本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

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【書評】『凡人を達人に変える77の心得』(野村克也)

 お薦めの本の紹介です。
 野村克也さんの『凡人を達人に変える77の心得』です。

 野村克也(のむら・かつや)さんは、元プロ野球の選手・監督です。
 現役時代はキャッチャーとして戦後初の三冠王に輝くなど数々の実績を残します。
 現役引退後、解説者としてもご活躍され、1990年にヤクルトスワローズ監督に就任し、「データ重視の考える野球」をスローガンにリーグ優勝4回(日本一3回)へと導き、常勝軍団を作り上げました。

つねに成長し続けるためには?

 野村さんは、テスト生から這い上がり、輝かしい実績を残して球界を代表する選手となりました。
 引退後は、数々のチームを率いて優勝に導き、名監督として人々の記憶に刻まれています。

 野村さんは、人が成長するためには、まず基本を身につけることが必要だと指摘します。

 最初の基本を省いて、器用にものごとを進める癖がつくと、成長はどこかで必ず止まります。
 基本を身につけた後、さらなる飛躍的成長を遂げるために大切なのは、「考え方」です。

 野村さんは、技術には限界があるが、頭には限界はないと強調します。

 本書は、野村さんが監督時代にミーティングで選手に話していたことの中から、一般のビジネスにも使えるものを中心にまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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仕事の本質は「単純作業の繰り返し」

 野球は、単純作業の繰り返しです。

 バッティングは、バットを構えてスイングする繰り返し。
 守備は、球を捕球して投げる繰り返し。

 野村さんは、この単純作業をいかに高いレベルで継続できるかが、プロ野球選手の生命線を握っていると述べています。

 これは、ほとんどの仕事にあてはまることである。
 営業をしている人なら、見積書や提案書をつくって、お客様に売り込みをする繰り返しだろう。経理をしている人は、伝票を整理し、費用や利益の計算をすることを毎日繰り返しているだろう。
 つまり、世の中にあるほとんどの仕事の本質は、「単純作業の繰り返しの集積」なのである。
 大切なことは、この単純作業の理想型は、「若いほど身につけやすい」ということだ。プロ野球選手でいえば、20代前半は基礎づくりの時期にあたる。バッターであれば、来る日も来る日も、時間さえあればバットを振り続け、単純作業の精度をあげる努力を怠ってはならない。どんな才能のある選手も、この努力なしで大成することは絶対にできない。
 あなたが何らかの分野のプロフェッショナルを目指すなら、仕事の中にどんな単純作業が含まれているかを分析し、その一つひとつを底上げする努力をすべきだろう。
 しかし、大きな問題もある。それは、「努力には即効性がない」ということである。私自身の現役時代の経験からいえば、努力イコール、結果が出ないことがほとんどだった。努力をすることで結果が悪くなることもしばしばだった。
 だからといって、そこで努力をやめれば、現実を変えることは永遠にできない。結果が出なくても努力を続けた者だけが、夢や目標を達成できるのだ。

 『凡人を達人に変える77の心得』 第1章 より 野村克也:著 バレーフィールド:刊

 一流の人でも、他人にはマネできないような特殊な技能を持っているわけではありません。
 また、特殊なトレーニングをしているわけでもありません。

 基本的な単純作業をとことんまで追求して、極めて高いレベルにまで技能を高めた結果です。

 努力しても、なかなか思うように上達しないことも多いです。
 それでも、諦めずに努力を継続していきたいものです。

「言い訳をする人間」が伸び悩む理由

 成長するために欠かせない要素は、「言い訳をしないこと」です。
 野村さんは、監督として数多くの選手と接し、実際に言い訳をする選手はまず伸びないことが多かったと指摘します。

 精神論のように聞こえるかもしれないが、決してそうではない。明確な理由がある。
 失敗をした時、なぜ人は言い訳をしたがるのか。これは、失敗と正面から向き合いたくないからである。失敗から逃げ出しているのだ。だから、同じ失敗をまた繰り返す。
 私はよく講演や著書の中で、「失敗と書いて、せいちょう(成長)と読む」と言っている。この意味は、失敗を多く経験すれば、成長するということではない。失敗した原因究明をし、それを次の機会につなげれば、成長の糧になるということである。
 野球でいえば、三振をしたからダメだったのではない。準備を怠り、何の考えもなくバッターボックスに入り、三振したからダメなのである。そして、同じ失敗を繰り返すというのは最悪である。
 たとえば、チームで仕事をしていて、ミスが発覚した時、「あいつが悪かった」と誰かに責任転嫁するのは簡単だ。
 しかし、そこに進歩はない。
「言い訳は進歩の敵」なのである。
 あなたの創意工夫でそれが防げなかったのかを考えていくことで、個人的に成長できるし、チーム自体も同じ失敗を繰り返さなくなる。

 『凡人を達人に変える77の心得』 第2章 より 野村克也:著 バレーフィールド:刊

 誰にでも失敗はありますが、それ自体を恥じることはまったくありません。
 失敗から多くを学び、成長の糧とすることができます。

 言い訳をするということは、自分以外に責任転嫁をすること。
 自分を正当化した時点で、その失敗から学ぶことはできなくなります。

 失敗しても、過ちを犯しても、決して言い訳をしないこと。
 肝に銘じたいですね。

相手の立場からものごとを見る視点

「ピッチャー出身は名監督になりにくい」とは、よく言われる話です。

 現役時代、「スポットライト」を浴び続けたということ、そして、「見えている視野が狭い」という要素が大きいのがその理由です。

 ピッチャーというのは、チームの中でもっとも目立つポジションである。勝っても負けても一番の注目を浴びる。それによって自己中心的な性格が育ちやすい。
 現役時代はそれでもいい。ピッチャーは、自分が主役というくらいの気概があった方が結果を残しやすい側面もある。
 しかし、監督になると話は別だ。
 自分中心的にものごとを考えていては、コーチや選手はついてこない。思い込みでゲームを進めれば結果もついてこない。自己中心的ということは、「自分の視点しか持っていない」ということである。指導者として大成するには、これを越えた「相手の視点」を持たなければならない。
 自分の言動を選手はどのように感じるか。相手チームはどのように試合を動かしてくるか。こういった想像力は相手の視点から生まれる。
 もちろん、監督に就任する時、自己中心的な意識を払拭(ふっしょく)しなければと考える人も多いだろうが、習性はなかなか変えられるものではない。
 ビジネスにおいてもこれはあてはまるのではないか。リーダーの立場にあるということは、その人は周囲から評価された人間である。すべての人がそうとはいわないが、若い時期、「自分の結果を出すこと」に注力してきたため、なかなか「自分の視点」から脱却できない人もいるだろう。
 自分の視点に陥っていないか。
 リーダーは、常に自問自答し続けるべきだ。

 『凡人を達人に変える77の心得』 第3章 より 野村克也:著 バレーフィールド:刊

 キャッチャー出身の野村さんらしい考え方ですね。

 野球も、ビジネスも、自分一人でできるものではありません。
 仲間もいれば、敵もいます。

 優れた戦略を立てるためには、自分の視点だけでなく部下や競合する相手、お客様など「相手の視点」でものごとを考えることが必要になります。
 普段から心掛けたいですね。

遊びと仕事をつなげられる「遊び上手」になれ

 野村さんは、向上心を持つことは大事だが、真面目一筋にならないことも、よい仕事をするために必要な要素だと述べています。
「ちょっと不真面目ぐらいがちょうどいい」とのこと。

 ここでいう不真面目とは、悪いことをしたり、責任を回避することではなく、適度に手抜きをせよ、ということである。
 プロ野球選手でも、エース級のピッチャーは、いつも全力投球をしているわけではない。適度に力を抜く場面と、全身全霊をかけて抑え込む場面のメリハリをつけているから、1シーズンを投げ抜くことができる。
 人生は長い。真面目だけでは、疲れてしまう。
 また、真面目一筋の人には、打たれ弱いという弱点もある。何かがうまくいかないと、考え込んでさらに深みにはまってしまう。
 どこかに不真面目さをもっていなければ、大きなトラブルや逆境にあった時に、心が折れてしまう。
 最近は、真面目な選手が多くなったが、私の時代までさかのぼると、一流といわれる選手の多くは、不真面目さを持っていた。
 ストイックなイメージのある選手でも、遊ぶ時はよく遊ぶタイプが多く、銀座の高級クラブなどで、たまに鉢合わせしたものだ。
 遊びにも、下手と上手がある。
 遊び下手は、度を超して遊ぶことで、仕事に悪影響を及ぼすタイプだ。
 遊び上手は、遊びと仕事が有効に連動しているタイプである。
 遊んでいる時も、何か仕事に役立てられることはないかなと探している、真のプロフェッショナルであれば、それくらいの気概(きがい)は持ってほしい。

 『凡人を達人に変える77の心得』 第5章 より 野村克也:著 バレーフィールド:刊

 野村さんの場合、高級クラブのホステスから他チームの選手の情報を仕入れたりもしたとのこと。
 その情報をもとに試合の時、バッターに対して、つぶやく「ささやき戦術」で相手の集中力を乱したというから、さすがですね。

 オンとオフ、メリハリをきっちりつけて、ここぞという場面では最大限に集中できるようになりたいものです。

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 頭の回転が早い人もいれば、理解の遅い人もいます。
 要領のいい人もいれば、要領の悪い人もいます。

 他を圧倒して、超一流と呼ばれるようになる人。
 そのような人たちには、不器用で上達が遅いけれど努力を惜しまず、コツコツと積み重ねていくタイプの人が多いです。

 例えれば、「ウサギとカメ」のカメのような人。
 野村さんも、もちろん、このようなタイプの方です。

 努力を成果に変えるには、基本を押さえることが大事です。
 “成長するための基本”を身につけてカメのように努力し続け、達人を目指したいですね。

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One thought on “【書評】『凡人を達人に変える77の心得』(野村克也)
  • uejun より:

    「ヤクルトスワローズ監督に就任し、…リーグ優勝4回(日本一3回)へと導き、常勝軍団を作り上げました。」って、その後の「6年間に最下位5回」の実績はどうなさったんでしょうか? 「6年に5回の最下位」。普通、こんなことやろうと思ったってそうそうできませんよ。

    「言い訳をしないこと」が大事だそうですが、ご本人は「言い訳」ばかりじゃないんですか? ああ、そうか「言い訳」と、「他人のせいにする」こととは違うんですね。とにかく、野村さんに対する異様なまでの都合のよいヨイショには、今ではもう気分が悪くなるというより、吐き気を覚えてしまいます。この前は、「フラッシュ」で、星野さんを「ごますり野郎」と述べていましたよ。原監督のこともボロクソ。別に私はお二人のファンではありませんが、仮にも優勝監督ですからね。ただただ異様な気持ちになりました。

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