことでもあるということ。
 キムさんは、「ペルソナ」を築くこと、すなわち、自分を失わせ、社会性を持たせることは、実は不安を消し去ることでもあるので、ある意味楽なことだと指摘します。

 逆にいえば、自然体でいること、内面と外面を一致させるためには、たいへんな努力が必要になるということである。社会で生きながら自然体でいることは、本当はすごく難しいこと、意識的に努力しなければならないことなのだ。
 だからこそ、そのためにはどうすればいいか、を考える必要がある。私がたどり着いた最終的な結論は、強さがなければいけない、ということだった。内面的な強さ、すなわち先に挙げた感情、思考、言葉、行動の4つの力である。そしてこの強さを身につけていくためにも、大切な認識がある。忍耐が求められるということだ。それを理解しながら、時間をかけて内面的な成熟、強さを培っていくことである。

 自分に強さがないうちは、自然体とは違う反応をしてしまう。本当はそうは思っていないことに相づちを打ってしまったり、上司に媚びた言葉を使ってしまったりする。しかし、内面的な強さが生まれれば、そういう行動はなくなっていく。相手を包み込むような行動ができるようになるし、未来に怯えることもなくなる。ペルソナのかりそめの人生の持つニセモノの穏やかさではない、本当の穏やかさを手に入れることができる。

 まず今、やるべきことは、実は内面と外面が離れていること、ギャップがあるということを認識することである。そして、それを一致させるために、もっといえば、子どものとき、生まれたときの自然体としての自分に戻すために、自分は何をすべきかを考え、その取り組みを進めることである。
 自然体になるのは、簡単ではない。時間がかかるかもしれない。しかし、それを成し遂げられたなら、そこから本当の自分の人生を始められる。社会によって乱された自分を、本当の自分に戻すのだ。 

 『媚びない人生』 第一章 より  ジョン・キム:著  ダイヤモンド社:刊

 キムさんは、自然体で生きていく境地を一言で表すと「穏やか」だと述べています。

 静かで海のようなイメージが広がり、何が起きても揺るがず、いつも平常心でいられる。
 穏やかとは、そんな乱れない感情を持った状態を指します。

「自然体」を体得し、感情の乱れがなくなると、すべての瞬間に幸せを感じられます。
 自然体になるのは、簡単ではありませんが、不可能でもありません。

 自然体だった、子どもの頃を思い出せばいいだけです。
 まずは、そのときの自分と、今の自分の間のギャップを自覚することからですね。

「従順な羊」ではなく、「野良猫」になれ

 キムさんが抱いた、日本の企業で働く人々に対する印象。
 それは、これほどまでに「従順な羊」が多いのかということです。

 本当は、自由に飛び回る「野良猫」になりたいのに、従順な羊のままでい続けている。
 そんな人が驚くほど多い印象があると述べています。

 キムさんは、その理由を2つ挙げています。

 一つは、「野良猫になるための努力が不足していたこと」
 もう一つは、「権威に対する意識を必要以上に大きくしてしまったこと」です。

 野良猫というのは、自由で独立した存在である。飼い主はいるが、縛られない。餌はもらい、愛嬌も振りまくが、魂までは売らない。いつでも飛び出す気持ちを持っていて、でも今は飼い主にきちんと貢献する。

 実際のところ、野良猫のような存在は日本の高度成長時代には評価されなかった。一部はそういう人たちがリードした面もあるけれど、大多数の人々は従順な羊になることによって、組織は成長し、国家は繁栄した。結果として、中流の生活を手にすることができた。たしかに、従順な羊になる理由があった。
 しかし、今は時代がすっかり変わってきていることに留意しなければならない。たとえ、会社のムードが従順な羊でいっぱいになっていたとしても、騙されてはいけない。従順な羊になってしまうと、経済的にも、社内評価にも、プライベートにしても、幸せになれるような時代ではなくなっているのだ。そのことに気づいている人も多い。

 むしろこの先は、野良猫的な「出る杭」になることは必須条件になっていて、出る杭にならないと雇用が危うくなるような時代に入っていく。目指すべきは、野良猫的な意識であり、出て行くかどうかは別にして、いつでも組織を出て行ける力を持つことである。自分の力だけで勝負ができる自分を少なくとも目指し、日々を過ごしていくことが大切になってきているのだ。
 そして企業でも、自己を持ち、自分の力を身につけた多様な人材が協力しあってシナジーを発揮するような組織が求められるようになっている。必要なのは、野良猫的な能力や感覚なのである。自分の意志を持たない、群れから離れたら自分では生きていけないような従順な羊は、その存在意義をすでに失っているのだ。この流れに気づいておかなければならない。

 『媚びない人生』 第二章 より  ジョン・キム:著  ダイヤモンド社:刊

 これからの時代、必要とされるのは、野良猫的な「出る杭」です。

 組織や権力に依存することなく、自ら考え、行動する。
 それができる人が評価される世の中になっていきます。

「自分は、どこに行っても、誰と組んでもきっちり結果を出すことができる」

 そんな自信をもてるくらいに自分を磨いていきたいですね。

「肯定オーラ」の起点となれ

 同じ物事を目の前にしたとき、ネガティブな捉え方をする人と、ポジティブな捉え方をする人がいます。
 不満や反発、反感や言い訳、愚痴などに満ちたネガティブな人に対して、好印象を持つ人は少ないです。

 逆に、ポジティブな物言いをする人からは、学びの姿勢が感じられます。
 謙虚に、前向きに物事を捉える人からは、感化されるものです。

 ポジティブな捉え方を心がけるのはもちろん、キムさんは、さらにもう一歩、踏み込んだ意識をもってほしいと強調します。
 その意識とは、「肯定のオーラの起点となること」です。

 人間が人から学ぶ姿勢は極めて重要である。しかし、ある程度、成長したら、学ぶという謙虚な姿勢のみならず、何かを人に対して与えていくという姿勢が大切となる。それは自分自身を成長させることであり、周囲からの信頼を高めることにもつながる。
 だからこそ、知識のみならず、様々なことに関して、何らかの形で周りに与えていくという姿勢を、使命として、責任として持っていてほしいのだ。

 いつまで経っても学ぶだけの人は、それだけの存在で終わってしまう。そこから一歩踏み出してほしいのだ。他者のために与えるには、自分をどうするか。与える喜びを感じる人になることだ。
 実際、学びの姿勢も持ちながら、人に肯定のオーラを広げていく人たちがいる。そういう人は、ネガティブなこと、後ろ向きなことは絶対に言わない。批判はしても、必ず代案を出す。批判するアイディアがどうすればいいアイディアになっていくか、ステップを明示する。一見、攻撃するように見えたとしても、プラスαを加えることで、肯定の成長へとつなげていくことができる。

 『媚びない人生』 第六章 より  ジョン・キム:著  ダイヤモンド社:刊

 教えることで、人は多くを学ぶことができます。

「多くを得たいのなら、多くを与えなさい」

 この言葉は、世の中の真理でしょう。
 いくつになっても、「肯定オーラ」を持ち続け、謙虚な気持ちで学び続けたいですね。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 本書は、20代以降の若者世代をターゲットに書かれたものです。
 まだ社会の常識に染まりきらない若者には、自分を取り戻し、本当の強さを得るための、これ以上ない刺激になるでしょう。

 しかし、私のような30代の中堅世代が読んでも、また違った刺激を受けます。

 社会の荒波に揉まれて、世の中の厳しさを肌で感じた経験をしてきた。
 だからこそ、共感できる部分がとても多いです。

 本書には、自ら苦悩し、自ら考え、自ら語る人しか書き得ない言葉で埋め尽くされています。

「従順な羊」となるな。
 自由に飛び回る「野良猫」たれ。

 私たちが不安を消すために、心の支えとしている権威や組織など。
 それらは、実体のない蜃気楼で、いつ消えるか分からないものだということに早く気づくべきでしょう。

 自らの中の「強さ」だけを心の支えとして生きていく。
 私たちも、そんな『媚びない人生』を送っていきたいですね。

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