【書評】『大便通』(辨野義己)

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 お薦めの本の紹介です。
 辨野義己先生の『大便通 知っているようで知らない大腸・便・腸内細菌』です。

 辨野義己(べんの・よしみ)先生は、腸内環境学、微生物分類学がご専門の農学博士です。
「うんち博士」として、テレビや雑誌などでもご活躍されています。

大便は「個人情報の塊」


 辨野先生は、大便は、私たちの健康状態を知らせてくれる、体内からの「お便り」のようなものだと述べています。

 大便には、健康で幸福な生活を送るための、想像以上のヒントが隠れています。
 単なる「消化・吸収されなかった食べ物の残りカス」ではありません。

 大便の大部分は、「水分」で占められます。
 健康的な大便では、重量の80%程度です。

 水分を除いた、固形成分の三分の一は食べカス、三分の一は腸粘膜、残る三分の一が腸内細菌です。

 腸内細菌の種類や構成は、人それぞれ。
 同じものはひとつもありません。

 本書は、「大便」から得られる様々な情報を、日々の健康に役立てるための知識をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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オナラが臭いのは「悪玉菌」の仕業


 ひとくちに腸内細菌といっても、現在見つかっているだけで、1000種類以上もあります。

 食品中の糖類を分解して乳酸やアルコールなどを作る(=発酵する)細菌もいます。
 また、タンパク質などを分解して硫化水素などを生じさせる(=腐敗させる)細菌もいます。

 一般的に、前者を「善玉菌」、後者を「悪玉菌」と呼びます。
 また、腸内環境によって、勢力の強いほうになびく「日和見菌(ひよりみきん)」もいます。

 悪玉菌は、タンパク質を腐敗させて毒素を生産し、食中毒や発がん物質の原因となります。
 肉料理をたくさん食べた翌日などの大便の強烈な臭いは、悪玉菌が作り出す有害物質によるもの。

 悪玉菌によって臭くなるのは、大便だけではありません。
 オナラの臭いも、その影響を受けます。

 オナラは、口から飲み込んだ空気と腸内で発生したガスが混じったもの。腸内では、細菌の働きによって一日に1リットル前後のガスが発生しているのです。
 同じ腸内細菌が生み出すものですから、大便が臭ければオナラも臭いのは当然でしょう。大便は体の中の様子を知らせる「お便り」だといいましたが、それを熟読する前にオナラだけ嗅げば、「お便り」のおおまかな内容は察しがつきます。大便が腸内の観察結果を記した「論文」だとすれば、オナラは「まえがき」や「概要」のようなものです。
 オナラに含まれるガスの成分は人によってさまざまですが、腸内に悪玉菌が少ない場合は、窒素、二酸化炭素、水素、メタンガスなどが大半を占めています。これらはいずれも「不活性ガス」と呼ばれており、臭いはほとんどありません。
 しかし悪玉菌が多い腸内では、アンモニア、硫化水素、スカトール、インドール、フェノール、メチルメルカプタンなど、悪臭を放つ物質が作られます。たとえば硫化水素は温泉によくある卵が腐ったような臭い、フェノールは消毒液の「クレゾール」の臭い、メチルメルカプタンは玉ねぎが腐った臭い。どれもあまり歓迎したくない臭いですが、これがオナラや大便を臭くするのです。

 『大便通』 第1章 より 辨野義己:著 幻冬舎:刊

 辨野先生は、オナラや大便が臭いのは、腸内の環境が悪くなっていることを伝えるサインだと述べています。

 善玉菌と悪玉菌のバランスを整えて、腸内環境を改善する。
 そのためには、判断材料としての「臭い」と正面から向き合う必要があります。

女性はなぜ便秘になりやすいのか


 日本人の各年代の大便の調査をした結果、実年齢20代の腸年齢の平均は、なんと45.7歳。
 辨野先生は、日本人の若者たちの腸内環境の悪化に警鐘を鳴らします。

 その最大の原因は、やはり「食生活」です。
 動物性脂肪の多い食事や、ファストフードやスナック菓子ばかり食べる人が多いことが原因です。

 腸内環境悪化が進むと、症状が深刻化するのが、「便秘」です。
 特に、女性には悩んでいる方は多いですね。

 大便は、便意をもよおしたときに出すのがいちばんです。ただし、排便をうながす直腸の蠕動運動は、一日に1~2回程度しか起こりません。その蠕動運動が起きたときに私たちは便意を感じるのですが、そこでいつも我慢をしていると、直腸が便意を伝えなくなってしまいます。
 便意がないのでは、定期的に排便することもできません。その結果、大便が腸内にどんどん溜まり、便秘になってしまうのです。
 そして女性は、男性よりも大便を我慢しがちです。
 便意をもよおすタイミングは人それぞれですが、たとえば朝の場合、女性は何かと忙しい。働いている女性は出勤前の身支度に男性よりも時間がかかりますし、専業主婦なら家族の世話に追われて、ゆっくりトイレに入る時間がありません。そのため、せっかく便意が訪れても我慢してしまうことが多いのです。
 また、会社や学校などで過ごしている時間帯も、羞恥心が邪魔をして、長くトイレに入るのをためらう女性は少なくないでしょう。そうやって排便のタイミングを逃しているうちに、体が「ノー排便モード」に固定されるのです。

 『大便通』 第2章 より 辨野義己:著 幻冬舎:刊

 無理なダイエットも、大便の量を少なくするので、便秘の要因になります。

 便意をもよおしたら、恥ずかしがらずに、トイレに行く。
 それも便秘を防ぐためには不可欠です。

 どんなに忙しくても、毎朝トイレに入る習慣も欠かさないようにしたいですね。

食物繊維の摂取量が減ると大便も減る


 腸内環境に着目すると、老化を早めているのは、「食物繊維の不足」です。

 日本人の「腸高齢化社会」を招いたのは、食習慣の変化です。
 肉食の増加によって、野菜やイモ類などの食物繊維の摂取量が減ったことが原因です。

 いまの日本人は、一日平均およそ12.5グラムしか食物繊維を摂取していません。健康によいとされているのは一日25グラムですから、理想の半分しか食べていないわけです。毎日25グラムはなかなか難しいと思いますが、男性は一日19グラム、女性は一日17グラム以上は摂取したいところ。それぐらい摂取すれば、健康的な大便がたくさん出るようになるでしょう。
 先ほど紹介したウガンダ人とまではいかなくとも、大便は毎日300グラムぐらい出るのが理想的です。重さでいわれてもピンとこないでしょうが、これは20センチのバナナ状の大便三本分ぐらいの量。食物繊維は一本あたり6~7グラム含まれていますから、一日あたり12.5グラムでは足りません。
 ここで、「いくら食べても大便になって出ていくだけでは、意味がないのでは?」と疑問を感じる人もいるでしょう。
 しかし大便がたくさん出れば、有害物質もそれだけたくさん体外に排泄されます。とくに食物繊維は、ほかの食べカスよりも有害物質を効率よく吸着してくれるので、腸内環境への貢献度は大。おなかの中を「掃除」してくれる、頼もしい存在です。便秘を防ぎ、腸を若々しく保とうとするなら、これまでの食生活を見直し、食物繊維をたくさん摂ることを心がけるべきでしょう。

 『大便通』 第3章 より 辨野義己:著 幻冬舎:刊

 食物繊維は、体内で消化されないため、大便の“素”になります。
 食物繊維の摂取量が少なくなるほど、大便の量が減り、便秘にもなりやすくなります。

 普段の食事から、しっかり摂取するように心掛けたいですね。

自分で「大便」をチェックするときのポイント


 大便は、自分自身で作っているもの。
 それを自覚することが大事です。

 辨野先生は、色、形、臭いなどをトイレでたしかめるだけでも、自分の健康状態はかなりわかると指摘します。

 大便をチェックするときの、もっとも重要なポイント。
 それは、「色」「臭い」です。

 色は、黄色がかった褐色がベスト。これは、腸内にビフィズス菌が多い証拠です。ためしに、ビフィズス菌入りのヨーグルトを一日に500グラムほど食べてみれば、私の言葉がウソではないことがわかるでしょう。翌日には、ふだんよりも黄色みの強い大便が出るはずです。
 そういう大便は、臭いも違います。大便である以上、まったく臭くないことはありませんが、ビフィズス菌を多く含んだ大便は、顔をしかめるような悪臭ではありません。息を止めたりせずにちゃんと嗅いでみれば、やや酸っぱい感じの発酵臭がするはずです。
 逆に、悪玉菌の多い大便は、思わず息を止めてしまうような腐敗臭を発します。「肉食実験」をしたときの私もそうでした。色も、悪玉菌が多いほど黒みが強くなります。

 『大便通』 第5章 より 辨野義己:著 幻冬舎:刊

 じっくり見たいものではありませんが、腸内環境の情報がたくさん詰まったサンプルです。
 しっかり観察してから、水で流す習慣をつけたいですね。

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 大便は「汚い」「臭い」と敬遠されて、話題になることはほとんどありません。
 いくら汚くても、自分の体内で作られたものであることは事実です。

 近年、腸内環境の大切さを説く声が大きくなっています。

 腸からの「便り」である大便から目を背けないこと。
 それが健康を維持するための秘訣です。

 腸内環境のバロメーターとして、健康管理に役立てたいですね。


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