【書評】『成功する練習の法則』(ダグ・レモフ)

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 お薦めの本の紹介です。
 ダグ・レモフさん、エリカ・ウールウェイさん、ケイティ・イェッツイさんの『成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール』です。

 ダグ・レモフさんは、独自の教育で知られるNPOアンコモン・スクールズで代表で、同NPOの効果的な教授法に関するプロジェクトの責任者を務められています。

 エリカ・ウールウェイさんは、アンコモン・ウールウェイでチーフ・アカデミック・オフィサーを務められています。

 ケイティ・イェッツイさんは、アンコモン・ウールウェイのトロイ・プレップ小学校校長です。

始める前に「練習」しよう!


 サッカーや野球のスポーツ。
 ピアノやフルートなどの楽器。
 家の修繕やパソコンの技能。

 どんなスキルを伸ばすときにも、基礎の基礎から正しい方法で教わることが肝心です。

 スキルアップの最初の一歩は、『「上達すること」に上達する』こと。

 著者は、それぞれ長年にわたり、人々がすぐれた教育者になるための支援してきました。
 その過程で、才能開発には、「練習」が中心的役割を果たしていることに気づきます。

 著者は、優れたコーチや教師たちが行なっている「練習」を徹底的に観察します。

 効果的な練習とは、どのようなものか。
 単なるくり返しや見せかけと、「真の練習」を分かつものは何か。

 それらの疑問に対し、さまざまな考察を重ね、有益な知見を得ました。

 本書は、「上達すること」に上達するのに役立つノウハウや考え方をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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目的意識をもって「質」の高い練習をする


 一般的に、「世界クラスになるためには、一万時間以上の練習時間が必要」といわれます。

 その一方で、練習の「内容」つまり質は、練習の「時間」つまり量と同じくらい重要です。
 ただ漠然と、同じ動きを繰り返すような練習を続けても、上達しないということです。

 たとえば、両足のあいだでボールを往復させる練習。最初にコーチが指摘するとおり、これを正しくやるには両膝をわずかに曲げるのがポイントだ。にもかかわらず、多くの選手がまちがった練習をしていて、くり返すたびに膝を柔らかく動かすのではなく、まっすぐ伸ばしているほうがうまくなってしまい、結果としてゴールはどんどん遠ざかっていく。こうした反復練習に含まれているスキルを、選手たちがまちがったやり方で習得したらどうなるだろう。足首を固定せずにシュートしたり、ドリブルのときにボールを遠ざけすぎたり・・・・これは練習だろうか? イエス。だが成果は? あまりない。
 もちろんいま説明した練習もそれほど悪いものではないが、はるかにうまくなれる可能性がある。
 組織やそのなかの個人を並はずれてよくするためには、たんに「よい」練習や能力開発では足りない。また、「よい」練習の質を少し上げたところで、並はずれてすぐれた組織にはならない。一分一秒の生産性をいまよりはるかに高めた「すばらしい」練習をする必要があるのだ。幸い「すばらしい」は「よい」からさほど離れていないことが多いし、ほんの小さな変更が人々を急激に成長させることもある。

 『成功する練習の法則』 Chapter 1 より ダグ・レモフ:著 依田卓巳:訳 日本経済新聞出版社:刊

 何の目的のための練習なのか、練習する本人が理解していない。
 そんな状況では、どんなに時間をかけても、それに見合った効果は得られません。

 ただ漠然と、同じ動作を繰り返す練習は、効果が少ないうえ、悪いクセをつけます。

「実戦練習」ではなく、「反復練習」でこそ上達する

 

 本番の舞台で役に立つスキルを身につけなければ、本当に「上達した」とはいえません。
 そのため、より本番に近い練習である実戦練習に重きを置く指導者が多いです。

 しかし、著者は、反復練習と実戦練習を区別することが重要だと指摘します。
 すぐれた練習は、くり返せばくり返すほど値打ちが上がるものです。

 著者は、「反復練習」をする意義を以下のように強調します。

 反復練習はいつ、どのくらいすればいいのだろう。実戦練習がもっとも役立つのはどんなときだろう。それについては“ウェストウッドの魔術師”ジョン・ウッデンがまた教えてくれる。ウッデンは、選手がひとつのボールを使って、きちんと設計された予測可能な環境で練習するほうが、10人の選手がひとつのボールを使って、予測不可能な実戦に近いをするより効果があがることに気づき、ほかの大勢のコーチよりあえて多くの反復練習を――そして少ない実戦練習を――おこなった。彼はこのちがいこそが自分のチームの成功の鍵なると考え、実戦練習は選手の評価のためだけにとっておいた。選手のレベルがわかった段階で、スキルを最大限伝え、習得させることに集中した。これは重要なことだ。実戦練習は楽しいことが多いけれども、手軽なので頼ってしまいやすく、明確な目標のない練習になるおそれがある。
 選手のスキルを統合するには、実戦練習で教えるしかないと信じているコーチもいる。しかし、反復練習でも簡単にスキルを統合できる。すでに習得したスキルを統合するための反復練習もあるのだ。
(中略)
 多くの人は最初の反復練習を終わると、そのスキルを試合に取り入れたり、実戦練習をやってみたくなったりするが、うまくいかないことが多い。かえって不満が募り、混乱を招く可能性がある。段階的なドリルによる練習は、あらゆる分野のチャンピオンコーチが取り入れている。

 『成功する練習の法則』 Chapter 1 より ダグ・レモフ:著 依田卓巳:訳 日本経済新聞出版社:刊

 上達のポイントは、個々のスキルの習得とそのスキルを他のスキルと統合させるための反復練習をくり返すことです。

 自然と無意識のうちにできるくらいにまで、体に覚えこませる必要があります。
 それをおろそかにすると、せっかく習得したスキルが本番で生かせません。

できそうと思わせる「手本」を示す


「手本」を通して、やさしく効率的に身につけられるスキルは多いです。
 素人が学ぶ場合、良い「手本」を示すことはとても大事なことです。

「手本」に求められるのは、正しい方法論だけではありません。
「うまくいく」という証拠を示すことも重要です。

 学ぶ側がそのスキルが機能するのを目の当たりにし、信用して納得する。
 そのような手本でなければなりません。

 信じられる手本にするひとつの方法は、学習者が行動する状況にできるだけ近づけて手本を示すことだ。自分の会社と似たような会社であるテクニックが役立つのを見れば、試さない理由を探すのはむずかしい。もし可能なら実際の環境のなかで手本を示す。私たちはこれを〈プッシュイン・モデリング(手本の当てはめ)〉と呼んでいる。たとえば、会議を円滑に進める新しいテクニックをマネジャーに教えたいと思うなら、そのマネジャーの部下が集まった会議で手本を見せれば一番説得力がある。これを教職に当てはめると、悩みを抱えた教師をベテラン教師の授業に送りこむのもいいが、その教師が担当する生徒たちにベテラン教師が授業をおこなえば、もっと信頼できる手本になる。
 抵抗したり疑念を抱いたりしている人には、その人の働く環境で――その人の教室で、担当している生徒のまえに立って――手本を示すのが理想だ。学習者にとって重要なのは、手本自体が巧みにおこなわれることより、自分も同じようにできると納得することだ。ビデオで完璧な瞬間をとらえて学びの扉を開くことはできるが、多少もたついても〈プッシュイン・モデリング〉のほうがためになる場合が多い。

 『成功する練習の法則』 Chapter 3 より ダグ・レモフ:著 依田卓巳:訳 日本経済新聞出版社:刊

「百聞は一見にしかず」といいます。
 実際、口で何度も説明するよりも、一回その場で手本を示す方が何倍も効果があります。

 スキルの習得には、身近によい手本を見つけることも、上達のポイントです。

地道な練習こそ楽しくできるよう工夫する


 ゴルフの練習では、ドライバーを思いっきり振り回して、ボールを遠くまで飛ばすのは楽しいです。

 ついつい、そのような練習に偏ってしまいます。
 しかし、結果として表れるのは、バンカーショットやアプローチショットなどのショートゲームの地道な特訓の成果の方です。

 プロゴルフの名コーチも、当然、この事実を知っています。
 ショートゲームを練習させる方法を色々と考案し、楽しく続けられるように工夫しています。

 練習は懲罰であってはならない。楽しくするために時間をかけて想像力を発揮すれば、純粋に楽しいだけでなく、「これは時間をかける価値のあるよいものだ」という重要なメッセージも伝わるから、みな参加する気になる。
 上達や成長のために習得しなければならない多くのことは、ゴルフのショートゲームのように厳しい。しかし、ほかのことについては、退屈だからと抵抗するかもしれない。メイビス・ビーコンは、タイピングの学習をゲームにすることで、楽しいものに変えた(タイピングは学びはじめがじつに退屈だ)。彼女が作ったプログラム『メイビス・ベーコンが教えるタイピング』は、異なるスピードを競うゲームもついている。スピードと正確さを向上させようと異なる文章をただ何度もタイピングするだけでは、初心者の学習意欲は高まらない。しかし、文字を打ちこんで、カーレースでアニメの車を競走させたり、ゲームのキャラクターと同じ文章のタイピングを競い合ったりすれば、練習はがぜん楽しく、やる気の湧くものになる。学習者は練習したがり、結果としてより長時間、たくさん練習する。

 『成功する練習の法則』 Chapter 5 より ダグ・レモフ:著 依田卓巳:訳 日本経済新聞出版社:刊

 基礎的で重要なスキルほど、退屈なトレーニングを重ねなければならないもの。
 しかし、そこでやる気を失っては、身につくものも身につかなくなってしまいます。

 とくに、初期の段階では、飽きずに楽しめるような工夫をする必要があります。

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 インターネットの普及などのITの進歩。
 それにより、スキル習得のためのノウハウや素晴らしい手本の動画を無料で簡単に得られるようになりました。

 やる気と熱意さえあれば、手段はいくらでも自分で探し出せる、恵まれた時代です。

「自分には才能がない」と簡単にあきらめず、とにかくチャレンジしてみること。

『「上達すること」に上達する』ことを学び、成功の最短コースを進みたいですね。


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