本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『成功する人の妄想の技術』(中野信子)

 お薦めの本の紹介です。
 中野信子先生の『成功する人の妄想の技術』です。

 中野信子(なかの・のぶこ)先生は、脳神経医学がご専門の脳科学者です。
 脳神経医学専攻の博士課程を修了し、その後、2年間フランス原子力庁サクレー研究所の研究員を務められています。

「妄想力」が現実を変える!

 世界を変えるような大発明や大ヒット商品の多くは、誰かの妄想から始まっています。

 たとえば、日本を代表するメーカー・ソニーの名作、「ウォークマン」。
 ウォークマンは、当時の井深大名誉会長が「きれいな音を機内で聞きたい」と妄想したところから、すべてが始まったそうです。
 
 子供の頃は、誰でも「妄想する力」を持っています。
 しかし、大人になると使わなくなってしまう人がほとんどです。

 ひらめきや妄想の力が、子供のほうがすぐれている傾向にある理由。
 それは、人間の脳というのは、もともと持っているものをコントロールし、抑える方向に成長していくから。

 先に妄想とひらめきの能力が育ち、その後、ちょっと遅れて抑制の部分が発達していきます。

 同調圧力が強く、“空気を読む”ことを極端に強いられる日本社会。
 とくに脳の抑制機能が強く働き過ぎて、妄想力を育てにくい環境にあります。

 中野先生は「日本人に創造力がない」と言われる真の理由は、日本人が「大人すぎる」からだと指摘します。
 妄想力を働かせて創造的になるためには、自分自身でブレーキを外す必要があります。

 妄想はひとりで頭の中でするものです。
 誰にも迷惑はかけませんし、元手もかからず、いつでもどこでもできます。
 その力を利用しない手はありませんね。

「非現実的なこと、ありえないこと」である妄想。
 それが「現実を変えてしまうこと」は、実際によく起こり得ることです。

 本書は、騙されやすい脳の性質を解説し、“脳の勘違い”を利用して妄想力を高める方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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自分を大事に扱うことが成功につながる

 マクドナルドを世界的なファストフードチェーンに育て上げた米国の実業家、レイ・クロック。
 数々のアニメ映画の名作を世に残し、ディズニーランドを作り上げた、ウォルト・ディズニー。

 中野先生は、彼らを自分の妄想を武器に大成功を収めた“妄想の達人”として取り上げます。

 妄想を武器にするうえで、最も大切なことのひとつは、「自分自身を大事に扱うこと」です。

 中野先生は、その理由について、自分を大事にしている人は、ほかの人から大事にされるのです。逆に、自分を粗末に扱っている人は、他人からも粗末に扱われる様になってしまいますと述べています。

 たとえば、あなたの目の前に二台の車があるとしましょう。一台は手入れが行き届いて、きれいに磨かれた車。もう一台はホコリだらけで汚れていて、車体にキズや凹みがあるような状態です。
 もしあなたが「この二台の車のうち、どちらかを棒で思いっきり叩いてください」と言われたら、あなたはどちらの車を叩くでしょうか?

 おそらく多く人が、ホコリだらけの車を選ぶと思います。

 心理学に「割れ窓理論」という理論があります。これは、軽微な犯罪がやがて凶悪な犯罪を生み出すという理論です。人間には、秩序の乱れがあると、それに同調してしまうという性質があるのです。

 たとえば、きれいに掃除されて、美しく整備された道にゴミを投げ捨てるのには気が引けますが、ペットボトルが転がっていたり、スーパーのゴミ袋などがあちこちに落ちている道になら「自分がちょっとくらい捨ててもかまわないだろう」という気になって、ゴミを捨ててしまう。
 すでに秩序が乱れている場所があると、さらに秩序を乱すことへの心理的抵抗が少なくなるのです。

 『成功する人の妄想の技術』 第1章 より 中野信子:著 KKベストセラーズ:刊

 妄想力は、自分の人生を変えてしまうほどの大きな力です。
 自分の心持ち次第で、プラスにもマイナスにも働きます。

 プラスのイメージを持つ人は、妄想力をプラスに働かせることができます。
 ポジティブな妄想をするように心掛けたいですね。

脳の錯覚でチャンスを逃さないために

 本来、ランダムに起こるべき複数の出来事を、何らかの相関があると誤認してしまう。
 そのような錯覚のことを「クラスター錯覚」と呼びます。

 たとえば、コイン投げで表が三回連続して出た場合。
「次にはきっと裏が出てしまうに違いない」と考える思い込みなどもそうです。

 しかし、これは間違いですね。
 表が出る確率と裏の出る確率は、何回投げても変わりありません。

 コイン投げのようなランダムな事象では、確かに、結果は大数の法則に随います。大数の法則、というのは、コインや投げ方に細工していない場合、コイン投げの回数を非常に多くすれば、表と裏の出る確率はほぼ等しく50パーセントに近づく、というものです。ですが、これは、表が出たら次は裏が出る、ということを意味しません。なのに、なぜか、人間の感覚は、同じ事象が続くだけで、論理的に考えることを放棄してしまう。そして、あっさりと、脳の勝手な妄想に騙されてしまうのです。

 コイン投げの例で見たように、チャンスというのは、どんな人にも、完全に均等に与えられています。

 ですが、多くの人々は、自分の見ているものが、もしかしたら錯覚かもしれない、なんて、思いもよらない。
 自分が冷静に観察していると思っている現象は、ひょっとしたら脳のつくり出した幻想かもしれないのですが、ほとんどの人はそれに気づきません。そして、論理的に歩を進めていくこと忘れてしまい、すぐ近くに転がっているチャンスを逃してしまう人が実に多いのです。
 これは、とても残念なことだと思います。

 『成功する人の妄想の技術』 第2章 より 中野信子:著 KKベストセラーズ:刊

 クラスター錯覚が強く作用し過ぎてしまうと、何度か失敗やうまくいかないことが続くと「次もまたうまくいかないのでは・・・・」と弱気になって、つい尻込みしてしまいます。

 成功する人は、クラスター錯覚に惑わされず、何度でもチャレンジできる人です。

 成功する秘訣は、「成功するまで、失敗し続けること」です。
 脳の錯覚に惑わされずに、努力し続けたいですね。

努力をすればするほど空回り 〜エミール・クーエの法則〜

「エミール・クーエの法則」、別名、「努力逆転の法則」と言われる法則があります。

 努力逆転とは、例えば、

「人前で、あがらないようにしようと努力すればするほどあがってしまう」
「ここぞという勝負のときに、チャンスを捕まえようとすればするほど逃してしまう」

 のような現象のことです。

 このような皮肉な現象が起こってしまう理由。
 それは、意志力と妄想が相反している場合は、妄想のほうが勝ってしまうからです。

 妄想と、意志の力が衝突し、対立している場合、意志の力が嫌な妄想を抑えようとすればするほど、そこに注意が向いてしまい、意識がとらわれて、最悪の結果を招いてしまうのです。

 では、努力しないほうがよいのでしょうか?
 そうではありません。
 もし、想像力と妄想とが対立しているな、と思ったら、そのときは思う存分、妄想を自由にさせてやりましょう。決して意志で抑えつけようととするのではなく、妄想をどこまでもたくましくする。その方向の努力をするのです。
 嫌な妄想が頭をかすめたら、自分のなかに生まれてしまったそのネガティブな妄想に、とことんまで、付き合ってあげましょう。ああなったらどうしよう、こうなったらどうしよう・・・・・。失敗したら怖いし、やっぱり不安なものです。それを感じている自分をしっかり受けとめるのです。自分ひとりでは難しい、という場合は、たとえば飲み屋のお姉さん、バーのマスター、親しい友だちでもいいし、カウンセラーでもいいので、話を聞いてくれる人に洗いざらい不安を吐露して、すっきりしてしまうという手も有効です。

 『成功する人の妄想の技術』 第3章 より 中野信子:著 KKベストセラーズ:刊

 渾身の意志の力を簡単に上回ってしまう。
 それだけ、妄想力は強烈であるということです。

 妄想力を味方につけて、人生を乗り切るための強力なエンジンとしたいですね。

「ハマる」メカニズム 〜刺激を求める脳〜

 男性と女性で、脳が生理学的に異なっていることがあります。
 そのひとつが、「ドーパミンの放出量の違い」です。

 ドーパミンは、脳内ホルモンの一種で、俗に「快楽の分子」と呼ばれます。

 チョコレートを食べることから、セックスに至るまで、さまざまな行為によって分泌されます。
 そして、人間に快楽をもたらします。

 ドーパミンは、生体にとって利益となる行動をプラス評価して、脳に記憶、学習させるという機能を担った物質です。
 脳内のドーパミンの量が多くなると、人が何かに夢中になるのを助長します。

 米国の神経内分泌学者、ゲーリー・ワンド博士は実験により、同じ快楽刺激に対するドーパミンの放出量が、男性では、女性より30〜50%も多いことを突き止めました。

 では、ドーパミンの放出量が多いとどうなってしまうのでしょうか。
 一度の刺激で放出される量が多いということは、それだけ快感が強いということになります。すると、再び快楽の刺激を受けたくて、中毒になってしまうリスクが上がるということに・・・・。
 
 男性では、女性よりも覚せい剤の中毒者が多いのですが、この理由のひとつがドーパミンの放出量の違いにあると考えられています。
 
 また、イェール大学とコロンビア大学の研究者による別の実験では、アルコールに対する依存症が調べられました。やはりこの実験でも、男性のほうが女性より、アルコールによるドーパミンの放出量が大きいことが明らかになりました。
 とくに、快楽・強化・依存の形成などにかかわるとされる、腹側線条体(ふくそくせんじょうたい)でのドーパミン量が増大していました。男性が女性よりもアルコール依存症になりやすいのはこのためなのです。

 また、アルコール依存などに比べるとずっと良い例ですが、「オタク」と呼ばれる人には男性が多いでしょう。これは、男性の脳がひとつのことにハマり、夢中になりやすいために、簡単に他の追随を許さないほど、趣味を極めることができるのだということも言えます。

 『成功する人の妄想の技術』 第4章 より 中野信子:著 KKベストセラーズ:刊

 アルコールやドラッグ、パチンコなどのギャンブルにはまる中毒者は、男性に多い。
 その理由は、脳の仕組みにあったのですね。

 ひとつのことに熱中し、とことんまで追求しやすい。
 そのような脳の性質は、“諸刃の剣”です。

 熱中度とドーパミンの快楽刺激の仕組みを理解して、プラスの方向に役立てたいですね。

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 本書を読むと、人間の脳というものは、いい加減に現実を捉えていて、騙されやすい性質を持っていることがよく分かります。
 そういう意味では、私たちは誰も多かれ少なかれ、すでに非現実的な妄想の世界にいるといえますね。

 もともと脳は騙されやすい性質を持っている。
 それならば、それを積極的に利用するのは、自分を変えるために極めて有効な方法です。

「自分は自分で思った通りの人間である」は、間違い。
「自分は自分で思った通りの人間になる」が、正解。

 妄想力を高めて、最短コースで“なりたい自分”を目指したいですね。

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