本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『「流れ」を変える方法』(廣瀬公一)

 お薦めの本の紹介です。
 廣瀬公一さんの『「流れ」を変える方法―――自分を変えずに未来が変わる5つのステップ』です。

 廣瀬公一(ひろせ・こういち)さんは、人財育成コーチングトレーナーです。

「流れ」を変えれば未来は変わる!

「人生をやり直して、幸せをつかみたい」
「ずっとやりたかったことをやって、成功したい」

 そう願う人の多くは、「それには自分を変える必要がある」と思い込んでいます。
 しかし、それは真実ではありません。

 人生を上向きにするために、変えるべきもの。
 それは、「自分」ではなく「流れ」です。

 自分自身の流れを変えるために、一生懸命に明るいことを考えようとしたり、ポジティブシンキングだといって気持ちを前向きに誘導しようとするのではないか?
「頑張ろう!」「できる!」「大丈夫!」
 でも、それですぐ状況が変わったりはしない。
 結局、元のしんどさや、ネガティブな感情が戻ってきてしまう。
「やっぱりアカンかった」「もうダメなんだろうか」
 悪循環に陥る。

 だからそんなことはやめよう!
 ムリに明るくなったりする必要はない。前向きになったりする必要もない。

「辛い」という気持ちがあるからこそ、人はその辛さを感じなくて済むように努力するのだ。「不安な気持ち」を持っているから、本当の危機を避けるための対策をあれこれと考えるのだ。
 ならば辛いままでいいではないか。
 将来に不安を感じているままでいいではないか。
「ネガティブ」になっている自分」を認めてしまおう!

 人は「ネガティブになっている自分」を認める前に、「ネガティブになっている状況」を変えようと焦り、もがく。
 しかし簡単に状況は変わらないから、どんどんネガティブが連鎖するスパイラルになる。これこそが「人生低迷スパイラル」の正体だ。
 そうではなく「辛さ」や「不安」を抱えた自分を認めたうえで、客観的に「今の自分の置かれた状況」を見直し、可能な限りの具体的行動を見つけていく。それが本書で伝えたい、「人生活き活きスパイラル」の流れなのである。

『「流れ」を変える方法』 序章 より 廣瀬公一:著 ダイヤモンド社:刊

 人生の流れを好転させる段階は、以下の5つのステップに分けられます。

  • ステップ1:今、ありのままを受け止める
  • ステップ2:自分自身をしっかり守る
  • ステップ3:大切なこと、大切な人を守る
  • ステップ4:流れを引き寄せる
  • ステップ5:流れが変わる、波に乗る

 本書は、人生の「流れ」を変えるための具体的な方法を、上の5つのステップそれぞれについてまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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なぜ「ありのまま」を受けとめられないのか?

「流れ」を変えるための第一歩として、もっとも大切なのは「今、ありのままを見る」ことです。

 今、ありのまま?
 今が、同しようもない状態だから、苦しんでいるんじゃないか?
 窮地にあるのはわかりきったこと、ありのままを見るなんて時間のムダじゃないか?
 そんなふうに感じる人も多いだろう。
 でも、本当にそうだろうか? よく考えてみてほしい。

 たとえば、倒産寸前の会社で働いている社員、A君がいたとしよう。ここ数か月は給料も出ていないから、生活はあっぷあっぷの状態だ。
 なのに会社は、まったく打開策を考えている様子がない。「資金繰りのメドがつくまで給与の支払いは待ってくれ」と言うばかり。上司たちは皆、自分のことしか考えていない。「それよりはいくぶんか自分のほうがマシ」と、読者のあなたは思うかもしれない。
 そんな中で、このA君は「どこか他の会社に転職しなければダメかなあ」と、悩んでいる。
 さあ、この場合のA君の「今のありのまま」は何だろう?

 倒産寸前の会社に勤めてしまって運が悪いことだろうか。
 給料が出ていなくて生活が苦しいことだろうか。

 そうではない。事実をありのままに言えば、
「自分の勤めている会社が倒産寸前で、ここ数か月は給料も出ていない」
 これだけである。「生活費に困り、転職を考えている自分がいる」というのはあくまでもその結果。それ以上でも、それ以下でもないのだ。

 当たり前ではないか? と、思うだろう。
 しかし同じような立場に立ったとき、人はそんなふうに現実をとらえないのである。
「なんてオレは運が悪いんだろう・・・・・」
「生まれてからずっと、私はツイてないな・・・・・」
「選んだ道を間違えてしまった・・・・・」

 これらは自分の「解釈」であって、「ありのまま」ではない。
 意地悪な神様が、たまたまあなたを空の上から見つけて、「こいつにはちょっと意地悪して、悪いことばかり起こるようにしてやろう」と気まぐれを起こした・・・・・。
 そんなことは決してないのだ。安心してほしい。
 では何が悪かったのだろう?
 何も悪くない。ようするに「そういう事実が起こった」という、ただそれだけのことだ。
 会社が倒産寸前に追い込まれている原因を考えれば、市場の変化や、競合他社のシェア拡大、そして自社の経営者のマネジメントの失敗などといった要素が、からんでいるのだろう。
 ただ、それはA君自身とは別の問題である。
 A君についてありのままの事実を言えば、「良い・悪い」ではなく、そうした状況を目の前にしながらも、今までは「会社に残る」という選択をしてきただけのことである。
 これが「悪い」ということではまったくないし、社会環境や上司のせいで被害を被ったという話でもない。
 ただ、自分が「会社に残る」選択をしてきたという単純な事実があるに過ぎないのである。

 事実をまずは客観的に、そのまま受け入れる。

 そこから、「流れ」を変えていく道のりは始まるのだ。

『「流れ」を変える方法』 第1章 より 廣瀬公一:著 ダイヤモンド社:刊

 私たちが「現実」だと思っているもの。
 それらは客観的な「事実」と主観的な「解釈」から成り立っています。

「今、ありのままを見る」

 とは、「解釈」の部分を取っ払って、「事実」のみを受け取ること。

 それにより、「解釈」にありがちな、ネガティブな感情から解放されます。
 負の「流れ」を断ち切って、ニュートラルな心理状態に近づけますね。

「眉間にシワ」が「歯を食いしばれる笑顔」に

 心のあり方は、そんなに簡単に変わるものではありません。
 最初に変えるべきは、「行動」です。

 とはいっても、これまでの生活を変えるような、大きな変化は必要ありません。

 廣瀬さんが最初に始めた「小さな一歩」は、以下の4つの行動でした。

  • 朝、元気よく「おはよう」を言う
  • 机の上の整理整頓をする
  • クライアントさんに会ったときは精一杯の笑顔でふるまう
  • 1日に10回は「ありがとう」を言う

 この中で廣瀬さんにとって、いちばん難しかったのは、「笑顔で人に接する」ことです。

 それでも、強引にでも笑顔をつくらなければと、「朝起きたら自分の顔を鏡に移し、30秒間、微笑む」ということを始めます。

 こんなバカらしく見える「笑顔の練習」を始めて、しばらく経った日のことだ。知り合いの会社の社長さんに、別の会社の社長さんを紹介していただく機会があった。
 私はここぞとばかりに、「御社で研修をさせていただけませんか?」と資料を渡したのである。相手はパラパラと資料をめくっているが、ほとんど中身は理解していない様子。
 当時の私は、まだ自分に自信を持てるようになっていたわけではない。だから「ああ、また断られたな」と、これまでどおりにネガティブな気持ちで相手を見ていた。
 ところが5分くらいして、こんなことを言われたのである。

「あんたに頼むわ!」
「いいんですか?」
「内容はよくわからんけど、あんた笑顔がいいからな!」

 衝撃的だった。
 というのも、私は母から「あんた暗い顔しとるわ。そんな顔しとったら、なるもんもなれへんで。とにかくほほえみ!」と言われていたくらい、表情が最悪だったのだ。眉間にシワを寄せるクセがついていて、どうしても不機嫌に見られてしまう。コンプレックスになっていたほどだ。
 そんな私が、笑顔だけで評価されたのである。信じられない思いだった。
 しかし、これが“たまたま”というわけでもなかった。別の場では、こんなことまで言われたのである。
「あんたの笑顔は弱いもんじゃないな。人のために泣いたる顔や。泣ける笑顔や。歯食いしばれる笑顔や」
 辛い体験を経たあとで取り戻した笑顔だから、そんなふうに見えたのか? まさかそんなふうに見抜く人がいるとは思わなかった。
 私の笑顔は、本物の笑顔ではないかもしれない。毎朝毎朝、鏡を見て、一生懸命につくった笑顔なのだ。寝るときも、どんなに腹を立てていたとしても、微笑みをつくってから寝るようにしている。
 こうした“つくった笑顔”でまったく構わないのだと思う。
「楽しく明るい考え方をしよう」と言われても、気持ちをコントロールすることなんてできない。しかし「ウソでも楽しい表情をつくる」ということなら、コツさえつかめば何とかなる。

 心持ちを変えるのではなく、あくまで実行できることを少しずつ変えていけばいいのだ。

『「流れ」を変える方法』 第2章 より 廣瀬公一:著 ダイヤモンド社:刊

「流れ」を変えるために必要な行動は、「小さな一歩」を続けることです。
 大切なのは、実行できることを、少しずつ変えていくこと。

「継続は力なり」

 小さな行動の変化が積み重ねが、大きな「流れ」をつくり出します。
 信じて、コツコツと続けましょう。

「今、目の前の人」「今、目の前のこと」を大切にする

「流れ」を変えるときでも、変えてはいけないものはあります。
 それが「大切なこと、大切な人を守る」ことです。

 アパレルメーカーで管理職をしている、独身のNさん。
 家庭では、体の弱い父親の介護もこなしています。

 仕事でしっかり成果を出し、親の介護もちゃんとやっている・・・・・。
 本当に素晴らしいことだ。そんなNさんに、「大切なこと」と「大切な人」について聞いてみる。
 打ち込んできたことは仕事なのか?
 あるいは愛する家族なのか?
 その両方なのか?
 その答えは・・・・・どちらでもなかった。
「今、目の前にあることです」
「そして、今、目の前にいる人です」

 彼女はそう答えたのである。
 今目の前にあるこことは、家ではお父さんの介護だったり、掃除・洗濯などの家事だったり、会社では今目の前にある仕事だという。
 今目の前にいる人とは、家ではお父さんだったり介護ヘルパーさんだったり、会社では業者さんだったり部下だったり、上司かもしれない・・・・・。とにかく今、目の前にあること、目の前にいる人に専心するのだという。

 正直に言えば、Nさんは仕事をしながら、「お父さん、大丈夫かな」と気になることはあるそうだ。
 でもそのときは、「今考えてもしょうがないじゃない」と心の中で唱える。
「流れ」を変える“スイッチ言葉”だ。そして目の前にある仕事や、今関わっている人に専念するのである。
 その代わり、きっかり5時になったら、会社を出て、家のことに専念する。
 会社では「Nさんは5時に帰る人」として周囲から認められ、最近では部下が「時間ですよ、あとは私たちに任せてください」と言ってくれるそうだ。
 だが、管理職として多くの部下を率いる立場にあり、かなり大きな予算数字の達成を期待されているNさんが、毎日定時退社するというのは並大抵のことではないはずだ。
「どんな工夫をされてるの?」と聞いてみた。
「私の中で線引きしてます」とNさん。
「工夫というより、やらないと決めていることがあるんです」
 それは、どうでもいい付き合いや接待、あるいはダラダラ長時間続く会議だという。
 上司として部下の仕事に細々と干渉せず、どんどん任せてしまって、家に戻れば仕事のことは考えない。ただ目の前にいる、お父さんのことに専念するのである。
 部下に仕事を任せることで自立を促す効果も出ているそうだ。会社では、Nさんのチームでは人が育つと高い評価を受けている。
(中略)
 考えてみれば、いつでも彼女は忙しい仕事の被害者になれた。「大きな予算数字を背負って部下に仕事を教えなきゃならない、私の仕事が多すぎる・・・・・」などと。
 お父さんの被害者にも簡単になれた。「お父さんがもっと丈夫で、ちゃんとお金を残してくれていたら、私はこんなに働きづめでなくて済んだのに。介護も1人で担っている、かわいそうな私」と。
 しかしNさんは自己憐憫などせず、今目の前にある大切なことや大切な人に全精力を傾けている。
 だから人生を楽しむことができているのだ。
 ヨットというのは、帆を傾けることによって、逆風でも前に向かって進むことができる。
 彼女にとってみれば、仕事のプレッシャーもお父さんの健康状態も、逆風には違いないが、そんな逆風が吹いているからこそ前に向かって突き進むことができている。
 そんな、逆風に逆らって進む「流れ」をつくろうではないか。

『「流れ」を変える方法』 第3章 より 廣瀬公一:著 ダイヤモンド社:刊

 今、目の前にあること、目の前にいる人に、専念する。
 簡単なようでいて、なかなかできることではありません。

 自分が置かれている状況に甘えず、できる限りのベストを尽くす。
 そんな努力をしてきた結果、身につけたのでしょう。

 逆風も、人生を好転させるための原動力になります。
 腐らずに、少しずつでも前進したいですね。

「情けは人のためならず」のカギ

 廣瀬さんは、数千円程度の謝礼で呼ばれる勉強会でも、決して手を抜きません。
 楽しさは企業から報酬をもらえる仕事と同等とのこと。

 その理由は、他ならぬ「自分の役に立っているから」です。

「情けは人のためならず」という言葉はご存じだろう。
 よく誤解されるか、情けをかけることは人のためにならない、という意味ではない。「情け」というのは、他人のためではなく「自分のためにかけるもの」という意味だ。つまり、人を助けたり親切にしたりして情けをかけると、その人のためになるだけでなく、まわりまわって自分にもきっと良いことが起こるということなのだ。
 世の中の役に立つのは、世の中のためでなく、自分のためなのである。
 だからこそ、どんな仕事も楽しくて当然なのだ。すべては究極は「自分のため」になっている。「やってあげたんだ」とか、「いくらしかくれなかった」なんてことは、どうでもいいことなのだ。
 お釈迦様の教えにも、「三輪空」というものがある。
 これは「3つのことを忘れなさい」という教えで、3つとは「施した人」「施された人」「施されたもの」。つまり「自分が」「誰かに」「何かをしてあげた」なら、その3つのことをすべて忘れてしまえということだ。
 それでは役に立った甲斐がないのではないか?
 違う。忘れてしまったほうが、「役に立つこと」自体を楽しめる。
 私の知り合いにも、「人の役に立つこと」自体を楽しんでいる人がいる。もともとは社長だったが、現在は会長職に退き、社会貢献の活動ばかりしている。
 私も度々、いろんなことでお世話になっているから、昔の話が出るとよく「あのときはお世話になりました」と、当時のことを思い出しながら感謝の言葉を述べる。
 すると会長は、決まってこう言う。
「えっ、何でしたっけ?」
 ホントに忘れてしまっているのだ。
 忘れてしまっているのは、ようするに「相手に感謝されよう」と最初から思っていないから。すべて「情け」は自分のためで、相手が喜んだら、自分も喜んで、それでおしまいなのである。
 間違っても親切にすることに対する見返りなど期待していない。

 他人のために一生懸命行動しても、その人は必ずしも自分の期待どおりに動いてくれるわけではない。
 そんなことは当然なのに、ついつい人は「見返り」を期待してしまう。あげく「こんなに世話をしてあげたのに」とか、「あんなに思いをかけてあげたのに」と、相手にネガティブな感情を持つ。
 それでは、「他人のためにやったこと」も意味がなくなってしまうのではないか?
 かえって人間関係が悪くなってしまうことだってある。
 本当は「人の役に立ったこと」で自分の心が満たされるし、大きな自己肯定感も得られるのだ。
「情けは全部、自分のため」でいいではないか。

『「流れ」を変える方法』 第4章 より 廣瀬公一:著 ダイヤモンド社:刊

 相手に見返りを期待して、何かしてあげる。
 そうすると、その見返りがもらえなかったときに、損をしたような気になりますね。

「情けは人のためならず」

 情けをかけるのは、人のためではなく、自分のためだ。
 回り回って、結局、自分に戻ってきてくれる。

 そんな大きな視野で眺めれば、周囲に積極的に与えることができます。

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 人生の「流れ」を変えるステップを実践していくうえで、大切なこと。
 それは、「焦ってはいけない!」ということです。

 廣瀬さんは、大きな飛躍を成し遂げる際には必ず「熟成期間」があるし、ときには変化の影響で、大変に思う事態に遭遇するかもしれないとおっしゃっています。

 新しいものを手に入れるためには、今ある古いものを手放す必要があります。

 運命が変わる分岐点では、思いもしない出来事が起こる。
 それは、ある意味、当然のことといえますね。

 日々の生活での、小さな一歩の積み重ね。
 それがいずれ、人生の劇的に変わる、大きな「流れ」となって押し寄せます。

 焦らず、コツコツと。
 自分が今できることから始めたいですね。

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