【書評】『アゴを引けば身体が変わる』(伊藤和磨)

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 お薦めの本の紹介です。
 伊藤和磨先生の『アゴを引けば身体が変わる 腰痛・肩こり・頭痛が消える大人の体育』です。

 伊藤和磨(いとう・かずま)先生は、腰痛症の改善を主としたパーソナルトレーナーです。
 日常姿勢や動作パターンから腰痛の本質的な原因を追求し、毎年1300回を超えるセッションを実施されるなど精力的にご活躍されています。

腰痛も肩こりも、姿勢や動作のフォームから


 人は痛みを自覚して、ようやくそれを取り除こうと努力します。
 ただ、痛みは「結果(現象)」であり、「原因(本質)」ではありません。

 伊藤先生は、根本的な原因は、患部に負担を掛けている姿勢や動作フォームにあると指摘します。

 座り方や歩き方など、身体を長持ちさせるための姿勢や身体の動かし方。
 健康維持に重要であるにもかかわらず、学校や病院で教わることはありません。

 正しい身体の使い方を身につけることで、つらい腰痛や肩こりと出会わずに済む。
 そうならば、それを習慣にしない理由はありませんね。

 本書は、座り方や屈み方などの姿勢を中心に、頭痛・肩こり・腰痛などの原因を身体の作りから解説し、それらの予防・改善の方法についてまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「アゴ」はやる気のスイッチ


 人の身体には、“スイッチ”があります。
 そのスイッチとは、「アゴ」のことです。

 アゴを引けばスイッチが「ON」になり、アゴを出せばスイッチが「OFF」になります。

 スイッチを「ON」にすると姿勢が整う。姿勢が整うということは、脊柱を整えることであり、脊髄の機能を整えることである。脊髄の働きが向上すれば、神経骨格筋系、呼吸循環器系、消化器系、泌尿器系、生殖器系など、全身の機能が高まるのである。
 アゴを引くと、重い頭が胴体の真上に位置して、脊柱が最も安定した形(ニュートラルポジション)になり、上半身の重さを「骨」で支えられるようになる。だから、頸や腰への負担が大幅に軽減され、肩こりや腰痛症の予防・改善になるのだ。また、頭が正しい位置にあるときは、全身の運動効率が高まるため、最小の力で最大の力を発揮できるようになるのである。
 近年、呼吸の大切さが再認識されるようになったが、質のよい呼吸をするためには、息を鼻から吸うことが必須条件となる。鼻呼吸は鼻の粘膜を刺激するため、脳が活性化する。アゴを引いて、舌を上アゴの歯の裏側につければ、自然と鼻呼吸が促されるのだ。
 一方、アゴを出してスイッチを「OFF」にすると、骨盤が後ろに傾いて猫背になり、脊柱が不安定な状態になって、上半身の重さを「筋肉」と「靭帯」で支えることになる。骨とは違い、筋肉や靭帯は持続的な負荷に弱いため、徐々にダメージが蓄積されていき、いずれ痛みや機能障害が起きる。そして、脊柱が歪むと脊髄も歪むため、全身の機能が低下するのである。

  『アゴを引けば身体は変わる』 講義1 より  伊藤和磨:著  光文社:刊

 アゴが出ると、口が半開きになって鼻呼吸ができなくなり、口呼吸となってしまいます。
 慢性的な肩こりの要因にもなります。
 見栄えもよくありませんね。

 ほとんどの人が肩こりや腰痛症を経験するのは、アゴが出たOFFの状態で暮らしているためです。

「アゴを引くこと」

 いつも気をつけていたいですね。

「お尻」の威力


 頸(くび)や腰の痛みは、猫背と前のめり姿勢が生み出します。
 それを防止するためのポイントのひとつは、「お尻(大殿筋)」にあります。

 伊藤先生は、お尻の割れ目を締めるように力を入れるだけで、骨盤が固定されて前のめりや猫背の姿勢を防止・改善できると述べています。

 お尻に力を入れて立つ習慣を身につければ、特にスクワットをやらなくても、生涯、猫背にはならないと約束してもいい。お尻が人の直立二足歩行を支えているだけでなく、優れた猫背予防装置としても活躍しているのである。
 お尻の形と張りと腰痛には関連がある。慢性腰痛を患っている人や、シニアで猫背(前のめり)になっている人を真横から観察すると、大殿筋が萎縮し、お尻がぺたっとして小さくなっている。もしくは、左右のお尻のサイズが大きく異なっているのだ。お尻に力を入れるように指示しても、全く力が入らないか、入ったとしてもわずかである。
 しかし、何歳になってもお尻を締めて立つように心掛けていると、大殿筋の厚みが増して前のめりと猫背の姿勢が改善されるのだ。
 お尻を締めると、下腹がへこんでヒップアップできるのも嬉しいオマケである。

 『アゴを引けば身体は変わる』 講義2 より 伊藤和磨:著 光文社:刊

 以前から「お尻を締めると姿勢が良くなる」と言われています。
 それには、このような理由があったのですね。

「お尻に力を入れて立つ習慣」

 ぜひ身につけておきたいものです。

後頭下筋群のセンサー


 筋肉には、二種類あります。
「アウターマッスル(動作筋)」「インナーマッスル(姿勢筋)」です。

 インナーマッスルは、深層にあり、サイズが小さいため骨を動かす力はありません。
 しかし、脊椎と関節の安定・支持に貢献しています。

 頸(くび)の痛みは、後頭下筋群(下図1の左参照)と呼ばれる、インナーマッスルの凝りが原因のものが多いです。

 また、さまざまな器官からの情報が脳に伝達されたとき、それを瞬時に処理する能力が減少します。

 インナーマッスルには、筋肉の長さや張力を感知し、中枢に情報を送る「筋紡錘(きんぼうすい)」というセンサーが多く分布している。
 筋紡錘の数が多い筋肉は、細かい動きに対応することができる。たとえば、指を動かす筋肉にはたくさんの筋紡錘が分布しているが、単純な動きしかしない大腿部の筋肉には、わずかな筋紡錘しか存在していない。
 後頭下筋群はインナーマッスルであり、主にアゴを上げる、うなずく、頭部を回旋する、頭を傾ける役割を担っている(下図1の左参照)。そして、600以上ある全身の筋肉のうち、後頭下筋群に最も多くの筋紡錘が分布している。
 筋紡錘は、大殿筋(尻の筋肉)には1グラム中7個、肩の筋肉(僧帽筋)には1グラム中2個、手の親指を動かす筋肉には1グラム中16個含まれている。これらの筋肉に対して、頭部を回旋させる下頭斜筋(かとうしゃきん、下図1の右参照)には、1グラム中242個もの筋紡錘が含まれているのである。この筋紡錘の分布の数からしても、いかに後頭下筋群が繊細で重要な役割を担っている筋肉であるか、理解していただけるだろう。

 『アゴを引けば身体は変わる』 講義4 より 伊藤和磨:著 光文社:刊

後頭下筋群P25 後頭下筋群 横から P104
 図1.後頭下筋群
 (『アゴを引けば身体は変わる』 P25(左)、P104(右) より抜粋)

 歯の噛み合わせと目の疲れも、後頭下筋群に悪影響を及ぼします。

 頸は、頭を支える役割とともに、頭と身体を結ぶ情報経路です。
 立っている時、座っている時も正しい姿勢をキープしたいですね。

猫背にならない「座り方」


 腰痛防止に重要なのが、座るときの「骨盤の傾斜角度」です。

 骨盤が後傾し、腰椎が丸まった着座姿勢は、腰椎に負担がかかります。
 椎間板ヘルニアなどを患うリスクが非常に高いです。

 姿勢について意識している人でも、椅子に腰掛けるときには骨盤(仙骨)が垂直になっているか、後傾してしまっている。これでは、せっかく座面の奥に座っても、背もたれに密着している背中が支点となり、骨盤を前方に押し出す力が働いて、時間が経つにつれて尻が前方に滑って、最後は猫背になってしまう。
 これを回避するために一番大切なことは、座るときにスタンスを広めにとり、骨盤を前傾させて尻を座面と背もたれの角に差し込むことである(下図2参照)。
 背もたれと座面の角に尻を差し込めば、状態を起こしたときに仙骨が背もたれに密着して、腰を丸めようにも丸められなくなるのだ。この座り方は、どんな椅子に座るときでも鉄則であり、このように座らない限り、猫背を予防するのは難しい。
 もう一つ、両手を腿の上か机の上に置いて突っ張り棒の代わりにしておくと、上体が前に倒れ込むのを抑制することができる。机に向かっているときは、前腕(肘から先)を机につけばよいだろう。

 『アゴを引けば身体は変わる』 講義7 より 伊藤和磨:著 光文社:刊

猫背にならない座り方①P192  猫背にならない座り方②P192
図2.猫背にならない座り方
(『アゴを引けば身体は変わる』 P192 より抜粋)

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 パソコンの普及により、デスクの前で長時間座ったまま過ごす人が増えています。
 腰痛や肩こりに悩む人の数も、それに比例して増加しています。

 慢性的な痛みは、身体のどこかの部分に無理な力が掛かりすぎている証拠。
 身体からのSOSサインです。
 放っておくと、取返しのつかないことになりますね。

 立っているとき、座っているとき、歩いているとき。
 身体に負担の掛からない正しいフォームを身につけたいものです。

 その第一歩は、「アゴを引く」こと。
 背筋が伸びて凛とした姿勢を手に入れましょう。


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