本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『ギックリ腰は尻から治す』(伊藤和磨)

 お薦めの本の紹介です。
 伊藤和磨先生の『ギックリ腰は尻から治す』です。

 伊藤和磨(いとう・かずま)先生は、腰痛症の改善を主としたパーソナルトレーナー、キネシオロジストです。
「日本から腰痛をなくす」をスローガンとして、学校や企業で腰の負担の少ない姿勢や身体の使い方の講演をこなしておられます。

「ギックリ癖」は自分で治すことができる

 ギックリ腰は再発率が高く、一度経験すると癖になりやすいです(伊藤先生は、これを「ギックリ癖」と呼んでいます)。
「ギックリ腰発症後に、60%が数年以内に再発し、受傷者のうちの20〜25%は、慢性の腰痛症に移行する」とのこと。

 伊藤先生自身も、ギックリ腰を6回も経験し、それが理由でプロサッカー選手を引退しています。
 伊藤先生が腰痛を克服できたのは、腰に「スイッチ」があることを知ったからです。

 腰のスイッチをONにすれば、腰へのストレスをお尻や太ももの裏に分散できます。
 腰のスイッチを入れるということは、下半身と上半身を繋げることであり、いつでも動き出せるように腰をセットアップすることです。

 では、どこにスイッチがあって、何をすれば腰を安全な状態にセットアップできるのでしょうか。
 骨盤が後ろに傾いている状態(=腰が丸まっている)を、腰のスイッチがOFFになっていると表現します。一方、骨盤が前に傾いて腰に穏やかな反りがある状態を、腰のスイッチがONになっていると表現します。スイッチがONのときは骨盤と腰椎の連結部が安定し、下半身と上半身が一体となって動くため、ギックリ腰になるリスクは最小になります。
 しかし、腰のスイッチがOFFになっているときに、手を伸ばして物をつかもうとしたり、急に椅子から立ち上がろうとしたりすると、下半身が置いてけぼりになったまま上半身だけが前に移動することになります。このとき、腰椎と仙骨の連結部分に滑る力が働き、腰の関節捻挫や筋膜を痛めてしまい、ギックリ腰になるのです(椎間板ヘルニアを悪化させる原因にもなる)。
(中略)
 腰のスイッチをONにするのは、簡単で、脚を30度以上に開脚して軽くアゴを引き、骨盤を前に傾けるだけです。骨盤がうまく前傾しない場合は、お尻の下に折り畳んだ座布団やクッションを敷いて、お尻の位置を高くして下さい。
 腰のスイッチをONにしている時間を増やすことは、腰痛予防と身体のパフォーマンスアップをはかるうえで、絶対に知っておくべきことなのです。

 『ギックリ腰は尻から治す』 Step1 より 伊藤和磨:著 永岡書店:刊

腰が ON の状態P27
 図1.腰のスイッチがONの状態 (『ギックリ腰は尻から治す』 P27 より抜粋)

 伊藤先生は、座るときに「腰のスイッチ」を入れることと、普段のマッサージやストレッチの習慣をつけることで、ギックリ腰と無縁の生活を送ることができるようになる、と強調しています。

 本書は、自分の腰を自分の力で守る方法を学び、ギックリ腰と無縁の人生を過ごすためのノウハウをまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「腰痛習慣」をなくす座り方

 ギックリ腰を発症・再発させてしまう人は、「腰痛習慣」が染み付いています。
 ギックリ腰を発症・再発させやすい習慣のひとつに「猫背で座っている」ことです。

 腰に負担をかけずに座るためには、“椅子に座る”ではなく脚を30度以上開いて“椅子に跨がる”という意識を持つことが重要です。そして、座面と背もたれの角にお尻を差しこむようにして座ることが大事です。お行儀良く膝と膝をくっ付けて座ると、直に骨盤が後傾して、自ずと猫背になってしまうからです。女性の方で、脚を開いて座れないと嫌がる人もいますが、TPOに応じて座り方を変えてもらえばOKです。事務用デスクは前面に目隠しとなる板があるので、仕事中に脚を開いていても足元が見えることはないはずです。
 理想の姿勢をキープするには、中枢神経系を働かせておく必要があるので、ずっと続けていると神経が疲労してきます。ですから意図的に姿勢を崩したり整えたりして、姿勢に変化をもたらせることが必要になります。「悪い姿勢をとっても良いのですか?」と、質問してくる方もいますが、姿勢を制御している中枢神経系をときどき休ませてあげることも良い姿勢を継続するための秘訣なのです。

 『ギックリ腰は尻から治す』 Step3 より 伊藤和磨:著 永岡書店:刊

 腰痛や肩コリの予防・改善のためには、「椅子に座る」というより、「椅子に跨がる」感覚をもつことが大切です。

 正しい姿勢をとるのが苦しくなってきたら、それは中枢神経系が疲れてきた証拠です。
 身体からの「ちょっと一休み」のサインと受け取って、無理せずに休憩を入れることをとるようにしましょう。

筋膜への「引っ張りストレス」が痛みとなる

 ギックリ腰を引き起こす要因はさまざまです。
 中でも突出して多いのが、「筋膜の張りやコリによる痛み」です。

 筋膜の張りやコリで生じる腰痛を、「筋・筋膜性腰痛」と呼びます。
 筋膜とは、「すべての筋肉と臓器を包んでいる薄い膜」のことです。

 筋膜の主成分は、コラーゲン組織で、変形しても元の形に復元する力を持っています。
 酷使したり、ほとんど使わないでいたりすると、短縮や癒着を起こして繋がっている筋膜を引っ張るようになります。

 筋膜には痛みを感じるセンサー(感覚受容器)が分布していて、強い力が加わって筋膜が変形すると、センサーが刺激されて痛みが生じます。
 一般的には、筋肉が縮んでいるときの方が筋膜へのストレスが高いと思われがちですが、実は伸ばされている時の方が、筋膜へのストレスは高いのです。
 そして、伸ばされている筋肉は、緊張が強く血流が低下しています。
 たとえば、上半身の前面にある腹筋、胸筋などが縮まる猫背になりますが、背面にある脊柱起立筋は伸ばされて緊張するため、背中や腰の血流が低下します。腰痛や背中、首の痛みを訴える人がたくさんいるのに、腹筋痛や胸筋痛を訴える人がほとんどいないのは、それだけ猫背で過ごしてる人が多いということです。
 上半身を15度前傾させただけでも、脊柱起立筋の血流量が30%も低下するのですが、前傾角度や背中を丸める角度が増すほど、脊柱起立筋へのストレスが増加して血流が低下していきます。多くの人は背中を丸めて休息をとりますが、実はこの姿勢が腰にとっては休息どころか、最も過酷な姿勢となっているのです。

 『ギックリ腰は尻から治す』 Step4 より 伊藤和磨:著 永岡書店:刊

 猫背で背中や腰を丸めた状態が常態化すると腰が痛くなる。
 それは、腰の筋肉が縮んでいるからではなく、伸ばされて緊張しまったからです。

 正しい姿勢で座ることの重要性がよく分かりますね。

「一日30秒のストレッチ」で筋肉の萎縮・短縮を改善

 歳を重ねるごとに身体の細胞は萎縮し、どんどん硬くなっていきます。
 身体の強張りを遅らせられるのはストレッチだけです。

 伊藤先生は、以下のようなテニスボールを使ったストレッチ方法を紹介しています。

 解決方法としては、座っているときに膝の角度を100度以上に保ち、できるだけハムストリングスを弛緩させておくことが重要です。
 座面の奥行きがある椅子だと、膝裏に近いところまで圧迫されてしまうので、座面の奥行きが浅い椅子を選ぶことをお勧めします。
 坐骨(ざこつ)周辺に痛みと痺れがある人は、座面の上にテニスボールを置き、その上に座って太ももでボールを転がしながら、ハムストリングスが硬くなっているところをマッサージします。深部の筋肉が硬くなっているところにボールが当たると、「ああ、そこだ!」という感覚が生じます。
 腰痛症や坐骨神経痛を患っている人は、座っている時間が長くなる程、症状が悪化するものですが、私の患者さんたちでこの方法を習慣にしている人たちは、効果がテキメンに現れて、ほとんど症状が消失しています。
 自信をもって勧められるセルフケアのひとつです。

 『ギックリ腰は尻から治す』 Step8 より  伊藤和磨:著  永岡書店:刊

坐骨神経痛に効くマッサージP177
図2.坐骨神経痛に効くボール・マッサージ (『ギックリ腰は尻から治す』  P177 より抜粋)

 伊藤先生は、すでに腰が痛くなり始めている人でも、ストレッチを一日30秒ずつ継続的におこなうと、腰全体が緩んでくるのを実感できるはずだ、と述べています。

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 現代人、特にデスクワーカーにとっては、“職業病”ともいえる「腰痛」。

「いまの仕事を続ける限り治らない」

 そう考えて、治療を諦めてしまっている人は多いです。

 しかし、本書を読むとそれは単なる思い込みで、固定観念にすぎないことがよく分かります。
 正しい知識と、日々の習慣が僕らを腰痛の脅威から守ってくれます。

 健康はなくしたときに、その大切さを理解します。
 いつまでも、元気よく自由に動ける幸せを続けていきたいですね。

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One thought on “【書評】『ギックリ腰は尻から治す』(伊藤和磨)

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